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特に前回は誤字エグくて申し訳ない……!なんだキャツテールって。ッはどこ行ったの……?
閑話 星拾いの崖 『なんのこれしき正岡子規』
ある日のこと。
騎士団から貰った報酬も心許なくなってきて、そろそろ何か、真面目な金策をしなきゃいけなくなった僕は。
とりあえずは相談屋をして小銭を稼いでおこうと考えて、鹿狩りに赴くと。
いつも使わせてもらっていたテーブル席には、思いもよらない先客がいて。
「──あれっ、蛍ちゃんとパイモンちゃんじゃん!奇遇だね、元気してたっ!?」
テンションがマッハでぶちあがる。
何を隠そう、ちょこんとその席に着いていたのは、泣く子もときめく最強美少女の蛍ちゃんと、世界1可愛い非常食のパイモンちゃんだったのだ。そりゃテンアゲだよね。アゲアゲ~!
そんな僕の呼びかけに気付いて2人は揃って振り返り──しかし表情には、差があって。
蛍ちゃんは、パーっと花咲くような笑み、パイモンちゃんは、眉を寄せての不満顔を、それぞれ浮かべていた。
……え、どっちも可愛い……好き……蛍ちゃんは最早神々しさを感じるレベルの笑みで可愛いし、パイモンちゃんは不満顔なのに可愛いという……もう、可愛くてわけ分からん。
「──遅いぞユヅルっ!どれだけオイラたちを待たせるんだ!」
「ちょっとパイモン……」
毎度の如く可愛さに頭をやられながら近付くと、パイモンちゃんに愚痴られる。な、なんでだろ……?遅い……?
「よ、よく分かんないけど……とりま腹切りしとけばいいのかな?介錯は蛍ちゃん、お願いね?」
「うわぁぁぁっ、そんな恐ろしいことしようとするなぁっ!」
理解が追い付かないままに、侘び代わりの腹切りを提案すると、パイモンちゃんが手足をバタバタさせながら、慌てて止めてくる。お可愛い。
「もぉ、パイモンったら……ごめんね?大丈夫、ユヅルは悪くないよ。わたしたちが、勝手に待ってただけだから」
すると、それを呆れた様子で見ていた蛍ちゃんが、そう言ってくれて。
ふむ、待っていたとな……?
「……え、僕を待ってたの?マ、マジで?」
「うん。この前、一緒にピクニック行こうって約束したでしょ?わたしたちの方は探索が一段落したから、もしユヅルが良かったら今日、どうかなって思って待ってたの」
なされる蛍ちゃんの説明。……しかしそうか、あのときの約束を覚えてくれてたのか……え、どちゃくそ嬉しいんですけど???どんどん好きになっちゃう蛍ちゃん……というか、そんな彼女を待たせていた僕はやはり腹切りすべきでは???
「……それでユヅル。今から行けるかな?」
「美味しいご飯もたくさん用意してあるぜっ!へへっ!」
考え込んでいると、2人からのお誘いが来て。
僕は、それまで考えていたことを放り捨てて、満面の笑顔で答えた。
「──喜んで行かせてもらうよっ!!」
▼▼▼
──かくして僕は、2人とピクニックに出ることとなった──のだが……。
「あれ……?蛍ちゃん、方向違くない?そっち、城門じゃないよ?……あ、もしかしてまだ準備するものがあったの?」
鹿狩りを発って、現在向かっているのは城外に繋がる城門ではなく、むしろ街の中央で。
疑問に思って問いかければ、彼女は。
「ふふっ、いいからいいから」
悪戯っぽい顔で、そんな返事を紡ぐ。
は???何その顔???またまたどちゃくそ可愛いんですが???好きすぎてどうにかなりそう。
見惚れながら、小階段やら風車の脇やらを進んでいる内に辿り着いたのは──あるモノの前だった。
それは、銀縁の鉾のような形をしていた。青い宝玉と金の装飾が所々にあしらわれており、豪華な印象が見受けられる。中でも、何より特徴だったのは、それが浮いていたことだ。こんな奇妙なモノ、そうそうお目にかかれるものではないだろう。
「これって……」
「ワープポイントって言うんだぞ。これに触れると、別の場所のワープポイントに移動することができるんだ!」
パイモンちゃんが解説を添えてくれる。
やっぱりワープポイントだよね……!?そっか、蛍ちゃんたち使えるのか……羨ましい……僕もモンドに来たての頃、ワープポイントではと考えて色々弄ってみたけど、うんともすんとも言わなかったんだよね……挙げ句に騎士団呼ばれたし。僕、騎士団のお世話になりすぎでは???
……けど、あれだね。ゲームとはちょっと仕組みが違うみたいだ。ワープポイント同士じゃないと移動できないなんてこと、ゲームではなかったし。
「それじゃあユヅル、手を出して?」
「ん?おっけおっけ、はい」
少し思案していると、蛍ちゃんからそう言われて。
何も考えずにひょいっと右手を差し出すと──その手が、卒然彼女にぎゅっと握られて。
……え?……あれ、手が…………うおおおおおっっ、蛍ちゃんの手柔らかいふにふにしてる温かいスベスベしてるなにこれどういう状況っっ──!?
