原神ふれんず!   作:コトバノ

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 ふぅ……なんとか6月中に1話更新出来ました……あともう1話は更新したいところです!頑張らねば……!

 ……え?今って6月の8週目ですよね???


第16話 モンド城 『お酒控えます』

 

 喧騒と、混乱と、動揺とが寄せては返す街中を、僕は。

 

 酔っ払いやらご婦人マダム、酒場の店員に観光客といった、大勢の一般人を後ろに引き連れて、避難場所である広場へと向かっていた。

 

 「──みんな、おかしも、だよ!おかしもを守って避難するんだ!」

 「おかしも?ユヅル、おかしもって?」

 「おかしもってのは、お酒を飲もうとしない、絡まない、素面でいられるよう努める、戻さないの、4つのキーワードの頭文字をとった言葉だよ!」

 「おぉ……あ、最後の戻さないって、つまり吐くなってことだよな?」

 「そう!」

 「なるほど了かオエッ、オロロロロロロロッッッッ!!!……ふう、エチケット袋を持ってきてて正解だったぜ……あ、了解だユヅル」

 「いや何が???君は何を了解したの???」

 

 わーわーがやがや、緊急事態とは思えない賑やかしさで道を往く。

 

 避難する際、1番マズいのはパニックになることだと聞くし、それだったら今のこの雰囲気の方が良いのだろうけど……酔っ払いどもなぁ……話通じないからなぁ……いやまぁ、日頃そっち側の僕が言えたことじゃないけどさ。

 

 「……でも、本当なの?魔物がモンドに攻めてくるって……」

 

 そんなことを考えていると、連れたっている中でそっち側じゃない、一般ご婦人がポツリと尋ねてきて。

 

 「本当だよ本当。流石にこんな嘘は、誰も言わないでしょ」

 

 正直に返せば、そっち側じゃない皆さんは顔を見合せると。

 

 「そう……そうよね……」

 「……大丈夫、なのか……?大団長のファルカさんは今、遠征中でいないんだろ?」

 「ジンさんも数日前からモンドに居ないって聞くぞ……」

 「おいそれ本当かよ……?」

 「栄誉騎士は、栄誉騎士はどうなんだ?」

 「……そういえば、彼女も最近は見かけてないわね……」

 「そんな……!」

 

 なんということでしょう……なまじっか素面で理性が残っているがために、色々考えて不安になっちゃってますねぇ……。その点酔っ払いどもはというと、急な運動からの吐き気を耐えるのに必死でそれどころじゃないようです。助かる~……いや、何も助かってないけどね。

 

 ……しっかしこの空気、あまりよろしくはないな……うまいこと話を回して、空気を元に戻さねば。

 

 とりあえずにパチンと拍手を一つ。皆の注目を寄せてから、僕は喋り出す。

 

 「──はいはい皆、落ち着いて。別に騎士団は、ジンや蛍ちゃんだけってわけじゃないでしょ?アンバーにガイア、リサちゃん、他にも日頃から街の見回りをしてくれてる騎士の人だっている。何も心配はいらないよ」

 「……でもなユヅル……」

 「不安なものは不安だわ……」

 

 言い募る素面の面々。だがしかし、この程度は想定内だ。酒飲み仲間に詐欺師みたいと言われる僕の口の上手さならば、問題なく言いくるめられるはず。……詐欺師みたいってよく考えたら悪口じゃない?

 

 「……皆は騎士団の強さを知らないの?見回りをしてくれている騎士1人1人が、単身で酔っ払いどもの喧嘩を止められるくらい強いんだよ?そんな彼らが束になれば、そうそうやられなんてしないさ」

 「まぁ、たしかに……?」

 「……んん……でも酔っ払い相手だろう……?」

 「いやいや、酔っ払いもヒルチャールも大して変わんないよ。動きとかなんか似てるし」

 「ひどい言い草だな……」

 「でも言いたいことはわかる……」

 「加えて、神の目を持った騎士もいる。アンバーは火元素を操れて弓も天才的だし、ガイアは氷元素を操れて剣も巧み、リサちゃんは雷元素でビリビリやってくれるだろうし、澤はドリブルが上手い。……ね、大丈夫そうでしょう?」

 「なるほど……言われてみれぱその通りで……いやまて、澤って誰だ???」

 「なんだか大丈夫そうな気がしてきたわ……!……ところで澤って誰???」

 

 ……うん、皆、いい具合に不安は和らいだみたいだね。よかったよかった。

 

 「──よし、それじゃあ皆、広場までもうすぐだよ!焦らず慌てずゆっくり急ごうっ!」

 「「「いやねぇ澤って誰──???」」」

 

▼▼▼

 

 モンド城正門より出でてすぐ。周りを湖に囲まれた城内と、外界とを繋ぐ唯一の建造物である石橋を渡った先の、拓けた土地一帯。

 

 いつもはハトと戯れる少年や、果物の採取に出かける青年、ちょっとした散歩に出る女性など、多くの人の姿が見えるその場所は、現在、物々しい雰囲気に包まれていた。

 

