Re. 海竜のヒーローアカデミア   作:willtexture

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第22話 ショッピングモールにて

 期末テストが終わり、後は結果を待つだけとなった。

 

「皆……土産話、ひぐっ。楽しみに、うう……してる、がらぁ……」

 

 演習試験を終えた教室では、クリア出来なかった4名が悲しみに満ちた表情であった。

 失礼ながら名前を挙げさしてもらうと、校長に完封された上鳴と芦戸。

 セメントス先生にがちがちに固められた切島と砂糖である。

 みんなの試験の様子を見ていると先生方はかなり容赦なく弱点を突いていた。

 響香と障子がクリアできたことを知ったときはつい驚いてしまった。

 無論、緑谷と爆豪のところも同じだ。

 いくつかのグループだけ難易度ルナティックで可笑しかったもん。

 

「ま、まだわからないよ。どんでん返しがあるかも知れないし…………」

 

「緑谷、それ口にしたら無くなるパターンだ……!」

 

「しっかりと止めさしたな」

 

「試験で赤点とったら林間合宿行けずに補習地獄!そして俺らは実技クリアならず!

 これでまだわからんのなら、貴様らの偏差値は猿以下だ!」

 

「落ち着けよ、長え」

 

「瀬呂の言うとおりだが、正直言わせてもらうとわかんねえのは俺だ。

 最後は峰田のおかげでクリアしたけど、相打ちになって気絶していただろ?」

 

「安らかな寝顔だったな」

 

「気持ちよさそうに寝てたな」

 

「不覚にも可愛いと思ってしまったわ」

 

「死んだみてえな言い方やめてくれ。倒してお終いがヒーローじゃない。

 ヴィランを倒してその後の事までやるのがヒーローだ。

 

 ……とにかく、採点基準が明かされてねえ以上は──」

 

「同情すんなら何かもう色々くれ!」

 

 上鳴の悲痛な叫びに紛れてチャイムが鳴った。

 俺もあまりいい成績が付いている自信が無かった分、結構精神状態がヤバめだな。

 途中から何言っているのかよく分かって無かったもん。

 

「予鈴が鳴ったら席につけ」

 

 瞬間、扉を勢いよく開け放って相澤が現れる。

 生徒たちも既に慣れたもので、瞬間移動かと思える速さで全員が自席に座った。

 本当に相澤先生にとって教師は天職だと思う。

 相澤先生の声で集合と言われただけで、瞬間移動の如し速さで移動できるようになったもの

 

「おはよう。今回の期末テストだが、残念ながら赤点が出た。したがって、林間合宿は……

 

 全員行きます!!」

 

「「どんでん返しだあぁっ!!」」

 

 喜びのあまり、実技未クリア4名の拳が天高く掲げられる。

 無論、その四人以外も喜びの表情を見せた。

 

「筆記の方はゼロ。実技で芦戸、上鳴、切島、砂藤が赤点だ」

 

「あ、免れてたのか…………」

 

 相澤先生から合格発表があると、皆が大なり小なり胸をなでおろす。

 やはり皆も今回の試験への手ごたえで不安を感じていたのだろう。

 

「今回の試験、我々ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。

 でないと、課題云々の前に詰む奴らばかりだったろうからな。

 そもそも、強化合宿なんだ。赤点とったヤツこそ、ここで力をつけてもらわなきゃならん。

 合理的虚偽ってやつさ」

 

「「ゴーリテキキョギィィッ!」」

 

「またもしてやられた…………!!しかし先生!!

 2度も虚偽を重ねられると、信頼に揺らぎが生じるかと!!」

 

「わあ、水差すね飯田くん」

 

「今日も飯田は飯田してるな」

 

「飯田くんて動詞やったっけ」

 

「だいぶ前から動詞だろ?」

 

「二人とも少しは真面目にしな」

 

「「はーい」」

 

「確かにな、省みるよ。だが、何も全部ウソってわけじゃない。赤点は赤点だ。

 お前らには別途に補習時間を設けている。ぶっちゃけ、学校に残っての補習よりキツいからな。

 

 じゃあ、合宿のしおりを配るから」

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

「まあ、何はともあれ皆で合宿行けて良かったね」

 

「相澤先生がわざわざ釘を刺すくらいだ。補習は想像以上にキツいかも知れないが」

 

「や、やめろよ。怖えよ」

 

