原神ふれんず!   作:コトバノ

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 やっとこさハーメルンに慣れてきました。
 章管理とかできるんですね……しゅごい……。

 あ、感想、お気に入り登録ありがとうございます。嬉しくて目から涙が『天理長駆!!』です。


第4話 騎士団本部 『あれ?私の知り合い少なすぎ?』

 

 昼下がりに、まだ年若い美女と青年とが密室で二人きり。そう聞くとなかなかにムーディーなシチュエーションだが、実際二人の間にそんな空気があるかといえば、答えは否だ。何故なら、片方は呆れの表情を浮かべながら頭を押さえており、もう片方は──。

 

 「──ユヅル。謝意の気持ちはもう分かったから、その、土下座?とやらをやめてくれないだろうか……?」

 

 そう、もう片方──つまり僕が、騎士団の紋章が刺繍されたカーペットの上で土下座をしていたからだ。うーん、ふかふかだぁ……。

 

 「いや、けど、こうでもしないと僕の気持ちが収まらないっていうか、むしろこんなので許してもらえるならチョロいもんっていうか」

 「取り敢えずこの会話が終わるまでは君にはそうしていてもらおうか」

 

 会話を続ける。土下座も続ける。

 

 「……君と別れてから一週間。仕事を見つけるまでいかなくとも、目処くらいは立てているだろうと思っていたのだが……」

 「いや、違うんだってジン。僕だって好きで忘れてたわけじゃないんだ。ただ……あー……なんかこう……そう、それを忘れてしまうほどこの国が魅力的だったんだ」

 「今考えただろう、その言い訳」 

 

 ジンはそう言いながら、ジトリとした視線をこちらに送ってくる。

 

 「そんな、心から魅力的な国だと思ってるよ!えっと、ほら……お酒とか!」

 「お酒……」

 

 そう声高に(うそぶ)く。……といっても実際、モンドのお酒はとても美味しい。もともとお酒は好きな方だったが、ここ一週間でそれに拍車がかかったくらいだ。加えて定番のワインやビールは勿論のこと、リンゴ酒やさくらんぼ酒、マイナーな蒲公英(ダンディライオン)酒など、種類も豊富なのだ。

 

 うん最高の国だね、ここ。決めた、あたいこの国に骨を(うず)めるわ……!

 

 そんなことを考えている僕に、ジンは溜め息を一つ()くと。

 

 「……はぁ……あまり言いたくはないが、君はもう少し自分の立場を自覚するべきだ。お酒に溺れている場合か?」

 「うぐっ」

 

 ──いきなり正論で殴ってきた。

 

 い、痛い……!これが人間のやることか!?

 

 「それにだ。確かに気楽にで良いと言ったが、流石に君は楽観的過ぎる。聞いたぞ、毎日酒場に入り浸っているそうじゃないか。そんな様子で仕事を見つけられるのか?」

 「うぐぐっ」

 

 止まらない猛攻。これが西風騎士団の団長を、代理とは言え務める者の実力か……!恐ろしい……恐ろしいぞ……!

 

 「加えて、騎士団もいつまでも君を支援できるわけではないのだ。これから先、一人で生きていくとなった時に困るのは君なのだぞ?そこのところをきちんとだな──」

 「うぐぐぐっ──ちくしょうッ、ジンのバカッ!!シスコンッ!!恋愛小説好きッ!!」

 「っ!!??ななな何故知って──」

 「すぐに仕事見つけてきてやるからッ、覚悟しとくんだねッ!!」

 

 あまりにもバイオレンス過ぎる正論に耐えかねた僕はそう息巻くと、勢いよく執務室を飛び出した。

 

▼▼▼

 

 騎士団の建物を出た僕はその足で、広場に繋がる階段を昇っていた。といっても何か意図のあっての行動というわけではなく、なんとなしの行動だ。

 一段一段を踏みしめながら、今後の展望について考えを巡らす。

 

 ──さしあたって、まず僕が目標としているのは仕事を得ることだ。これは頑として動かない。というかジンにあんな啖呵を切ってしまったのだ、動かすわけにはいかない。

 しかし、一口に仕事といっても様々なものがある。

 

 モンドは、果物屋やお花屋といった卸売業に、鍛冶屋といった鉱業、他にも酒造業やサービス業など、何でもござれの国だ。

 その中から、僕でも働ける仕事を探さないといけないわけで。

 

 ……面倒だなぁ……ハロワとかない?

