作者、イェラン、引きますっっ!!!!(確固たる意志)
……皆も引きますよね???(同調圧力)
蛍ちゃんと再会、そして約束を交わした日から、数日が経ったある日の昼下がり。
街のレストラン『鹿狩り』にて。
「──はむっ……ところでユヅルさま。10日ほどぶりにお会いしますが……お仕事の方はいかがでしょうか?何かお困りのことなどはございませんか?」
「んぐっ……?ああ、だいぞぶだよ。問題ナッシング!」
「そうですか……それならよかったです!」
──不肖ユヅル。先程偶然出会いましたモンドの天使、ノエルちゃんと、楽しくお食事をさせていただいております。
……うへっ、うへへへへっ!んぃやぁ悪いねぇ、全国8000億人のノエラー諸君!こんな幸せ体験しちゃってぇ!うへへへっ!なんかねぇっ、もうねっ、ほんと幸せです!すごいよ!?『テイワット目玉焼き』は『かにみそとハムのグリル野菜』くらい美味しいしっ、お冷やはりんご酒くらい美味しいんだよっ!?ヤバくない……!?いや、実はここ最近、お金がないから『テイワット目玉焼き』しか食べれてなくて食傷気味だったのよ……なのに今、全然苦じゃないの!すごくない!?すごい!
「……というかというか、ノエルちゃん、そっちこそ大丈夫?困ってること、ない?お手伝い、無理してない?」
「問題ありませんよ。この間ユヅルさまにお話を聞いてもらってから、悩み事困り事はできていませんし……むしろお手伝いに関しては、近頃時間が取れてなくて困っているくらいですので……」
「あ、そうなんだ……」
忙しいんだ、ノエルちゃん……そっかそっか………………うん、すごい罪悪感。押し潰されそうなんだけど。え、僕、こんな幼気な少女が一生懸命働いてる傍ら、真っ昼間からお酒飲んで寝て起きてをしてたの?ちょっ……自分が恥ずかしいわ……。
いやまぁ、改善する気は微塵もないけどね?(クズ極)
なんてことを考えながら目玉焼きをつまむ。ぱくり……うーむ、黄身が美味。
ちなみにノエルちゃんはというと、ボリュームたっぷりの『満足サラダ』を上品に食べていた。可愛い~。
──……しかし、ノエルちゃんがお仕事で多忙か……そういえばだけど、なんかのキャラストーリーで、龍災時、ノエルちゃんがトワリンにカチコミに行ったりしないように、ガイアが沢山仕事を用意してたって聞いた覚えがあるけど……これってもしかして、それなのかしらん?……や、でもそれって龍災期間の話だよね……今ってどうなんだろう?というかもしかしてだけど、今もまだ龍災期間内だったりする?
「……あ、あの、ユヅルさま……?」
思考の海をざぷざぷしていると、おずおずとかけられる声。顔を上げれば、ノエルちゃんがこちらを窺うように見ていて。
「ん?どしたの?」
「い、いえ、その……急に黙られてしまったので、もしやわたくし、何か失礼なことを言ってしまったのかと思いまして……」
「ははっ、まさかまさか。ちょっと考え事してただけだよ」
「そ、そうでしたか!それならよかったです……!」
ほっと安心したようにノエルちゃんが息を吐く。いとうつくしうていたり……。ノエルちゃんはなよ竹のかぐや姫だった?
──そんな具合に、お昼を楽しんでいると。
「──どいてどいてー!!!」
テーブル席の脇を流れる大通り、その奥。
城門の方より、人混みを掻き分けながら、リボンの少女が大きな声とともに走って来──そしてそのまま、街の中心部へと去って行って。
その姿に、思わずノエルちゃんと顔を見合せる。
「……今の、アンバーだよね?」
「……お、おそらくそうかと……。……しかし何やら急いでいるご様子でしたが……何かあったのでしょうか?」
「うーん……」
……何かあった、か……いやまぁ、蛍ちゃんたちがモンド城を発って数日過ぎたこのタイミング、まず間違いなくアレが……魔物の襲撃が起きるってことなんだろうけど……。……ぅえぇ、まじかぁ……本当に来ちゃうのかぁ……きついわぁ……。一応できることはしておいたけどさぁ……。
……でも、あくまでこれは予想だし、ワンチャンアンバーが急いでるのは、実は全然関係ない別件が理由っていう可能性もあるし……。うん、とりあえず今は、正確性のある情報が欲しいね。……としたら、だ。
「──ノエルちゃん、アンバーを追いかけよう。何が起きているのか、知っておいても損はないでしょ?」
「……はい、ユヅルさまのおっしゃる通りです。もしかしたら、何かお手伝いできることがあるかもしれませんし……急いで騎士団に向かいましょう──!」
──そうして僕は。
ノエルちゃんと共にアンバーを追いかけて騎士団へ向かおうとし──その前にまず、注文していた料理の代金が払えなかったために、皿洗いを30分ほどすることになった。
……ごめんノエルちゃん!僕のことは構わず、先に行っといてっ──!
