Re. 海竜のヒーローアカデミア 作:willtexture
夏休みの課題が大体終わり、姉さんの事務所にでも遊び……手伝いに行こうと思っていた頃。
緑谷からプールで一緒に訓練をしない?とお誘いを受けたので参上した。
まさか水着を最初に着るのが緑谷の誘いだとは思ってもいなかったな。
今年はまだ海に一度も足を運んでないな………臨海合宿の前に行っておかないと
「──む、海藤くん、久しぶりだな!!」
そんな俺を出迎えてくれたのは筋肉モリモリマッチョマンの変態…………
…………いや別に変態じゃないけど、とにかくやたらとガタイのいい男が俺を出迎えた。
「……えっと、飯田……なのか?」
「む?ああ、水泳帽とゴーグルでわからなかったか!すまない!」
気配では飯田だと分かっているのにびっくりするくらいわからなかった。
正直に言わせてもらうと「ほらこの通り!」なんてゴーグル外してもらっても微妙。
メガネかけてくれないと……いやまぁ、ふくらはぎ見ればわかるけどさ。
やはりメガネが本体であったか…………あと目が三みたいになるお約束は無し?
少しだけ期待してたんだけども
「もしかしてだが、全員来ているのか?」
「いや、切島くんと爆豪くんだけ来ていないな。
プールの使用許可は、上鳴くんと峰田くんが取ってくれていたんだ。
夏休み中の訓練に、とな。そして、緑谷くんが男子の皆に連絡をくれたのさ!」
「え?あの2人が?」
プールの方に目をやると、ちょうど向こう側に泳ぎ着いたらしい黄色い頭とブドウ頭が
水から上がってきていて、俺と飯田の方に顔を向けた。
そして、どうもこちらの存在に気が付いたらしく、物凄い勢いでこちらに走ってきた。
あいつらは転んでしまってもいいのか?水操ってプールの底に沈めるぞ?
「峰田くん上鳴くん!危険だからプールサイドを走っては──」
「──海藤!!遅いぞ!!楽園を作るためにはお前の協力が必要なんだ!!!」
「その通りだ!!普段から優等生なお前の意見なら女子たちも聞いてくれるはずだ!!」
少しは飯田の言っていることも聞いてあげよう?
ものすごい勢いで落ち込んでしまっているじゃあないか。
………にしても、相も変わらずというか………
「……二人とも、さては女子の水着姿目当てで借りたんだな?」
「え、は!?そ、そそそそんなわけねぇだろ!?」
「そ、そうだそうだ!濡れ衣だ!
俺たちは来たる林間合宿に向けて少しでも研鑽を積もうとだな……」
「じゃあ、あとで扱いてやるから」
「「…………え?」」
まぁ、取り敢えず2人の事は放っておくとして…………女子もその後来るとみて間違いないな。
そこは来てから考えておくとして、俺に気が付いた他の男子たちにも軽く手を振っておく。
いつからいるのかわからないけど、みんなまだまだ元気そう。
もう少し早く来ておけばよかったかな?
それからしばらくして、女性陣が到着した。
芦戸、梅雨ちゃん、葉隠が元気溌剌といった感じでプールの中で泳いでいる。
他の三人はプールサイドに座って水の中に足をさらしていた。
ヤオモモの隣にいる響香だけども、サイズの違いが…………あ、なんでもないです。
恐ろしい恐怖を放っている響香から目を逸らして、軽く柔軟体操をする。
ついでに持ってきたヘアゴムで簡単に髪をまとめて、いざプールへ。
やっぱり髪を切ろうかな?この長さだと結ぶ必要があるし
でも、この長さに慣れちゃったから切りたくないジレンマよ。
「……あぁ~……」
そこまでの深さはないがプールの底に沈む。
みんなが騒いでいる声も聞こえなくなり、静寂が身を包む。
陸にいる時よりも心が安らぐのは個性によるものなんだろうな。
気が済むまで潜り、その後浮上する。
両手両足をだらんと広げ、完全に脱力した状態でプカプカと浮くことにする。
男子は相変わらずに泳いだり、会話をしたりしている。
女子は八百万製のビーチボールで水中バレーをしているのが見えた。
そして、飛んできたボールの直撃を受けて再び沈んだ。
──しばらくした頃、浮上すると男子たちがいる方から怒鳴り声が聞こえてきた。
「なんだ…………爆豪か…………」
「いや、潜らないでよ」
「めんどくさいから…………ダメ?」
「ダメ。そろそろお呼びがかかると思うしね」
「まぁ、そうだろうな」
浮かび上がってきた俺の方に来た響香と会話をしつつ、プールの入口に目を向ける。
プールの入り口にいたのは、薄い金髪のボンバーヘッド。それと、あの赤い髪は切島だ。
2人の様子を見ている限り、爆豪は無理やり連れてこられたのか?
