ギリギーリぃっ(B'z風)で書けた……!
高評価という燃料投下、せんきゅー!
「──あれ、鍾離せんせーじゃん」
「そんなに急いで、どうしたのー?」
──近付いてくる足音、その正体は。
焦った様子の黒髪イケメン、鍾離せんせーであった。
頬に一筋の汗を流しながら、彼は部屋を見渡し──僕らがまったり和んでいるのを目にして、ほっと溜め息を吐く。
「無事だったか、胡堂主、お嬢さん……」
「無事?鍾離さん、無事って何の話?」
「いやなに、街の入り口で往生堂が千岩軍と対峙していると聞いてな。トラブルは御免だと、急いでやって来てみたのだが……取り越し苦労だったみたいだな」
元の優雅さを取り戻して説明する鍾離せんせー。
おお、ってことは蛍ちゃんたち、もう荻花洲での瑠璃百合集めは終わって、もう黄金屋に向かってる感じかしら?うーん、早い早い……流石蛍ちゃん!さすほたっ!
1人感心していると、鍾離せんせーに向けて胡桃ちゃんが言葉を発する。渡し守ちゃんは、彼用に新しく茶器を用意して、お茶を淹れていた。素晴らしいお気遣い……!
「対峙していたのは事実だよー。でも、ユヅルさんが追い払ってくれたんだ」
「なるほど、それでユヅル殿がいたのか……すまないな、ユヅル殿。助かった」
「いえいえお気になさらず。鍾離せんせーには色々してもらってるからね」
お茶を啜りながら、手をひらひら。だいじょぶやでーとアピールしてあげる。
受けて鍾離せんせーは、そうかと頷き納得してから空いてる席へ。渡し守ちゃんからお茶を貰って一息入れる。
そこへニヤニヤした胡桃ちゃんが立ち上がり、寄っていって。
「いやー、でもでもそっかー……鍾離さんは、わたしたちが千岩軍と対峙してるって聞いて、急いで来てくれたんだね。わたしたち、愛されてるなー!」
鍾離せんせーのほっぺを指でつんつんして、絡み出す。
は?てぇてぇ。真顔でなされるがままの鍾離せんせーも、にやけてる胡桃ちゃんも、それを優しい顔で見守ってる渡し守ちゃんも、すべてがてぇてぇ。往生堂ーず、ぷれしゃす……!!
ほっこりしていると、一通り鍾離せんせーのほっぺをイジって満足したのか、胡桃ちゃんは彼からぱっと離れると。
「よーし、それじゃあいい時間でもあるし……今日は、愛されてる堂主が、直々にみんなに夕ご飯を振る舞ってあげるよ!」
にっこり笑顔でウインクまで付けて、そんなことを言ってきて。
「え、なになに、胡桃ちゃんの手料理ってこと?僕も食べていいの?」
「もっちろん!」
「やったー!」
可愛い娘の手料理、その付加価値は計り知れない。声を上げて喜んでしまう。
おいおい楽しみなんだが……!?肉じゃが、肉じゃがですか?女の子の手料理と言ったら肉じゃがだよね!それともハンバーグかな?オムライスでもあり!いやもうこの際、焼肉でも構わない!焼肉だって、立派な料理だ!
ココロオドルしながら、おそらくは厨房の方へと向かって部屋を出てく胡桃ちゃんを見送る。
そこでふと、往生堂の残りの2人が何も喋ってなかったなーと思い、視線を向けてみれば。
彼らは顔を少し青ざめさせ、遠い目をしていて。
「え、な、なんで君たちそんな表情してるの……?そんな世を儚んだかのような…」
「……堂主の料理は、基本気まぐれです。美味しいものもありますが……」
「……彼女はたまに……得体の知れない食材を使い、舌を……破壊するような料理を……」
「なにそれ怖い……」
もう兵器じゃんそれ……舌を破壊って……えぇ……?胡桃ちゃんって飯マズ属性、あったっけ……?そもそもで料理が不可能だったキャラのことはめちゃくちゃ覚えてるんだけど……。
3人揃って、沈痛な面持ちで卓を囲んでいると、暫くして部屋のドアが開く。
じゃじゃーんと運ばれてきたのは、薄切りにされた松茸を花弁や菜葉で囲んだ料理だった。美味しそうなソースがかけられており、湯気が漂っていることから出来立てほやほやなことが窺え……なんか湯気に顔みたいなの見えるんだけど???よく見たら松茸にも顔みたいなのがあるし……え???
