Re. 海竜のヒーローアカデミア 作:willtexture
「携帯は圏外だ。情報関係は全て遮断されてる」
「エレベーターも反応無いよ」
突然の緊急事態を告げる放送に、それぞれが即座に対応を試みるが芳しくはない。
タルタロスと同じ警備と聞いていたが、あそこもそのうち破られない?
オールマイトと同格のヴィランが現れでもしたらあっさりと破られる気が…………
物理的な破壊だけなら今のオレでも出来なくはないだろうしね。
あれ?防衛設備弱すぎ?帰ったら兄さんに警備システム見直すように言っておこう。
「さて、どーする?」
「ここに留まるか、それとも行動するか…………」
「レセプション会場へ行こう、みんな。実は、オールマイトが来てるんだ」
動くべきか動かないべきか…………皆が悩む中、齎された緑谷の言葉。
オールマイトが会場にいるという事実に、その場にいた皆は安堵した。
しかし、移動した彼らが見た光景は、心胆を寒からしめるに足るもの。
銃を構える覆面の男たちに、拘束されたヒーローたち。そして、怯えた様子の人々。
あのオールマイトすらも抵抗することが出来ないままに拘束されてしまった。
USJでの活躍を目の前で見た彼らの落胆はとても大きなものだった。
最低でもヴィランの数は三十を越える組織的犯行…………人質もいるために迂闊に動けない。
即座に偵察に動いた緑谷と耳郎が暗い表情で帰還。
その後、非常階段の踊り場へと移動した段階で、全員が嫌な予想を脳裏に描いていた。
オールマイトを含めたプロヒーローは動くことは出来ない。
…………こうなると勝ち筋は酷く薄いものとなるな…………どう動くか
「……オールマイトからの伝言は…………
ヴィランが警備システムを占拠し、I・アイランドに居る全員を人質にしている、ってことだったよ。
そして、"危険すぎる、逃げなさい"とも言ってた」
「……俺は、雄英教師であるオールマイトの言葉に従い、ここを脱出することを提案する」
「私も、飯田さんと同じ意見ですわ。我々はまだ、資格を持たない学生です」
A組の委員長、副委員長は、共に離脱を提案。
この意見に上鳴も「外のプロヒーローに状況を伝えるべきじゃねーか?」と賛成する。
「俺はその意見に反対だ。このタワーの防衛設備は、外部からの侵入を阻むもの。
それはすなわち、出る事すらも儘ならないという事だ。違いますか?」
「……海藤くんの言う通りよ。ここは、ヴィラン収容施設のタルタロスと同じ防災設計で
作られているから……脱出するのも困難だと思うわ」
「ウェッ!?それじゃ、救けが来るまで大人しく待つしかねーか……」
「上鳴、それでいいわけ? 救けに行こうとか思わないの?」
「お、おいおい、オールマイトまでヴィランに捕まってんだぞ……!
