原神ふれんず!   作:コトバノ

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 大量の燃料(高評価)ありがとう!おかげで火ぃ、点いちまったよ……!

 感想ももちろんありがとうございます!糧になってるわ……!


第17話 北国銀行 『軽いお茶目じゃん、許して!』

 

 

 

 

 

 シニョーラさん、相変わらずお胸がしゅごいし脚も眩しいわ……!と、益体もないことを思いながら僕は、煌びやかな銀行内を進んでいって。

 

 腕を組み立つシニョーラの眼前に着く。

 

 視線がぶつかる中、彼女はおもむろに口を開いた。

 

 「──あんた、いったい何のつもりでここに来たのか知らないけど……今なら見逃してあげるわ。さっさと尻尾を巻いて、逃げ出しなさい?」

 「そうしたいのは山々だけど……そうもいかないんだよね……」

 「……その口ぶり……なに、もしかしてあんたまさか、あのハムスターの仇でも討ちに来たのかしら?だとしたら勘弁してちょうだい、私はあんたと違って暇じゃないの。無意味なことに付き合ってる時間はないのよ」

 「ハムスター……?ああ、ウェンティのことか。ちょっとちょっと、さっきから人のことげっ歯類扱いしかしてないから、モンドがネズミーランドみたいになっちゃてるぞ?」

 「フン、ちょうど良かったじゃない」

 「何も良くないでしょ……というか僕、別に仇討ちに来たわけでもないし。交渉しに来たのよ、交渉」

 

 肩を竦め、勘違いを正して告げる。

 

 するとシニョーラは、眉を寄せ。

 

 「交渉……?誰が、誰とするつもりなのかしら?」

 「え?僕が、君とするつもりなんだけど……」

 「あんたが、私と……?」

 

 質され答えると、彼女は僕の言葉を反芻し。

 

 深く溜め息を漏らすと──。

 

 

 

 「──調子に乗ってるんじゃないわよ、小物風情が」

 

 

 

 冷たく言い放たれたと思った瞬間には、巨大な氷の重槍が僕を襲う。

 

 僕はその唐突な出来事に、何も反応できずに貫かれ──そうになる手前で、氷の重槍は鍾離せんせーのシールドに弾かれ砕ける。

 

 砕けた散った氷の欠片は、シャンデリアからの光を受け、キラキラと輝いていた。

 

 わ、きれー……どころじゃないんだがぁ!?えっ、ちょっ……ええっ!?今、これっ……ええっ!?僕、殺されかけてた!?もしかして殺されかけてた!?な、なんで……!?お、怒りどころが分かんない……怖い……!

 

 急に攻撃してきたシニョーラに怯えていると、その彼女は彼女で、僕のことを訝しんでいるようで。

 

 「私の攻撃が防がれた……?けどおかしいわね、とても神の目を持ってるようには見えない…………さしずめ、誰かに守ってもらっているといったところかしら?」

 「いやなに冷静に分析してるの???こっちそれどころじゃないんだけど???震えてるんだけど???極寒の所為じゃなく恐怖の所為で震えてるんだけど???」

 「ハッ……だらしがないわね」

 

 鼻で笑われた……でもしょうがないでしょ、僕、ザコだぞ?鍾離せんせーのシールドなかったら、ワンキルだったんだぞ?久しぶりにこんな恐怖を……ん……?……往生堂……?……胡桃ちゃん……?……胸……?……あれ、なんかあんまり怖くなくなってきたな……。あのときの恐怖に比べたらこんなものっ……!て感じだ。

 

 「──ま、まぁとにかく、これで僕に攻撃が通じないことは分かったでしょ?なのでなので、大人しく話を聞いてほしいんだけど……」

 「あんた、私に意見ができる人間だと思ってんの?だとしたら随分おめでたい頭をしてるのね」

 「お酒いっぱい飲んでるからね……あっぱらぱーになってるのかも」

 「フン……だいたい交渉というのはね、お互いの利になるものが得られることが前提なのよ。けどあんたじゃ、到底私が望むものは提供することはできないわ」

 

 だから話を聞いたところで無駄だと、会話を断ち切ろうとするシニョーラ。

 

 うーむ、困った……たしかに彼女が言う通り、僕では望むものを提供することはできないだろう。なにせ彼女が望むのは、世界だ。

 

 汚れの一切ない、清浄なる世界。

 

 そんな世界を、彼女は渇望している。

 

 だからこそ彼女は氷の女皇に付き従っているのだ。故に彼女が氷の女皇を裏切ることはない。

 

 ……けれど、けれどもだ。たしかに僕は、そんな夢のような世界を彼女に提供することはできないけれど──夢のような体験を彼女に提供することはできる。

 