「──取りあえず1品目ができたから、つまんどいていいよ!わたしの得意料理、幽々大行軍!」
「あ、ありが……え?幽々……?」
「はい食べて食べてー?ほら、ユヅルさんも遠慮しないで!なんならわたしがあーんしてあげるよ。ユヅルさんったら幸せ者ー!」
「え、あ、あーん……?」
流されて、口を開ける。
鍾離せんせーと渡し守ちゃんが固唾を飲んで見守る中、松茸や花弁、菜葉をひとまとりに掴んだ胡桃ちゃんの箸が、口元へやって来て。
やがて、それらが舌に触れ──。
──そこで、僕の意識は途切れた。
▼▼▼
「──はっ!い、いったい何が……!」
意識を取り戻す。
何故だろうか、舌が麻痺したかのようにピリピリしているのを感じながら、辺りを見渡す。
円形のテーブル、並ぶのは往生堂の面子だ。鍾離せんせーに渡し守ちゃん。そうだそうだ、僕は往生堂に来ていたんだった。
渡し守ちゃんに仲介してもらって、胡桃ちゃんと仲直り、楽しくお喋りしているところに鍾離せんせーも来て……あれ?それからどうなったんだっけか?
「……ユヅル殿、起きられたか」
「鍾離せんせー……僕は、いったい……何があったんですか?」
「いや……何も、なかった」
「そんなゾロみたいなこと言われても……絶対うそでしょ」
「いえ。何も……ありませんでしたよ」
「渡し守ちゃんまで……?」
頑なに僕が意識を飛ばしていた事実をなくそうとする2人。ほんとに何があったんだ?胡桃ちゃんもいないし……。気分はキングクリムゾンだね。時間、消し飛ばされたぜ……。
「というか今時間どんくらい?お腹は空いてないから、そんなにいってはないと思うけど……」
「夜遅くといったところだな。月がよく見える」
「あれ、もうそんな時間?変だな、さっきまで夕方だったのに……」
「……そういうこともあるだろう」
「ええ……そういうこともあります」
「ふつー、ないと思うんですが……」
戸惑いながらも、まあ確かめようもないので受け入れる。そういうこともあるんだろう……ないと思うけど、あるんだろう。
……しかし、もう夜ってことは……ふむ、ストーリーはどうなったのだろうか。もしかして今は、蛍ちゃん、タルタリヤと戦ってる最中だったり?だとしたら、応援しないと……がんばれ♡がんばれ♡
心中でメスガキエールを送りつつ、渡し守ちゃんが淹れてくれたお茶を味わっていたときだった。
「──来たか」
突然、そう言って鍾離せんせーは立ち上がる。それにほんの少し遅れてやって来る、地鳴り。
これはっ……!!
地面がズズズ……と揺れる中、鍾離せんせーに追従して立ち上がった僕は、彼と共に外へ向かう。
往生堂を出て左側、遠くに見える璃月港近海は、はたして、異様な雰囲気に包まれていた。
薄曇りだった空には暗雲が立ち込め、雷雨の様相を示し出す。
豪雨が降り注ぐ海面は、膨らみ揺れ動く。大波と共に海水を纏った竜巻までもが生じ、暴れ始めた。
……え、やばぁ……世界、滅亡……???
言い知れぬ絶望感を覚えていると、異常気象の余波がこちらを襲い出す。
「──わばっ!!かっ、風つよっ、雨っ、雨もきたぁっ!!」
「む、大丈夫かユヅル殿」
「ただ今鍾離せんせーに心配してもらったので大丈夫になりましたっ!!」
「そうか……」
暴風雨に耐えていると、遅れて往生堂から胡桃ちゃんと渡し守ちゃんも出てきて。
「わわっ、何これぇっ!帽子が飛んじゃうよ!」
「これは、なんと言う……!中に戻られた方がよろしいのでは……!?」
あまりの天気の荒れ模様に、彼女たちは苦言を漏らす。
「……胡堂主たちは戻っていてくれ。俺は少し……やることがある」
それに対して、言葉少なに返す鍾離せんせー。彼女たちはやや不満を感じた様子でありながらも、同時に彼からの強い意思も感じたようで、一応の納得を見せる。
「……じゃあ、わたしたちは戻ってるね。ユヅルさんは……」
「あ、僕もやることあるのでお構いなーく」
「ユヅルさんもー?」
「ユヅルさんもー」
胡乱げな視線を送ってくる胡桃ちゃんをテキトーにあしらい、女子ーずを室内に追い返す。
邪魔者がいなくなった僕は、じっと海を見やっている鍾離せんせーに向けて、尋ねる。
「……鍾離せんせー……あれ、オセルさんだよね」
「……!よく知っているな、ユヅル殿」
「まーねー。しっかし遂に来たかー……」
小さくぼやく。いくら知っていたとはいえ、流石にビビるよね……んー、でも、んー……。
「……ね、鍾離せんせー。ちょっと予定変えてさ、今からあそこ行きたいんだけど……いい?」
「……今からか?悪いがその場合、俺は同行できないぞ?」
「それはちょっとあれだけど……うーん……とりまシールド貼ってくれれば、問題ないかな?」
「ふむ……」
言うと、彼は暫し考え込んでから、軽く頷き、僕の頭上に手を翳して。
「──堅如盤石」
呟いた途端、何かに覆われるような感覚。おお……!