 

 そんなことを考えている内に階段が終わり、広場と、その周りをぐるりと巡る回廊が見えてきた。

 その回廊を(くぐ)り抜けた先で、立ち止まって広場を見渡せば、走り回っている子供や、長椅子に座っている老人など、様々な人が点在していた。

 

 その中でも一際目を引くモノが一つ。

 

 広場の中央にそびえ立つ、巨大な石像だ。この石像は、モンドで崇拝されている風の神──バルバトスを(かたど)ったもので、その近くには、祈りを捧げるシスターにそれに(なら)う人々、はたまた吟遊詩人の姿なんかもあった。

 

 そんな石像をボケッと見上げながら、再び思案に(ふけ)る。

 

 ……ハロワ云々は冗談としても、やはり仲介役がいないのは痛い。いったい何処に、いきなりやって来た、知らない、そんでもって信用もない相手に仕事を与える奴がいるというのか。少なくとも、間に入って後ろ楯となってくれる者が必要だろう。それも人々から信用されている人物。はたして僕にそんな知り合いがいただろうか?

 

 ……ジン……は駄目だね。条件に打ってつけの人物ではあるが、啖呵を切った相手に頼むのは少し情けない。

 アンバーは……まぁ、人々から信頼はされてるだろうけど、信用されてるかは分からないな……。時々凄い嘘吐くからな、あの娘。

 

 あとは……あれ?もういなくない?え?あれ?私の知り合い少なすぎ?

 いや待て、落ち着くんだ僕。この一週間を思い出せ……!──そうだ、いたじゃないか、心強い知り合い達が!

 

 チャールズ(酒場のオーナー)。

 ペイン(酔っ払い)。

 ネルソン(酔っ払い)。

 ブルース(西風騎士団所属の酒飲み)。

 クイン(酒豪四天王)。

 サイリュス(冒険者協会支部の部長を務める酔っ払い)。

 ジャック(酒豪四天王)。

 

 ……酒場にしか知り合いいないな僕……。もう酒場で働こうかな……。

 

 「──おや?お前は……なるほど、お前がアンバーの言っていた男か」

 

 ふと、そんな声がして。

 

 像から目を離し振り返れば、長い藍色の髪に、薄く蒼みがかった眼の男がそこにはいた。

 浅黒い肌に眼帯を着けた出で立ちは、まるで海賊のようだ。

 そんな彼の隣には、所々ゴテゴテとした鎧で彩られたメイド服に身を包んだ少女の姿もあった。肩ほどまでの長さの銀髪と黄緑の眼をもった、可愛らしい少女だ。

 

 男の方は、何やらピンときたような表情だが、少女の方は、キョトンとした顔をしていた。

 

 「ガイア様、このお方は……?」

 「ああ、スマンスマン。一人で勝手に話を進めちまったな。そうだな、取り敢えず全員自己紹介をしとくか──」

 

▼▼▼

 

 暫くして自己紹介を終える。

 

 彼らはそれぞれガイア、ノエルと名乗った。海賊のような風貌の男がガイアで、メイドの少女がノエルだそうで。

 

 うーん……その名前にその風貌、間違いなくプレイアブルキャラのガイアとノエルちゃんだよね……?

 

 ガイアはアンバーと同じくストーリーを進めていけば手に入るキャラで、氷元素と剣を操り戦う。話術にも長けており、原作では主人公を騙して敵を誘き寄せる、なんてこともしていた。

 そんな彼の出自の多くは謎に包まれており、元の世界ではミステリアスな怪しいイケメンとして人気を博していた……と同時に、何故かネタキャラとしても人気を博していた。

 僕も詳しくは知らないが、『ガイ虐』や『踏氷渡海真君』なんて言葉も造られていた。言葉の意味については……まぁ、割愛させてもらおう。

 

 ノエルちゃんも、アンバー達とは違ってストーリーでは得られないが、しかし確実に手に入れられるキャラの一体だった。岩の元素と、華奢な身体に不釣り合いな大剣で戦う彼女も、その可憐な容姿も相まって非常に人気なキャラだった。

 性格は気遣いのできる良い娘だが、むしろ気遣いすぎて自分を追い込んでしまうこともあり可愛い。趣味はお掃除、日課は人助けであり可愛い。また頑固者の一面も持ち合わせており可愛い。可愛い。とにかく可愛い。もう可愛いから何でも良くない?