オイラたちだけで救けに行くなんて、無理すぎだっての!」
峰田の言葉に、誰もが状況の悪さを認識するが故に表情を暗くしてしまう。
あの会場にいるヴィランに挑んだ場合、制圧は出来るだろう。
だが、警備システムが抑えられている以上、却って状況を悪化させてしまう事になる。
「……俺らはヒーローを目指してる」
「ですから! 私たちはまだヒーロー活動は──」
「だからって、何もしねえで良いのか……?」
その呟きは、ヒーローを志す皆の心に突き刺さる。
苦境に立つ人々を救けることこそがその本懐。
黙って見過ごすような真似に、心苦しく思わないはずもない。
「……救けたい……!」
緑谷の言葉は、誰もが心の底で願うことだった。しかし、現実問題として戦えない。
資格の無い現状、許可なく個性を使用することはヴィランと何ら変わりない。
非常時だからといって無暗にルールを破る行為はできない。
「緑谷オメー、USJで懲りてねーのかよ!ヴィランと戦うなんて無茶だぜ!」
「違うんだ、峰田くん。考えてるんだ。ヴィランと戦わずに、皆を救ける方法を」
「緑谷……酷なこと言うけど、そんな都合の良い方法なんて…………」
「心操くんの言う通りかもしれない。でも、ヒーローが"綺麗事"を諦めちゃいけないと思うんだ」
どこまでも真っ直ぐな緑谷の言葉に、誰もが息を呑む。
確かに、絵空事かもしれない。理想ばかりを追い求める甘い考えかもしれない。
それでも、彼の言葉には確かに、ヒーローを志す皆の願いがあった。
「……あるかも知れない。
警備システムの制御ルームは、このタワーの最上階にあるわ。
ヴィランがシステムを乗っ取ったのなら、セキュリティは解除されているはず。
私たちでも、操作することは可能だと思うわ」
「ですが、ヴィランもそこは警戒しているはず。当然、警備も厳重では?」
「…………だが、連中の警備を掻い潜ることさえができれば──」
「プロヒーローが、オールマイトが動けるようになる!状況は一気に好転する!」
八百万の懸念も尤もではあるのだが、海藤やその言葉を継いだ緑谷の言うように、
その懸念点さえクリアすれば問題の解決までの道筋が見える。
僅かに見えた勝ち筋…………一発逆転のジョーカー。
「やろう、デクくん!このまま何もしないなんて、ヒーローになるならない以前の問題だと思う!」
「麗日さん……!うん、やろう!人として当たり前のことを、出来ることを!」
誰かを救けるために、自分たちに出来ることがある。
そうなれば、止まることなどない。それが、彼らだ。
「緑谷、麗日。話は聞かせてもらった。私も同行しよう」
「俺も行くぞ、緑谷」
「ウチも。このままってのはね」
「私もいっしょに行くよ」
「俺も行く。力になれるかはわからないけど」
「海藤くん、轟くんに心操くんも!」
「響香ちゃんに拳藤さんも!」
「……極力、戦闘を避ける。その原則を遵守すると言うのなら、俺も行こう」
「ええ、私も。我々の安全を最優先に、それが、今の私たちにできる最善ですわ」
「勝ち目があるんなら、やるっきゃねえよな!」
「飯田くん! 八百万さん!」
「上鳴くん!」
「あー! もう! わかったよ! 行けばいいんだろ、行けば!」
「峰田くん!」
約1名、涙を溢れさせているが。それでも、ここで退くという選択は採らない。
候補生ながらも、その心根はプロヒーローと比べても遜色ない。
そのことが嬉しくて、つい、メリッサの口元に笑みが浮かぶ。
「メリッサさんは、ここで待っていてください」
「いいえ、デクくん。私も行くわ。
……この中に、制御システムの設定変更が出来る人は居る?」
「あっ……え、えーと、こういう時は、八百万さん?」
「無茶を言わないでください、緑谷さん。
流石にI・アイランドの警備システムなど、さっぱりです。
海藤さんならどうにかできるのでは?」
「出来るかもしれないが、確約は出来ない。ショートさせて直ればいいんだが…………
まぁ、失敗する可能性も考えるとメリッサさんを護衛しながら行く方がいいだろう。