▼▼▼
──数多の苦難 (『鹿狩り』での皿洗い) を乗り越え、騎士団本部に到着した僕が目にしたのは。
大勢の西風騎士が、忙しなく動き回っている光景だった。
声を張り上げ何らかの指示を出している者、いくもの木箱を両手に抱えてどこかに運んでいる者、本部に慌てて駆け込んでいく者……。
……うん、明らかに異常事態起きてるでしょこれ。てんやわんやってレベルじゃないよ。てんやてんやてんやてんやわんやわんやわんやわんやってくらい慌ただしいよ。えぐみ……。
動き回っている騎士の中には、知り合いの姿も一応いくつかあったが……まるで話しかけられるような雰囲気でもなし。
とりまりとりあえず、先に向かっていた筈のノエルちゃんを探すべきだろう……──と、見つけた。
騎士たちがひしめいている先、本部の裏手。
いつもは訓練のためのスペースとなっているその場所に、ノエルちゃんはいた。
ついでにその隣には、栗色の髪をポニーテールにした少女──エリンちゃんの姿も。……あ、エリンちゃんはあれね、「そうやればよかったんだ、すごい!」ちゃんね。。それでもって、度々やってくる僕のお客さまでもある。……しかしなるほど、彼女もノエルちゃんと同じく、西風騎士になることを目指している身。ここにいるのも当然といえば当然だね。
……けど、2人とも、なんか挙動不審というか、そわそわしているというか……どうしたんだろう……?
そんな疑問を抱えながら、騎士たちの動線を邪魔しないよう注意を払いつつ、彼女たちに近付き。
「ノエルちゃーん、エリンちゃーん」
声をかける。
「ユヅルさま……!追いつかれたのですね!」
「うん、なんとかね。もうほんとサラちゃんには頭上がんないわ……。……あ、ところで2人とも。今これ、何が起こってるか知ってる?」
「ユヅル……えっとね、聞いた話なんだけど、城外の……たしか『北風の狼の神殿』の近くに、異様な数の魔物が居たらしくてね。しかも、モンド城に向かって来てるとか」
「それも不思議なことに、統率の取れた動きで向かって来てるそうなんです……」
「あらぁ……」
合わせて状況を説明してくれる彼女たち。けど知りたくなかったなー……もうこれで魔物の襲撃が起きるのが確定しちゃったじゃん……めっちゃびびるんだけど……ふえぇ、怖いよぉ……。
……したっけ、どうするかな……騎士さま方のお邪魔はしないのは当たり前として、何か手伝えることは……って、あれ?
「──そういえばさ、ノエルちゃん、エリンちゃん。2人は騎士団のお仕事とかお手伝いとかしなくていいの?人手、足りてなさそうだけど……」
問いを投げかけてみれば、彼女たちは、うっと気まずげに固まり。
「……それが、ですね。その、お手伝いを申し出ましたところ、後で声をかけるから、今は休んでいるように言われまして……」
「かれこれ数十分このまま……待っている間、他の人にも聞いたんだけど、やっぱり同じこと言われるし……」
焦れったげにそう話してきて。
……なるほど、だから2人ともそわそわしてたのか……お預け食らわされてるみたいな感じね。
と、1人得心がいったところで。
「──そんなお前たちに朗報だ」
割って入ってくる声。
……むむっ、この芝居がかった特徴的な喋り方は──。
「──えぇっ、ちょっとちょっとぉっ!やっぱガイアじゃん久しぶりぃー!元気してたぁー!?」
「お、おう……いやお前、そんな感じだったか……?…………そういえばそんな感じだったな」
「そうですよ、ガイアさま。ユヅルさまはいつもこのような感じですよ」
「そうそう、僕はいつもこんな…………あれ、なんか今の含みない?あれ?」
はたして、突然現れたガイア……といっても騎士団の裏手だし、現れることにそこまでびっくりはない。どっちかっていうと、ノエルちゃんの発言の方がびっくり度は高かったし。今のめちゃめちゃ含みあったよね???
