原神ふれんず!   作:コトバノ

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 (*´∇`)ノ おひさっ!


第18話 モンド城 『もしそうなら、今すぐDMしてもろて』

 

 

 

 あまりにもあんまりな展開にお口があんぐり、心はちょっぴりアングリー。

 

 酒場を出たら、人類の天敵と邂逅する……そんなハートフルフルな経験をした人は、世界広しと言えども、僕くらいではなかろうか。

 

 ……いや、こんな世界だし、探せば何人かはいるかも。うん、いそうだな。もしそうなら、今すぐDMしてもろて。あの、どうやって乗り切ったんですか???

 

 「……なんだ貴様は……?騎士団では、ない……?ただの市民か……?」

 

 わ、喋った……!声の音質ガビガビで聞き取りにくっ。や、でも分かりはするし……これなら対話ができそ──。

 

 「──まぁ貴様が誰であろうとも……見られたからには死んでもらうがなぁ……!」

 

 できなさそうですね ^ ^

 

 「──んちょっ、ちょっと待ってよジョニー、話せば分かるって!僕たちの仲じゃないかっ!あの夏を思い出すんだ!灼熱の!ほらっ、灼熱の卓球娘!可愛い!ねっ!?ほらっ、話せば分か──」

 「わけの分からぬことを言うな……──さぁ、死ぬがよいッ……!」

 

 ──咄嗟に。右手側へと飛び退き、店の外に備え付けてあったテーブル席を巻き込みながら、派手に転がる。

 

 最中(さなか)、元居た方を確認すると、視界に入るのは、杖を振り下ろした姿勢のアビスの魔術師に、砕けた石畳、窪みに溜まった水──ぐおっ、痛ったい頭打ったし多分これ切った……!

 

 呻きながらも転がり終えた僕は、じわりと血が滲む側頭部を押さえつつ、すかさず立ち上がりアビスの魔術師──おそらく水の──へ向き直る。

 

 「……避けるか……貴様、少しはできるようだな……面倒な……」

 

 手に持つ杖をくるくると回して、忌々しげに吐き捨てるアビスの魔術師。

 

 が、それに注視する余裕などは微塵もない。

 

 呼吸が、乱れる。心臓が、早鐘を打つ。

 

 ジリジリと、密かに後退りをして、距離を少しずつとりつつ、冷や汗を垂らしながら必死に考えを巡らす。

 

 ──ヤバい。ヤバいヤバいヤバいヤバいまじでヤバい超ヤバいどうするどうするどうする?

 今からでも走って逃げるか?いや、飛び道具を向こうが持っている以上、背を向けるのは危険、そもそもまずもって、逃げ切れる気もしないし、というか逃げるにしてもどこへ?

 広場には騎士が何人か居たが一般人の数の方が多く、巻き込むことになってしまう、ならば逆にここへ誰かを呼べば……だけど誰を呼ぶ?

 すぐさま駆けつけてくれるのはきっとノエルちゃん──でも彼女を危険にさらすようなことはさせたくないし、だとしたら……戦う?1人で?くそ雑魚ナメクジの僕が?

 むりむり、しゅんころされる未来しか見えないぴえん、ちくしょうイノシシといいヒルチャールといい僕こんなんばっか、ああぁぁもうどう他に何か──!

 

 ──刹那の思考。だが、今この瞬間においてのそれは、これまでにないほどの速さで脳をフル回転させた結果のものであり、即ち最早、熟考ですらあった。

 

 しかしそれでも、この場を切り抜ける方法は思い付かず、そして。

 

 只の人にとっての刹那は、ヤツにとっては欠伸が出るほどの時間であって。

 

 ──ゾクリと寒気がはしる。気付いたときには、眼前に迫る水の球。

 

 その透かした奥で、仮面を着けているのだから分かる筈もないのに、醜悪に笑っていると確信できるアビスの魔術師が杖を振り下ろしていて──。

 

 

 

 飛沫が、舞って。地面を濡らした。

 

 

 

▼▼▼

 

