キャッツテール開放されましたね……猫と触れあえるのマジ羨ましい。
感想評価、誤字報告、あざあざ!
モンドは、言わずと知れたお酒の大国だ。
お酒の生産に販売、買い入れなどを、7国1番の広い範囲で執り行っており、その為モンドでは、テイワット大陸における大抵のお酒を見かけることができる。
そんな国に住まう多くの民は、当然のごとく酒好きであり、その需要に応じて、供給を務める酒場もやはり数多く存在する。その中でもトップクラスの人気を誇るのが、僕がご贔屓にさせてもらっているエンジェルズシェアである。
エンジェルズシェアは広い店舗を有しており、またアカツキワイナリーと提携しているので、高品質かつ多岐に渡るお酒を、安価で味わうことができる。次いでにごく偶にだが、バーテンダーをディルックが担当してくれることもある。これらの強い魅力が、エンジェルズシェアをモンド1の人気店に押し上げているのだ。
しかし、そのエンジェルズシェアに並ぶ人気店が、モンドにはもう1つ存在する。
名を、『キャッツテール』と言う。
キャッツテールは、僕の飲み友であり、酒豪四天王でもある女性、マーガレットが経営をしている酒場だ。
特徴としては、お酒を猫ちゃんと一緒に楽しめるというもの。
おもちゃに目がないロジャーに、暖かい所とねこまんまが好物のネルソン、世界が自分を中心に回ってると思っている生意気ちゃんのペイズリー、喋ることができる(できない)リトルプリンスなど、可愛らしい猫ちゃんたちが、キャッツテールでは応対してくれる。
要は、猫カフェの酒場版である。
そこら辺のファンシーさが理由で、エンジェルズシェアと違ってキャッツテールでは、比較的女性客の割合が多い……らしい。
らしい、という表現を使っているのは、キャッツテールを僕が訪れていないので、内情をはっきりとは知らないからだ。
さて、ではどうしてお酒大好きぴーぷるである僕が、キャッツテールを訪れていないのかというと、実は猫が苦手だからである──なんてことは、ない。
むしろ猫、大好きですらある。スコティッシュホールドにアメリカンショートヘア、ラグドール、スフィンクス、マンチカン、ダイジン、ドラえもん、宇宙猫……大抵の猫は可愛がれる自信がある。だって猫、可愛いもん。やっぱ猫よ猫。あまねく民は、猫さまを崇めよ……!
──とまぁ、これで、僕の猫好き具合は分かってもらえただろうが……ならば何故、お酒も猫も楽しめるキャッツテールを訪れていないかというと……まぁ、その……えっと……。
「──ええっ!?う、嘘でしょ!?う、噂の相談屋が、この前の変態だったにゃんて……!」
「へ、変態はやめてほしいなー……」
──……ちょっとバーテンダーちゃん相手にやらかしましてね、店の中に入ってすらいないのに出禁になっているからです……えへっ?