「──それよりガイアさん!朗報っていったい……?」
そんな僕の驚きをよそに、勢いよくガイアに質すエリンちゃん。
そうね、たしかに僕も気になります。朗報って何なんやろうね……?
さてもその朗報とやらの詳細を促すべくガイアを見れば、彼はフッと微笑を浮かべると。
「なに、手伝いたがりのお前らに頼みたい、大事な任務があってな──」
実に怪しげなことを言ってきたのだった。
▼▼▼
──それからガイアが語った頼みたい任務の内容は、つまるところ、市民の避難誘導を手伝ってほしいというものだった。
やはりというか、なんというか、騎士団は人手が足りず猫の手も借りたい状況。まさか騎士見習いに魔物と戦わせるわけにはいかないが、避難誘導くらいなら任せてもいいだろうといったような考えだ。
そして、その話を聞いた2人はというと──。
「お任せください!」
「任せて!」
──もちろん快諾のようで。
ま、そりゃそうだろう。ずっと仕事を待っていたって言ってたし。いやはやよかったね、2人とも。念願叶ったみたいで。
「ハハッ、頼もしいかぎりだぜ。──ユヅルはどうだ?」
「え、僕?んっとね僕は──え僕っ!?」
ほんわかしていたところで振られた言葉に思わず二度聞き。
だってノエルちゃんたちに向けてのOHANASHI☆だと思ってたんだもの、まさかこっちにもくるとは……。
「ああ。なんでもお前さん、相談屋とやらをしているんだろう?弁が立って、街のやつらにも顔が利く……そんなお前に手伝ってもらえたら、誘導が円滑に進められると思うんだがな」
「んあー……どうしよう……」
問われて少し考える。
……騎士団の手伝いをすることを考えていなかったわけではないけど、そこまでガッツリ関わることは、流石に考えてなかったんだよね……うーん……。
「……ちなみにだがな。騎士団の仕事を手伝ってもらうんだ、当然報酬も──」
「やります。超やります」
全力で了承の意を示す。
……いや、決して報酬につられたわけじゃないからね?モンドに住まう者として、騎士団に協力するのは当たり前だからだよ?まじでまじで。……え?じゃあノーギャラでも構わないのかって?今そんな話はしてないでしょっ!!
「……ここまで分かりやすいと、逆に少し不安になってくるな……。……まぁ、手伝ってもらえんならなんでもいいか。──それじゃあお前ら、適当に分担して、大聖堂前の広場に避難をするよう呼びかけてきてくれ。……ああ、言い忘れてたが、城外には別で既に騎士を出しているから、城内だけで充分だ」
「かしこまりました!……それではわたくしは、大通り沿いを回って声をかけてきます!」
「わたしは街の西側から声をかけてくるよ!」
スムーズに決まっていく各々の持ち場。そうなると……。
「おっけー……じゃあ僕は、『エンジェルズシェア』に向かえばいいわけだ」
「違うよ???いや、方向としてはあってるんだけど……もうっ、やっぱりユヅルは西側行って!」
「ちょっ、ごめんごめん、冗談だって。……というか、東側はよく行ってるから顔見知りも多いし、僕が向かった方がいいよ。大丈夫、ちゃんとやるから」
「不安しかない……」
「ま、まぁまぁエリンさま。大丈夫です、ユヅルさまならきちんとやり遂げてくださいますよ。ですよね?」
「う、ういっ!」
きらりらきらりん、ピュアピュアまにゃこ。そんな目をされたら、きちんとやるしかないね。いやまぁ、されなかったとしてもきちんとやってたけどね?緊急事態なんだし。
「──ハハッ、それじゃあ任せたぜ、お前ら」
──やがて、僕らの様子を眺めていたガイアは、台詞を後に、その場を立ち去っていって。
それを見送り、さぁ避難誘導だというところで──思い出す。
いけないいけない、折角用意してた
「──ちょめーてーおっ、ちょっと待ってガイアー。言い忘れてたんだけど──」