あけおめぃ!
感想評価ありがとぉ!
今年もよろしくぅ!
海の香りが鼻孔をくすぐる璃月港の船着き場。
東部にはクレーンや資材の丸太、貨物箱が見られる造船所が広がり、西部には幌馬車型やゴザ敷き型の屋台が並び、異国の珍品や取れたての鮮魚、自国の料理などが売られている。
そのため港は、常に人が行き交い賑やかである。
ので、当然僕の周りも賑やかしい。
今もほら、僕を5、6人ほどの千岩軍の兵士さんが取り囲み、更にその様を遠巻きに眺めている野次馬さんたちがちらほら見える。
うんうん、賑やか賑やか(死んだ目)
「──金髪の異邦人殿。我々はあなたを捕らえるよう、璃月七星から命を受けています。大人しくついてきてください」
ぽけーっと現実逃避していると、千岩軍の1人が代表して述べてきて。
うふふ、終わってる……なんでこんなことになってるの???僕、何か悪いことした?璃月ではまだ万民堂で無銭飲食しただけなんだけど。それもちゃんと皿洗い払いで返したし……わけが、分からない。終わってる……。
……モンドでもこういうのあったなぁ……はぁ……冤罪、冤罪にまとわりつかれている気がする。ストーカーだ、怖い……まるでアルバートだな。略してまるアル。もちもちしてそう。
……もしくは、僕がそういう星のもとに生まれたのかもしれないね……そう、ホシに間違われる星のもとに、ってやかましいわっ。
「……よろしいですか?」
「あんまりよろしくないです……え、これ拒否したらどうなるの?」
興味本意、けれど特に罰とかがなしだったらいいなーとやや期待も込めて尋ねると。
「……申し訳ありませんが、少々手荒な真似をすることになります」
言って彼らは、手に持つ槍をチャキッと鳴らして構える。
ひぃっ……!(小心者)
ビビり散らかした僕は、彼らを宥めるように手をわちゃわちゃ動かして言い募る。
「もももももちろん拒否なんてしないよっ!?しませんとも!!で、でもアテクシこれ絶対人違いだと思いますわよっ!だって君たちが追ってるのは玉京台から逃げた不審者でしょ!?僕そのときアリバイあるし!!」
「む……」
「だから君たちが追うべきなのは、そう……輝かしい金の髪に白い花飾りを付け、同じく白を基調とした異郷の服を纏った可愛いが平伏すほどの美少女のはずだよっ!!」
「みょ、妙に具体的ですね……」
すると僕の勢いに押されたのか、若干弱気になる彼ら。
こ、これはいけるかも……!?
「……いえ、ですが、条件に近しい人物であることはたしか。……やはりついてきてもらいます」
いけませんでしたね ^ ^
「──い、いやだっ、近寄るなぁっ!!やめっ、せめて女の子!女の子の兵士さんを連れてこいっ!」
「無理ですっ、ちょっ、暴れないでください!」
そして狭まる包囲網。
じりじりと、兵士さんたちは距離を縮め。
その手が僕に触れようとした瞬間──。
「──おや?何か揉め事か?」
──とぼけたような、それでいて芯のある声が聞こえて。
打たれたようにその方向を見れば、そこには1人の少女がいた。
薄めの朱の髪に、覗く2本の鹿角。翡翠の瞳は少し眠たげでありながら、表情は自信に満ち溢れたものだ。金の装飾が施された赤い帽子を被り、璃月風の薄着を身に纏う。そこからスラリと伸びる生足は、ひどく魅力的だった。お触りしたい……じゃなかった、挟まれたい……でもなくて。えーっと、この娘ってもしや……。
正体に心当たりをつけていると、その彼女がこちらを見て。
「揉め事なら、私を頼るといい。私は煙緋、璃月港の法律家の頂点に立つ者だ。商事紛争、民事調停、刑事手続とあらゆる分野に精通している。私が担当すれば、解決できない案件などないぞ?……もちろん、それなりの報酬は頂くわけだが」
ニヤリと笑ってそう言った。
▼▼▼
煙緋は昨日会った香菱ちゃんと同じ、璃月に所属するプレイアブルキャラクターの1人だ。
役割は、炎元素と法器を扱う、遠距離型のメインアタッカー。☆4キャラでありながらも、火力は非常に高いため、多くのプレイヤーに重宝されていた。
また設定としては、仙人の血が流れているので角がひょっこりしていたり、ド近眼だったりなど多々あるが、中でも特に印象深いのは、法律家であるというものだ。