「それ以前に、雄英の強化合宿が生半可なわけもないので、全員キツいだろうが」

 

「苦難上等よ!」

 

 ……と、まぁ、そんなこんなで放課後。

 

 俺たちは帰りのHRで配られた合宿のしおりにみんなで目を通していた。

 

「それにしても、全員で行けることになってよかったね、林間合宿」

 

「うん、そうだね!今から楽しみだぁー!」 

 

「期間は一週間か」

 

「結構な大荷物になるね。早め早めに準備しないと……」

 

「水着とか持ってねーや。いろいろ買わねぇとなぁ」

 

「オイラは暗視ゴーグル買わないと」

 

「……峰田、暗視ゴーグルって何に使う気だ?捕まるぞ?」

 

「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」

 

「………見張っておいた方がいいかも」

 

 峰田の不穏すぎる発言はともかく、緑谷くんと上鳴くんの言葉はもっとも。

 一週間の外泊ともなると、着替えの用意だけでも大変そうだ。

 雄英の体操服で過ごすことがメインになりそうだな。

 まぁ、一応向こうで洗濯はできるみたいだけど…………私服をあんま持って無いんだよ。

 

「……あ、じゃあさ!

 明日休みだし、テスト明けだしってことで、A組みんなで買い物行こうよ!」

 

「おお、いいねそれ!何気にそういうの初じゃね!?」

 

 ただ、あまりにも急な話ということもあって、男子の半分くらいは都合が付きそうにない。

 女子の中では梅雨ちゃんだけが参加できないとのことだった。とても残念だ。

 まぁ、みんなも予定くらいあるよね…………俺はないけど

 普段の休みの日に何をしているのかと問われると、特訓か寝ているとしか…………

 

「おい爆豪!おまえも来い!」

 

「行ってたまるか、かったりィ」

 

 切島が爆豪を誘ったけど、秒で断られていた。

 期末試験前に比べればいくらか落ち着いた様子の爆豪だったけど、

 まぁ、だからって急に仲良しこよしをするつもりはないらしい。

 轟も母親の見舞いに行くとかで来ないそうだ。

 

 そんなわけで、臨海合宿の前に1年A組のだいたい半分くらいの面子で、

 休日にショッピングに出かけることとなったのだった。

 

 

 肌を焼くような陽射しに青い空。視界の向こうには、入道雲がそびえ立っている。

 今朝の天気予報では夕立の心配はないと言っていたはずだけど、

 あれだけ立派に肥えているあたり、予報は外れてしまうかもしれないな。

 雨だけは降って欲しくないかな………傘を持ってきてないし

 それと、この時期になると、夏が旬の魚が美味しくなるんだよな……幾つか買っておこう。

 

「──はい!ってな感じでやってきました!

 県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端!木椰区ショッピングモール!」

 

「いえーい!ナウでヤングぅ!」

 

 木椰区ショッピングモール、通称「ウーキーズ」に到着した1年A組の面々。

 結局参加は20人中13人で、まぁ急な割には良く集まった方だろう。

 

 このウーキーズ、県内で最多の店舗数だというのも十分に頷けるだけの広さだ。

 しかも、その敷地内に人がごった返しているんだから圧倒されてしまう。

 休日のお昼過ぎということで混雑がピークなのもあるだろうけど、物凄い盛況っぷりだ。

 

「──個性の差による多様な形態を数でカバーするだけじゃないんだよね。

 ティーンからシニアまで幅広い世代にフィットするデザインの物が取り揃えられているから

 こその集客力で実際見渡してみても親子連れやカップルや学生なんかの比較的若い世代から

 お孫さんを連れたお爺ちゃんお祖母ちゃんなんかもいてまさしく老若男女が──」

 

「緑谷、そろそろよせ。幼子が怖がる」

 

「というかその知識は何処から?」

 

 と、そんな一幕があった一方で、

「お!?あれ雄英生じゃね?一年生たちじゃね!?」

「うわマジじゃん!うぇーい!体育祭うぇーい!」と

 チャラい大学生みたいな人たちが謎の交信を図ってきたりもした。

 

「体育祭って、まだ覚えてる人おるんや……!」

 

「麗日って意外にそういうノリ軽いよね。ホント…………

 まぁいいけどさ、とりあえずウチ、キャリーバッグ買わなきゃ」

 

「あら、では一緒に見て回りましょうか」

 

