なんとかガイアの誕生日に間に合った……!いやー、よかったよかった……まぁ今話でガイア出てこないけどねっ!
「──それじゃあそろそろ行こっか、パイモン」
「おう、そうだな!」
──渾身の土下座と、汗だくでの弁解が実を結び。
どうにかこうにか、ほっぺたをぐにぃと摘ままれるだけで許してもらった……というか最早ご褒美を貰ってしまった僕は、その後、空を眺めていた2人も交えて少しお喋りをして。
一段落したところで、蛍ちゃんがパイモンちゃんに呼び掛ける。
「ああ、ウェンティの所に行かないとだもんね」
「うん。本当は私ももっと喋っていたかったんだけど……また今度だね」
笑って、蛍ちゃんはそう言うと。
「じゃあね」
「またな!」
パイモンちゃんとお揃いで手をひらひら振って、大聖堂前の小階段を降りていく。
僕とバーバラちゃんは、2人が広場を出ていくまでを見送る。途中、「あの人、本当に大丈夫なのかな……」と浮かない表情でバーバラちゃんが漏らしていたが……これは多分、ウェンティのことだよね。うーん、問題ないよって言ってあげたいが……彼女からしたら無責任な発言になっちゃうだろうし、ダメそうですね。残念……。
──しかし……これからどうしたものだろうか。蛍ちゃんたちは風立ちの地に行っちゃったし、バーバラちゃんとは、あまり2人きりでいない方がよさげだし……バーバラちゃん人気だもんね。夜道に気をつけることになっちゃう。
そうすると……ここでバーバラちゃんとお別れして、酒場で飲み明かすのが吉──…………いや違うぞッッ!!??よく考えたら僕、お金をもらって、ノエルちゃんがエンジェルズシェアの訪れる前にお酒を飲もうとしてたんだったッッ!!!そのためにジンに会いに来たのに、ちょっ……!何やってんだ僕はッ!!
「──バっ、バーバラちゃんっ、ちょっといいかな!?」
「うん?どうしたの?」
「尋ねたいことがありまして……!あの、ジンって今どこにいるか分かる?」
「ジン……ジン団長?」
「そう!」
急がねば、お酒を飲む時間が……!そもそも僕ってどんくらいぶっ倒れてたんだ……!?ちくしょう分からん!
「えっと、ジン団長なら多分、騎士団にいると思うよ。あなたたちが襲われたことについて、色々することがあるみたいで……」
「おお……!ありがとうバーバラちゃん!じゃ、僕はこれで!」
「あっ、ちょっと待って!」
ジンの居場所が分かったので、すぐさま駆け出そうとしたところを、引き止められる。なんでしょう……?
「その、無理に答えてもらう必要はないんだけど……ユヅルさんは、えっと、ジン団長とどういう関係なのかな……?」
指をつんつん、上目遣い気味に質問してくるバーバラちゃん。可愛い……!けど、僕とジンの関係かー……。まず恋人ではないね。家族でも当然ない。ジンと家族なのはバーバラちゃんだし。あっ、だからこんなこと聞いてんのか。まぁそりゃ知らん男が姉の近くに現れたら気になるよね。でも別にそこまで深い関係じゃないんだよね……友達というか……うーん──。
「──会って、お話して、お金をもらう関係?」
「ええっ!!??……あ、もしかしてユヅルさんって、西風騎士団の人?」
「全然これっぽちも違うよ」
「全然これっぽちも違うの!?……それじゃあどうしてお金をもらってるの……?わけが分からないわよ……!」
説明が足りなかったせいか、何やらバーバラちゃんが頭を抱え出す。でも、バーバラちゃんには申し訳ないけど、こっちにも事情があるからね。ここらでお暇させてもらおう。
「ごめんバーバラちゃん、早くジンに会いたいから……バイバイ!」
「えっ、それって──!」
台詞だけ残して、走り始める。どうしてかバーバラちゃんが口元に手を当てて、まぁってしてたのはちょっと気になるが……今は後だ。
逸る気持ちのままに、小階段を、広場を、階段を、通路を抜け──息を切らしながら、騎士団本部へ辿り着く。
するとそこでは、おそらくシニョーラの件絡みだろう、随分な数の騎士が、慌ただしく動いていて。
ふむふむ、なるほど。
……え、こんな忙しそうな騎士たちの間を僕は通って、更に忙しいであろう代理団長のジンに、お酒飲むお金をせびりに行くの?……冷静に考えるとヤバくない???ってか冷静に考えなくてもヤバいよね???ど、どうしよう、死ぬほど尻込みしてきた……!