こういう時こそ、「合理的に行こう」じゃないか」
「…………相澤先生みたい」
「お前の声帯どうなってるんだ…………」
「気が引き締まるだろう?」
「そうだね」
「これで悠雷が出来るって言ってたら少し引いてたかも」
「電撃でぶっ壊して直るのなら確約できるな」
「昔のテレビかよ」
海藤と耳郎、拳藤の
相澤先生に怒られた時の光景を思い出しているのか、皆の表情が幾分か軽くなる。
緊張しながら行おうとしても失敗することが多い。
気負い過ぎないことも時には大切だと思う。
「……私は、アカデミーの学生よ。システムの変更も大丈夫」
「メリッサさん……──はいっ!よろしくお願いします!」
こうして、I・アイランド限定チームが結成された。
▼▼▼
I・アイランドが誇る、知識と技術の結晶。
それが、レセプションパーティーの会場でもあり、今夜起きる激動の舞台であった。
「俺たちの究極的な目標は、メリッサさんを最上階の制御ルームまで護衛することだ。
念の為に言わせてもらうが、誰が脱落しようとだ」
非常階段を登りながら、突然として海藤が告げた言葉に誰もが驚いてしまう。
普段の訓練でも一人で戦うというよりも連携を意識して動いている本人の発言だから猶更だ。
「仲間を見捨てろと言うのか、海藤くん!」
「いいや、違う。飽くまでも今回の勝利条件は警備システムの解除。
今回の場合、以前の時のような増援は期待できない。
最悪の場合には、ヴィランの足止めや囮として行動することも視野に入れる必要がある。
相手は躊躇なくこちらを殺しに来る。躊躇う事は命取りだ」
「…………命取り」
「ああ、躊躇いから取り返しの付かない失敗をしたヒーローの話を幾度も聞かされた。
…………人は死ぬときはどんな人だろうとも呆気ない」
「…………悠雷」
「すまない。話を戻そう…………いかに早く目的を達成できるか。
それによってヴィランの目的を阻止できる可能性も皆の安全性も高くなる。
駆け上がりながらすべてを制圧していくのだととてもじゃないが時間が足りない」
「つまり、タイムアタック…………」
「足止めを繰り返しながら最終的に勝てばいいんだもんね」
「最短距離で、無駄な行動を削ぎ落す」
「なるほどな。想定しておけば、実際にそうなったとしても慌てずに済むってことか」
「メリッサさんの護衛としては、小回りの効く緑谷が最有力。
"上を目指す"という状況だからこそ麗日と、索敵能力の高い耳郎の次いで優先度は高い。
それ以外は全員、いざという時には足止めを行う」
徹底してドライな物言いではある。
だが、その言葉には納得できてしまう部分も多く反論は起きなかった。
何より、両親を失っている海藤がいうと説得力が違う。
「まぁ、こちらの勝利条件には"全員無事で"という条件も含まれているからな?
なにも、命を削ってまで足止めをする必要はない。必ず生き残るぞ」
「当然っしょ!プロにもなってねーのにさ!」
「上鳴と轟は周囲を巻き込む可能性が高いから、別働隊候補だぞ?」
「マジでか!?……まー、でもそうだよなー」
「安心しろ、その場合は骨は拾ってやる」
「安心要素何処!?」
「私と海藤さんも、でしょうか」
「だが、戦力の分散などはなるべく避けたい。あくまで状況次第だな」
それと、生き残ったら俺の奢りで焼肉でも行くか?」
「叙々苑だからな!?言質取ったぞ!?」
「噓はつかんさ」
「それって死亡フラグじゃ…………」
「知らないのか?フラグは破るためにあるんだよ」
いくつもの事態を想定し、備える。たった数ヶ月…………されど数か月。
雄英高校で鍛えられた彼らは、元より持っていた高いポテンシャルをしっかりと伸ばしていた。
皮肉にも、USJでの経験がさらにその実力を高めているとはな…………
「はひ、き、きつい……」
「峰田はもうちょっと体力つけた方がいいんじゃないか?」
「うるへー…………ヒーロー科でない心操にまで心配されるとは…………
ヒーロー科として情けねえ…………」
「話す余裕があるなら大丈夫そうだな」
