Re. 海竜のヒーローアカデミア   作:willtexture

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二人の英雄 1

 人工移動都市"I・アイランド"

 ここでは個性技術博覧会と銘打たれたイベント"I・エキスポ"が行われる。

 

 世界中の科学者、技術者が集まり、日々様々な事柄を研究している

 I・アイランドだからこそ、その規模は大きく、発表される内容も最先端だ。

 

 勿論、一般市民も楽しめるように、技術を応用して作られたアトラクションもある。

 が、ヒーローや候補生、企業などは、公開される情報や試作された実物に興味を持つ。

 そういったあらゆる方面から注目を集めるイベントなのだ。

 そう、ヴィランも含めて………

 

 そんな、移動都市の名を冠する島の空港に2人の少年と1人の少女の姿があった。

 

「空港の時点で最新技術のオンパレードだな」

 

「一般開放されてからだと、混みすぎて見れないだろうね」

 

「…………俺がこんな場所に来てもよかったのか?」

 

 3人は、珍しい光景に素直に感嘆していた。

 一人はやや卑屈な思考回路を持ち合わせているようだが…………

 

 一般公開前のI・エキスポにこの3人がやって来た理由は、至ってシンプルだ。

 プロヒーローであるホークスとリューキュウの元に招待状が送られ、それを使ってきたのだ。

 普段は自由に動いている兄だが、ヴィラン連合のお陰様で来るのが難しくなり

 最近になって余裕が出てきた姉の方は、友達と行ってきなさいと快く送り出してくれた。

 姉の管轄地域に余裕が出てきたのはミッドナイト先生が出張に来たからだったりもする。

 尚、百合百合な同人誌の売り上げも上がった模様…………ご馳走様。

 

 ちなみに、同伴者の枠を巡ってはアミダくじ大会が開かれ、非常に白熱したと添えておく。

 尚、勝ち残ったのはB組とC組の生徒だった模様。

 プライド故にこちらをずっと見ていた物間くんは面白かったです。

 

「スーツケースはホテルの部屋まで運んで貰えるんだってさ」

 

「あ、一人一部屋で予約してあるから部屋番号覚えておいてね」

 

「至れり尽くせりだな。まあ、管理側にもメリットもあるだろうが」

 

「いや、俺のポケットマネーからだよ?」

 

「…………聞かなかったことにしていいか?」

 

「心操への請求はヒーロー科に上がることでチャラにしておくから」

 

「え、私は?」

 

「今度、姉さんが会いたいってさ」

 

「マジ?」

 

「マジ」

 

「えっと、日にちの指定とかある?」

 

「夏休み中ならいつでもだとよ。それと、相手が兄さんじゃ無くなったってだけでも御の字よ?」

 

「そうなのかな?なんにせよありがとう」

 

「いいってことよ」

 

「にしても長いな。やはり警備が厳しいのか?」

 

「まぁ、タルタロスと同じレベルの警備だからね~」

 

「島っていうのもあって検査とか時間かけられるしね」

 

「もしも、普通の空港ならお客さん待たせるから大変だ。さすがは最新鋭」

 

「ねぇ、そろそろ移動しない?」

 

「確かに、ここに留まり続けるのは勿体ないからな…………轟?」

 

 そろそろ移動しないかと拳藤が海藤に声を掛ける。

 それに応じてパンフレットから視線を上げた海藤の目に、見覚えのある紅白の頭が映った。

 

「轟、お前も来ていたのか」

 

「…………海藤。それに拳藤と、心操だったか?ああ、親父の代理でな。

 そっちは確か………体育祭ので招待されてたな」

 

「いや、それは爆豪に譲ったよ。俺は姉さんと兄さんから譲って貰った」

 

「私は海藤に誘われてね」

 

「俺も拳藤と同じだ…………ランキング入りするヒーローなら、そりゃ招待も来るか」

 

 どうやら轟と同じ飛行機に乗っていたようだ。

 到着まですれ違うことすらなかったとは奇妙な偶然もあったものだ。

 それとも、ランキング上位のヒーローへの招待状の時間は同じだったりするのだろうか?

 下手にオールマイトとエンデヴァーを同じ便に乗せると便燃えない?