「──これで大抵の危機は防げるはずだ」
「わーお……ありがとう、鍾離せんせー」
「契約だからな。気にすることはない」
「それでもだよ」
「そうか……。……では、俺はそろそろ行く。ユヅル殿、成功を祈る」
「鍾離せんせーも……って言っても、そっちには蛍ちゃんがいるから成功は決まってるけどね」
互いに別れを告げて。
僕らは方々に散る。
鍾離せんせーは、チ虎岩へ繋がる橋を渡っていき。
僕は荷物を取りに、一旦往生堂の中へと戻る。
こんな荒天の夜にどこへ行くのかという胡桃ちゃんたちの追及を、上手いこと躱して僕は、再び外に出ると。
雨の降りしきる璃月の街を歩き出す。
天気の荒れ具合に、店じまいをし家に籠っているのか、あるいは異変を察知し郊外に逃げようとしているのか、人の気配はほぼなくいつもの活気もない。
そんな中僕は、お目当ての朱塗りの階段を発見、ゆったりと昇っていく。
行きたくないなー……うん、しょーじき行きたくない。いや、マジで行きたくないな……。やっぱり今からでも止めようかしら……?
……いやいや、ダメだ!今を逃したらもう機会はない。これからも僕が、テイワットを楽しむために……この取引は、絶対に成功させねば。
……でも行きたくなーいっ!!やだぁ……なんでこんな苦労しなきゃいけないの……?楽、させてよぉ……。
日和りと決心と悲嘆とを繰り返している間に、階段を終え、辿り着く1つの建物。
ドンと入り口に構えられた門には──北国銀行と、そう名が記されていて。
……さて、それじゃあ行くとしよう。
ここが──運命の分かれ目だ。
そして僕は、入り口に立つファデュイ所属の警備員ちゃんに声をかけた。
「──やぁ、ちょっといいかな?中に入りたいんだけど……ああ、僕は鍾離せんせーのマブダチです。ほらこれ、証書ね──」
▼▼▼
──警備員ちゃんに許可を貰って。
僕は、北国銀行の中へと入る。
出迎えてくれたのは、荘厳美麗な空間だった。
内観は、中近世ヨーロッパ風の銀行といったところだ。カウンターには格子が設けられ、奥の書類などが入っているのだろう棚には近付けないようになっており、その棚の至る所に金箔を用いて模様が描かれている。階を支える柱、果ては壁にまでも黄金が使われており、この銀行の富裕さが表れていた。
そうして、天井のシャンデリアからもたらされる光によってそれらが煌めく中を。
腕を組んで、1人佇んでいた人物が、こちらを一瞥、ライトグレーの瞳が僕を捉える。
「──……あら……誰かと思えば、あんた、モンドにいたネズミじゃない。嫌ね、まさかこんな所にまで入り込んでくるなんて……」
「誰がネズミだよ……甲高い声で笑っちゃうぞ?ユッキーマウス、なっちゃうぞ?」
「気に障ったかしら?けどあなた、今の姿……まさしく濡れネズミよ?ふふっ、実にお似合いの格好だわ」
「うまいこと言うなぁ……座布団あげたくなっちゃう」
高慢な態度を崩さない、プラチナブロンドの美女。
その彼女に僕は、言葉を交わしながら近付いていく。
スネージナヤの神、氷の女皇より選ばれし11人の執行官が1人。
<淑女>のシニョーラ。
彼女こそが、僕が行うつもりの取引の──その、相手役であった。
…………ヤバい、やっぱり怖いしダルいしメンドいし吐きそうだしもう帰りたい……。
いよいよガチで、連日の危機……!
明日いけるか……!?