ということで強化イベント編です
「やべぇ、クーラードリンク必要だわここ……」
どうやら手紙ナビくんは火山に妹か弟がいると言ってるらしい。でもな、火山地帯はあっちぃんだよ。噴火してなくてもめちゃ暑い。手で扇いで暑さなんてしのげない。早急にクーラードリンクが必要だ。
あー、確か家の方に作ってあっておいてはあるんだよな。島までまた戻るのもアレだし、なんか空間に手を突っ込んだら倉庫に繋がる魔法とか欲しいわ……。いや、スキル? なんかそれっぽいのあるかな……。今度ヴェルダに聞いてみよう。
手紙ナビくんの誘導に従って、どんどん奥地に入っていく。この世界特有の魔物たちもいて何度か危うくなったが、そこはなんとか竹くんで気絶させてやってきた。
そうやって歩いていくと、開けた場所に出てきた。
ビリリ、と感覚で周囲に妹弟……竜種っぽい魔素量を持つ生物を察知した。というか、本竜が出てきた。赤い鱗、細い体型の竜がぬっと。
「……あら? 何だか妙に多いような、少ないような。いいえ、もしかしてヴェルダ兄様の言っていた……、イナヴェル兄様ですか?」
「あ、うん。そうだけど。君が妹……なのかな?」
「はい。ヴェルグリンドと申しますわ、イナヴェル兄様」
すっとヴェルグリンドが竜形態から人型形態になった。こちらに合わせてくれたんだろうか。
青い髪に金色の目が特徴的な……これまたヴェルザードちゃんと似ているけれど、雰囲気が違う美少女。
あのデッカイ体格なのに人間形態は小さいってどういうこと? 俺あんなデカかったかなぁ……。俺よりも森のヌシってるリオレウスの方がデカかった気がする。
「では改めて、イナヴェルです。どうぞよろしくね」
「えぇ、よろしくお願いしますわ。イナヴェル兄様」
そう言うと、ヴェルグリンドちゃんは何故か周囲に魔素を漂わせた。
「あのー、どうして戦闘態勢に……?」
「ふふふ、ヴェルダ兄様に挑んだことで素敵な贈り物をもらったのです。それを試したくても、この辺りの魔物では弱くて弱くて、とても相手に出来ません」
「へ、へぇー」
あ、なんか嫌な空気になってきた……。というか、この雰囲気はヴェルザードちゃんが……、なんか吹雪とか出してくるスキルのような……。底知れない力のような……。
「――ですが、同じ竜種であり、ヴェルダ兄様の弟であるイナヴェル兄様ならば、きっと耐えられるでしょう?」
瞬間、凄まじい溶岩が水鉄砲の様に顔面に――――――。
○
…………。
……。
じ、じぬがどおもっだ…………。
次なるファミリーの元へ誘導されている俺は、妹たちの怖さを知った。
あの溶岩水鉄砲が顔面に来た後、咄嗟に俺はモン○ン流回避をかました。
なにすんのや! と叫ぼうとしたら、俺でもすっかり忘れていた機能――イナガミの睡眠ブレスが発動してヴェルグリンドちゃんがぐっすりお眠りになった。その隙をついて手紙ナビくんを急かして逃亡中。
そうだね……。ずっと竹ばっかりに注目してたけど、何気に睡眠属性付きの古龍だったもんな……イナガミ……。
さっさと火山地帯から離れた今でも心臓バクバク言ってる。ヤベェ、ヤベェよあれ。起きたら絶対怒りがアクセラレーションしてるでしょあれ。どうかヴェルザードちゃんみたいに怒りませんように……。
――あ、もう島の外に出なければいいのか。
まだ俺に優しいモンスターたちのいる島の方が安全だったよ。出会ったら即バトル! みたいな妹たちが住んでるこんな大陸にいつまでもいられるかってんだ。
もう弟の顔を見たら籠ろう。そうだそうだ。そうすりゃいいんだわ。
……でも、弟の位置ってどこ? 段々上昇して陸地から遠ざかっていくんじゃが。
こんな空の上……まさか、めちゃくちゃ体格が大きいとか? それとも空を飛んでるだけ――。
「やぁ、イナヴェル」
「お前かよ!」
空にいたのはヴェルダであったが、その腕には卵を抱えている。クソデカい卵だ。
「……まさか、弟ってまだ生まれてない感じ?」
「正解。これから何百年も掛けて孵化していくんだ」
「へぇ~……」
規模デッカ。サイズも年数も桁違いすぎんだろ……(恐怖)
「そもそも、生まれてから成体だった君の方がおかしいって、ヴェルグリンドが生まれた時点で気付いたんだよね……」
「ウェッ!? そんなこと俺に言われても困るわ」
「だろうね」
苦笑い気味のヴェルダから卵を差し出されて「持ってみる?」と言われた。
「……重い?」
「そんなことないよ」
とのことなので持ってみた。うーん確かに米俵よりは重くないわな。
卵の殻は冷たいが、奥からほんのりと魔素の塊みたいな……。あ?