▼▼▼
──鹿狩りの店先に構えるテーブル席で、久し振りの相談屋稼業を行い。
3人ほどのお悩みを解決し終えたところで僕の前に現れたのは、ちんまい女の子だった。
ぴょこんと縛り上げられた前髪が特徴のピンクの髪の毛に、ピクピクと動いて存在を主張する猫耳。瞳は大きく、翡翠に煌めく。アームオープンシャツとショートパンツから覗く素肌は少々眩しく、またふよふよと揺らめく尻尾は愛嬌に満ちていた。
彼女こそが、キャッツテールで看板バーテンダーを張る少女──ディオナちゃんである。
氷元素と弓矢を駆使した戦闘スタイルで、シールド役兼ヒーラー役として活躍する。その性能と、ロリーんとした見た目、ツンデレさんな性格とが相俟って、なかなかの人気を博していたキャラクターだったわけだが……その彼女は今、眦をキッと吊り上げ、こちらを射るように睨んでいた。こわい……。
「……あ、あのー……ディオナちゃん?その、睨むのをやめてもらえると、嬉しいんですが……」
「イヤよ!うちの猫にあんなことしてっ、それにあたしにまでしようと……!本当に変態にゃっ……!」
「ちょっ、違っ、言い方っ!やめて騎士団呼ばれちゃう!」
ふしゃーっと威嚇しながら、ものすごいことを言ってくる彼女を必死に宥める。
何も別に、本当に猫ちゃんやこんな小さな娘にいかがわしいことをしようとしたわけじゃないんだよ……!ちょっと、そこの道行くお方!ギョッとしないで!そそくさ立ち去らないで!違うの、ただ、そう僕はただ──。
「──ただ、猫吸いしてただけじゃないかっ!!!」
──それは、僕がモンドにやって来て、1週間も経っていない頃。
その時点で、既にいくつかの酒場のお世話になっていた僕は、そういえばとキャッツテールの存在を思い出していた。忘れていたのは、エンジェルズシェアのお酒の大満足していたので、わざわざ新しいお店を開拓しなくてもいいだろうと考えていたからである。
そして僕は、ある日にキャッツテールを訪れんとして──その店前の階段。そこに、のんびりゴロゴロたむろしている、お猫さまの姿を見つけて。
あまりの可愛さに打ちのめされた僕は、すぐさま近くにあった鹿狩りに駆け込み、貢ぎ物である餌を貰って、献上し。
対価として、猫吸い──もふもふの猫のお腹に顔を埋め、息を吸い込む猫好きの嗜み──をさせていただいていたところを、店から出てきたディオナちゃんに目撃され。
得てして、猫吸いとは余人には理解されにくい行為。例に漏れず、彼女もそうであったようで、目を大きく見開いてピシリと凍りつく。
死んでいく、場の空気。
端から見たら、やはり不審者のこの光景、どう説明したものかと悩んでいるうちに、するりと僕の腕から猫ちゃんは逃げてしまい。
テンパり尽くした僕が、最終的に捻り出したのは──「き、君も吸っていい……?」という言葉で。
晴れて僕は、キャッツテールを出禁になったのだった。……うん、出禁にされて当たり前だなこれ。むしろ往来を歩けていることが奇跡だろ。だってキショすぎるもん……。あまりのキショさに実際ディオナちゃんも、我を忘れて暴れてたし。遅れて店から出てきたマーガレットが止めてくれなかったら、僕はどうなってたんだろう。ガクブルだわ……。
──とまぁ、そんな経緯で、険悪ツンツンディオナちゃんなうな状況になっちゃっているというわけである。うーん、自業自得だなぁ……。
「うにゃあっ……!」
「そ、そんなに睨まないでよ……ほんとごめんって、猫吸いも控えるようにするからさぁ……もちろんディオナちゃんも吸わないし。ってかあれは流石に冗談だもん……」
言い募って、心を解そうとするも、反応はそれほど芳しくなく。
困った……うーむ、どうすれば…………あ。
「そーだ、ディオナちゃんって、悩みがあってここに来たんでしょ?タダで聞いてあげるよ!解決策も考えるし、あと、鹿狩りで何か奢ってあげるよ!」
なので許してくださいっ!と、両の手の平を拝むように合わせて、ズズイっとお願いすれば、彼女は、複雑そうな顔でうーんと少し唸り。
「………………しょうがないから、今回はそれで許してあげる。でも、次はないからね?」
渋々、そう言ってくれて。
「おおっ、ありがとうディオナちゃん!大好き!もうじゃんじゃん奢らせてもらうよ!……あっ、奢るのはお酒でいい?」
「帰るにゃ」
「あぁぁぁぁぁ嘘嘘ごめんって冗談だって帰らないでちょっサラさん焼き魚ぁっっ!!!焼き魚大量にお願いっっ──!!!」
▼▼▼
「──さて……それじゃあディオナちゃん。君の悩みはどんなものなのか、聞かせてもらってもいいかな?」
束の間の楽しい昼食を終えた僕は、向かいに座るディオナちゃんに、問いかける。
それを受けた彼女は、コップの水で軽く口を湿らせてから、話し始めようとし──もにゅもにゅと口を歪めるに留めてしまう。
…………???