 

「こちらの招待主への挨拶は夜のパーティーで、という話なんだか、轟は?」

 

「同じだ。代理で学生の俺が行くって知らせたら、昼間は見て回るといいっつってくれてな」

 

「それじゃあ、轟も一緒に回らないか?知り合いがいると心強い」

 

「俺も慣れてねえんだがな…………」

 

「俺と一緒は嫌か?」

 

「なんかお前、捨てられそうな犬みたいだな…………まぁ、いいか」

 

「というか、あの場に慣れているのは八百万くらいのものだろうな」

 

「何度か行ったことがあるっていうのもだいぶヤバいと思うんだけど…………」

 

「こいつらに関しては気にしたら負けだと思うぞ」

 

「君達も大概に酷くないか?」

 

「「気のせいだ」」

 

 

 

 ▼▼▼

 

 

 

 "ヴィランアタック"と名付けられたアトラクションを囲む観客席。

 フィールドとの境界にある手すりで、かぶりつく一団に近寄るの拳藤と心操。

 

「あれ?みんなも来てたんだ」

 

「わ、心操くん!?」

 

「久しぶりだな」

 

「どうして心操くんが?」

 

「あ、そういやあのアミダ大会の時、緑谷居なかったっけか。

 海藤が貰ってきた招待状の付き添い枠だよ。そこにいる切島と同じさ」

 

「拳藤さん。お久しぶりですね」

 

「うん、久しぶり」

 

「拳藤、その悠雷はどこ行ったの?」

 

「ああ、それなら──」

 

『おーっと、記録14秒!またまたトップが入れ替わりましたぁっ!』

 

 説明しようとした拳藤の言葉が遮られ、興奮したスタッフの声が響き渡る。

 何事かとそちらを向けば、皆が見慣れた紅白頭と氷結が観れる。

 

「轟くん!」

 

「何でてめえが居やがる、半分野郎!」

 

 氷山を作り出した轟に、驚く一同。

 そんな中で爆豪だけはすぐさま飛び出し、轟へと向かっていく。

 恐ろしいまでの速さ、私じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 ………思考が海藤みたいになってない?大丈夫かな………

 

「彼、とっても恐い顔ね」

 

「いえ、まだギリギリ放送できるレベルなので大丈夫かと。

 極稀に、お子様に見せられなくなりますので」

 

「ふふ、楽しそうね」

 

「……退屈とは、無縁ですわね」

 

「「確かに……」」

 

 八百万と親しげに話す女性は誰なのだろう?八百万と同じようにお嬢様?

 なんにせよ、紹介してもらうのは二人が合流してからの方がいいかな。

 それぞれが思い思いに過ごしていく中も事態が進行していく。

 

『あのう……次の挑戦者が居ますので……』

 

『ああっ!?知るか関係ねえ!俺が半分野郎の記録塗り替えんだ!』

 

 困惑するスタッフのマイクに、しっかりと爆豪の怒号が入っていた。

 流石に止めないと不味いのではないかと数名が動こうとするが、また聞きなれた声が聞こえた。

 

『………まぁ、いつものことだよな。構いませんので、始めてください』

 

『ええっ!?ま、まあ当人が言うなら……では、続いてのチャレンジャー、スタート!』

 

 怒鳴る爆豪も、残された氷も。

 ここでいちいち気になんかしていたらきりがないだろうと判断して個性を発動する。

 このアトラクションは、フィールド内の仮想ヴィランを全て破壊するタイムを競うもの。

 広範囲における瞬間火力という点でおいてA組に海藤を越える者はいない。

 演出もかねて、雷を纏いながら完全竜化状態へと移動する。

 

『サンダー・ボルト』

 

 USJで放った轟雷ブレスを凝縮して放たれた雷撃。

 観る人を魅了するほど幻想的で、喰らうものを滅ぼす雷は機械仕掛けのヴィランに到達。

 彼らの抵抗もむなしく呆気なく無力化してしまった。

 ………跡形もなく破壊したけど弁償とかないよね?

 

『は、早ーい!9秒!文句無しの新トップです!』

 

「それじゃあ、爆豪くんはこっちですよ~」

 

 爆豪の意識が完全に記録に向いている隙をついて、雷で作った鎖が爆豪に向かう。

 瞬間的に反応した爆豪は、すぐさま回避行動に移ろうとする。

 しかし、海藤の意を汲んだ切島が飛びかかることで失敗。

 背後から組み付かれる上で、仲良く感電することになってしまった。

 

 だが、ここで終わるような男ではないと、特にクラスメイトは知っている。

 

「緑谷と心操!拘束するの手伝ってくれ!」

 

「飯田、引っ張り上げる。手を貸してくれ」

 

 普段の訓練の成果を遺憾なく発揮し、迅速な対応を見せるの。

 だが、その相手が同じヒーロー志望のクラスメイト…………その姿はどこか残念なものだった。

 