「ハァ、ハァ……凄いわね、皆。余裕ある」
「メリッサさん、大丈夫ですか? ウチの個性使いましょうか?」
この中で唯一、明確に鍛えていないメリッサが、やはりと言うか少し遅れてしまう。
研究生活がメインでありながら、数十階も階段で駆け登っておいて話せる辺り、驚異的だが。
というか心操は平気なんだな…………峰田よりもたいりょくあったんだな。
そのメリッサのすぐ前を行く麗日が息のあがった彼女を気遣って声をかけた。
「今は、温存しておいて!これからその力が必要になると思うから!」
疲れを感じさせない笑顔で、力の籠もった声と共に、
メリッサはヒールサンダルを脱ぎ捨てて裸足のまま駆け出していく。
そんなことをしている内、峰田がドアを開けようとしてセキュリティが発動する。
これで間違いなくヴィランに見つかったな…………
最終的な警備の人数を減らす事が出来たと考えておこう。
「こんのバカ峰田。ドア開けりゃセキュリティに引っかかるっつの!」
「響香、あまり言ってやるな。どっちにしろバレる。
葉隠じゃぁあるまいし、見つからずに済む方法があるという保障も無い。
逆に考えるんだ、警備の手を割くことが出来たと」
「ポジティブかよ」
「流石の余裕だね」
階段の先はシャッターが。そして、開かれた扉と倒れて痙攣する峰田。
憤慨した様子の耳郎と、それを見て苦笑いする拳藤と心操。
普段を知るからこそ、あっさりと状況は伝わった。
「今の状況で出来ることをしよう。この場に留まるのは危険だ、行くぞ!」
思い切りの良い飯田に先導され、全員が駆け出していく。
タワー80階、既に一般人が立ち入る領域ではない。
無機質な廊下を、ひたすらに駆けていく。
「右に二つと左に3つ」
「了解」
時折見かける監視カメラは、素早く耳郎が見つけてイヤホンジャックで方向を示す。
そこを雷撃で遠距離から壊していく。これくらいの遠距離攻撃なら足を止める必要がない。
電力量にも余裕があるから、こちらの姿を簡単に晒したくはない。
「メリッサさん!他に上へ行く道は!?」
「タワーの反対側に、同じ構造の階段があったはず!」
「同じってことは、そっちも塞がれてるかもしんねえぞ!?どーする!?」
「そん時ゃ、しょうがねえ。壊す」
「大胆。だが、同感だ」
「簡単に壊せる厚さならいいんだけど…………」
「最悪の場合、外壁を上るかもな」
「…………考えたくもない」
ふと、何かを感じ取った轟が足を止める。その原因は、すぐに皆が気付くことになる。
「隔壁が!」
「後ろも!どーする!?」
廊下の各所で、重厚な金属扉が道を塞いでいく。
「──轟くん!」
「ああ!」
目敏く、内部へと通じる扉を見つけた飯田が駆け出すと同時。
轟が氷を作り出して目の前の隔壁が閉じぬよう間に噛ませる。
個性を発動させた飯田が、残る隙間から飛び込む。
加速して発生させた運動エネルギーを乗せた蹴りを放てば、轟音と同時に扉が破壊される。
強度としてはそこまで不安視するほどでもないか…………
「皆!この中を突っ切ろう!」
「案外脆いな…………障壁は視界を遮られる程度か」
「これくらいなら私の個性でも壊せそうだね」
「ああ、いざという時は消耗の少ない拳藤に頼もう」
下からも隔壁がせり上がる都合上、飛び越えられない者を竜化して運ぶ。
体格の大きさから小回りは効かないが、運搬は得意だ。
「ここって……」
「植物プラントよ。個性の影響を受けた植物の研究をしてるの」
「──止まって!」
異変にいち早く気付き、声を上げたのはやはりというか耳郎だ。
本当にこういう時はその索敵能力が楽にたつ。
「あれ、エレベーターだよね。昇って来てる!」
「隠れてやり過ごそう!」
緑谷の提案に皆が同意し、すぐ近くの茂みに隠れる。
遂に、ヴィランと遭遇してしまう。
茂みの中で身を潜め、息を殺して機を伺う彼らに、信じがたい声が聞こえた。
「あぁん? 今何つった?」
ヴィランの「クソガキ」にしっかりと反応した爆豪の声。
不遜極まる言い方も相まって、馴染みある者たちが声の主に気付かないはずもない。
