原神ふれんず!   作:コトバノ

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 前回のあらすじ──ドンナちゃんが幸せ気絶した

 今回のあらすじ──原作のおさらい、なので短いです


第14話 星拾いの崖 『その声は、風魔龍には届かない』

 

 

 

 

 

 モンドの東に位置する、険しく切り立った大地──星拾いの崖。

 

 その地に集う、少数の人影たち。

 

 「──よし、揃ったな」

 

 旅人である蛍に、お付きのパイモン。

 

 西風騎士団の代理団長、ジン。

 

 アカツキワイナリーのオーナー、ディルック。

 

 吟遊詩人にして、何故か風魔龍トワリンと親交を持っているという不思議な人物、ウェンティ。

 

 風魔龍の真実を知る全員が集まったことを確認して、ディルックが言う。

 

 それに呼応するように、張り詰める空気。

 

 いよいよ風魔龍と、対面ないし対話をすることになるのだ。それも向こうが正気ではない状態で、だ。場合によっては、戦闘になる可能性すらある。

 故に、多少なりとも固くなってしまうのも仕方のないことだろう。

 

 だが──。

 

 「ここ、景色が綺麗だなぁ……!」

 

 そんな雰囲気などなんのその。辺りをキョロキョロ見渡しながら、うわぁぁとパイモンが感嘆の声を漏らす。

 

 はたして、そのパイモンの暢気(のんき)な様子に、張り詰めていた空気もふっと弛んで。

 

 「──ふふっ。運命の再会というテーマに相応しい場所でしょ?」

 

 ウェンティが、おどけてパイモンの感想にそう応え、かと思えば今度は皆の方を向き直り、呼び掛ける。

 

 「じゃあそろそろ準備を始めるよ?」

 「ああ。どんな結果が待ち受けていようと、少なくとも転機は見えてきた」

 

 それにジンがそう返し、次いで、自身の心情を吐き出す。

 

 「ここ最近、モンドは様々な問題を背負いすぎた……」

 「だが、まさか問題を解決してくれるのが旅人と詩人になるとはな。……ああ、騎士団も少しは役に立ったか」

 

 そのジンに続いたディルックが、肩を竦めて騎士団への皮肉を溢す。

 

 「はいはい、みんな少し離れて──」

 

 そんな中、ウェンティはみんなに注意喚起をすると。

 

 「──この世で最も優れた吟遊詩人が琴を爪弾くよ」

 

 そう告げた。

 

▼▼▼

 

 一行のまとまりから歩み出たウェンティは、そのまま崖の先端へと赴き。

 どこか物憂げな表情で空を見据えながら、しなやかな指を『天空のライアー』の弦にかける。

 

 やがて、流れ出す旋律。

 

 美しい響きのそれに、思わず一行も聞き入ってしまっていると、暫くして。

 

 どこからか、ゴゴゴゴゴゴッ……という地響きが聞こえ始め、そして──。

 

 崖の向こうより、強風と共に巨大な龍が姿を現す。

 

 翡翠の鱗に彩られた胴体に、6枚の大きな翼。その翼の後ろには、鳥のような羽毛の巨大な尾があり、頭部にはヤギのような2本の角がある。空よりこちらを睥睨する目は、青い炎のよう。

 

 ──風魔龍トワリンだ。

 

 「──君か……。今さら……話すことはない」

 「そうかい……?ボクの見間違いだったかな……君の目は、この曲を懐かしんでいるように見えるよ」

 「……フン……」

 

 ウェンティと、その姿を見留めたトワリンによる会話。それはまるで、古くからの知り合いが語らっているようで……。

 

 「本当に、話が……?」

 

 その光景に思わず一行からも驚きの声が漏れる。

 

 だがこれは、決してマズい状況ではない。むしろ好機といっていい状況だろう。おそらくこのままいけば、穏便な話し合いが、そして和解さえも──。

 

