団子食えよ   作:一億年間ソロプレイ

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アンケートにご協力ありがとうございました!

>>>結果は女体でした!<<<

意外と老体の票が多かったところに琵琶法師の人気を感じてビクンビクンしてました。
だからサンブレイクくんははやくイナガミ復活させて、役目でしょ(ゆうた)
ま、女体になったのでCVは変わってると思います。さらば良い声の琵琶法師……。
でもサンブレイクでお役御免になったから……ウッ(琵琶法師ロス)


その日、俺はとんでもないものと出会った件

 

 赤ん坊の面倒を見ながら掘っ立て小屋を建てた。一応雨風を凌げる場所を確保したことにはなった。

 食事もなんとかして、衣類に関しては俺の着ていた着物の上着を分割・縫い直しておくるみを作成。なんとかあやすコツも掴んだが、慣れないことをすると疲労がものすごく溜まるからか、アイルーたちはぐーぐーと寝ている。

 俺は周囲に警戒をしておく。結界を張ったとはいえ、必ずしも安全ではないことはもう知っている。

 寝ているような、寝てないような時間がゆっくりと流れる。時折起きてぐずり始める赤ん坊をあやして目を瞑ってを繰り返す。

 

(……そういや琵琶法師、どこいったんだ?)

 

 アイツなら深夜の時間帯でも琵琶をジャンジャカ鳴らしてもおかしくはないというのに、ここ最近やけに静かだ。

 ……スキルを確認できるスキルとかない? どうやったら習得できるんだろうな……。

 

 今度ヴェルダに……。

 

 

 

 ……。

 

 

 

 ……今は会いたくない。会ったら冷静でいられないから、来るなら来るでもう少し後にして欲しい。

 ――どうしてあの時、俺を島から遠ざけた。なんて言いたくない。

 ヴェルダは未来が見える。どこからどこまで、その未来を見て動いているのか分からないけど。

 

 ――あの時、手紙に従って島を出なければ、今もアイルーたちがいたんじゃないかって。

 

 そう考えてしまいそうなのが嫌になる。

 

 もっと結界を張れるくらいの力があれば。もっと俺の意識が固まっていれば。

 

 もし出来ていたら、出来ていればの話が嫌でも浮かんでくる。

 その様に出来なかったから、今の状況があるっていうのに。考えれば考える程、体が重くなってくる。耳に、あの頃の笑い声が絶えない島の幻聴が聞こえてくることもある。……未だに「俺のせいじゃない」って逃げそうになってる。

 

 違うんだ、これははっきりと俺のせいなんだ。

 

 違うんだ、これは俺のせいじゃないんだ。

 

 違う、違う、違う違う……。

 

 ――息苦しく感じる。……本当は、アイルーたちは俺のことを恨んでるんじゃないか?

 立場上、ああ言っただけで、本心は「雑魚竜種が」なんて思われてるんじゃないか?

 俺がここにいることで、逆に窮屈させているんじゃないか?

 むしろ、俺はここからではない、遠い所で彼らを見守るべきじゃないか?

 赤ん坊だって、俺がいない方がいいんじゃないか?

 もしこのまま成長していくなら、俺は赤ん坊たちのことがとても大切な存在になっている気がする。

 

 もし、もしも。

 

 俺がまた同じ過ちを繰り返したら……?

 

 ――苦しい。首の辺りが締め付けられているように、苦しい。

 じわじわと呼吸が圧迫されていく感覚。やたらと首元に強い力が掛かっていて、黒い腕みたいなのが伸びていた。

 

 

 

 ……首を絞められている?

 

 

 

 一気に視界がクリアになる。絞めている腕の主の顔は黒いもやがかかって分からない。

 でも、顔辺りを見ていると、耳の奥から音が聞こえてくる。苦しさの中でも耳をすまさなくて、音は大きくなった。

 息苦しい、折角見えてきた視界もくすんできた中で笑い声が聞こえてくる。

 明るくない、湿気を含んだ様に厭らしさを秘めた嘲笑だった。

 気持ち悪い、苦しい、気持ち悪い、苦しい。

 

 腕をどかそうとしてもぴくりと動かない。笑い声は更に近くなってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳元に笑い声が迫る――ところで飛び起きた。

 辺りを見回す。傍にすよすよと眠る赤ん坊と、眠るアイルーたち。灯りもない掘っ立て小屋の中だった。

 

 ……寝ていた?