 先ほどまで、避難してきた群集でひしめき混沌としていた風神像広場は、安穏とした雰囲気を纏っていた。

 それに一躍を買っているのは、西風教会のシスターたちだ。

 

 怯え戸惑う人々に、親身に話を聞き、励ます。子供たちには玩具やお菓子を与えたり、読み聞かせなどをして、寄り添う。

 

 その献身によって、暴動などの事件も起きることなく、広場は現在を過ごせていた。

 

 そんな広場の端も端、入り口にあたる階段を昇り切った辺りで。

 

 「──おがあざああぁぁんッッ!」

 「ああよかった、無事だったのね……!本当によかった……!」

 

 再会を果たす母と幼子の姿がそこにあった。

 

 抱き合って喜ぶ親子。

 

 それを見守るのは、2人の少女。エリンとノエルだ。

 

 全体のあらましとしては、西区画を捜索していたエリンが、建物の陰に隠れるようにしていた迷子の彼を発見。急いで連れ帰っている途中で、大通り一帯を捜し終えたノエルと合流し、広場に戻ってきたというもの。

 

 道中、ユヅルとも合流することを考えもしたが、すれ違いの可能性や母親の心情などを考慮し、迷子を広場へ送り届けるのを優先した形だ。

 

 「お2人とも……!本当にありがとうございました……!それと、ご迷惑をおかけしてしまって、すみません……」

 「ううん、気にしないで。当然のことをしただけだよ。ね、ノエル」

 「はい。わたくしたちは、西風騎士を目指す身ですから」

 

 母親からのお礼の言葉に2人は、はにかみながら返す。

 

 それから彼女らは、二、三言葉を交わし。母親は深々と頭を下げ、また、子はありがとうと大きく手を振って、連れ立って広場の中央へと去って行って。

 

 残った2人は、さてこれからどうしようかと顔を見合わせる。

 

 「……とりあえず、騎士かシスターの人たちに、解決の報告はしとかないと駄目だよね」

 「はい。……ですが、ユヅルさまのお帰りが遅いのも気にかかります」

 「うん、わたしも少し心配……」

 

 彼女らの頭をよぎる嫌な予感。無事なのだろうか……?何か事故に巻き込まれているのだろうか……?戻ってこれないほどのものなのだろうか……?

 

 一抹の不安を感じながらも、ノエルは考えをまとめる。

 

 「……では、こういたしましょう。わたくしは今からユヅルさまを捜してまいります。エリンさまは、広場にお残りください。報告をしないといけませんし、入れ違いが起こる可能性もありますから」

 「……うん、了解。それじゃあお願いね、ノエル!」

 「お任せください!」

 

 ──そうしてノエルは。

 

 エリンが見守る中、街へと向かって階段を駆け出したのだった。

 

▼▼▼

 

 ──棍棒を振りかざして、襲い来る1体のヒルチャール。

 

 その攻撃をアンバーはひらりと躱すと、お返しとばかりに腹部へ強烈な蹴りを叩き込む。たまらずヒルチャールは吹き飛び、近くのの群れと激突する。

 

 苦しげに呻きを漏らしてもみくちゃになっているそこへ、アンバーは走り込むと、手前で高く跳躍。空中で、眼下に佇むヒルチャールどもへと弓を構え──矢を放つ。

 

 おおよそ10本ほどにものぼるそれらが、ヒルチャールどもの頭部に吸い込まれるのを見留めながら彼女は落下、着地。

 

 一通り周りに敵が居なくなったところで、ふーっと軽く息を吐く。

 

 ここは、戦場と化した城門前の地帯。アンバーは西風騎士として、この戦い身を投じていた。

 

 「──おいアンバー!あまり1人で突っ走るな!危険だ!」

 「形勢も押されているわけではないんだ!そこまで必死になる必要もないぞ!」

 

 そんな彼女に駆け寄って来た騎士たちが、お咎めの声を上げる。

 

 「うっ……ご、ごめん……」

 

 言って、後頭部に手を添えながら、あははは……と謝るアンバー。

 その様子に、彼らは溜め息を溢す。

 