 そこに交渉の勝機を見出だしたから、僕はここに来たのだ。

 

 「聞くだけタダなんだから、聞いてよ──ねぇ、ロザリン?」

 

 シニョーラに、そう呼びかける。

 

 彼女の表情の変化は、実に顕著だった。

 

 先程まで見えていた余裕綽々の態は、もうない。大きく目を見開き、呆然とした面持ちが見えるだけだ。かと思えば、苦虫を噛み潰したような顔で、こちらを睨みつけてくる。

 

 「何を言って……!いやッ、私はッ……あんたッ……どうしてその名をッ……!?」

 「知ってるのは名前だけじゃないよ。君の望みも、過去も、想い人──ルースタンのこともね」

 

 告げると彼女は、いよいよ顔色を失った。

 

▼▼▼

  

 原神というゲーム、その魅力の1つには、設定の細かさが挙げられるだろう。

 

 というのも、原神というゲーム内には、歴史が存在する。テイワットに生きる人たちが紡いできた歴史だ。

 

 かつて世界を大きく変えたという魔神戦争に、各地を暴れ回った魔物の討伐劇、極寒の山を訪れたという英雄、ある国の滅亡……語り継がれてきたものもあれば、時代の波に埋もれてしまったものもある。

 

 そして、それらの歴史の陰に潜む悲劇の存在も、たしかにあった。

 

 これは、語られることのない悲劇の1つだ。

 

 

 

 ──500年前の、モンド。

 

 その時分より既に設立されていた西風騎士団には、2人の有名な騎士がいた。

 

 <光の獅子>の名を授かる団長のエレンドリンと、<幼い狼>の名を授かる副団長のルースタンだ。

 

 彼らは身分こそ違えど、お互いに英雄になるという夢を目指す同志であり、幼き頃より仲を深めていた。

 

 中でもルースタンは、その仲を非常に大切に思っており、モンドとエレンドリンのためならば、何でも──そう、何でもしていた。

 

 副団長として、団長のエレンドリンの職務を支え、また夜闇に紛れてモンドに仇なす者を消したりと、彼は実に献身的な働きをしていた。

 

 だが、いくら大切なものを守るとはいえ、心は擦り切れる一方で、訪れる日々に苦痛を抱いていたのも事実だった。

 

 そんなある日、彼は広場で、1人の少女と出会う。

 

 彼女は歌の上手な女の子だった。広場にて軽快に紡がれるその歌声は聴く者を魅了する。例に漏れず、ルースタンもそうだった。

 

 騎士とは、英雄とはかけ離れた行いに手を染める日々。彼女の歌声を聴くときだけが、その辛さを、苦しさを忘れさせてくれた。

 

 やがてルースタンとロザリンは、心を通じ合わせるようになる。

 

 けれど、蜜月の時間は長くなかった。ロザリンは、スメールの教令院に留学に行くこととなっていたからだ。

 

 ロザリンの旅立ちの日、ルースタンは、ある約束と共に彼女に水時計を贈った。時計が一周する頃、彼女はスメールからモンドに戻ってくる。そのときこそが、彼らの約束を果たすときだった。

 

 

 

 ──しかし、世界は彼らに冷たかった。

 

 

 

 今は亡き古き国に、世界を揺るがす大災害が降臨したのだ。

 

 無数の魔物が世界に溢れ、毒龍が産まれ落ちる。

 

 その災禍の矛先は、モンドへと向かい、西風騎士団はその理不尽を阻むべく立ち向かう。

 

 長きに渡る戦いでモンド中に悲鳴が満ちていく。眠りについていた風神は、それに気付き、目覚めた。

 

 騎士たちを鼓舞し、眷属を引き連れ自らも戦場に身を投じる。

 

 激戦の末、風神は魔物を退け、毒龍を討つことに成功し、風神は讃えられることになる。彼を讚美する詩が数多く生まれ、モンドに平和が訪れた。

 

 だが、失われた命はあまりにも多かった。

 

 ロザリンがモンドに戻ってきたとき、ルースタンは戦禍の中で命を落としていた。

 

 約束を果たす機会は、永遠に失われたのだ。

 

 少女は怒り、悲しみ、恨み、泣き叫んだ。

 

 どうして彼は死んでしまったのか。幸せだった過去にはもう戻れないのか。待っていたはずの輝かしい未来はどこに消えたのか。

 

 なぜ、こんなことになってしまったのか。何の罪があって、彼は死ななければならなかったのか。

 

 何故彼は死んだのか、生き残った他の人たちと何が違ったのだろうか。なんで風神は讃えられているのだろうか、風神は彼を助けてくれなかったというのに。どんな思いで人々は平和を喜んでいるのだろうか、彼は死んでしまったというのに。