無理やりというよりは挑発された形になるんだろうな。
爆豪が突っかかっている相手は、例に漏れず緑谷くんだった。
おまけに轟にも何やら勝負を吹っ掛けているようだけど、大変だねぇ……
その様子を完全に他人事気分でその光景を眺めていたら。
「──おいクソトカゲェ!てめぇもだ!てめぇもここでぶちのめしたらァ!!」
「…………やっぱり?」
「応援してるから、頑張ってね」
「ありがとさん」
本当になんでか知らないけれど、爆豪の怒りの矛先は、何故か俺にも向けられていた。
マジで全然意味がわからなかった。
怒られることなんて…………結構心当たりあったわ。
幾つかの例を挙げさして貰うとすると、激アマ麻婆豆腐にすり替えたり、髪を七三分けにした。
他には肋骨を数本叩き割ったり、全身の筋肉を痙攣さしたり猫耳を付けたり…………etc.
まぁ、水中こそ我が縄張りよ…………勝てると思うんじゃあねえぞ?
で、第一回雄英高校1年A組水泳大会、50m自由形が開催されることになった。
第二回があるのかどうかはわからないけど、とにかくそういうことになった。
女性陣はプールサイドで観戦です。
どうせなら女性陣も参加することにすればよかったのにな。
爆豪の宣戦布告を発端として、訓練ばかりでは面白くないから水泳で競争をしようという事。
予選として男子5人、5人、4人の3グループでそれぞれ競争。
各グループの1位3名でさらに決勝戦を行うという方式に。
ちなみにグループ分けは、八百万ブランドのくじ引きによって完全ランダムで決定された。
そして、学校敷地内ということで個性の使用も含めた自由形。
ただし、故意の妨害のみは禁止というルールが敷かれた。
個性使用ありの水泳競争とは、なかなか楽しそうだ。
体育祭の障害物競走を思い出すな…………懐かしいよね。
「さて、それじゃあ男子第1グループのみんな、位置についてくれ!」
飯田がそう言うと、飛び込み台に上鳴、爆豪、轟、常闇、峰田の5人が並んだ。
優勝候補はやはり爆轟コンビか?体育祭の焼き直しになるのか、それとも…………
「んー海藤は誰が一番だと思う?」
「爆豪かなぁ。個性使用がありなら空中機動力が高い爆豪が有利だ。
如何に凍結だとしても、妨害にならないようにして、爆豪について行くのは難しいだろ」
暇な俺はゴールの判定係。何故か響香は付いてきてくれた。
まぁ、水中のスペシャリストとして予想を外すわけにはいかないな。
どうせ爆豪は泳いだりしないんだろうけど…………
もしも、妨害ありのルールだったら上鳴が最強だっただろう。
全員が飛び込んだ後に水中で放電すれば残らずノックアウトで勝ちだ。
問題点としては空中の爆豪には当たらないくらいだろうか?
まぁ、最後のは流石に冗談として、はてさてどうなることやら。
「──それでは参ります!位置について!よーい……」
ピッ、とホイッスル(八百万ブランド)が鳴って、5人が一斉にスタートした……んだけど。
まぁ、そうなりますよね…………うん。仕方ないね。
「〝爆速ターボ〟!!!」
「えぇ……」
「仕方無いね。だって爆豪だもの」
「なにその理論………」
「近年発表された爆豪理論だよ」
爆豪が泳いだのは、水中ではなく空中だった。
日頃のヒーロー基礎学でも時たま見せる、連続した細かな爆発での空中移動だ。
そして当然、爆豪は二番手以下に圧倒的な差を付けて50mを渡り切った。
轟は律儀に泳いでいたというのに…………このみみっちい男は…………
「どォだこのモブども!!」
「どうだじゃねぇ!!!」
「泳いでねぇじゃねぇか!!!」
勝ち誇った爆豪に瀬呂と切島がツッコミを入れた。
だが、爆豪は「自由形っつっただろーがァ!」と反論。
ルール説明の時に空中は禁止とも言われてないものね。
続く男子第2グループは切島、俺、砂糖、青山、瀬呂の5人。
ヤオモモが吹いた笛と同時に水中へと飛び込んだのは切島と砂藤だけ。
瀬呂は爆豪のように空中に躍り出てテープを射出し、対岸のフェンスに貼り付けた。
そして、これを巻き取って高速移動を図った。
また、青山は合図と同時にお腹に巻いてあるベルトからネビルレーザーを放って推進。
そして、俺は水面を走ることで進みました。
子供の事に皆も思ったのではないのかな?沈む前に足を出せばと…………
その余波で二人の犠牲者が出たので、黙禱…………
過半数が泳いでないことはさておき、途中までは結構いい勝負だった。
だが、青山が「はうっ!」と情けない声を上げてレーザーの発射を中断。
そしてあえなく空中で体勢を崩して、これに瀬呂が巻き込まれて二人して水没。
砂藤がやはり個性もあってかなり良い速度で泳いでいた。
切島も根性で頑張っていたよ…………俺とレーンが隣でさえなかったらね…………
身体強化で電気が漏れ出てしまうのは故意ではないので失格にはならないがな!!