混乱に陥ってる間に、ワープポイントが薄っすら青く輝き──視界が一変する。
気付けばモンドの街並みは消え失せ、辺りには、緑が広がる。目の前の小さな湖には青鷺がたむろし、その彼方にはモンド城が見えていた。
「よし、着いたね」
「だなっ!」
辺りを軽く見回しながら、蛍ちゃんが僕の手を離して言う。
それまでドキドキに支配されていた僕は、脱力感を覚えて地面にしゃがみ込んだ。
うあぁぁぁぁびっくりしたぁぁぁぁ……!急に手を、手を……!っづぁぁぁぁ柔らかかったぁ……!ワープ、最高だなっ!!イェイイェイ!ワープ!最高!ワープ!!最高!!
心中で、喜びからのワープ最高ダンスを踊っていると──ふと、違和感。
……あれ?なんか身体重いの、長くない……?脱力感って言ってもちょっと異常っていうか……ってむしろこれ……倦怠感とか疲労感に近いような……?
不思議に感じていると、蛍ちゃんがこちらの様子に気付いて。
「……あ、しまった……!ごめんねユヅル、言い忘れてたんだけど……ワープポイントを使うと、移動した距離分の体力が持ってかれるんだ」
「おお、そうなんだ……道理で疲れを感じるわけだ」
なるほど、時間は節約できるけど、体力は……って感じね。あいしーあいしー。そこら辺も差異があるんだ。
「だ、大丈夫かユヅル……?」
「ああ、パイモンちゃん、大丈夫だよ。なんのこれしき正岡子規」
「マサオカ……?」
「それより蛍ちゃん。ここ、どこかな?」
マサオカ……?と頭をぐるぐるさせてるパイモンちゃんを横目に、蛍ちゃんに尋ねる。彼女は微笑を携えながら、口を開いた。
「ここは、星拾いの崖の近くだよ。星拾いの崖は海が一望できるし、セシリアの花が所々に咲いてて綺麗で、ピクニックにぴったりなんだよ」
「へー……綺麗な場所で、綺麗な蛍ちゃんを見れるのか……楽しみだね!」
「もう、ユヅルったら……ふふっ、それじゃあ行こっか」
「うん、でっぱーつ!」
「マサオカ……?」
そして僕たちは、方向転換をして、道沿いに歩き出す。
マサオカパニックに嵌まっているパイモンちゃんを元に戻しつつ、お互いの近況だったりの雑談を交わしていく。
ほうほう、璃月の領域にはもう入ったんだ……でも街にはまだ入っていないのね。んじゃあまだストーリー第1章は始まっていないと。なーる……。……あ、なんか遺跡っぽいのが見えるね。……ああ、千風の神殿!あれが!おお、すごい、……!うわっ、遺跡守衛いる!よっ、独眼坊!
そうしていると、やがて道が拓ける。
敷き詰められる草花は、緑にベージュ、白にピンクにと色とりどり。まさしく千紫万紅の光景に足が止まり、ほぉと溜め息が零れる。
たしかに綺麗だわ……!ゲーム内だったり、ベアやドンナちゃんだったりの話で分かってたはずだったけど……これは直に見ないと、本当の魅力が伝わらないね。
「──おーいユヅル!立ち止まってないで、早く来いよ!ご飯だぞっ、ご飯っ!」
そんな美景に心を奪われキョロキョロしていると、知らぬ間に先に進んでいたパイモンちゃんが、こっちゃ来いと手招き。
その傍で蛍ちゃんも、どこからか取り出した料理を並べていて。
2人をまた待たせるわけにはいかないと、僕は小走りに彼女らに駆け寄り。
賑やかなランチが始まった。
▼▼▼
「──改めて思うけど、ワープポイントってスゴいよね……!」
蛍ちゃんとパイモンちゃんとの至福のご飯タイムが終わり。
まったりとした時間が流れる中、地面に仰向けに寝そべった僕は、蛍ちゃんに話を振る。
お腹が膨れてウトウトしているパイモンちゃんを太股に乗せて、お姉さん座りをしていた蛍ちゃんは、続きを促すように小首を傾げた。……え待ってパイモンちゃんその状況羨ましいなぁ……交代してほしい。でも蛍ちゃんの状況も羨ましい、交代してほしい。……ん?そしたら両方とも僕では???