「あ、俺もキャリーバッグ欲しいから付いて行っていいか?荷物持ちならするぞ?」

 

「ん、いいよ、お願いする」

 

 俺と響香とヤオモモの三人が一緒に行動することを決めると、続けざまに上鳴と葉隠。

 芦戸がひとまず靴を見に行くことで意見が合致していた。ついでに飯田も付いて行くっぽい。

 

 あとは峰田が「ピッキング用品と小型ドリルってどこに売ってんだ?」とか

 なんとか不穏なことを口走っていたのだが、

 その直後、障子と常闇、切島が静かに峰田くんの背後へと回った。

 どうやら監視係を務めてくれるらしい。彼らには、あとで何か奢ろう。

 まぁ、正直なところ今日止めても別に日に揃えてしまうだろうがな。

 当日に荷物検査をするのが一番いいと思う。

 

 そんなこんなで自然と目的ごとにグループが分かれていって、

 最終的には切島くんが「なんかみんな目的バラけてっし、自由行動にすっか!」と提案をした。

 

 その意見に賛同して、他のみんなも反対はしなかった。

 

「うっし、じゃあとりあえず三時にここ集合ってことで!」

 

「「「異議なーし!」」」

 

 切島の号令に声を揃えた俺たちは、あっという間に散らばっていった。

 

 三人で最初に訪れたのは鞄の専門店だった。

 リュックサックやビジネスバッグ、キャリーバッグなど取り揃えているカジュアルなお店だ。

 あまりこういう場所に来ることが無いから少し新鮮だったりする。

 買い物に来るときは大体が姉さんの付き添いだったりするから…………

 

「それにしてもすごいですね、鞄の専門店って」

 

「普段はこういう場所に来る機会もあまりないしな」

 

「私も普段はブランドごとの専門店にしか出入りしませんから、

 右も左も鞄しかないなんて新鮮ですわ……!」

 

「ヤオモモ贔屓のブランド店って……

 まぁとにかく、こういう店って大型商業施設ならではって感じするよね」

 

「にしても、種類が多い…………」

 

「どのくらいの大きさがいいんだろうな」

 

「一週間分の荷物だし、やっぱ大きいに越したことはないんじゃない?

 ボストンバッグとかもあるみたいだけど、持ち運び考えるとちょっとね……」

 

「使用頻度を考えるとあんまりお金は出したくないが、

 長持ちするだろうからあまりデザインに妥協したくないな」

 

「……というか、これだけ大きいとバッグ自体の重さも気になりますよね。

 持ち上げて運ばないといけない場面もあるでしょうし」

 

「確かに。これとか見るからに……あっ、やば重っ」

 

「大丈夫か?」

 

「うん、ありがと」

 

「……あ、あの、耳郎さん、海藤さん。

 お店の商品に勝手に触れても大丈夫なのでしょうか?店員さんに声をかけた方が……」

 

「え?いや、乱暴にしなければ大丈夫じゃないかな?」

 

「そ、そうなのですか。すみません、こういったお店は本当に初めてでして……」

 

「さすがにそれは下界の暮らしを知らなすぎるぞ」

 

「下界って…………」

 

「いや、ヤオモモが躊躇っているのはあれだ。ほら、お高いブランドショップ特有の……」

 

「……あ、あぁー……」

 

「ヤオモモレベルの金持ちが御贔屓にする高級な商品ばかりを取り扱っているような、

 ハイブランドの専門店って、展示されている商品をベタベタ勝手に触っちゃいけないんだよ。

 なんなら値札とか勝手に見るのもご法度みたいなところもある」

 

「…………うわぁ」

 

「……せっかくだから、もっといろいろなお店回りたいな。

 ヤオモモには、下々の者が体験してもらっていることを体験してもらいたい」

 

「流石に下々の者は言い過ぎだって……ま、いろいろ見て回るのは賛成だけど」

 

「悠雷は他に何か欲しいものあるの?」

 

「ん~そうだな、確か一通り家にあった筈だ」

 

「それじゃあ、ウチ等が観たいとこ回っていい?」

 

「ああ、荷物持ちするって言っただろ?」

 

「ありがと…………じゃあ水着から見たいかな」

 

「水着ですか…………私はいくつか持っていますが、新調するつもりですわ。

 少し、サイズが合わなくなっている気がしますので」

 

「……えっ……まだ……成長してるの……?」

 

「ヤオモモ、そういう話は男子禁制なんだ………」 

 

 というか、響香がヤオモモに怪物でも見るかのような目を向け始めちゃった。

 流石に俺がいるところでこういう話題は遠慮してもらいたい。

 体内の血流を操作するといっても限界はあるんだからな?ハジケルゾ?

