海灯祭、やばいって……!帰終の笑顔ちょー可愛いし、周りへの曇らせ具合もちょーパない……!泣いた……!ピン、お喋り鳥……!!
あと、感想評価ありがとう!嬉しい!
璃月の未来を巡る、大きな事件が幕を下ろして。
人々もまた、これまで自分たちを導いてくれた岩王帝君との別れを受け入れ始めてきた頃。
僕は、人で賑わう商店街を、行くあてもなくぷらぷらしていた。
璃月はテイワットの物流の中心国であるために、珍しい品が多く、店頭のそれらを見て回っているだけで中々に楽しいのだ。
いいねー、あのよく分からない箱。ゴテゴテの装飾がついてて男心を揺さぶってくる。ちょっと欲しい。でもあっちの扇子も気になるわ……なんかの鳥の羽を使ってるらしい。もしアレルギーの人が買っちゃったらヤバそう。あ、隣の古びた筝も気になるね。弦を触ったらすぐ切れそうなあたりがそそる。
……うーん、珍品ばかりでほんとに面白いな、璃月……まじで見てて飽きない。ところで珍品といえば僕、『百貨珍品』というイベント大好きでしたね。ちょー楽なのに、きちんと原石──ガチャ石交換用の貨幣──も、貰えるの。最高。立本、愛してるぜ……!!
と、ウキウキ気分で街を散策していたところ、僕と同じくじーっと珍品を眺めている子連れのお兄さんを見かける。
その彼は黒髪のすらっとした長身で、居住まいからは優雅さを漂わせている、後ろ姿だけでも分かるイケメンさんだった。金の耳飾りを付けており、動きに合わせてシャラリと音を奏でる様は、SOくーる……かっこよすぎでしょ。憧れちゃ…………あれ???というかよくよく見たら彼、もしかしなくても鍾離せんせーでは???え???でも子づ……子連れなんだけど???
目をぱしぱし瞬かせて戸惑っていると、僕に見られていることに気付いたのか、鍾離せんせーがくるりと振り返る。
交錯する視線、僕はゆらゆらと彼らに近付いていくと──震える声で叫んだ。
「……鍾離せんせー……!いったいその子っ、誰との子よっ!僕とは遊びだったのっ!?ひどいっ!」
「何の話だろうか?」
問い詰めると、真顔のままに首を傾け、すっとぼける鍾離せんせー。信じられない、言い逃れする気……!?こうなったら……!
決意を胸に抱いた僕は、腰を落として地面に膝立ちになり、鍾離せんせーの隣に立つ子供と視線を合わせる。
彼女は綺麗な水色の髪、その左右にシニョンカップを付けた眼鏡幼女ちゃんだった。うん、可愛いね。
怖がらせないように僕は、努めて笑顔をつくりつつ、穏やかに彼女に問いかけた。
「やぁ君、お母さんの名前って言えたりするかな?」
「話しかけるな凡人、身の程を弁えろ」
…………………え???
「……あ、あの……」
「聞こえんかったのか?身の程を弁えろと言ったのだ、凡人」
「……鍾離せんせーの教育はどうなってるんだ……!?」
眼鏡幼女ちゃんは、めちゃくちゃに冷たい眼差しで、めちゃくちゃに冷たい言葉を吐いてきた。とても幼女とは思えない柄の悪さだ。鍾離せんせーの教育は本当にどうなってるんだ???
ケッとガンを飛ばしてくる眼鏡幼女ちゃんから視線を外して立ち上がると、僕は、咎めるように鍾離せんせーを見る。けれど鍾離せんせーは、不思議そうな顔をするばかりで。
「ちょっとちょっと鍾離せんせー、ダメだよ子供にこんなこと言わせちゃ!幼少期の教育は、大人になるまでの考え方や性格、行動に影響を及ぼすんだから!そこら辺奥さんと擦り合わせておかないと!」
「……?ユヅル殿は、本当に何を言っているんだ?俺には配偶者などいないが……」
「え……?それは……ごめん、辛い話をさせてしまって……」
「……?」
場に流れる、少し気まずく感じる空気。
それを打ち破ったのは、眼鏡幼女ちゃんの不機嫌そうな声だった。
「おい、凡人。不愉快な勘違いをしておらぬか?」
「え、勘違いって……?」
「……ああ、そうか、ユヅル殿は勘違いしていたのか。なるほど道理で話が噛み合わないわけだ」
得心のいった顔で鍾離せんせーは頷く。そして彼は、理解できずにいる僕に向け。
「──この娘は若陀龍王……ユヅル殿の情報を元に探し出した、俺の旧き友だ」
そう、説明してきて。
なるほどなるほど若陀龍王だったのか……はー、そうだったのね……なるほど……うん???