 いつも通りに目を釣り上げてがなる爆豪の姿に、女子4名が溜め息を吐いてしまう。

 なんだかんだこの光景が日常に成り始めて…………成っている事に拳藤は軽い眩暈を覚えた。

 

 

 ▼▼▼

 

 

「ん?飯田からだ」

 

 八百万と会話していた金髪の女性、メリッサ・シールドとしばし言葉を交わした後

 緑谷たちとそのまま別れてエキスポ巡りを行っていた。

 

 一通り周り、休憩にと入ったカフェで、3人の持つスマートフォンが一斉に震える。

 その光景に心操が羨ましそうな視線を向けているのが印象的だった。

 連絡先を交換してもいいか聞いておこう。

 

「レセプションパーティ、一緒に行かないかという誘いか。

 せっかくだし、断る理由も無いな。返信してしまうが良いか?」

 

「初めてだから不安だったけど、海藤も飯田も慣れてるっぽいし助かる」

 

「行ったことのない身としてはむしろ助かる」

 

「俺も問題ねえ…………あとは少なくとも、八百万は慣れてそうだな」

 

「轟も行ったことありそうなのにまったく未経験で驚いたよ」

 

「気負いすぎだぞ?別に敬語さえ使っていれば、普段通りで良かろうに」

 

 拳藤と心操としては、形式張ったパーティーなど初めて。

 右も左もわからないような状態だった。

 その為、経験のありそうな2人に聞けば良いと考えていたのだが。

 

 フタを開けてみれば、轟にパーティーへの出席経験は無し。

「まぁ、なるようになる」スタンスの轟はまだ良かった。

 身近な人が凄い人なせいで感覚がマヒしている節のある海藤…………

 

 雄英の看板を背負っての出席にプレッシャーを感じている二人からすれば…………

「ダメだコイツら……」と思わずにはいられなかった。

 落胆されている轟と海藤からすれば堪ったものではないとも思うが

 

「しかし、緑谷の人間関係は一体どうなっているんだ?

 かのデヴィット・シールドのご息女に案内されるとは、オールマイトとでも来てんのかよ」

 

「突拍子がねえのが、緑谷だからな」

 

「授業中に空気イスやっちゃうようなね。

 でも、2人ともメリッサさんに随分質問攻めされてたね」

 

「どうやら緑谷のように個性の考察に我を忘れるタイプみたいだな。

 まぁ、女性が緑谷の持病を発症していなくてよかったよ」

 

「あれはホラーだからね」

 

「俺の半冷半燃はまだしも、海藤のは解明し甲斐があるからな」

 

「姉さんの個性と同じかと思えば、よく分からないことも多いからな」

 

「この前の試験でまた成長したんでしょう?」

 

「俺も上手く説明できないんだよ。あの時は本能のまま動いてたからなぁ…………」

 

「…………個性が強くても謎が多いのも考え物だな」

 

「ちなみにだけど、俺の血を武器に塗るとものによっては切れ味が上がる」

 

「どういう理論なの…………」

 

「俺からすりゃあ、お前らなんかが羨ましくもあるけどな。やれることが増える」

 

「隣の芝生は青く見えるものだからね。シンプルに強い轟の個性がとか羨む人も多いでしょ?」

 

「自分に出来ないことが出来るヤツ、ってなるとね。そりゃあ多いだろ。

 俺も昔はそう考えてた頃もあったしな」

 

「仲いいな」

 

「轟も最近は緑谷や飯田とよく話しているだろう?

 苦難を共に乗り越えると、連帯感が生まれるものだ」

 

「…………苦難?」

 

「俺は騎馬戦を一緒に戦っただけだけど」

 

「私はなにかあったっけ?写真撮ったくらい?」

 

「少しは乗ってくれても良いんだぞ?」

 

 

 ▼▼▼

 

 

 18時30分。飯田から告げられた集合時間に、雄英高校1年A組の生徒たちは──

 

「何をしているんだ緑谷くん! 集合時間はとっくに過ぎているぞ!」

 

 ──半分ほどしか集まっていなかった。

 オーソドックスな紺色のスーツを、性格通りにキッチリと着こなす飯田。

 彼は、電話越しに緑谷を呼び立てていた。

 

「とっくにって言っても今31分だけどね」

 

「何を言うんだ拳藤くん! 5分前行動は基本だろう!」

 

「まあ、そうなんだけどさ。むしろ問題は……」

 

「あの2人なんだよな…………」

 

「ふぬぐぐぐ」

 

「うぬぬぬぬ」

 