 実際、同僚である彼らが言うように、現状騎士団は、魔物の大群の猛攻に押し込まれることなく耐えており……というかむしろ、騎士団の方が優勢ですらあった。故にいくらアンバーが神の目を持つ優秀な騎士だとしても、1人奮闘する必要性はなかった。

 更にそもそもとして、アンバーは弓兵、基本は遠距離からの援護が仕事。前線に飛び出して暴れるなんて行いは、褒められたものじゃない。

 

 彼女自身も、それらはきちんと理解していた。だからこそ開戦当初は、監視塔という高所よりヒルチャールの頭部や構えている盾などの破壊を主とした狙撃を繰り返していた。

 

 だが、それでも彼女が途中で前線に出たのは、狂暴な魔物たちを一刻も早く退治し、市民の皆に安心してもらいたいからという正義感、使命感から。

 

 そこに加えてもう一つ。

 

 なぜだか、胸騒ぎがしたのだ。

 

 この戦いの中で、何かを見落としているような、誰かが消えていっているような、そんな胸騒ぎ。

 

 その感覚に居ても立ってもいられなくなって、結果、彼女は今に至るわけで。

 

 とはいえ、味方に心配や迷惑をかけたいわけでもないので、当然謝りはしたし、反省もしていたりする。小さくも、なっている。

 

 ただやはり、不安や焦燥感などは完璧に拭い去れるものではなく──それを目敏く見つけた同僚の彼らは、再びの溜め息。そして、おもむろに喋り始める。

 

 「……落ち着けアンバー。いったいどうした?」

 「そうだぞ、何を焦っているんだ?」

 「……その……なんか、嫌な予感がしてさ……」

 「嫌な予感……嫌な予感つってもな……」

 「別に何が起ころうとも、大概はどうにかなると思うがな」

 「……む。ちょっとテキトーじゃない?」

 「テキトーでもないだろう。お前は強いし──」

 「──お前ほど強くはないが、俺たちだっている」

 「……みんな……!」

 

 彼らの言葉に、感じるところがあったのか。アンバーはハッと、何かに気付いたような素振りを見せ──直後、強烈な閃光が瞬き、やや遅れて轟音が響く。

 

 慌ててそちらを振り向けば、奥の方で、粉塵と電気が漂っているのが分かった。たしかあちらに陣取っていたのは……。

 

 「──……お前以上に強そうな……というか怖そうなリサさんもいるしな……」

 「だな……あれ、めちゃくちゃ怒ってるだろ……」

 「あ、あはは……うん、でも、そうだね!わたしにはみんながいるし、リサさんも、アルベドもスクロースも──ガイア先輩だっている!ならきっと大丈夫だよね!」

 

 そうアンバーは元気よく宣言して。

 

 何やら周りの反応がおかしなことに気付く。

 

 どうしたのだろうか。何か変なことを言った覚えはないのだが……。

 

 不思議そうに首を傾げるアンバーに、彼らは、言うなれば恐る恐ると──ある報告をし。彼女の叫び声が、空へと昇っていった。

 

 

 

 「──えっ、ガイア先輩は急に消えてどっかへ行ってる!!??な、何やってるのあの人──!!??」

 

 

 

▼▼▼

 

 ──ぺたん、と。思わず尻餅をついてしまう。

 

 それは、驚きと──安堵からだ。

 

 アビスの魔術師より放たれた水の凶弾は、しかし、僕に届くことなく。

 

 突如横合いから現れた巨大な氷壁によって妨げられ、飛沫となった。

 

 あまりにも瞬間的かつ濃密な出来事の数々。

 

 脳が追いつかないままに、僕は飛沫が石畳の地面に吸い込まれ、色を変えていくのを眺め──その(のち)、この御業の主を捜す。

 

 ゆっくりと首を回して捉えた氷壁の出所、そこには。

 

 「──やれやれ、間一髪だったな……」

 

 漂う冷気の中。コバルトブルーの瞳を光らせる褐色の美青年──ガイアが、妖美に立っていた。

 

 

 

 「──ガ、ガイアっ……♡♡♡(メス声)」

 

 僕は、色んな意味でパンツを濡らしかけた。

 

 

 

 

 

 





 
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