煙緋法律事務所なるものを璃月港に開いており、多くの人々が、彼女の法律の知恵を求めて訪れると言われていた。なんでも璃月の法律は複雑難解で、しかも数が多く、一般人には全てを把握できないんだとか。だから皆、争い事や揉め事が起きたときは、全ての法律を暗記している彼女を頼りにするのだ。
──そんな歩く法典、聡明レディの煙緋ちゃんが、今、千岩軍に取り囲まれているところに現れたとな?ふむ……いや、力をお借りするしかないでしょ。
「──たっ、助けて煙緋ちゃぁんっ!冤罪です、僕は悪くない!」
手を伸ばし、助けを乞う。
それに応えるように、彼女は帽子の飾りをしゃらりと鳴らして首を傾げた。
「ほう……?千岩軍諸君、彼はこう言っているが……?」
「え、煙緋殿、我々は璃月七星の命を受けて、職務に取り組んでいます。ですのでご意見は……」
「なんと!璃月七星が、彼を捕らえよと、そう言ったということか?それはそれは……ちなみに命じた七星とはどなただ?天権殿か?玉衡殿か?命じたのはいつだ?どういった罪状でだ?どのような法令に則ってだ?」
「て、天権殿が、千岩軍に通達をしたのだと思われます……ざ、罪状はおそらく帝君を、その……」
「思われます?おそらく?随分と曖昧だな。千岩軍はそのような、簡単に揺らぐ判断をもって職務に取り組んでいるのか……いやはや実に嘆かわしいことだな。千岩牢固揺るぎなしなどと謳っているくせに、こんなにもあやふやな判断をとるとは」
やれやれ、と、肩を竦め首を振る煙緋ちゃん。千岩軍の兵士さんたちはというと、唇を噛み締め黙りこくっていた。
……え、レスバ強すぎか???なんなの、掲示板の住人ですか???2ちゃんか?5ちゃんか?なんJか?煽られたら顔真っ赤にするのか?
舌戦の強さに慄いていると、トドメとばかりに彼女は微笑み。
「ああ、まぁそう固くなるな、千岩軍諸君。お前たちを責めるつもりはない。だがどうやら、上との情報伝達がうまくいっていないようだ。ここは1つ、戻ってしっかりと齟齬をなくした方が、得策だと私は思うぞ?」
「……貴重なご提案、痛み入ります、煙緋殿。是非ともそうさせていただこうと、思います」
ぎっと唇を結び、苦渋に満ちた表情を浮かべながら、彼らは告げ。
だっ、だだっとその場を後にしていく。
その光景に呆気に取られていると、煙緋ちゃんが近付いてきて。
「──ふむ、ざっとこんなものだ。どうだ?私の手腕は」
得意気に笑んで、そう言ってくる。
「エグいっす……まじパねぇっす……」
「それは褒めているのか……?……ま、まぁ構わん。それよりお前、名前は?」
「ユヅルです。今回は力を貸していただき、まじ感謝っ。ありがとうっ」
「なに、気にするなユヅル。貰うものはきちんと貰うからな」
おおっ、懐が広……なんて???
「もらっ、貰うものですか……?」
「ああ。最初に言っただろう?それなりの報酬は貰うと」
「おみ脚に夢中で聞いてなかったなぁ……」
「おみ脚……?私の脚がどうかしたのか?」
「いや、こっちの話なのでお気になさらず。けど、報酬、報酬かー……」
腕組みをして、煙緋ちゃんはこちらをじっと見つめる。その鋭い視線に冷や汗が、こめかみを垂れていく。僕、報酬のモラ……微塵も持ってなくね?
「……まさかとは思うが……払えない、なんてことはないだろうな?この私にタダ働きさせたなどとなったら……ふむ、炎喰いの刑を考える必要も出てくるのだが……」
「そ、そんなわきゃーっないでしょうがっ!!!報酬、報酬ねっ、分かってるよっ!」
冷や汗の量が増えていくのを感じながら、必死にバッグパックを漁る。
モンドを訪れたばかりのときに買った、思い出の品だ。そして年季の入ったものでもある。アンバーとピクニックに行ったときや、蛍ちゃんたちとピクニックに行ったときにも使っていた。きっと中に、何か値打ち物が入っているはず……!
衣類……JKのものじゃないからダメ!巾着袋のお財布……雀の涙しかモラが入っていない!ダメ!囁きの森で拾った葉っぱ……ダメ!空の酒瓶……ダメ!ってかなんだ入ってるんだ、捨てとけ僕!ミント……爽やかな匂い!ダメ!スイートフラワー……甘い匂い!ダメ!
次々にポポイッと品々を取り出していくも、一向に良いものは出て来ず。
僕を見つめる煙緋ちゃんの視線が厳しくなってきた頃──掘り当てる、お宝。こ、これなら……!