 さっ、と心臓が冷える心地がするも、アイルーたちも赤ん坊たちも無事で、周囲に近寄る魔物の気配も無かった。

 安心が湧くと同時に、どっと、気が疲弊してくる。

 

 寝ていた。……寝ていた?

 

 これからずっと起きていようと思ったのに、何故俺は寝た?

 

 降って湧いた疑問が胸をぐるぐると回る。

 ――たまたま、いなかったから良いものの。もし、魔物が寄ってきていて咄嗟に守れていなかったら?

 

 ……気を引き締めないと。

 

 俺はもう間違ってはいけない。もう間違って、皆の命を散らしてはいけない。

 

 

 

 

 その翌日、環らは焼けただれた畑を再び整地することにした。土に混ざった石や肥料にもならない枯草を取り出した。その後、肥料として取ってきた魔物たちの糞やらを混ぜ込んで栄養を蓄えさせることにした。破壊された水路も整え直し、前より整備された農地を開拓した。

 徐々に冬の寒さが夕方にかけて現れてきた。

 もうすぐ冬が来る。少し早い休耕期だね、と。その頃にはそうやって笑えるぐらいの余裕が少しだけ戻ってきた。

 

 畑は時期まで休ませることになったが、次の問題は植える為の稲を育てる育苗用の稲をどうするか。

 これはすぐ解決した。

 環らは日頃、『栽培者(ソダテルモノ)』によって生育が完了した稲を出して食料としているが、この稲から取れた籾……米の味が襲撃前と変わらないものだということが発覚した。

 

 つまり、環が無自覚に「稲」として出した物はこれまで……、多くのアイルーたちと育んできた稲そのものだった。

 

 この稲から取れた籾を軽く選別すれば、春にはこれまでと同じ様に稲作が出来る。

 ――そう思えば、環の胸にあった不安が少し和らいだ。

 

 次の日、家の改築をすることにした。ヴェルダから教わった知識を用いて、掘っ立て小屋から前の様にヴェルダが指導して作った頃のような藁葺の家が出来上がった。建築資材はほとんど環のスキルで作り、アイルーたちが環からの指示を聞きながら作られた。

 住み慣れた土壁の家、藁の重みがのし掛かる屋根。

 家に入れば同じ間取りながら、前よりもやや大きめにスペースが取られている。これまで人に似た形をしたのは環だけだったが、恐らく赤ん坊たちも人間と同じように成長するものだと思い、環がそうするように指示をした。家の作成には数日かかったが、アイルーたちはよく働きながら、休憩の合間合間に赤ん坊の様子を見たりもしていた。

 この頃になるとアイルーたちにあった赤ん坊への不信感は無くなり、今や家族同然のように接している。

 以前より広くなった家で、アイルーたちが赤ん坊を温める様に添い寝をする姿を環は見ていた。

 

 衣食の、衣食はともかく、住はある程度整えた状態にある。不安の残る結界も、掘っ立て小屋作成時よりも強化を施したお陰で安心と呼べるようにはなった。とはいえ、環による警戒は継続している。

 

 残るは衣食。特に、衣が重要だ。

 

 ちらほらと、遠くから雪雲が見えてくるようにもなった。日の出る昼間であっても寒さがほんのりと感じるようになった。

 流石にアイルーたちも、赤ん坊も、このまま冬が来れば寒さが堪える。

 備えが必要だ。体を温める毛布に食料品などが特に。

 火を起こす薪や食料は環のスキルで対応できるが、毛布はない。いくら以前より魔法というものが扱えるようになったとはいえ、空中からぽっと毛布を作り出す域では無い。

 毛皮、それから植物以外の食料品も必要。

 綿花から繊維を取り出して糸・布地を用意して編む、という案が浮かんだが、ここで重要なのは繊維を取り出す技術も、重要な縫製技術も、環には無いことだった。

 