「……? なんかさぁ……、めちゃくちゃ内包してる魔素多くね?」
「そうだねぇ。今までの兄妹の中でも一番力が強くなる子だよ」
「……」
ただでさえ兄妹? ヒエラルキーが一番下なのに更に上が増えるとか(笑)
(笑)じゃねーんだよ。もうお腹いっぱいだわ。またコイツも顔を合わせれば戦え戦えジャンキーになるとでも……?
「それで、どうだった。この大陸」
「うん、もう二度と行かない」
「!?」
「妹に出会う度戦えってせがまれるの嫌だし……。さっきヴェルグリンドちゃんとも会ったけど戦えって言われたし……、竜以外にも巨人族とか吸血鬼族がいるんだろ? 俺、あの島で大人しくしとくわ……」
戦闘ジャンキー妹+弟(予定)のいる大地になんていられるか! 俺はまだ襲ってこないモン○ン島に引き篭もることにするぜ!
……と、意気込んだはいいものの、先程から暗い顔をしているヴェルダが気になる。一体なにか気が障るところでも……って。ああああ!
「あっ、ちがっ! ヴェルダの創った大地も種族も多様性に富んでいいと思うけど、ちょっと住むことを考えるとあの島がいいなってだけで、別に貶した訳じゃなくってね!? そう! ヴェルダじゃなくて俺個人の問題な訳で! 多角的な面から見たらヴェルダのいる島って他の奴らからすれば住みたいとか、凄いとか思っ――……」
「っく、ははは!」
突然ヴェルダが大笑いした。
……? なんでヴェルダ笑ってんの?
笑える要素あった?
困惑しながら見ているに俺に「ごめんごめん」と涙を拭いながら話しかけた。
「いやぁね……。ふふっ、なんでも……」
「絶対なんかあるでしょソレ! なんで笑ってんだよ」
「ッ駄目だ……、ごめん、ちょっと笑いが止まらな……あははははは!」
――どうしよう、ヴェルダ、バグちゃったの?
え、え、えぇ……。
「はー……、やっと落ち着いたよ」
「そりゃよござんす……?」
空中で腹抱えて笑うヴェルダを延々と見ていたが、ようやく収まったらしい。
「ついさっき君の未来を見ちゃったんだけど、ふっ……なんだか愉快な……くっ……スキルが……」
「えっなに、なんでそんな笑えるスキルなの?」
「一見ふざけたスキルに見えるが、使いようによっては凶悪ではある……。でも、まったく
「ほ、ほーん? つまり将来的に俺はめっちゃ強くなるってこと?」
「そうともいうね」
ヤッター! ヴェルダの太鼓判ならほぼ確定じゃないか? 俺も強いスキルを……!
もしかして
「――それから、何か聞きたいことがあるんじゃないのかい?」
「あっ……そうそう! ヴェルダ、どこでも物を取り出せるようなスキル知ってる?」
「ふむ……、イナヴェルが言っているのはこのことかな?」
そう言った瞬間、ヴェルダの手にファンタジーでよく見る鉄の剣が現れた。
「おぉー! それどうやってやった?」
「まずは取り出したい物のイメージを浮かべて……、いや君に教えた筈の魔法のメカニズムさえ知っていれば出来る筈だけど」
「……へへへ。もう一度教えてくれたらなーって」
俺が明後日の方向を見ながらちらちら様子を窺う。ふぅ、と溜息を吐いたあと、怒りの気配を微塵も感じさせない笑顔で「いいよ」との承諾を得た。
よっしゃ! 流石ヴェルダ!
「君にも分かるようにいえば魔法というのは特定の法則に従い、具現化するイメージのことだ。魔素へ干渉する力が強ければ考えただけで魔法を行使する、なんていうことも可能になる」
「ほうほう」
「それで、君が知りたいのはある物質をどこからでも取り出すもの、で合ってるかい?」
「そうそれ」
じゃあ、とヴェルダが前置きをした。
「ボクが今持っている剣を取ってみて」
「……? 普通に?」
「君が思いついた方法でいいよ」
俺はそろーっとヴェルダに近付く。
え、これ手に取ってもいいの? 急にヴェルダが襲い掛かってきたりしない?