 

 いったい何が悪いのだろうか。古き国か、毒龍か、魔物か、西風騎士団か、風神か。

 

 そうして、涙は尽き、声は枯れ──ロザリンは、炎の魔女となった。

 

 自らの身を炎に侵されながらも、汚れたる魔物をこの世から殲滅すべく、彼女はすべてを焼いていった。

 

 焼いて、焼いて、焼いて、焼いて、焼いて、焼いて、焼いて、焼いて──。

 

 ──はたしてどれほどの年月が経ったのだろうか、定かではないが。最終的に、彼女は炎に身体が飲まれそうになったところで、氷の女皇と出会う。女皇の目指す世界──それに自らが望む世界が繋がることに気付いた彼女は、女皇に忠誠を誓った。

 

 女皇の力の象徴たる氷に過去を閉じ込め、彼女は生まれ変わった。

 

 ファデュイの執行官、淑女のシニョーラとして。

 

 

 

 ──これが、語られることのない悲劇……シニョーラの壮絶たる人生だった。

 

 …………うん……いや、おっもぉ……!!!!めちゃくちゃ鬱ストーリーなんだが……???人生ハードモードが過ぎるんだが???

 

 しかもこれ、公に伝えられてるわけじゃなくて、裏の設定として至るところに散りばめられてる話だから、ふつーにプレイしてた人たちはシニョーラのこと、おっぱいと態度のでかいおばさんとしか思ってないという……人の心ないんか???

 

 クソデカな憐憫の情を抱いていると、件の彼女が、掴みかかってくるかのような勢いで詰め寄ってきて。

 

 「──あんたッ、いったい何者……!!??どうして私ですら忘れていたことを知っているのよッ……!!」

 「まぁまぁ落ち着きなよ……小皺増えるよ?」

 「黙れッ……質問に答えなさいッ!!」

 

 ひぃ、怖い……!いやでもこうでもして興味を惹いてやらないとこの人、話聞いてくれないからな……行動としては正解だったはず。他人の大切であろう記憶に土足でずけずけと入り込んでいるようで、ちょっと気分はあれだけど……そこは大目に見てもらうしかない。

 

 そんでもって、彼女が冷静さを欠いている今この状況こそ、畳み掛ける絶好の機会だろう。逃さぬよう、すぐさま僕は、言葉を発する。

 

 「僕が何者か確かめるより、もっと重要なこと、あると思うんだけどな。例えば、僕が予定している交渉、取引の内容とか」

 「ッ……」

 「君の過去を知ってるやつが、持ちかけてきたんだよ?当然対価だって、それなりのはず……そうは思わないかな?」

 「それは……けど、それでも、あんたには私の望みを叶えることはできないわ!あんたの力じゃ、私の望む世界は……!」

 「そりゃそうでしょ、僕、一般ぴーぽーなんだから。君に夢のような世界を見せることはできないよ。できるのは──夢のような体験をさせてあげることくらいだね」

 「……何を……?」

 

 顔を歪め、シニョーラは困惑の表情を映す。

 

 そんな彼女に、僕は荷物から取り出したあるモノを見せる。

 

 それは、朽ちることのない花だ。

 

 濡れたような紫色の花弁をもつ菖蒲。

 

 「聖遺物『守護の花』──ルースタンの遺志だ。これに触れれば、君は彼の記憶を体験することができる。自分の名前を忘れてしまうほどの長い年月を過ごしてきた君からしたら、喉から手が出るくらい欲しいんじゃない?」

 「バカなッ、そんな代物が……?でも、それがあれば……。ッ、何が目的なのッ……!取引とやらの内容はッ……!?」

 

 僕の発言を受けて、彼女はこちらを睨み殺すかのような鋭い視線を飛ばして尋ねてくる。その反応に、流れが来ていることを確信して、僕は答えた。

 

 

 

 「君にこれを渡す代わりに……君のおっぱい揉んでいい?」

 「死になさい」

 

 

 

 視認できない速度で無数の氷の棘槍が襲い来る。シールドとぶつかり、銀行内に硬質な音が響く。

 

 「ちょっ、冗談!!冗談だって、シリアスに耐えきれなくなったの!軽いお茶目じゃん、許して!」

 「チッ……!不愉快だわ、早く話しなさい」

 

 めちゃくちゃブチぎれてんじゃん怖ぁ……。しょうがない、真面目に話すか。

 

 「改めて……これを渡す代わりに、君は……ファデュイが稲妻から手を引くよう動かす、なんてのはどうかな?」

 「……話にならないわ。ファデュイが稲妻に裏工作を仕掛けているのは、それが氷の女皇の目的に沿っているから。私の一存でどうこうできるものじゃないわ」

 「あ、そーなんだ……えぇ、困ったなぁ……じゃあ……うーん……」

 