 毛布を作るよりかは、体毛のある魔物から毛皮を剥ぎ取る……。

 「狩猟」こそが冬を越す近道だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹き付ける風が前よりも冷たくなってきた。

 

 あぁそろそろ決めないと

 

 環は考えるも一向に答えは出せずにいた。

 囲炉裏の火すら消えた家から環はそっと抜け出した。

 定期的に耕しては手入れを施している畑の横を歩けば、ちょろちょろと流れる水路の水音が自然と耳に入る。

 焼け焦げた頃の面影は徐々に消えてゆく。同時に、あの時の生活も消えてゆくよう。

 

 ぽつぽつと歩を進める環はぴくり、と耳に届いた音に足を止めた。

 

 音は結界の向こう。か細く、森の木々の暗がりから聞こえてきている。

 初めは魔物の声か咆哮かと思えば、続く音を聞いていると、それはなにか、細い糸を弾く音だった。

 糸が小さく空気を震わせて、ゆるやかな音を遠くから響かせている。硬いなにかが板にこっ、とぶつかる音――。

 

 

 

 てんっ

 

 

 

 音の区切りを表すかのような一際大きい音。

 やけに聞き覚えのある音だった。

 

(……琵琶?)

 

 襲撃以降から聞こえなくなった琵琶の音。話しかけても反応すらしなくなったあのスキルの名がふっと浮かぶ。

 

(いや、まさか……。だって、あいつは寝ている筈だろ……)

 

 かといって、この島に()が来たことは無い。こちらにやってくるような、船の影も気配も無かった。

 環の意識が音色に惹かれ、ふらふらと結界を通り過ぎて森の奥へ歩もうとする。が、森へ入る手前で止まり、結界を振り向く。

 

(結界はあるにしろ、襲撃されそうな程激しい気配も……そう、無い。大丈夫だって信じたいけれど……)

 

 目を伏せる。このまま音色の元へ行くべきか、留まって守りを固めるか。

 結界を張ったから大丈夫、なんて心持ちで外出したばっかりに起きたのだ。今、この時点で油断はできない。間違えたらいけないのだから。

 

 一歩。

 

 環の足が森から離れ、ゆっくりと森から離れて畑へと近付く。馴染んだ水音が聞こえ――。

 

 途端、激しい音が届いた。

 環が顔を上げて、再び森の奥を見る。

 

 

 

(…………)

 

 

 

 それ以降、()()()()はしない。

 

「…………行けば、いいんだろ」

 

 環が声を出せば、応えるようにか細い音が届く。

 深く、大きく、息を吸って呼吸を整えた環は再び森へと足を向ける。今度の足取りはしっかりとしたもので、かつ素早いものだった。

 走りはしない。早歩きで音色の元へと行く。

 普通、こんな夜中に弦楽器なんて鳴らせば魔物が起きる筈だがそれもない。不気味なまで琵琶の音が届く静かな夜に()()()()()

 

 環たちが拠点にしている場所からやや南下した場所には山がある。断続的に続く音色に導かれるまま、切り立つ崖のある場所に出る。そこを飛ぶように地を蹴って登ると、山頂が見えた。

 この山は森や砂漠、海まで見通せる場所で、あるシステムが降り立った場所でもある。

 

 

 てん てん てん

 

 

 調子を調べるように鳴らした琵琶の弦に銀杏に似た大きな撥を構えているのは、年若い女性だった。

 うっすらと緑を内包する艶やかな黒髪を長く伸ばし、背に流して、地にまでぐるりと蜷局を巻いている。静かに琵琶を弾く姿は初めて見るようでいて、初めてではないような感覚がしている。

 女性の前まで歩むと、閉じられた瞼が開かれる。

 

「……琵琶法師?」

 

 銀色に見える瞳が環を貫いた。

 

「――あぁ」

 

 

 

 

 

 すごく、大きな溜息が夜空に響いた。

 

 

 

 

 




▽『■■法■』が特殊な進化を遂げました。
データベースに追加し、特性・動向を都度追記し、該当スキルについての情報を逐次更新します。
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