 「──何してるんだッ!その柵はこっちだろう!」

 「おい杭が足りてないぞ!もっと持って来いッ!」

 「少し待ってくれ、今用意を──!」

 

 飛び交う怒号。

 

 なにせ大半の戦力が遠征によってなく、頼りの綱である代理団長も席を外してしまっている現状。騎士団内でも不安が高まってしまうのは仕方がないというもの。それが、もたつきという形になって発露しているのだ。

 

 もしこの調子が続けば、魔物の襲来に苦戦を強いられるだろうは想像に難くない。だが──。

 

 「──どうしたんだいキミたち。動きが精彩を欠いているよ」

 

 そんな彼らの様子を見かねてか、声をかける人物が1人。

 

 雑把にまとめられたベージュの髪に端正な顔立ち、翡翠の瞳の少年だ。フードの付いた白と黒、金が混ざり合ったコートに袖を通しており、首元からは岩の『神の目』が覗いていて。

 

 はたして、彼の登場に、下がっていた士気が持ち直されていく。彼は、それに足るカリスマを持っていた。

 

 「──ア、アルベドさん!?」

 「アルベド!!」

 「首席錬金術師……!?」

 

 アルベド。それが彼の名前だった。

 持つ肩書きは、西風騎士団の首席錬金術師兼調査小隊隊長。彼の錬金術の膨大な知識と優れた技術は、生命の誕生すら可能にし、また剣の腕でも騎士団内有数を誇る──まさに白亜の申し子と呼ぶに相応しい天才だ。

 

 しかし彼は、その錬金術の神秘を追い求めているが故に、モンド城に留まってることは稀。西にある雪山──ドラゴンスパインにて、研究に時間を費やしているのが常であった。

 

 そんな彼がここに居るということはつまり、今回は自分達と共に戦ってくれるということ。

 

 ならば何も心配する必要なんてあるまい。今はただできることをしなければ。

 

 「──すみませんアルベドさん!少し気が急ってしまっていて……!」

 「すぐ準備します!」

 「うん、頼むよ。キミたちの働きに、モンドの安全はかかっている」

 「「「はいっ!!」」」

 

 ──そして騎士たちは、先とは打って変わった落ち着きを見せながら、作業に取り組んでいく。

 

 杭を並べ、柵を敷き、櫓を組み……。

 

 それをアルベドは、ときに指示し、ときに手伝ったりすること──半時が経つ。

 

 やがてそこに、ぱたたっと眼鏡の少女がやってきて。

 

 「──ア、アルベド先生っ、頼まれていた薬剤が準備できました……それと今、アンバーさんがクレーちゃんからいくつか爆弾を貰ってきてくれています」

 「そうか……ご苦労だったね、スクロース。ありがとう」

 「い、いえっ……!」

 

 もたらされた報告にアルベドが返すと、途端、彼女──スクロースは、ライトグリーンの髪をブンブン揺らしながら、おどおどアワアワし始める。それに伴ってずり落ちていく眼鏡と帽子。

 

 そんな彼女といくつか情報を交換しつつ、同時にアルベドは次に準備すべきことは何かと考えを巡らしていく。

 

 モンド城の守備は、着々と完成に近づいていた。

 

▼▼▼

 

 街の至る所から避難してきた人で埋め尽くされた広場の、隅っこ。

 

 皆を誘導してきた僕たち3人は、ぽつねんとそこに佇んで、小休憩をしていた。

 

 「──んー……うん。あらかた皆、避難し終えたみたいだね」

 「はい……あとは、西風騎士やシスターの皆さまがしてくださっている点呼での確認が済むのを待つのみです」

 

 辺りを見渡しながら言うと、ノエルちゃんからの返事。

 

 へー、点呼か……そんなことしてたんだ。道理で、さっきから騎士やシスターの人が皆に声をかけて回ってる姿が目につくと思ったよ。

 

 けどそうなると、それが終わるまでは特段やることもないって感じか……まぁ、広場とを何往復かして疲れてるし、丁度いいっちゃ丁度いい。とりあえずお喋りでもして待つとするかな。

 

 「……さておき2人、避難誘導、スムーズにできた?」

 「ん?うーん……わたしはちょっと手間取っちゃったよ。やっぱり緊張でね……」

 「わたくしの方は、皆さまが協力してくださったおかげで大きな問題もなく進められました。……ユヅルさまの方はいかがでしたか?」

 「……酔っ払いのバカさと面倒臭さを再確認したよ……気付いたら集団からはぐれたり、地面に急に寝転んだり……」

 「あ、あはは……」

 「お、お疲れ様でした……?」

 

 まじ疲れた……全員を避難させるために広場とを何度も行ったり来たりして、しかもその都度必ず1人はいる酔っ払いがやらかすし……最後は素面の人に酔っ払いどもを担いでもらって避難してきたんよ……ほんともう……。

 

 「……ま、まぁ、人のふり見て我がふり直せって言うし……これを機に、ユヅルはお酒を控えるようにしたらどう?」

 「え、それはやだけど???」

 「えぇ……???」

 