 

「取り敢えず、近くにある店に上鳴たちが行った筈だ。合流しないか?」

 

「あ、ああうん、いいんじゃない?」

 

「そう、ですわね。せっかく大勢で買い物に来たんですから、

 このまま三人だけで行動するのは味気ないですものね」

 

「そういえばさ、二人はよく旅行に行ったりするの?」

 

「わたくしはお母様に連れられて行く事が多いですわ。

 その場合海外に行くことがメインとなりますが」

 

「羨ましいな。ウチはまだ海外に行った事は無いから」

 

「そうなのか?俺は何度か兄さんに連れられて行ったことがあるな」

 

「流石、ホークス。羨ましい」

 

「きっと実りのある経験が出来たに違いありませんわ」

 

「ただの観光だけどな」

 

「……ん?」

 

「あれ……今、スマホ鳴ったよね」

 

「私もですわ。これは……」

 

 ふと、私たち三人のスマホが同時に通知音を発した。

 

 クラス全体か、あるいは今回の買い物メンバー用のメッセージグループに

 誰かが連絡を入れたのだろうと思いつつ、画面に目を落とし──。

 

「──は?」

「「──え?」」

 

 メッセージの内容を見て、皆の血の気が引いた。

 

 緑谷が敵ヴィラン連合の死柄木弔と接触した

 ──それが、俺たちのスマホに麗日から送られてきたメッセージの中身だった。

 

 俺たちが別行動を始めた直後、緑谷は一人きりになったタイミングで遭遇したそうだ。

 その後、しばらくの間は奴の個性で命を握られながらしばらく言葉を交わしたらしい。

 そして、麗日が緑谷の下に戻ってきたところ、

 死柄木弔は追ってくるなという警告を残してその場を去っていったそうだ。

 

 麗日はすぐさま警察とヒーローに連絡をしてから俺たちにメッセージを飛ばしてくれたらしい。

 集まった俺たちはショッピングモールの警備員さんたちに待機しているように言われて、

 その間に緑谷と麗日から詳しい話を聞くに至った。

 

 さらにその後、警察とヒーローが到着次第ショッピングモールは閉鎖された。

 そして、お客さんの避難誘導と死柄木弔の捜索が開始された。

 

 結局、捜索は夕方まで続いたものの、死柄木弔は見つからずじまいだった。

 敵ヴィラン連合のワープの個性持ちがいることからそもそも逮捕の望みは薄かったが、

 防犯カメラの映像以外にその足取りは残されていなかったようだ。

 

 ともあれ、ようやく帰宅の許可が下りた俺たちは

 改めて保護者に連絡を入れて、親御さんに迎えに来て貰える人はそれを待ち、

 諸事情で迎えに来てもらえない人は警察に家まで送り届けてもらうこととなった。

 ちなみに俺はもちろん後者であり、パトカーで家まで送ってもらったのだった。

 

「──と、まぁ君たちは君たちで連絡を取り合っていただろうが、昨日そんなことがあった」

 

 翌日の学校、朝のHRにて、相澤先生の口からも事の顛末が語られた。

 

 ただ、相澤先生が言った通り、昨日すでにクラス全体のメッセージグループで

 事情を説明してあったので、特に驚いている人は見当たらなかったのだが……。

 

「……で、夏休みの林間合宿だがな。敵ヴィランたちの動きを警戒して、

 例年使わせてもらっている合宿先はキャンセル。当日まで行先を明かさない運びとなった」

 

「「「え──―!?」」」

 

「俺、もう親に言っちゃってるよ……」

 

「故に、ですわね。話が誰にどう伝わっているか把握できませんもの」

 

 尚、これを受けての爆豪による「骨折してでも殺しとけ」発言で教室内が騒がしくなり、

 教師相澤のこめかみがヒクついたのは余談である。

 ………久しぶりに恐怖を感じました。

 




自分で読んでみて思ったけど、他の人にパクりみたいに見えるかも
ちょくちょく修正は入れるので、そこのところごめんね
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