孔が見えた。
目を閉じると仄暗くどうしようもないほどの暗い、暗い孔が見える。
私はあれを見て何を感じているのか。恐怖?畏怖?絶望?
否。否である。
後悔。過ち。懺悔。
“アレ“はきっと。私の『罪』なのだろう。
目を開く。
いつもの情景を忘れ去るように、魔術回路を起こす。
目の前には、召喚のための陣が描かれている。
此処は、私が借りたマンションの一室。
此度の、帝国聖杯戦争のために用意した魔術工房の1つである。
最も、外来の魔術師である私の用意した魔術工房なぞ、御三家のソレに比べられるわけもなく。転々と所在を変えて、此度の聖杯戦争を生き残るための仮住まいでしかない。
召喚に使う聖遺物は手に入らなかった。それもそのはずだ。歴代皇帝の聖遺物は全て、“御三家“の管理下であるからだ。どんな些細な聖遺物だろうと所持することすら叶わない。
ならば、“縁“を辿るまで。
なに、この土地自体が触媒と言っていいほどかの帝国と結びついている。
その中で、私と相性が良いものを引けばいいだけだ。
定石?そんなもの、聖杯戦争にはない。
これはただの戦争ではないのだから、どのような方法や戦法も“正しい“。
詠唱と共に魔力を流し始める。
「ーーーーーーー答えよ、天秤の守り手よ」
詠唱が終わると部屋の明かりは落ちていた。
召喚の影響か?
背中に気配を感じると同時に魔力のパスを感じる。
「フェッフェッフェッ、あなた様のサーヴァントでございます。キャスターのクラスが一人。真名を悪の魔女『ランダ』と申しますのじゃ。以後よろしくお願いしますぞマスター」
そうか、これが英霊か。しかし、いや、これは、
「弱そうだな」
つい思考が言葉となり露出する。
『まあ、そうでしょうとも。ワシはただの呪術師。それ以外はただの老婆ですじゃ。しかし、見た目で判断すると痛い目にあいまするぞ?』
ニタニタと意地の悪い笑みを浮かべながら老婆、、、キャスターは答える。
「そうか、ならばその言葉の真偽試させてもらうぞ?」
魔術回路に潤沢な魔力を流し始める。なに、召喚に用いる魔力なぞ微々たるものだ。
「は?一体どういうことですじゃ?」
どうしたのかこの老婆はろくに構えもせずに呆けている。
まあ、良い。
瞬時に老婆に向かい純粋な魔力の塊を叩きつける。
「な、なにをするのですか!?」
慌てながらも魔力を用いて相殺。流石に、その程度はできるか。
しかし、
「お前の生きていた時代のことは知らんがそれだけでは、不合格だぞ」
一息に間合いを詰め、その腹部に掌底を叩き込む。
「う、うぐっ!?」
軽い。杖を間に入れたか。ならば、
「ハッ!」
発勁だ。
「ぐ、グァアアアアアアア!!!!」
盛大に吹き飛ばしてしまった。
「立てるか?」
その身を案じてかキャスターに近づこうとする、が
「?…………なぜ、足が動かない?」
腹部を押さえながら倒れている状態で杖をこちらに差し向けている。
「ふぇっふぇっふぇっ…………舐めてもらっては困り、ます、るぞ……」ガクッ
「呪術か……。インパクトの瞬間にカウンターをしたということか。……まあ、合格と言ったところだな」
「しかし、動けないのか。仕方ない。」
立ったままで眠ることにしよう。
そして、夜が明けていく