「……フン、裏切り者がよくもまぁぬけぬけと……」
水色髪の眼鏡幼女ちゃんが、今度は鍾離せんせーにガンを飛ばす中──僕は普通に混乱した。
こ、この娘若陀龍王なの!!!???えぇっ!!!???なっ、なんで璃月にいるの!!!???
▼▼▼
原神というゲームには、ボスと呼ばれる敵キャラが存在する。その内、オープンワールドに存在するものはフィールドボスと呼ばれ、また秘境に座すものは週ボスと呼ばれていた。
週ボスは専用の秘境にたむろするだけあって、まぁ強く、厄介な能力を持ち合わせているものばかり。そして、タルタリヤやシニョーラがそれら週ボスに該当するように、若陀龍王もまた、週ボスの名を冠していた。つまるところ、若陀龍王は実に強大な力を有しているというわけである。
そんな若陀龍王は、元々巨大な岩であったと言われている。そこを鍾離せんせーに発見され、契約を結び、彼らは行動を共にするようになった。
若陀龍王は、その強大な力を以て、璃月の人々を長い間災いから守ってきた。それこそ100年は下らない。1000年はまず超えているだろう。だがその時間は、あまりにも長過ぎた。若陀龍王の心は磨耗し、契約を忘れ人々を襲うようになってしまう。
鍾離せんせーは、苦戦を強いられながらも、璃月の南西部──南天門に、若陀龍王を封じることに成功する。けれどはたして、それに至るまでに鍾離せんせーにはどれほどの苦悩があったのだろうか……簡単に想像にできるものではないだろう。
しかし現在になって、封印に綻びが生じ始める。契約を忘れた若陀龍王は、人々を、また裏切り者たる鍾離せんせーを襲うために、動き始め──主人公たる旅人が、それを食い止めようとする……というのが、伝説任務というサイドストーリーにあるのだけれど、うーむ。
……いや、ほんとになんで若陀龍王いるの???わ、わけが分からない……。だって、たしかに僕は、初めて鍾離せんせーに会ったその日に、シニョーラとの交渉の協力を求めるため、若陀龍王の情報を提供してはいたよ?でもそれは、鍾離せんせーの旧友が事件を起こして、彼を含めたみんなが悲しむことのないようにって考えで伝えたわけで、救済してほしい的なことを考えて伝えたわけじゃあ、なかったのよ。第一、どうすれば救済できるのかだって分からなかったし。
だというのに、なんで若陀龍王は再封印されずに璃月にいるの……?……いや、この眼鏡幼女ちゃんの姿は分身みたいなもので、本体はしっかり封印されていたんだっけか?で、この娘の身体を動かして封印を解こうとしていたから……うん、あのデカ本体は封印されてるはず。けど、えぇ……?分かんない……もう当事者に聞くか。
「──ね、鍾離せんせー。この娘が若陀龍王なのは分かったけど……なんでここにいるの?封印しなくていいの?」
「ああ、そのことなら大丈夫だ。この幼子の姿では、若陀は大きな力を使うことはできない。俺も近くで監視しているし、迂闊な真似をすることもないだろう」
「ほーん……」
えーっとつまり……原作だと眼鏡幼女ちゃんは、色々仕出かして、しかも最後は本体と融合してたけど、この世界だと仕出かす前で、融合もしてないから……特に問題ないだろうということで璃月の街に連れてこれた、って感じかしら?
「……ユヅル殿。俺の判断は……やはり間違っているだろうか?正直に言ってしまえば、これは俺の我儘だ。ユヅル殿に何か意見があるのならば、俺はそれに従うが……」
頭ん中でまとめていると、どこか固い面持ちで鍾離せんせーが問うてくる。けどさー……僕の意見に従うって言っても……。
むむっと僕は眉根を寄せて、眼鏡幼女ちゃんの姿を見る。
相も変わらずガンを飛ばしてくるし、口も悪い。この先原作でしていたように、妙な力で人を操るかもしれない。でも、だ。
「──鍾離せんせーの友達、なんでしょ?じゃ、僕から何か言うことはないよ。封印されずに一緒にいることには驚いたけど……鍾離せんせーが傍にいるなら、大丈夫だろうし」
「……そうか……」
思いを告げると、彼は、ゆっくりと目を閉じながら言い。
もう1度開いたときには、その顔は柔らいでいるようだった。
……うんうん、ま、何事も起きずに仲良く過ごせるならそれが1番だよ。たとえ磨耗は直せなくとも、新たに何かを刻んでいくことはできるのだろうし。というか僕には、それよりもちょっと気になることがあるんだよね。
「ねね、眼鏡幼女ちゃん!」
「……それはもしや、吾のことを言っているのか?踏み潰すぞ……?」
「そんなナリで凄まれても、怖くないなり!ところか僕、君のこと、なんて呼べばいいなり?」
「こ、この凡人がっ……!!」
尋ねると、唸り声をあげてきそうな物凄い形相を浮かべる眼鏡幼女ちゃん。ウケるなり!