 そんな考えが、皆の頭をよぎったときだった。

 

 天より来たりた閃光によって、ウェンティの手から『天空のライアー』が弾き飛ばされ、地を転がる。

 

 「おい、吟遊野郎ッ!?」

 

 パイモンが心配の声を上げ、一行も慌ててウェンティに駆け寄る中。

 

 「──そいつに騙されるな、憐れな龍よ……そいつはそなたを捨てた……」

 

 ノイズのかかったような、酷く耳障りな声が、同じく天より降ってきて。

 

 見上げれば、空飛ぶトワリンの頭の脇。そこに、奇妙な生物が浮かんでいた。

 

 顔全体を覆う仮面に、角のような耳。ファーと豪奢なローブを纏っており、手には背丈ほどの長さの杖が握られていた。

 

 その生物──アビスの魔術師の登場に、一行が身構える。

 

 アビスの魔術師は、テイワットの人類文明と敵対する魔物たちの勢力『アビス教団』に所属する邪悪な生物だ。ヒルチャールを操ることもでき、世界各地の争いに加担している。一行にとって、到底無視できない存在だ。

 

 そして、図らずもトワリンたちからウェンティを庇うように集まった蛍たち。その動きを、アビスの魔術師が悪意を込めて揶揄する。

 

 「ほら、今もまたそなたのことを騙しにきた……」

 「……バルバトスッ……!!」

 「憎み憤るといい……そなたはモンドを敵にしてしまった。もう戻れぬ……」

 

 声を上げるトワリンに、駄目押しとばかりにアビスの魔術師が囁きかければ、トワリンは勢いよく上空へ飛び上がり。

 

 

 

 「──そいつらは……」

 

 

 

 悲哀と憎悪に翼をはためかせ。

 

 

 

 「君と共に……」

 

 

 

 憤怒と悔恨に尾を振るわし。

 

 

 

 「我を殺しに来たのかッッ──!!!」

 

 

 

 殺意をもって咆哮する。

 

 

 

 星拾いの崖一帯に吹き荒れる暴風。

 

 「違う……!」

 

 それに逆らいながら、ウェンティが顔を悲痛に歪めて叫ぶも──その声は、風魔龍には届かない。

 

 そして、そんな負の感情に身を焦がす風魔龍の背にアビスの魔術師は飛び乗ると。

 

 「この龍は、真の主に仕えるべきだ……そなたたちはここで、自分の無力さを嘆くがいい……」

 

 置き土産にそんな言葉を残して、風魔龍と共に飛び去って行って。

 

 「──トワリン……」

 

 後には、憂える一行だけが残された。

 

▼▼▼

 

 ──モンド北西。

 

 風魔龍が占拠する、かつてのモンドの都市──風龍廃墟。

 

 その地を、跪くアビスの魔術師たちを背後に従えて、近くの崖から一望する少年が1人。

 

 やや癖のある、長い、そして編み込まれた金の髪に、同じく金色をした瞳。異国情緒溢れる服に、風に揺れる耳飾り。

 

 その姿は、どことなく、ある少女を思い起こさせるもので……。

 

 そんな少年の頭上を、風魔龍が飛び抜いて廃墟塔へと向かう一方で、彼の背後に冷気と共に現れるモノもいた。

 

 蛍たち一行の前に姿を見せたアビスの魔術師だ。

 

 アビスの魔術師は、すぐさま跪いて臣下の礼を取ると、彼に向かっての報告を始める。

 

 「殿下……貴方様の下僕は、また勝利を勝ち取りました……貴方様の国がこの世に再び降臨するとき……我々はその栄光を手に……」

 

 熱に浮かされたような口ぶりのアビスの魔術師。

 

 それを見下ろす少年の双眸は、冷たい光りを宿していた。

 

▼▼▼

 

 ──かくして、物語は進んでゆく。

 

 定められたクライマックスに向かって──。

 

 

 

 

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