「いやー、だってさ。ワープが使えてなかったら多分僕ら、まだここを目指して歩いているでしょ?そう考えると、えげつない代物だなって」
「そうだね。ワープポイントがあるおかげで、わたしたちもスムーズに探索を進められてる……うん、ワープポイント様々だね」
「だね!……あ、でもさでもさ、蛍ちゃん」
「何かな?」
「ワープポイント同士でワープできるって言ってたけど……じゃあ秘境は秘境同士じゃないとワープできないの?それともワープポイントと秘境間は、ワープするのに問題なっしんぐ?」
「……?秘境はワープできないよ?」
「え」
のんべんだらり、駄弁っていると、何やら気になる情報がひょこりと現れる。
秘境はワープできない……?こっちだとそうなのか……じゃあ七天神像とかもワープできなかったり?うーん、違いが難しいな……というか、秘境にワープできないと、色々不便では?ほら、聖遺物周回とかめんどそう。ただでさえ面倒なのに……。ちょっと聞いてみるか。
「──秘境にワープできないんだとさ、やっぱ不便だったりしない?聖遺物集めるときとか、どうしてるの?近くのワープポイントから行くのかな?」
「……?聖、遺物……?……何かな、それ」
………………え???
「ほ、蛍ちゃん、聖遺物知らないの!?ほんとに!?」
「う、うん……えっと、そんなに驚くことなの?」
「そんなに驚くことだよ……!えぇ、マジでかぁ……!」
起き上がり、頭を抱えて狼狽する。それほどまでに、彼女が聖遺物を知らないというのは衝撃的な話だった。
聖遺物とは、原神というゲーム内において、プレイアブルキャラクターに装備してステータスを上げることができるアイテムである。
装備できる聖遺物は、生の花、死の羽、時の砂、空の杯、 理の冠の5種類1セット。
またすべての聖遺物には、メインステータスと、最大4つ付与されるサブステータスがあり、その内容は様々で、これらのステータスとセット効果によって、キャラクターの能力を飛躍的に上昇させることができる。
そして、このとんでもな聖遺物たちを入手する主な方法として、各地に点在する祈聖秘境に潜るというのが存在しており、原神プレイヤーはゲームにある程度慣れてくるとこれを繰り返す──すなわち周回をするようになる。何故なら聖遺物のステータス内容は完全ランダム制、当たり外れが存在してたからである。聖遺物厳選……火魔女……絶縁……育てると上昇する防御力……うっ、頭がっ!
……とにもかくにも、聖遺物は、装備者を強化してくれるお助けアイテム。既に蛍ちゃんもゲット&使用してると思っていたのだが……そっかしてなかったのか……聖遺物でぱわわっぷして、なるべく安全に旅を進めていてほしかったんだけどなぁ……。いや、もしかしたら、そもそもこの世界に聖遺物が存在しないのかも?あるいはあったとしても、聖遺物としての効能はないかも?
思い悩んでいると、きょとんとした顔の蛍ちゃんが尋ねてくる。
「ねぇユヅル、結局聖遺物って何なの?」
「ん?ああ、そうだね……言うなれば……お宝?」
それに、少し迷いつつ答えると。
「「──お宝っ!?」」
いつもは落ち着いている蛍ちゃんも、さっきまで寝ていたはずのパイモンちゃんもがこちらに身を乗り出し、目をキラキラ、興奮に頬を染めさせながら叫ぶ。
か、可愛い……!!可愛すぎる……!!ちょっ、まじで可愛い……!トニカクカワイイ……!星空くん……!
「お宝!?お宝だって!?ユヅル、お宝はどこだ!?」
「どこの秘境に聖遺物はあるの?この近くにあったりする?」
可愛さに呑まれていると、その主たちからの怒濤の質問。おお、可愛いし怖い……!
「お、落ち着いて2人とも!多分一応近くにありはするけど危険だし、それに本当にあるかも分かんないよ!」
慌てて彼女たちを嗜める。2人にはこんな、ストーリーと関係ないところで危ない目に会ってほしくないし、ぬか喜びさせるわけにも──。
「──頼むユヅル!案内してくれっ!」
「ユヅル、お願いっ!」
──渋っていると、僕の右腕を両手で掴みパイモンちゃんが、また僕の左手を両の手で握って蛍ちゃんが、共に上目遣いでお願いしてきて。
よぉーーーーし教えちゃうぞぉーーーーっっ!!!!秘境の場所は──って違ぁぁぁうっっ!!!教えちゃダメなんだって、そりゃモノホン聖遺物があるには越したことはないけど、確証が──!
「……ユヅルぅ……!」
「……どうしても、ダメ……?」
──鋼の精神で耐えていると、2人はその綺麗な瞳を潤ませ、おねだりするような声音で、せがんできて。
「──ああああああダメじゃないです秘境行くぞおらぁぁぁぁぁ──っっ!!」
「「やったぁ──!」」
可愛さに抗えず、僕は。
その日の残りすべてを、彼女たちを連れての秘境巡りに費やすこととなったのだった。……うん、そう、巡りです。近くの秘境──仲夏の庭園に行って色々してみたら、本当に聖遺物が貰えて、勢いづいちゃったんだよね。そしてワープポイントを使ってまでの秘境ハシゴの旅になるという……でも蛍ちゃんとパイモンちゃんがとっても楽しそうだし嬉しそうだったから、まぁ、よかったよ。うん、総評していい1日でした!!
あと、原神とは関係ないけど、勢いとノリの詰まった短編コメディ書いたので、お時間あれば作者名のとこから飛んで読んでみてくださいな。