 何やら壮絶な表情を浮かべる、峰田と上鳴が居た。

 …………まぁ、考えていることは大体わかるんだけど

 

「落ち着けよ2人とも。爆豪と違うベクトルで放送出来ない顔になりつつあるぞ」

 

「うっせー!何で、何だよぉ……!」

 

 震える峰田の指先が向けられた先には。

 

「雄英体育祭、カッコ良かったよ轟くん!」

 

「実物もハンサム!」

 

「……どうも、ありがとうございます……?」

 

 オフホワイトのスーツ姿で、いまひとつ状況がわかっていない表情の轟がいた。

 峰田が血涙を流さんばかりなのは単純。

 轟が数多くの女性陣、それもドレスアップした人たちに囲まれているからである。

 

「イケメンならここにも居ますよ〜……」

 

「上鳴は"残念なイケメン"だからね」

 

「ドチクショウ!」

 

 涙を流して床を叩いている上鳴と、今にも呪いのひとつも放ちそうな峰田。

 当然ながら誰も近付いては来ない…………むしろ、遠巻きにしている。

 

 かく言う海藤も、先程までパーティーの参加者に声をかけられてはいた。

 声を掛けてくれた方の中には轟に群がっている人もいたが、隣の拳藤を見て去っていった。

 

「海藤は混ざらないでもいいの?」

 

「いや、平気だ。知らない人といるよりも親しい人といる方が落ち着くし」

 

「…………というか、なんで悠雷には来ないんだ?来ても可笑しくないだろ?」

 

「そりゃあ、拳藤が隣にいるからな。いなかったら彼女らの相手をしてたと思うぞ」

 

「ああ、恋人だと勘違いしたっていう事?」

 

「そゆこと」

 

「ふ~ん?」

 

「移動中にお願いしたじゃん?」

 

「いや、ね?」

 

「ジト目止めてくれない?」

 

「二人ともいちゃつくなら他所でやってくれない?」

 

「「いちゃついてないが?」」

 

「やっぱ、雄英の注目度って凄いんだなあ」

 

「だからこその時間厳守だというのに!」

 

「緑谷、何があったんだ?」

 

「いや、理由までは確認していない。彼も慌てていたようだしな。急ぐとは言っていたが」

 

「女子は!?」

 

「申し訳ないが遅れてしまう、という連絡があった。先に会場へと言っていたが……」

 

「折角だし待とう。招待してくれたトコへの挨拶は済ませてるし、置いてけぼりってのもね」

 

「うむ。そうしようか」

 

 そうこうしている内に、パーティー開始の時間が迫る。

 会場へと向かう女性たちにそのまま連れられそうな轟を海藤が救出し、4人に合流した。

 いや、簡単に連れ去らされすぎだろ…………エンデヴァーさんも対処法教えてあげて?

 

「……すまねえ、海藤。助かった」

 

「こういうのは慣れだ、轟。もっと強引な奴もいるから気を付けた方がいい」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、以前のパーティーの時はお持ち帰りされて、部屋に監禁されそうになった」

 

「そこまでするものなのか?」

 

「女は怖いぞ?」

 

「そうなのか」

 

 部屋にお持ち帰りという言葉に反応した約2名の怨嗟の視線をスルーして、笑う。

 あの時は本当に恐怖を感じた…………その後の姉さんの怒り様の方が怖かった。

 もうすでに終わった事であるけれども2人が女性関係に厳しいのはこれが原因か?

 中学時代の一件もあるしね…………女難の崇でも出てたりする?

 

「2人とも大人気だな」

 

「心操は髪を整えるだけでもだいぶ変わると思うけどな」

 

「そうか?」

 

「まぁ、なんにせよ人気があるのはいいことだよね」

 

「プロになってガッカリされない様に気を付けないとな」

 

「……プロはすげえな」

 

「女の子に囲まれるんなら良いじゃねーか!」

 

「そうだそうだ!」

 

「お前さんらはいつか美人局とか引っかかりそうだな」

 

「美女に騙されんなら本望だ!」

 

「筋金入りかよ」

 

 エントランスに気心の知れた者たちだけとなった事で、緊張が解けて笑いが起きる。

 何回行ったとしても緊張しないという事はないからな…………それにしても遅いな。

 

「ううむ、しかし皆遅いな」

 

「飯田。女性の身支度に時間がかかるのは世の常だ。

 緑谷は…………メリッサさんと何かあったかオールマイトでも見かけたんだろ」

 

「何だとぅ!」

 

「ひと夏のアバンチュール的なアレか!?」

 

「オールマイトの下りを納得してしまった自分がいる…………」

 