予選第3試合、男子第3グループは障子、尾白、緑谷、飯田の4人による戦いだった。
で、勝敗はというと、結論から言えば緑谷の勝利。
しかも飯田との接戦を制した上での勝利で、今日一番の盛り上がりを提供した名勝負だった。
飯田がどうやって緑谷と競り合ったのかって?
麗日が爆笑しているというのがすべての答えさ…………
……まぁ、飯田も非常に惜しかったのだが、緑谷の超パワーには僅かに及ばなかった。
いやぁ、一人くらいはちゃんと泳いで勝ち上がる人がいてよかった。
これでなんとか水泳大会の体裁は保てる……保ててるか?
一番泳がないといけない奴が泳いでいないというツッコミは受け付けねえぜ。
「──よし、これで決勝進出者が決まったな!」
飯田がいつも通りのカクカクジェスチャーをしながら、仕切り直すようにそう言った。
みんな、自然と飯田に注目する。
「爆豪くん、海藤くん、緑谷くんの3人で優勝を決める!
基本的なルールは予選と同じで、50mの一本勝負だ!」
「ハッ、ちょうどぶっ殺したかったヤツらが上がってきやがったなァ!」
「あ、直接攻撃は禁止だからね?」
「わかってるわぶっ殺すぞ!!!」
まぁ、とにもかくにも決勝戦。
プールの使用時間が怪しいので休憩は挟まず、そのままの流れで行われることになった。
第1レーンから順に爆豪、俺、緑谷。
爆豪と緑谷の2人を隣にするとレースどころじゃないからね…………
「それでは、第一回雄英高校1年A組水泳大会、50m自由形の決勝戦を始める!」
飯田の言葉と共に、俺たちはそれぞれのレーンの飛び込み台へと上がる。
今回はちゃんと泳ぐために部分的な竜化を発動しておく。
2秒を切れたりしないかな?頑張ろう。
「位置について!…………よーい…………!」
──笛の音が鼓膜を震わせた瞬間、水の中に飛び込んだ。
完全に潜り切る直前、何やらどよめきが聞こえたような気がした。
まぁ、気にせずに泳ぎ切る。2秒はたぶん切れたと思う。図ってないけど
「ふぅ…………気持ち良かっ…………あ」
水面に浮き上がり、みんなのいる方に顔を向けると、我らが担任相澤先生の姿があった。
目が赤く光り、髪の毛が逆立っている……先生の個性『抹消』が発動している証拠だ。
爆豪と緑谷はスタート地点で抹消されてそのまま止まっていたみたい。
「17時。プールの使用時間はたった今終わった。早く家に帰れ」
「先生、そんなご無体な!」
「せっかくいいところなのに!」
「ふたりがどれだけ食らいつくか見たかったのに!!」
「なんで俺が負ける前提なんだ!!ぶっ殺すぞ!!」
「だって、アレはねぇ」
「私もアレには勝てる気がしないわ…………」
「そんな化け物みたいに言われても…………」
「戻ってくるのも速すぎなんだよなぁ」
「──なんか言ったか?」
「「「なんでもありません!!!」」」
俺たちはソッコーで帰宅の準備をすることになった。
日の入りまではまだ一時間以上もある筈だ。
けれども、廊下の窓から見える空はすっかり茜色だ。
既に乾ききった髪の毛に手櫛を入れると塩素の匂いがふんわり漂ってきた。
(個性で脱水した…………女性陣の髪もやったので競争よりも疲れた)
「…………楽しかったなぁ」
水泳大会の決着がつかなかったのは残念だったけど、今日は本当に楽しかった。
雄英に入ってから随分と色々な事があって、少しきな臭い出来事があった。
それでも最近はものすごく普通に高校生をやれている感じがする。
まだ学生なんだから、なんて甘えたいわけじゃないけれど。
でも、一日でも多くこういう日があればいいのにな、と心の底から思った。
モチベーションの低下が著しいので不定期ですのでご了承ください。
あ、感想くれると嬉しです!!