茂みの中から事態の推移を見守っていた者たちの目に、背の高い方のヴィランが腕を動かすのが映る。
「まずい──」
「切島っ!」
咄嗟に轟が作り出した氷がヴィラン2人を丸ごと閉じ込める。
だが、気休めにしかならないだろうと判断して雷撃で追撃を放つ。
「この個性はっ!?」
「轟!?海藤も!」
名前を呼ばれた2人は、アイコンタクトですぐさま合図を送り、動き出す。
「固まれ!──轟、ここは頼む!」
「ああ!お前らは先に行け!こっち片付けたらすぐに追う!」
「俺も残る。対人なら役に立てるからな」
「心操くん頼んだ!」
ここに残るのは轟と心操。
轟の実力はA組でもトップクラスであり、心操も対人の初見殺しが可能だ。
戦力を割きすぎないという点でもこの2人が最適だろう。
氷の柱が作り出され、メリッサを中心に周囲を固めていた者たちが、通路へと送り出されていく。
「轟さん!」
「連中の対応が早え! 頼んだ!」
「──はいっ!」
既にヴィランが居た方向を睨む轟と心操に背を向け、皆が走りだす。
背後から氷が砕ける音が聞こえるが、彼らなら大丈夫のはずだ。
「爆豪と切島が居たのは嬉しい誤算だ」
「二人の戦闘能力は折り紙付きだもんね」
「欲を言えば、切島くんには護衛に回ってもらいたかったけど」
「いかん!コチラも塞がれているぞ!」
機動力で群を抜く飯田が廊下に飛び出して見た光景は、隔壁によって塞がれたもの。
これでは、進むことができない。
まぁ、パワー不足であればの話だが…………拳藤がいるから不安はない。
「マジかよ!ここまでか!?」
「……いっそのこと戻らない?ヴィラン倒して、あのエレベーター使うとか」
「落ち着け、上鳴、響香。かかりきりになれば、増援を呼ばれる可能性がある。
エレベーターに乗った場合は相手の懐に飛び込んでいくようなものだ。それは避けよう」
「けど!」
「という訳で任せても?」
「任された!」
そういうが否や、飛び出した拳藤の放ったラッシュが障壁を破壊する。
これで、一先ずは道を作ることが出来た。
「……っ!メリッサさん、あれ、扉みたいなのがありませんか!?」
拳藤が障壁を破壊したのとほぼ同時に緑谷が見つけたのは、はるか上方。
数階分ぶち抜きで作られた植物プラントの天井の隅にある、小さなものだ。
「メンテナンス用のハッチだわ。梯子があったはずだけど、上からでないと開かないはずよ」
「雷撃を飛ばしても良いが、それだと壊すのに時間が掛かるな…………爆弾でも作って破るか?」
「……いえ、梯子が壊れては意味がありません。それに、別のルートがありますわ」
ドレスの胸元から、創造した道具を取り出した八百万が廊下側の天井へと投げる。
創り出された小型の爆弾は、小さな爆炎と共に、ある一点に穴を開けた。
「通風口!そこから外に出るのか!」
「……そうか、上の階の通風口をこじ開ければ!」
「でも、誰が行くんだ?」
「体格的に峰田くん?」
「オ、オイラには無理だぞ!?」
「いや、俺が行こう」
「…………あの隙間に入れるの?」
「大丈夫だ。問題ない」
如何にもフラグにしか聞こえなさそうなセリフを言い放ち、竜化する。
もっとも今回初めて皆に披露する猫くらいのサイズだが
「え、可愛くね?」
「なんか羽毛みたいなのも生えてない?」
「確か、恐竜の幼体にも羽毛が生えていたとか」
「撫でても良いかな?」
『悪いが、愛でるのは後だ。拳藤、頼む』
「わかった」
「間違えて天井にぶつけんでくれよ」
「わかってる、よっ!」
物間を止めるために投擲技術も鍛えられた拳藤によって放り上げられ、軽々と天井まで到達する。
穴の中に頭を突っ込み、両前足を引っ掛けて蛇のようにするりと入る。
爪を突き立てることが出来なければ堕ち掛けて無様を晒すことになっていたな。
換気扇を突き進み、外壁へたどり着いて人型に戻る。
街の方を見渡してみると、警備ロボが巡回している。
本当にこの島全体が人質に取られてしまっていたのか…………早く決着を付けないと