「ちなみに鍾離せんせーはどう呼んでるの?」
「俺は若陀と呼んでいるが……本人は阿鳩と名乗っている」
「ほうほう」
「ただ、往生堂の面々からは、どちらも不評だ。女の子らしくないと」
「あー、たしかに。じゃあ、そうだな……じゃくだ……じゃっく…………あ、ジャッキー・チェンとかどう!?」
「どうしてそうなった???」
どんな名前をつけてあげようかと悩んでいると、つけられる本人は興味なさげに。
「おい、モラク……鍾離に、凡人。そんなことより、飯にしろ」
「お、おお……え、君ご飯とか食べるの?マジ?」
「ああ、ユヅル殿。実はこの前万民堂の料理を試しに食べさせてみたところ、はまったようでな。若陀が大人しくしてくれるのにも、一役買っているのだ」
「あらあら……」
「な、なんだその目は……やめんか凡人、不愉快だ!なっ、貴様ら、頭を撫でるな!」
本当の子供じみた姿を見せる若陀龍王眼鏡幼女ちゃんバージョンを愛でながら僕らは場所を移動すことにする。
行き先はもちろん万民堂だ。
わーわー喚く幼女ちゃんを宥めつつ、僕らは、活発な璃月の街を歩いていくのだった。
……そーいやこの娘の名前、結局何にしようかな……じゃくだ……じゃっくぁ…………あ、ジャッカル桑原とかどうかな!?(やめとけ)
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読まなくてもいい前話のおまけ:送仙儀式のあとで
──玉京台にて、僕が拗ねた蛍ちゃんのあまりの可愛さに尊死する事件が発生して。
あわや大事になるかと思ったのも束の間、パイモンちゃんと甘雨ちゃんの懸命な呼びかけによって、なんとか復活を果たした僕は。
これからお仕事だという甘雨ちゃんと別れ、璃月の商店街で、蛍ちゃんとのデートを楽しんでいた。……いや、パイモンちゃんもいるからデートじゃないか。なんだろう……観光?まぁ、さいっこーに幸せで楽しいので何でもいっか!!
「──おい旅人っ、ユヅルっ。あの屋台に行こうぜ!美味そうな料理の匂いがしてくるんだっ!」
「いいね行こう、パイモンちゃん!お代は僕に任せろっ!」
「おぉ~!本当か!?」
「もちろんっ!」
力強く頷いてあげると、喜びの声を上げてひゅいーと飛んでいくパイモンちゃん。お可愛い……!!
にまにましながらその様を穏やかに眺めていたら、つんつんと蛍ちゃんが肩をつついて尋ねてくる。こっちもお可愛い……!!
「……ユヅル、本当にお金、大丈夫なの?借金とか、してない?」
「大丈夫だって!怪しいお金とかじゃあ全然ないから、安心して蛍ちゃんも奢られてよ!迷惑かけたり、あんまり構ってあげられなかったお詫びだから!」
「……そ、そう?それじゃあお言葉に甘えようかな……?」
うんうん是非そうして!ほんとに怪しいお金じゃないから!煙緋ちゃんから貰ったお金だから!全然怪しくないよ!ところで人のお金を使って奢ってあげるとか言ってる僕ってヤバくない???
そんなことを思いつつ、蛍ちゃんと一緒にパイモンちゃんの飛んで行った屋台へ向かい、料理を選んでいく。
えーとなになに……?モラミートに、ピリ辛蒸し饅頭に大根の揚げ団子に……あ、これ特に美味しそう!
注文し終えた僕は、みんなの分の代金を払って料理を受け取る。
パイモンちゃんが選んだのは、コショウと揚げ物の良い匂いがする大根の揚げ団子だ。串に3つ、団子が刺さっており、パイモンちゃんの身体からすると結構大きめ。
それを渡すとパイモンちゃんは、うわぁ……!と歓声を漏らして、勢いよくかぶり付いていく。
この子美味しそうに食べるわね……!こっちまで幸せになってくる。まぁ2人と一緒に居られてる時点で既にちょー幸せだけど。
続いて蛍ちゃんには、モラの模様の入った焼餅でたっぷりのお肉を挟んだ料理──モラミートを渡す。紙包みが付いているので、手が汚れる心配もなさげ。女の子っぽいね。
彼女は感謝の言葉を述べながらモラミートを両手で受け取ると、はむっと一口かじり、その美味しさにキラキラと目を輝かせる。うっ、可愛い……!
