放浪者かっこよすぎなんですけど……!これ、引くしかない……!あとファルザン引いてナヒーダと絡ませてひぐらしコンボも決めなければ……!あうあう~!
ふんふふんふふーん♪と、鼻歌交じりにモンドの街を歩く。
時刻は朝早くでありながらも、人の姿はまばらに見受けられる。
その中の知り合いに、おはようやらよっすやら金貸してやらと挨拶をしつつ。
僕は騎士団へと足を進めていた。
▼▼▼
昨日、怒れる美少女2人に捕まった僕は、民衆や騎士たちの奇異の視線にさらされながら騎士団本部に連行され。
とある幼女御用達の反省室にぶち込まれ、その片方──ノエルちゃんからこんこんとお説教を受けることとなった。
……うん……そりゃあもう、みっちり絞られたよ……昼前に捕まったのに、反省室から出られたのは、夕方頃だったもん。なお、お昼休憩付きという親切仕様。
でもって、解放されたされたと思ったのも束の間、今度はもう片方──アンバーに連れられ、城外へ。昨日の時点での昨日……つまり一昨日に引き続き、魔物の襲来の後片付けをさせられて。
悪いのは圧倒的に往来で変なこと叫んだ僕だけども、それはそれとしてこれもうブラック企業だろ、労基法で訴えるぞと意気込み──手伝ってくれたらノエルちゃんが夕食を用意してくれるとのことだったので、セルフで訴えを棄却、喜んで取り組み。時間いっぱい頑張って──至る今日、そういえば結局報酬を貰えていなかったなと、現在騎士団に向かっているのである……と、見えてきたね。
やがて到着した僕は、門番2人にジンの所在を聞き、執務室にいると確認が取れたので、そのままバーンと扉を開け、ホールへ。
早速執務室へ赴こうとし──反対側、図書館の扉前で、何やら話し込んでいるアンバー、ガイア、リサちゃんの姿を発見。お互いに気付き合う。
「──あら、ユヅルちゃんじゃない。久しぶりね」
「リサちゃんおひさー。ガイアとアンバーもうぃっすうぃっす」
まずにリサちゃんに挨拶、残りの2人にも挨拶をする。
「おう。元気そうで何よりだな」
「昨日ぶりだね!今日も手伝いに来てくれたの?」
「はは、まさかまさか、アンバーったらもう、面白いこと言うんだから……。ちょっとジンに用があって来ただけだよ。……いやガイアでもいいのかな……?というかガイアの方がいいのかな……?」
アンバーの戯れ言を流し、騎士団に来てワケを軽く話したところで、浮かぶ疑問。昨日はガイアがいなかったからあれだったけど、そもそもで報酬の約束をしてくれたのはガイアだよね……。本人とその上のジン、どっちに貰えばいいんだ……?と、考えていると、ガイアが。
「ん?……ああ、なるほど、あの件か。話はもう通してあるぜ。もし貰うんだったら、ジン団長からになるな」
「おっけー、ありがとガイア。……あとこれ聞いていいのか分からないんだけど……3人はお揃いでどうしたの?」
1個疑問が片付いたので、次いでにもう1個片付けてみようと問うてみる。なんで彼女たちは集まって、何について話し込んでいたのだろうか……?
「そうね……いえ、むしろユヅルちゃんには聞いてもらった方がいいかもしれないわね」
代表して、リサちゃんが言を発する。
しかし聞いてもらった方がいいかもしれないとな……?