自らのクズさに慄き、敷地に踏み出せずに右往左往しながら苦悩していると。
「ユヅルさま?こんな所でどうされたのですか?」
声を掛けられて。
「あ、ノエルちゃん。いやなに、昨日お酒が全然飲めなかったからさ、その分も今から死ぬほど飲もうと、ジンにお金を貰いに来たんだけど、見ての通り忙しそうでさ。どうしようかと悩ん待って待って待って待ってノエルちゃん???」
取るべき行動の思案に気を取られすぎて、騎士団を眺めたままぺらぺらと喋り倒してしまい──相手が誰かを理解した頃にはもう遅く。
ギギッと首を回して見れば、そこには、杭を抱えた銀髪のメイドさん──すなわちノエルちゃんの姿が、あった。あっちゃった。あっちゃったぁ……。
「……そう、でしたか……」
「いやっ、あの、これはその……」
ポツリと小さく理解の声。しかして、彼女が俯きがちであること、そして髪が前に垂れていることから、表情は窺えない。……けど怒ってるよね……!?怒ってらっしゃるよね……!?さっきの僕の言葉、なんかノエルちゃんへの不平不満をたれてるっぽさあるし、そうでなくてもお酒控えるって言ったの無視してるわけだし……!怒るのも当然だぁ……!土下座……!5土下座(単位)くらいでなんとかならないだろうか……!
戦々恐々しつつ、彼女の言葉の続きを待っていると、やがて、その顔が上がり。
「──かしこまりましたユヅルさま。……少し、お話いたしましょうか」
そう、告げられる。
露わになった表情は実に可愛らしい、にこりとした微笑。ただしその目だけは──暗く染まっていて。
……あ、これあかんヤツだ……土下座してもダメなヤツだ……。死ぬほど怒られるヤツだ……。イヤだぁ……。
それらを瞬時に悟った僕はノエルちゃんに、フッと笑みを向けると。
踵を返し、全力で駆け出した。
「っ!逃がしませんよユヅルさまっ!」
「逃げますユヅルさまは逃げます!」
そうして、追いかけっこが始まる。
騎士団本部を置き去りにし、出会う2つの階段、迷ってる暇はない。下る方を選ぶ。1段飛ばしで下りていき──曲がり角で危うく人とぶつかりかける。
「ぬあっ、ごめんっ!」
「きゃっ……って、えっ、ユヅル!?」
「ア、アンバー!?……ああいやでもごめんっ、とにかくごめんっ!」
謝罪もそこそこに、緩んだ状態から再度駆け出す。
ぶつかりかけたの、アンバーだったのか……!よくぶつかる縁があるなぁ……いやどんな縁よ。
と、変な感想を抱いていると、後方で。
「──アンバーさま、ちょうどいいところに……!どうかユヅルさまをお捕まえくださいっ!」
「えっ、ユヅルを!?うーん……よく分からないけど、分かったわ!任せて!」
やり取りが、聞こえてくる。
……うん……よく分からないのなら分かるなアンバーっ!了承するなぁっ!
2つに増える足音、それを背に受けながら、走る。必死に、走る。
拓けた通路を抜け、家の脇、風車の脇を抜け、また階段を下る。辿り着く新しい拓けた通路、置かれたベンチやら花壇やらポールやらの間を縫い、追跡者からの距離を稼ぐ。
やがて相対する2個目の風車、その横の階段を一目散に駆け下り、商店街へ。
人が多い……!いやでもこれはチャンスだ!ここで決めるぞ……!
「──止まりなさいユヅル!」
「お待ちくださいっ!」
「ン、ンンっ……いやーーーッッ!!誰か助けて襲われるーーーッッ!!女の子2人組に襲われるーーーッッ!!」
「「えっ」」
ごった返す人混みの中、走りながら喉を整え、叫ぶ。伴って集まり出す彼らの好奇の視線に、ノエルちゃんとアンバーの足が鈍り始める。ふははははっ、これはいけるっ!
「へ、変なこと言わないでちょうだい!」
「う、うう……!」
お買い物中のマダムがあらあらし、酔っ払いがヒューヒューする。それを受け、彼女らは顔を赤く染め──それでもなんとか追いかけてくる。む……もう一押しだね。
「ンンっ……この前も僕、アンバーに押し倒されましたーーーッッ!!今度は何されちゃうのーーーッッ!!??」
「ちょっ!?」
「ア、アンバーさま……!?」
「ちちち違っ、違うよわざとじゃないんだよ!……ユ、ユヅルめぇ……!」
くくく、効いている……更に足取りが遅くなっているな……?よし、この調子で……あっ、ヤバっ──。
「──ぶぺらっ」
──そして、周りの、2人の反応に注意を寄せていた僕は。
足元の段差に気付かずに、顔面からこける。
い、痛たたた……!鼻打った、とても痛……ん?あれ、なんか肩に……。
「──……よくも往来で、変なこと言ってくれたわね……ふふっ、もう逃げ道はないよ……?」
「やっと捕まえました、ユヅルさま……じっくりお話、いたしましょうね……?」
「ヒエっ……」
──気付けば、万力のような力で、肩を掴まれている。恐々と、顔を後ろに向ければ、上気し口元に弧を描く整った2つの顔、その2対のハイライトのない瞳がこちらを見つめていて。
「それじゃあ……」
「逝きましょうか……」
どこに?だとか、いくの字違くない?だとかを問うことすらできず。
ズルズルと、地面を引き摺られていく僕は。
全身にモンドの風を感じながら、ただ叫びをあげることしかできなかった。
「ああああああダメやめてごめんなさいごめんなさいごめんなさい許してぇぇぇぇッッ──!!!」
いじょーで序章部分は終わりです!
この後はテキトーにいくつか短編書いてからりーゆえ行く予定……活動報告で出してほしいキャラ募集してます!よかったらよろ!
ともあれ、とりあえずおつかれしたーっ!