「──ほ、報酬っ!報酬はこいつでどうかなっ!?」
がばっとお宝を掲げ、彼女に見せる。彼女は一目し、しゃらりと音を鳴らして首を傾げた。
「これは……なんだ?赤い花……?綺麗ではあるが……」
困惑する彼女に、いいから取りあえずと、お宝である炎のような赤い花を触れさせる。
次の瞬間、彼女は身体を強張らせると共に、大きく翡翠の目を見開き。
動揺のままに呟く。
「……い、今のは……記憶か?」
「そうだよ!これは聖遺物、『魔女の炎の花』さ──!」
その彼女へ向け僕は、パンパカパーンとお宝の正体を明かした。
▼▼▼
──蛍ちゃんたちと、秘境巡りをして得た聖遺物たち。
それらは非常に面白い効能を保持していた。
まずこの世界の聖遺物は、ゲームのときと違い、セットでなくても、単体で効果を発揮するようだった。
次に聖遺物には、ステータス的なのは存在しない。なので、戦闘面においては、セット効果──1つでも発揮するが──しか得ることができない。
また聖遺物は、この世界に1個しか存在しない。ステータス値がないので、まぁある意味それもそうねって感じではあるが、故に聖遺物はとてつもなく貴重なモノとなる。
最後に、聖遺物は、触れた者に誰かの記憶や意志を見せる。感覚としては、刹那の間に脳に直接体験させるといったような感じだろうか。とまれ、そんな能力を持つモノは、世の中広しといえども聖遺物くらいだろう。
正にお宝と呼ぶに相応しい聖遺物、それらの幾つかを僕は、蛍ちゃんたちから譲り受けていた。
……うん、譲り受けてるんだよね……しかも結構な数。場所を教えてくれたし、いつも仲良くしてくれてるからって。僕、大したことしてないのに。天使か???
──とにもかくにも、そのような聖遺物なら、値打ち物と呼べるのではないだろうか。
そう考えて、煙緋ちゃんに渡してみたんだけども……。
「──……これが値打ち物、値打ち物だと……?」
当の彼女は、手に赤い花を持ったまま、顔を伏せて不穏そうな言葉を漏らす。
え、聖遺物ダメなの……?めちゃくちゃ凄いと思うんだけど……これでダメだったら、いよいよどうしようもなくなるんだが……。
ビクビクしながら続く言葉を待っていると、彼女はバッと顔を上げ。
「──そのような段階の代物ではないぞ!?記憶を体感できるなど、仙人でもつくれるかどうか……!それに、これを持っていると、どこか身体の奥底から力が沸き上がってくるような感じもする……!いったいこの小さな花に、どれほどの力が眠っているんだ……!?」
詰め寄り、興奮に顔を紅潮させて、勢いよく捲し立ててくる。
「お、おう……だよね、凄いモノだよね……焦った焦った。まぁでも、それなら報酬として充分だよね?」
「報酬として充分かだと!?充分過ぎるとも!むしろ貰い過ぎなくらいだ……!……ほ、本当に貰っていいのか?」
報酬は用意できそうだと安堵していると、確かめるように煙緋ちゃんが問いかけてきて。
「いいよ、全然あげるよ。火魔女だしね、煙緋ちゃんにぴったりだし……色合い的にも、違和感なくて、とても良き。うん、いい感じに煙緋ちゃんの可愛さを引き立ててくれるだろうね」
「そ、それはどういう……いや、ふむ……う、うん、取りあえずこの聖遺物はありがたく頂くとしよう」
にっこり笑って答えれば、彼女は何故か顔を赤らめつつ何度も頷く。どうしたのかしらん……?
「……だ、だが、先程も言った通り、これでは私が貰い過ぎだ。そうだな……何か困り事があれば、私を頼るといい」
「マジでっ!?むっちゃええ娘やん、大好きや……あのあの、それじゃあ僕、今お金なくて朝ごはんも食べれてないんですけど……」
「ふむ、私が奢ってやろう。そうだな、熱々の麻婆豆腐なんてのはどうだ?」
「いいねっ、好きだよ熱々!麻婆豆腐もぐっど!」
「そうだろうそうだろう!?やはり料理は温かいものに限る!それに豆腐、豆腐は素晴らしいんだ!」
──そして、トントン拍子に話は進んでいって。
道すがら、煙緋ちゃんの豆腐談を聞きつつ、朝ごはんを食べに、船着き場を離れ璃月の街へと歩くのだった。
こんな区切り方だけど、次話でお食事シーンは書かないぜっ!代わりに別のキャラを出すからっ!