「適当に言ってみただけだ。事実は小説よりも奇なりっていうだろ?」

 

「適当すぎんだろ。緑谷にそういうイメージは…………否定しきれない」

 

「…………もっと信頼してやれよ」

 

「海藤が言い出したんでしょ?」

 

「はて?」

 

「誤魔化し方へたくそか」

 

「ゴメン!遅くなって……」

 

「緑谷ぁっ!てめえコノヤロー!」

 

「うわあっ!?何、峰田くん怖いよ!」

 

 慌てた様子の緑谷に、峰田が真っ先に詰め寄る。目をかっ開いた鬼気迫る表情は確かに怖い。

 女性もそうだが、男の執念というのも怖いものだからな…………

 

「……何故、峰田は信じているんだ」

 

「峰田だからだろ」

 

「そういうところを直せば少しは良くなると思うんだけど…………」

 

「ゴメンね、遅くなってしもた!」

 

 次いでやって来たのは、麗日だ。

 薄い桜色の華やかに広がるスカートが、彼女によく似合っていた。

 あの生地は見る限りかなり高価なもの…………ヤオモモから借りたのか?

 その美しさは執念で詰め寄っていた峰田がそれを忘れるほどだ。

 

「「おお~!!」」

 

「こういうの、着たことないから何や、照れるなあ」

 

「よ、よよよ、よくに、ににに、似合ってるよ、麗日さん!」

 

「えへへ。デクくんもカッコいいね!」

 

 薄っすらと頬を染めながらも笑う麗日に、純情少年である緑谷はもはや挙動不審のレベル。

 相手がその程度で動じたりはしない麗日だからこそ、会話になっているような状態だ。

 この状態だけ切り取れば峰田といい勝負をすると思う。

 

 そうしている間にも、更にもうひとつ、エレベーターの扉が開いた。

 

「申し訳ありません、遅くなってしまいました」

 

「「おおお~!!」」

 

 ライトグリーンのドレスに身を包む八百万と、照れてしまいその陰に隠れる響香であった。

 変態…………もとい、紳士の反応が大きいのはやはりあれか?胸なのか?

 響香の健康的な太もももいいと思…………殴(((((

 

「ウチこういうのは、その」

 

「馬子にも衣装ってやつだな!」

 

「女の暗殺者みてえ」

 

 不用意な発言をした峰田と上鳴…………それを許す響香ではない。

 あっけなくイヤホンジャックに撃沈させられるのは、既にお約束と化しつつある。

 

「何でだよ、俺褒めたじゃんか!」

 

「褒めてない」

 

「馬子にも衣装というのはその言葉の通りに

 もとは"みすぼらしい人が身なりを整えればそれなりに見える"という意味から来ている。

 褒めるというよりは貶しているのに近いからな?」

 

「……そーなの?」

 

「ああ、コイツそういや普段からアホだったわ……」

 

「素材から美少女だし、その言葉は当てはまらない」

 

「そーだよな。キレイ系っつーか、スタイリッシュっつーか」

 

「~っ!うっさい!」

 

「「ぎゃあああっ!」」

 

 上鳴と海藤がイヤホンジャックに沈んだ後。

 再度、エレベーターの到着を知らせる電子音が鳴る。

 

「みんな! どうしたの、もうパーティー始まってるわよ?」

 

「「お、おおお~!!!」」

 

 青を基調とした、気品と美しさを引き立たせるドレスで現れたメリッサ。

 その姿を見て上鳴と峰田から邪な歓声が上がった。

 

「もう俺、どうにかなっちゃいそう」

 

「……どうにでもなれ」

 

「そら、己のことの前にすべきことがあるだろう」

 

「そ、そうだった!オイ峰田!」

 

 2人並んでメリッサの前に立つと、同時に美しく90度に腰を曲げる。

 

「「ご招待いただき、ありがとうございます!」」

 

「え、ええ?もしかして、そのために待っていたの?」

 

「ウス!招待状くれたメリッサさん置いて行くとか出来ねッス!」

 

「パパ宛てに来たチケットの余りだから、気にしなくても良いのに……フフ、真面目ね」

 

 微笑むメリッサに、2人がときめいたりしつつ。

 さあ会場へ向かおうか、というところで、異変が起きる。

 

『I・アイランド管理システムよりお知らせします。

 警備システムにより、I・エキスポエリアに、爆発物が仕掛けられたとの情報を入手しました。

 I・アイランドは、現時刻をもって厳重警戒モードへと移行します』

 

 …………嫌な予感がするな。

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