「というと?」
「わたくしたちが話していたのは、あなたが用があるというジンのことについてなのよ」
そう、前置きして。
彼女は詳細について語り始めた。
▼▼▼
「──うーん……つまりまとめると、ジンがこの頃働きすぎで心配だから、なんとかして休ませたい……ってことであってる?」
「ええ、あってるわ」
話を聞いて。
解釈が適当であることをリサちゃんに確認してから、僕は少し考える。
ふむぅ……ジンがワーカーホリックなのはキャラストーリーで分かってるし、働きすぎで彼女がぶっ倒れる可能性があるのも分かってるので、みんなが心配するのも頷ける。というか、そうでなくても好きな人には無理してほしくないしね。休ませたい気持ちは理解するにあまりある。……でも、相手がジンだからなぁ……。
「ふつーに頼んでもダメなんだよね?」
「うん……ジンさんったら、休むように言っても、何かしら理由付けして結局休んでくれないのよ……はぁ……」
気落ちして、アンバーが言う。むーん、そっかそっか……。
「ちなみに、今のところで何か案は出てたりする?」
「……一応、俺たちが仕事を先に処理してやって、なしくずし的にジンを休ませるっていうのを考えたんだが……」
「おそらく彼女なら、どこからか仕事を見つけてきちゃうのよね……」
「あちゃー……」
光景が目に浮かぶ……なんならあの娘、猫探しとかでも二つ返事で引き受けちゃうからな……そんな立場じゃないでしょ……。
「……うーん……じゃあ、逆転の発想でもしてみようか。そうだね……仕事をなくすんじゃなくて、彼女が仕事に取り組めなくさせるとか、どう?」
「悪くなさそうね……でも、具体的には?」
「例えば……そうだね、僕とかだったら、近くにお酒があったらもう仕事できないかな」
「いや、ユヅルはそもそも仕事に取り組もうとしないでしょ」
案を固めていく途中にアンバーからの鋭い一言。たはーっ、1本取られたよーと笑いつつ、話に戻る。
「──だがなユヅル、相手はあのジンだ。好きなものが近くにあったとしても、我慢すると思うぜ?」
「いやガイア、必ずしも好きなものを用意しなければいけないわけじゃないよ。彼女が仕事に集中できなくなれば、なんでもいいんだ」
「なるほどな……しかし、仕事に集中できなくなるもの、か……アンバー、何か思いつくか?」
「わたしですか!?う、う~ん……なんだろう、うるさいものとか?あと……奇妙なものとか?」
ある程度固まってきたところで、アンバーが意見を述べる。たしかに、うるさいものとか奇妙なものとかがあったら、気になって仕事どころじゃなさそうだね。
「うるさいもの、奇妙なもの……モノ……者、ね……。……うふふっ、1つ、良い案が浮かんだわ」
「奇遇だな、リサ。俺もだ」
と、そんな意見を受けて、ガイアとリサちゃんは何かを思いついたようで。
「お、マジで?ガイアもリサちゃんもやるなぁ……どんな案?教えて教え…………えっ、なんで2人とも笑いながら無言で僕を見てるの???……ちょっ、なになになに怖い──!」
▼▼▼
──よく、分からないままに。
僕は、リサちゃんから渡されたいくつかの本を片手に、執務室のドアをノックする。
「どうぞ」とジンの返事が聞こえてくるのを待ってから、ドアを開け、形式的に言葉を紡ぎながら中へと入る。
「お邪魔しまぁ~す。邪魔すんやら帰ってやー。あいよぉー」
そして外へと出て、一通りの作法を終えた僕は、ただいまーと中へ戻り。
すぐ右手側にあるソファーにぽすんと腰かけ本を置き、内1つを取って読み始める。
タイトルは『テイワット観光ガイド』。前に図書館に訪れたときから読みたかったけど、そのときは他の人が借りてたからなかったんだよねー……。それを知ってたリサちゃんが、あれから返却されたものを取っておいてくれてたらしい。リサちゃん、いい人すぎんか?好きです。
「──いや待ってくれ待ってくれ待ってくれ」
心中でリサちゃんに告白をしていると、奥のデスクに着いていたジンが、身を乗り出し全力で呼び止めてきて。
「え、なになにどしたのジン」
「どっ、どうしたもこうしたも……わ、私がおかしいのか……?そんなはずは……」
「ん?……ああ、さっきの挨拶は、西の方で見られるものだからね。ジンが知らないのも無理はないよ」
「西の方……たしかに私はあまり行ったことがないから、知らないのも無理はないかもしれないが……本当かどうか……非常に怪しいな……」
そう言って、ジンはジトリと、疑うような視線を寄越してくる。誠に遺憾ですね……。
「──ちょっとちょっと……僕がテキトーな嘘を吐いているって言いたいわけ?僕がそんな人間に見える?」
「ああ」
真顔で即答されたんだけど。ウケる。まぁ見えるなら仕方ないよね。
「……というか、聞きたいのはそれだけではないぞ。どうして君は、この部屋に入って来ていきなり読書をし出したのだ」
「んー?それはあれだね、リサちゃんたちに頼まれたからだよ」
「リサたちに……?」
僕の言葉に、いつの間にか席に戻っていた彼女は、きょとんとした表情を浮かべる。
「そう。なんか最近ジンが仕事に根を詰めすぎだーって、身体壊しちゃうぞーって、そんな感じでね」
「それは……だが大丈夫だ、私は問題ない」
「問題があってからじゃ遅いんですぅー」
「うっ……」
みんなが心配していることを告げても尚、お仕事を致そうとする彼女にそう注意をすると、気まずそうに視線を逸らす。まったく、困ったちゃんめ……。
「……でも、リサちゃんたちには執務室に入って読書でもしてろとは言われたけど、何かしろとは言われてないんだよね。ただ執務室に居るだけでいいとか……しかもあの話の流れだと、まるで僕が、近くに居るだけで仕事に集中できなくなるような、うるさくて奇妙な人間みたいだし……変なのー」
「……ん……ああ……うん……」
なんでかしらん?と疑問を醸せば、ジンは生返事。も1つなんでかしらん?