 にべもなく返され、途方に暮れる。

 

 そもそもどうして僕が、こんな苦行に取り組んでいるかといえば……それは、ある特定の数人のためだ。

 

 この世界で、このまま何事もなくストーリーが進んでいった場合……蛍ちゃんたちは稲妻に向かうことになる。

 

 だがそこで見るのは、これまでとは打って変わって、陰鬱な雰囲気を漂わせている国民たちの姿だった。

 

 更には、超ド級のネタバレになってしまうが……その稲妻で仲良くなった人物が、ファデュイの裏工作に巻き込まれてこの世を去ることとなってしまう。

 

 僕はその人物のこと、嫌いじゃなかったし……それに彼の死で、優しい蛍ちゃんが心を痛めてしまうだろうことは確実で。

 

 蛍ちゃん推しとしては、彼女が無闇に悲しい目に遭うことは、到底許容できないし、件の人物を見捨てるのもあれだった故に、運命を変えるため僕は、ただ今頑張っちゃってるのである。

 

 シニョーラは、ファデュイで高い地位にいるし、稲妻の裏工作にも関わっていた。だからまぁ、手を引くよう言ったらいけるかなぁと思ったんだけども……少々考えが甘かったようだ。

 

 うーむ……裏工作……最悪件の人物が巻き込まれなければいいわけだし……いやでもなぁ……どうしよう。

 

 「……あー……じゃあ、そうだね。裏工作の手を……1年くらい緩めてよ」

 「それは……」

 「そんくらいならいけるでしょ?何も止めろって言ってるわけじゃないんだし」

 「…………チッ……あんたの指示を聞くのは癪だけれど……その条件なら、飲めるわ」

 

 よし……1年もあったら、蛍ちゃんは稲妻のアレコレを解決できるはずだし……件の人物が裏工作に巻き込まれて死ぬこともないはず。目的は満たしている。ヤバい、僕、案外交渉得意かもしれない……外交官、目指しちゃうか?……いや、働きたくないからやっぱりなしで。

 

 「うん、じゃあ決まりだ。僕は『守護の花』を渡し、君は今後1年、ファデュイの稲妻での裏工作の手をこっそり緩めるようにする」

 「……ええ、それで構わないわ」

 

 渋々といった面持ちで了承するシニョーラ。感謝の印にウインクをしてあげると、盛大に舌打ちをされる。ひどい……。

 

 「それじゃああんた、さっさとその花を……」

 「あ、言い忘れてたけど、実はこの花と同等な効果を持つもの、あと4つあるんだよね」

 「……なんですって?」

 「ふっふっふ……今後とも、よろしくね?」

 「このッ、ネズミがッ……!!」

 

 暗にあと4つ、彼女に頼み事をするつもりであることを告げると、彼女は忌々しげにそう吐き捨てる。態度わるー。

 

 「おいおいシニョーラ、これから長い付き合いになるかもしれないのに、そんな態度はないんじゃない?」

 「ハッ……!私はあんたと仲良しこよしがしたいわけじゃないの。ネズミ扱いで充分だわ」

 「ひどー……じゃあ代わりに、僕の方から距離を縮めるか。さしあたっては僕も君にあだ名を付けてあげよう。うーん……」

 

 あだ名、あだ名……シニョーラをもじってて、彼女の特徴が出てる……あ。

 

 

 

 「分かった!!<熟女>の痴女ーラとかどう!?」

 「死になさい」

 

 

 

 途端、幾つかの氷弾が放たれる。ガンッ!ガガンッ!とえげつない音を立てて、シールドが撃たれる。更には、氷の大車輪も轢き殺さんと、こちらに迫って来てて。

 

 「ぬぉわっっ、ちょっ、やめっ、やめてぇっ!!ダメージないの分かってても怖いからっ!!ごめっ、ごめんなさいっ!!はいこれ『守護の花』っ!!大切にね!!」

 

 僕はシニョーラに聖遺物を投げ渡してから、背を向け一目散に逃げ出す。

 

 背後から攻撃にシールドが反応する音が聞こえるのを感じながら僕は北国銀行の扉を開け、外に出る。

 

 扉を閉めるとき、シニョーラが顔を伏せ、菖蒲の花をぎゅっと胸にかき抱いているのが見えたことについては──何も言うまい。

 

 

 

 そして僕は、北国銀行を後にした。

 

 

 






 明日……明日いけるか……?展開何も思い付いてないので今日以上に連日投稿の危機という……!ヤバい……!
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