可愛さに目を逸らしつつ、僕は自分の頼んだ料理を頂くことにする。
僕が注文したのは、小豆色のお饅頭──米まんじゅうだ。お米と馬尾とお砂糖でできてるらしい。まぁお米と聞いたら日本人としては頼まざるを得ないよね。
そこそこの大きさのそれを、僕は小さく千切って口に放り込み。
美味しさに驚き、変な声を溢してしまう。
な、何これ……めちゃくちゃ美味しいんですけど!?ふっかふかでもちもち、お米とお砂糖の甘さも心地好いし……!もしかしてミシェラン料理か!?これ!(勘違い)
「んぅ~、美味しかったぜ……!カリカリで香ばしくて……!オイラ、大満足だ!……お、ユヅルが食べてるやつも美味しそうだなぁ……じゅるり……」
感動に打ち震えていると、もう食べ終わったらしいパイモンちゃんが、涎を垂らしてこちら……というか、米まんじゅうをじっと眺めてくる。食い意地張っちゃって、もう……!
「しょうがないなぁ、パイモンちゃんは……ほら」
「わぁ……!ありがとな、ユヅル!」
残っていた米まんじゅうを半分くらいに千切って渡すと、またまた喜んで食べ始めるパイモンちゃん。ヤバい、可愛いから一生見てられる……。
ほっこり癒やしを覚えていれば、モラミートを食べ途中の蛍ちゃんが、申し訳なさそうに謝ってくる。
「ごめんねユヅル、パイモンは食いしん坊だから……」
「いやいや、見てて幸せになれるからいいよ。むしろありがたかったり。……あ、というか蛍ちゃん、なんなら君も米まんじゅう食べる?」
「いいの?うーん……それじゃあ貰っちゃおうかな?」
返事を受けて、いそいそと再び米まんじゅうを千切る。僕は千切ったそれを、はいどーぞと蛍ちゃんに向けて差し出し──彼女は何を勘違いしたのか、片手で垂れてくる自らの金の髪を押さえながら、米まんじゅうを持った僕の手へと顔を寄せ。
彼女の温かな呼気が、指に触れたと思った次の瞬間、米まんじゅうごとぱくりとくわえられる。
指に伝わる、柔らかな唇の感覚に、微かに触れた舌の感覚。
その唐突に体験することとなった信じられない出来事に固まっていると、蛍ちゃんは米まんじゅうをもぐもぐしながら顔を戻していき。
やがて食べ終わった彼女は、固まっている僕に向けて、微笑んで言う。
「ご馳走さま。美味しかったよ」
「……そ、そっか……!それは良か、良かったよ……!」
それになんとか僕も言葉を絞り出して返す。そして蛍ちゃんが、またモラミートを食べ始めたのを確認してから、僕は顔を手で覆い心の中で発狂する。
な、なんだ今の奇跡体験アンビリーバボーはあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!何、ちょっ、何が起きたんだ今これぇっっ!!??分か、分かんないっっ!!いや、分かるけどっっ!!なんか蛍ちゃんにそれをあーんした感じになって彼女の唇が米まんじゅう持った指に当たったんだよね!!これ言葉に起こすとヤバすぎぃぃぃっっっ!!!!うあぁぁぁぁっっっ!!!!距離感、近すぎぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!
1人悶えていると、不思議そうな声音でパイモンちゃんが話しかけてくる。
「ん?どうしたんだユヅル?米まんじゅう、まだ残ってるぞ?食べないのか?」
「……もう僕、お腹いっぱいなのっ……!!」
「そうなのか!?じゃ、じゃあ残り、オイラが貰ってもいいか!?」
「持ってけどろぼぉーっ……!!」
「やったぜ!」
残っていた米まんじゅうをあげれば、パイモンちゃんは小躍りして喜んだ。
──とまぁ、送仙儀式のあとで、そんな璃月での一幕があったとか。
海灯祭で心やられたので、若陀龍王はちょっと救ってみちゃった。まぁこんな未来があっていいよね……。
それとおまけは、まぁおまけです!あんま気にすんな!
あと、アンケート用意したので協力おね!その内書きます……!その内!