団子食えよ   作:一億年間ソロプレイ

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日常系をつらつら
赤い悪魔は次話辺りに出そうな気がしないでもない


家づくりで相談した件

 

 

 魔素の扱い方指導、キツいッス(白目)

 

 

 

 もーこれ辛い、痛い、全身バキボキよ。ヴェルダナーヴァ、あんな優しい笑顔でやってること鬼なんだけど。

 俺は自分の魔素ってやつを抑え込むのだけでも手一杯だったのに、それを変形させて見ろとか、挙句の果てには炎を出して見ろとかはぁん???

 やりました。やってやりましたよ。でもやればやる程ヴェルダナーヴァから難題が送られてくるんだ……。

 正に無限課題地獄。でもお陰でなんとか人の形にはなれたっぽい。

 もう「顔だけが竜だよ」とか「体が竜で顔だけが人間だね」とか言われてないからな……。

 琵琶法師からも《判決~ 人竜もどき~》とか言われてないしな……。

 

 何日か日は過ぎてた気がするけど、今は夜中だ。あー大自然の中の夜空って綺麗ですなー……。

 地面がひんやりしててキモティー。

 

 ……ここまで来たら認めるしかないのか。ヴェルダナーヴァが今まで語ってきた設定が設定じゃないってコト……。魔素とかスキルとか、そういうの全部あり得る世界なんやなぁ。

 手をぐーぱーと握ってみる。俺が確かに見たのはイナガミの手足だった。近くの川辺で見たら更に確信させられた。普通イナガミとかの手が人間の手に変わる筈無い。それこそ魔法じみた物がないと。

 ――今更だけど全裸じゃなくて良かった。でもこの服なんなの、和服っぽいけど。

 

「……教えがいがあったというのはこういうことかな。君が来てからは初めての経験ばかりだ」

「ヴェルダナーヴァが誰かに教えるのは初めて? あんな分かりやすかったのに?」

 

 隣に座る気配。

 意識して聞けば、ヴェルダナーヴァの説明は分かりやすい。説明も一度聞いて分からないならもっと噛み砕いて教えてくれる。

 今までがキツかったの半分は俺の理解力が低いからかもしれなかった……。でも課題積み上げていったのはヴェルダナーヴァでしたよね?(手のひら返し)

 

「分かりやすかった、か。これは嬉しい、かな……」

 

 何かを感じてしんみりとしているヴェルダに何も言えなかった。

 

 折角完全に人になった姿の俺を見る為に水辺まで行くの面倒だから鏡出してとか言えなかった……。

 

 

 

 

 朝ダヨー! あのまま寝ちゃって体中バキボキが治らないよ!

 目が覚めた時にヴェルダナーヴァはいなかったけど一枚毛布が掛けられていました。気遣いが暖かい……。

 そして俺が今やることは一つ。人化した俺の姿を確かめることだ……。

 

 駆け足で姿を確認した俺、今生で一番勝ちを確信し――――?

 

「え、誰おま……」

 

 思わずこんな声が出てしまうくらいにはビックリ。水辺に映るのはなんだろう、顔が整ってるのが分かるけどイケメンという括りに入るかは分からない顔付き。あ、男らしさが無い感じだ。

 ショック! 同じ高校にいた野球部の磯野レベルに男らしい顔でこの背丈だったら良かったのに!

 ちなみに、磯野は俺の通ってた高校で有名な男子生徒だ。なんか動く度にキラキラなエフェクト掛かったり花が散ったりしていたのであだ名が「イケメソ野球王子」。女子からの人気が高くて悔しかったぜ……。

 

 ぐにぐにと顔を触ると水辺に映る人物の顔も同じくぐにぐにと顔を触っている。やっぱ俺なんだ。

 はー……、ここまで顔面違うと転生してきた感が出てきた。俺は本当に俺なのだろうか……なんつって。

 

 ともあれイケメンなことに変わりはない! 古龍と人の姿になれてお得!

 

 はっはっはっ! ……で、これから何すりゃいいんだ?

 かと思ったが、周辺地域の探索というものがあったな! よっしゃ折角だから地図作ったろ! 紙無いけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ざっと見て回った感想。

 

 自 然 と 動 物 以 外 何 も 無 い 。

 

 民家? なにそれおいしいの? 状態である。マジで人が住んでる気配がぬぇ!

 それから個人的なことだが、腹が空かないこと、歩き続けても走っても疲れないことに気が付いた。

 前者はともかく、後者は身体能力がすごく上がっているってことなのか。いや軽くジャンプしたら背の高い木がすぐ横に見えたからそうだな。イナガミってスゲー!

 

 若干話が逸れたが、俺にはヴェルダナーヴァみたいに翼もないのですいすい島を移動することは出来ない。

つまりはこの島で暮らすことになる訳だ。向かい側に小島がちょくちょくあるのは見かけたけど……。

 人の手が入っていない、無人島で開拓。どこのDA○H村だ。あそこは福島だけど。

 

 これらを踏まえて、優秀な俺は島中で家を建てられそうな場所に目星を付けた。家を建てられるか否かはともかく。実はD○SH村とかの田舎ライフには少し憧れていたのは姉には内緒。

 姉ちゃんは虫嫌いだからすぐ発狂する。農作業や爺ちゃん家の手伝いなんてもってのほか。すぐGの者とか出たら俺に処理させようとするんだからあの暴君。

 

 まぁ姉ちゃんのことは置いといて。ああいう生活を送るとするなら景色の良い場所がいいよな。

 

 ということでやってきました! 島の中央部です!