「……え、なんで……?は、話してよ、相談内容……なんで押し黙ってるの……?」
「……よく考えたら、あなたに話しても、意味がないような気がしてきたんだよね」
「そ、そんなことないよっ!こう見えて僕、結構実績あるよ!?街のみんなから、騎士のお方に至るまで、あらゆる人からのお悩みを解決してきたし!」
「んー……そこまでいうなら……」
何やら僕を猜疑するような目で見てた彼女を、どうにか説き伏せる。あまり僕を無礼るなよ……原作知識とノリと口先で、大抵の悩みは解決したかのように見せかけられる自信が、僕にはあるのだから。
そうして、かもんべいべーと彼女に続きを促すと、その口が開き。
「──あたしはモンドの酒造業を破壊したいの!そのために、まずいお酒を作ろうとしたりとか、色々やってるんだけど、うまくいかなくて……どうすればいいと思う?」
そんな恐ろしいことを言ってきて。
「……うん……いや……それは諦めよっか、ディオナちゃん」
「ほらっ、そんなこと言う!だからあなたに相談しても意味がないって言ったの!もぉ!」
優しい声で諭すと、ぷんすこっと彼女は怒り出す。
けど、「ほら」って言われても……そりゃそういうこと言っちゃうでしょ……酒飲みからしたらむしろホラーな内容だし……何よ酒造業破壊って。もうテロリストじゃんそんなん。騎士団呼んどくか?
……んなー……でも、ディオナちゃんに協力してあげたい気持ちがあるのもたしかなんだよね……。出会い頭にめちゃくちゃ評価を下げてるし、多分僕が酒飲みってところでもそこそこ下がってるだろうから、ここらで評価を上げとかないと、今後のお付き合いができなさそうなんだもの……うまいこと仲良くなって、キャッツテールで1杯頂きたい。それに、そんな打算抜きでも、悩んでる彼女を無下にしたくないってのもあるから……まぁ、ちょっと真面目に考えてみよう。
「──酒造業破壊、酒造業破壊かー……つまるところ、お酒の人気を無くしたいってことだよね?」
「うーん……簡単に言えばそうだよ」
「なるほど……」
呟いた僕は、椅子の背もたれに体重をかけて、青い空を仰ぐ。
そも彼女が酒造業を破壊したい……つまりお酒が嫌いになったのは、彼女の父親が原因である。
ディオナちゃんの父親のドゥラフは清泉町で最も優れた狩人だった。
毅然な出で立ちや、飛びぬけた狩りの技術、冷静な判断力を持つ彼は、清泉町全ての狩人から一目置かれる頭領であり、手本であった。そのためディオナちゃんにとって、幼い記憶にいる父はいつも輝いており、彼女の憧れでもあった──のだが。
ある時、そんな父の印象がひっくり返るような、出来事が起きてしまった。
ドゥラフが酔っ払ってバカになってる姿を、彼女が目撃してしまったのだ。曰くその様は、お腹いっぱいになって泥の中で転げまわる猪みたいだったらしい。そんな人、酒場でよく見かけますね……。
そしてディオナちゃんは、全てをお酒のせいにした。彼女にとって、父は間違いを犯さない、完璧で頼れる存在だったからだ。
お酒は人を惑わせて、人の頭をおかしくする悪いもの。
彼女の奥底には、その考えが深く根付いている。
ので、彼女が持つお酒の印象を変えるのは、困難だろう。としたら……。
「……ディオナちゃんって、たしかドリンクとかも作れたよね?」
「うん、作れるよ」
「なら、不味いお酒を作ろうとするよりも、美味しいドリンクを作るのに力を入れた方がいいかもね」
「なんで?モンドの酒造業を破壊するのと、まったく関係ないよね……?」
「いやいや、それがそんなことないんだな」