ヴェルダの動向を監視しつつ、弟(卵)を抱えていない方の手で剣を持った。
……特に何も無かった。
「ほい、取ったけど」
「うん。じゃあ剣をボクの手に戻して」
剣をヴェルダに戻す。
「それから距離を取って」
「どんくらい? こんくらい?」
「そのくらいで構わないよ」
ヴェルダから少し離れたところまで行くと、ヴェルダが頷いた。
「じゃあ、そこから動かずに剣を取ってくれるかな?」
「急に無理難題吹っ掛けんじゃん」
俺の手は某ゴム人間のように伸びたりしないからな? 魔法もなんとか使えてるレベルだし。
念動力とかも使えないからな???
「ほら、魔法はイメージって言っただろう? そこから動かずに、剣を取るイメージをしてみるんだ」
「えぇ……」
イメージ。イメージねぇ。
剣がふわ~っと浮かんで俺の手元に来るとか?
俺自身を動かさずに剣を持ってくるイメージしろって、結構難しくね?
弟(卵)を抱えてぐるぐる長考フェイズに入ってしまった俺にヴェルダから声が掛かる。
「何か問題が?」
「んー、イメージは出来るけど、それって無理じゃないって思ってなぁ」
でも、イメージが大事だとかいう魔法は使える。実際、俺の住居辺りに結界的なバリアー張ってきたから、使えるっちゃ使える。そもそも竜形態から人間に変わるのも魔法なのか……?
いかん、頭からぷすぷす知恵熱の音がし始めた。
「じゃあ、一つ。コツを教えよう」
「マジ? よろしく頼むわ」
「――魔法は……」
後から続いた言葉に思わずぷふ、と笑いが出た。
「そんなの魔法だけじゃないだろ……!
「能力も魔法も言ってしまえば同一さ。
弟(卵)を落とさない様に腹を抱えて笑いを収めた。
あー、なんだか当たり前の言葉だけど元気が出てきた。
「ははっ、でも分かったよ。そう気負わず使わなくてもいいんだな」
強く、また浮かんできたイメージを思い起こす。
瞬きをすれば、俺の手にはヴェルダが握っていた鉄の剣があった。
「――そう。魔法のコツは掴めたかな?」
鉄の剣をヒュンヒュンと移動させたり、ぐにゃりとゴムのように曲げたりすることで答えた。
ははは! 俺って魔法使いの才能あるかも!
「ありがとなヴェルダ! おかげでまた一つ賢くなれた!」
「うん、ボクとしてもようやく君が剣を持ってくれて嬉しいよ」
にっこり。そう笑っているヴェルダはいつもの笑顔だったが、なんだか寒気が止まらない。
「ん……?」
「イナヴェル、追加で剣術についても教えてあげよう」
あっ……。
俺は、ヴェルダの手に現れた剣を見て、これから起こることを察してしまった。
「いや、俺、戦えなくても、ダイジョブだし……」
「自衛の手段は持っておくべきだと思う兄からの心遣いだよ」
「でも、ここ空中じゃんね? 俺、ヴェルダたちやフェルト……フェルドウェイたちみたいに翼とか持ってないし……」
「今ここで地面として扱えるように固定したよ」
ふよふよと浮かんでいたヴェルダは確かに、空中であるのに足をしっかりとつけていた。
いや、そういう問題じゃないって!
剣術は! 剣術は求めてないかな!?
全力で頭を横に振る俺は不思議な力で竹から引き剥がされて空の地面に立たされた。弟(卵)は俺の手から離れたが、宙に浮いたままだ。
「や、やめようヴェルダ! 気分を害していたのならこれまでの失言を謝るから! 誠意を込めて土下座するから!」
「ボクは別に怒ってないし、それでいいとボクが言ったんだから謝罪の必要性はないよ。さ、構えて」
――その後は、語るまい……。
俺は ヴェルダ直伝の剣術を 仕込まれた!
▽■■■力『■■■』を獲得――失敗。
現状においてプロトタイプの認知不足が原因と思われます。
代行措置として、『■■■■』の能力を改善――不確定要素を発見しました。
ただちに解析を行います。――検索結果、該当なし。
『■■■■』に類するスキルの情報を新たに規定する必要があります。
現行処理と共に解析を進めます――……。