「……あっと、違う違う、読書の前に話さないといけないことがあるんだった。……へへっ、ジンの姉御、その、報酬の件なんでやんすが……」
「程度の低いチンピラの真似はやめてくれ……」
手揉み揉み揉み、腰を低くすると、ジンは頭に手をあてて溜め息。残念、お気に召さなかったようですな……。
「それでそれで、その、報酬はー……?」
「心配しなくても大丈夫だ。きちんと用意してある」
「やったー!」
ジンの台詞に、思わず声をあげて小躍り。これでお酒が飲める……!お酒パラダイスや!ひゃっほー!!(微塵も懲りていない)
1人歓喜に沸いていると、ジンはデスクの下部をがさごそ漁った後、膨らんだ袋を手にすくと立ち上がりこちらへ向かってくる。
モラ……絶対モラ入ってるよあれ!しかもけっこーパンパンに膨らんでる!騎士団金払い素晴らしいな!避難誘導手伝った甲斐があった!……あ、でもよく考えたら、その後アビスの魔術師に殺されかけてたし、わりと適正報酬なのかも……?ま、モラ貰えるならなんでもいいや!!(思考放棄)
ちょっとして、ソファに座る僕の前までジンはやって来ると、そこで居住まいを正し。
「──西風騎士団から、そして私個人からも君に感謝を。君のおかげで、モンドの人々は円滑に避難をすることができ、また我々は魔物の対処に集中できた。……ありがとう、ユヅル」
「お、おお……ど、どういたし、まして?」
西風騎士団流の礼を決め──彼女は、優しく微笑みながら、袋を渡してくれる。それを僕は、ちょっとキョドりながら受け取る。
……いや、真面目に感謝されると、なんか……気恥ずかしいんですけど……。別にそこまでのことはしてなくない……?し、したのかなぁ……?
「……ふふっ。照れているのか?」
面映ゆさから惑っていると、ジンが、今度は悪戯っぽい笑みを浮かべてからかうような言葉を投げてくる。なんだぁてめーやる気かぁ……?
「……べっつに、ジンが大好きな恋愛小説を読んでいるときほどは照れてませんけどぉー?」
「っ!!??ちっ、違っ……!照れながら読んでなどっ……!」
意趣返しに煽れば、顔をリンゴのように真っ赤にし、身ぶり手振りも交じえながら否定するジン。
なによ、可愛いじゃない……!
「そ、そもそもだなっ、私は恋愛小説を読んだりはっ……た、嗜む程度に読むだけで、大好きというわけではっ……!」
「あはは、照れてんのー?いいじゃん恋愛小説好きでも。可愛いよ?」
「うっ、くぅ……」
言うと、言葉に代わりに鋭い視線が返される。
ほぉ……赤らんだ顔に、金の髪の合間から覗く潤んだ瞳での睨み……堪らないですね、生唾飲み込むんじゃう。ごくり。
ニヤニヤしながら見つめて返していると、堪えかねたのか、彼女はぷいっと顔を背け、パタパタと手で自らを扇ぎ始める。
その愛らしい様を堪能しつつ、後10分くらいはイジり倒してあげようかなと考えていると──ふと、彼女の扇ぐ手が止まり。
「……そういえば君……どうして私が恋愛小説好きだということを知って──」
「ジンってもう朝ご飯食べたぁぁぁっっ!!??僕まだなんだけどぉぉっ、まだだったら一緒にどおぉぉっっ!!??」
当然の疑問をぶつけてこようとしてきたので全力でインターセプトする。あかん、ふざけすぎたっ……!そっち方面でジンに目を付けられたら終わるのに、何してんの僕!バカ!許さないぞ!でも赤面してるジン可愛かったから許す!とりあえず今は誤魔化し、誤魔化しに集中だ……!
「む?いや、今朝はまだコーヒーを飲んだだけだが……」
「ならちょうどいいねっ、一緒にご飯行こう、鹿狩り行こう!」
「あ、ああ、別に構わないが……」
「よし、それじゃあ早速出発だ!」
ばっと立ち上がり、ジンの手とモラの袋とを掴んで扉へ向かう。勢い、勢いが大切だ……!
「──なっ、す、少し待ってくれ、その、手が、あと、君の本が置かれたままっ──」
「どうせ戻ってくるから本は置きっぱでいいよ!」
「い、いや、良くないのだが……!君、この後もここに居座る気か……!?」
──そうして、ばたばたと、慌ただしくしながら僕は。
ジンと手を繋いだままに執務室の外へ、そして鹿狩りへと、揃って金の髪を靡かせながら流星が如く駆けていくのだった。
うおおおおおおおおお金色☆5演出(すり抜けジン)だぁぁぁぁっっっ!!!!!
尚、ただ彼女に不信感を持たれないようにと必死に為したこの行為を、どこかのモンドのアイドルが目撃していたことで、この後一悶着起こるのだが……それはまた別の話だ。
感想やら評価やらお願いします!モチベになる!
あと次は、物理と太もも最強れでぃの予定……!恨み、覚えていけ~?