首を傾げる彼女に、チッチッチッと指を振って、その言葉を否定する。
「モンドにおいて、お酒っていうのは非常に身近なものだ。それこそ、小さいときから周りに存在してる」
「最悪なことにね……」
「最悪とまで言っちゃうかー……ンンっ、ともかくだ。だからモンドの子供たちは、多分お酒にある種の憧れみたいなのを持ってたりすると思うんだよね」
小さいときって、そういうのに憧れるからなー……煙草とか、車とか、大人っぽいもの。
「そこで君の激ウマドリンクの出番だ」
言うと、納得しながらも不服そうな顔をしてたディオナちゃんが、ぴくりと反応する。
「あたしの?」
「そう。子供たちが大人になり、念願叶って、初めて飲んだお酒……それよりも遥かに美味しいドリンクがあったら、彼らはどうするだろうか。……僕が思うには、なんだお酒ってこんなもんだったのかって失望して……」
「──お酒を飲まなくなる……?」
僕の言葉を引き継いで、ディオナちゃんは呟く。それにおもむろに頷いてみせれば、彼女は感心したように溜め息を1つ漏らす。
「ただ勿論、全部が全部、うまくいくとは限らないけど……まぁ、そこは君の腕次第ってところだね」
続けて告げると、彼女は。
「……悪くないアイデアね。あなた、なかなかやるじゃない」
片眉を上げ、そう批評してくれる。
おおっ、好感触……!これである程度好感度は、回復できたんじゃないかな?-100から-99くらいにまで。……いや、1しか回復しないのかい。
「──よぉしっ!そうと決まったら、材料集めにゃ!早速森に──……でも、頼もしい大人が一緒じゃないと入っちゃダメだって、パパが言ってたんだよね……」
椅子から立ち上がり、叫んだかと思えば、そんなことをぽしょりと呟き。
そういえばと僕を見て。
「──あっ!でも、あなたが一緒なら──……あなた、別に頼もしい大人じゃにゃいね……」
「うーん、手厳しい」
「……はぁ……仕方ない、清泉町に行って誰かについて来てもらおう……」
嘆息して、代案を述べた彼女は。
「──それじゃあまたね、変態さん。……一応言っておくけど、あたしのいない間にキャッツテールに近付こうなんてしちゃダメだからね!」
「あははっ、分かってるって……バイバイ、ディオナちゃん!」
僕を軽く睨めつけ注意してから、去っていく。
その後ろ姿を、手を振って見送り。
やがて、往来の人混みに紛れて見えなくなる。
……ふぅ……いつかは彼女のお酒も飲んでみたいものだね……いやガチで。本気で。真剣に。
そんなことを思っていると──ポンポンと、肩が叩かれる。
なんぞやと振り返れば、数名の西風騎士が、控えていて。
「……ず、随分物々しいですね……え、あれ、僕またなんかやっちゃいました?(なろう系主人公)」
と、すっとぼけて尋ねると。
「ええ。なんでも、幼い少女にいかがわしいことをしようとしたことがあるらしいとか、そういった内容の通報が入りましてね……」
ヤバい答えが返ってきて。
Oh~……じー☆ざす。
「──違っ、ちょっ、誤解なんですってマジで!ただ吸ってただけでっ、いや勿論彼女は吸ってませんよ!?吸ってたのは別の子で……ほんの冗談だったんですって、信じてください!!」
「続きは騎士団でお聞きしますね」
「あっ、ちょっ、離して、誤解、マジで誤解なんだって、ああっ──!!!」
次は多分蛍……。それ入れて、あと3話書いたらりーゆえ行く予定です。ただし予定は破られるものなので悪しからず。
誤字報告マジでありがとうございました……!キャッツテールが全部キャツテールになってた……ウケる……!