 まったくエリンちゃんったら、何を言い出すかと思えば……僕がお酒を控えるなんて、そんなこと、天と地がひっくり返っても起きるわけないでしょ。

 

 「……ですがユヅルさま、やはりお酒の飲み過ぎは体によくありませんよ?心配になってしまいます……」

 「お酒控えます」

 「えぇ……」

 

 天と地がひっくり返るなんて、よくあることだよね……というか、ノエルちゃんに心配をかけるわけにはいかないでしょ。頭使って?と肩をすくめ、呆れた目でエリンちゃんを見れば。

 

 「な、なんかすごい理不尽なことでユヅルにバカにされてる気がする……」

 

 むぅーと頬を膨らませ、不貞腐れる彼女。

 

 あら、可愛いじゃないの……ほっぺツンツンしていい?ダメ?ダメかぁ……──ん?

 

 ──ぶすくれているエリンちゃんの背後に見える人混み、その少し外れた所で。

   

 取り乱した様子の女性や慌てているようなシスターの姿がそこにはあって……。

 

 ……こ、これはまた、随分とトラブルの香りが凄い光景ですね……。

 

 「……?どうしたの……って、ああ……」

 「……何かあったみたいですね」

 

 固まっている僕の視線の先をなぞった2人も、同じ光景を見つけたらしく。

 

 そこからの動きは早かった。

 

 「とりあえず──」

 「──行ってみましょう!」

 

 そう言うや否や、彼女らはすぐさま身を翻して、その光景へと駆け出していく。

 

 止める間もないほどの、鮮やかな流れ。

 

 1人ぽつりと取り残された僕は、妙なトラブルじゃないといいんだけどなぁ……なんて思いつつ。

 

 疲れない程度に急いで、2人の後を追った。

 

▼▼▼

 

 ──モンド城前は、アルベドの適切な指示や、騎士たちの迅速な働きにより、既に守備が完成されていた。

 

 橋にまで及んだ、迷路のごとく入り組むように設置された杭や柵は、万一にも魔物たちが城内に侵入してくることを防ぐとともに、戦闘に際しては騎士たちの盾の役割も果たしてくれるようになっている。

 

 騎士団の保有する在庫では、到底つくることの出来なかったその景色は、ガイアがどこからか調達してきたことによってもたらされたものだ。

 

 曰く、匿名希望の相談屋からもらったとのこと。

 

 また、監視塔たる櫓も点々と建っており、魔物の動きの見張りはもちろん、こちらも戦闘に際しては高所という地理的優位を確保できるという面ももっていた。

 

 それらの突貫建築物を織り込むような隊列をとって、守備の一番の要たる騎士たちは、魔物の襲来を待ち構える。

 

 そして、どれほど経っただろうか。

 

 1時間のようにも、1分のようにも思える張り詰めた時間を過ごして待機していた騎士たちの耳が捉える、落ち寄せる地響きの音──。

 

 「き、来たぞぉぉぉぉ!!!!」

 

 櫓の上から索敵をしていた騎士の1人が声をあげると同時に、魔物の群れが姿を現す。

 

 通常のヒルチャールに、棍棒を振り回すヒルチャール・戦士、松明を振り回すヒルチャール・突進、防具を持つヒルチャール・盾、弩を持つヒルチャール・射手、スライムを抱えるヒルチャール・爆弾、一際大きな体躯のヒルチャール暴徒に、それとは逆に小柄な体躯に杖を用いて元素を操るヒルチャールシャーマン……ありとあらゆるヒルチャールが、その場に溢れ返り、駆けてくる。

 

 だが、それに怖じ気づく騎士はここには居ない。

 

 剣を抜き、槍をとり、書を開き、矢に手をやり……各々が構えをとる中、彼らの最奥に控えるアルベドは、屈み込み、地面に手をついて、呟く。

 

 「咲け──」

 

 ──元素スキル:創生術・疑似陽華──

 

 瞬間、大地より華が生まれる。岩元素が凝結したそれは、自身を中心に、キィンという硬質な音を伴って、エリアを形成。エリアは止まることなく広がっていき、向かってくるヒルチャールの先にも及んでいく。

 

 時を同じくして、櫓の上に立ったアンバーもその力の一端を発動する。

 

 「出番だよ、ウサギ伯爵」

 

 ──元素スキル:爆弾人形──

 

 生み出されるのは、コミカルなウサギの人形。アンバーはむんずとそれを掴み、ヒルチャールの群れの中央へ投擲する。

 

 くるくると回転しながら飛ぶ人形は、やがて、群れの上空に差し掛かったところで──眩い光を放ち、轟音をたてて爆発を起こす。

 

 巻き上がる爆煙に、粉塵、浮き上がる無数のヒルチャール。

 

 アルベドの疑似陽華のエリア内で起こったその爆発は、至る所で刹那の花を咲かせ、また、地面に隠す形で配置されていた爆弾や薬剤にも誘爆を起こし、再度ヒルチャールを吹き飛ばしていく。

 

 

 

 魔物の群れと西風騎士団の戦いの火蓋が、今、切って落とされた。

 

 

 

 

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