 

 「それで……ガイアは僕に何か用なのかな?まぁ、別に用がなくちゃ話しかけちゃいけないってわけじゃないけどね。あとノエルちゃんを僕に下さい」

 「ユ、ユヅルさま!?」

 「用はあるさ。お互いに損しない内容だと思うぜ?それとノエルについてはそっちでやってくれ。俺は親代わりでも何でもないからな」

 

 肩を竦めてガイアがそう言う。

 

 「お、お二人とも、からかわないで下さい!!」

 

 ノエルちゃんが頬を赤らめながらも抗議の声を上げる。

 そんな彼女の姿に思わず頬が緩む。

 

 「ノエルちゃんは可愛いなぁ……まぁフラれたなら仕方ない、ガイアでいいや」

 「おっと、俺にそっちの気はないぜ?」

 「まあまあ、そんなこと言わずに。仕事もない、記憶もない、おまけに常識もない、そんな不束者な僕ですが、どうぞよろしくお願いします」

 「本当に不束者じゃないか」

 

 完璧な人間よりも、少しくらい欠点のある人間の方が魅力的だろ?そういうことさ。……少しどころじゃないとか言うな。

 

 「──まぁプロポーズはそこまで本気じゃなかったからいいとして。結局何の用なの?」

 

 尋ねる僕に、ガイアは薄く笑うと。

 

 「それはだな──」

 

▼▼▼

 

 ──僕が働いて収入を得られるようになるまで、ノエルちゃんをつける。

 

 それがガイアの言うお互いに損しない内容の用件だった。

 なんでもノエルちゃんはジン並みに多方面から信頼されているから、彼女に仲介してもらえばどんな所でも働かせてもらえるだろうとのこと。

 

 実際確かに僕に損はない内容だったが、彼がノエルちゃんを僕につける理由は分からなかった。なんたって、今日に至るまで一切の関わりはなかったからね。

 それが少し引っかかったので聞いてみたところ、「おいおい、困っている奴を助けるのは騎士として当たり前のことだろ?」と言われた。明らかに嘘だったので、顔面ペロペロして、「この味は!……嘘を吐いている味だぜ……」ってしてやろうかなとも思ったけど……まぁノエルちゃんと話せるのならば僕に(いな)やはないのでやめておいた。命拾いしたね。

 

 「──でもノエルちゃんはいいの?僕の仕事探しを手伝っても、あんまり得しないと思うけど……。嫌なら全然断ってもいいんだよ?」

 「そんな、嫌だなんてことは全くありません!わたくしにお任せください!」

 

 身体の前で両の拳をグッと握りしめ、ノエルちゃんがそう主張してくる。勢いすごいな……。

 

 「そ、そう?それならお願いしようかな?」

 「はい、お任せを!──それでは早速準備をして参りますので、その間ユヅルさまは自由になさっていてください」

 「う、うん……了解、それじゃあ酒場に──『エンジェルズシェア』に居ることにするよ」

 「畏まりました。それではまた後ほど、『エンジェルズシェア』でお会いしましょう」

 

 彼女はそう約束を交わすと、見事なカーテシーを決めて広場から去り。後には僕と、やり取りを傍観していたガイアが残される。

 

 「──話はついたみたいだな。それじゃあお前さん、ノエルをよろしく頼むぜ」

 「ああ、うん、任せなよ……ってあれ、ガイアは来ないの?」

 「ははっ、悪いな。この後大事な用事があるんだ」

 

 断りを入れてくるガイア。

 

 ふーむふむ、大事な用事かぁ……でも、これから外も暗くなって来るだろうに、用事だなんて……もしかしてもしかして、もしかするとそういうことなのかしら!?やだ、今日はお赤飯を炊かないと!!

 

 「それじゃあ悪いが、俺も先に失礼させてもらうぜ」

 「うん、またね!お相手の方にもよろしく!!」

 「お相手……?」

 

 手を振る僕に、疑問符を浮かべながらもガイアは軽く振り返し、その場を去っていった。

 

 ──さてと、エンジェルズシェアに行くとしようか。

 

 

 

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