 平地で日当たりも良くて水場もすぐ近くにあってと好条件。

 

 ここを! キャンプ地とする!

 

 しかしごく当然な問題にぶち当たる!

 

 家をどうすりゃいいんだ!

 

 《夸父逐日~》

 

 

 

 

 途方に暮れて早三日。琵琶法師に翫歳愒日(意味は分からないが確実に煽られている)と呟き続けられてノイローゼ気味になっていた。家建設予定地近くにある洞穴で渋々過ごしていたが、まったく腹空かないのな。なんかありがたみと気持ち悪さが両立してて気持ち悪い。

 今日もシクシク泣き寝入り。そんな所でとんでもない圧がやってきた。

 

 間違いない、ヴェルダナーヴァである。救いの手がやってきた。

 俺は早速ヴェルダナーヴァに泣きつくことにした。恥はあります、でもこの現状をなんとか考えてくれそうなのがヴェルダナーヴァしかいないんです! いつも農作で役に立つ爺ちゃんウィキも家は頓珍漢だし! 仕方ないだろ!

 

「神様仏様ヴェルダナーヴァ様ァ! 家の゛作り方を゛教え゛でぐだざい゛!」

「別にいいけど。どうしてそんな必死なんだい」

 

 勝った! 流石ヴェルダナーヴァ! ありがとうありがとう!

 俺ヴェルダナーヴァと知り合えてホントに良かった!

 

「家というのは僕が作りだそうとしている人間が住処とする重要な拠点であり――――」

 

 うーん???

 またヴェルダナーヴァの小難しい説明が入った。時折入ってくるこの説明はなんなんじゃぁ……。

 

「ということで、君の置かれている環境下で人間が作るであろうとされる“家”を想定して作ったのがこれだ」

「わぁい」

 

 聞き流してたらしれっと人型になってたヴェルダナーヴァの掌の上に家の模型が現れた。

 魔法って スゲー!

 でもこれ、藁葺という物ではなかろうか。到底現代人が住むタイプの家ではない。ボブは訝しんだ。

 

「今回も根気強く教えるから、頑張ろうね」

 

 にっこりと邪気の無い笑顔。あれ、なんだか前にも……魔素の扱いを教える時もそんな顔をしてませんでしたっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「づぇきた…………」

 

 次から次へと言い渡される説明。慣れない作業、スキル『幸運』が作用してないんじゃね?って頻度で手を金づちで打った。木や茅に何度も手を刺されまくって出来たマイホーム。中には何もありません。強いていうならヴェルダナーヴァがくれた毛布がある。

 ちなみにマイホームの素材やら道具やらはヴェルダナーヴァ手ずから集めてくれた。やっぱすげーわ、オニチクだけど。

 

 隣の石に座ったヴェルダから「おぉー」と声が上がった。

 駄目だ。人化の時みたいに立つ力がない。もう俺はここまでの様だ。バタンキュー。

 

「これが家かぁ……。うん、未来で見た通り、そのままだ」

「……未来で見た通り? もしかして、ヴェルダナーヴァって未来が見えんの?」

「そうだよ、君には……いや、僕以外の生命体には言っていないことだけど」

「未来も見えるのか……。すごいわ、すごいとしか言えんわ……」

 

 こんだけ色んなこと出来るんだし、世界を創世? したドラゴンだからか、何となく納得できた。

 

「未来は見えてもね、君の言う“すごい”には当てはまらないことも多い」

 

 

「――ボクには、未来で多様な種族と人間たちが笑い合う未来が見えている。でも、見えているだけで、何をどうしたらそうなるのかを推測するのは難しいんだ」

 

 

「あー……。スタート地点とゴール地点は分かるのに、そこまで行く道のりが分からない的な?」

「そういうことだよ」

「じゃあ、俺って未来ではどうなってんの? 可愛い女の子と一緒になってたり……なんちって」

「――君の未来は分からない」

「え?」

 

 ちょっと待て。どういうこった。

 思わず顔を上げて隣のヴェルダの顔を覗いた。眉を顰めてた。えぇー……?

 

 

 

 俺は……、俺は――……。

 

 

 

 未来でも……童貞(魔法使い(予定))…………なのか………………?

 

 

 

「いいや、正確には君に対する一部の干渉がこのボクであっても出来ない」

「なんじゃぁそりゃぁ……」

「ボクも聞きたい。君は一体何のスキルを――――何の願いを持ったんだ?」

「何の願い?」

 

 そう言って見つめてくるヴェルダナーヴァは真剣だった。目の奥の星がチカチカ光ってやがる。

 チョー怖いんですけど。俺そんな……モンハンラ○ズしたかっただけなんですけどぴえん。

 

「願いかぁ……」

 

 ――今にして思うと、死に際に願ったっつって女神様に言ってきた事、願い事だったか?

 なんかただの欲望だった気がするんだが。ヴェルダが聞いてくる願いってのは、こう、もうちょっとキラキラしい感じの奴だよな……。

 

 全部欲望だらけじゃねーか! しかも聞き取り間違いで得たスキルもあるし!

 どうしよどうしよ。なんて説明すれば……。

 

「分からん」

「は?」

「いや、そう言われても何願ったかなんて覚えとらんし……」

 

 すっとぼけぇ! ライ○の団子の女の子のこと知りたかった!

 でも絶対ヴェルダが聞きたいのは違うだろうからな!

 

「――これは想定通りの返答だね」

「これも、未来で見た俺の答え方ってことか?」

「そうとも言うし、……そうじゃないかもしれない」

 

 小っ難しい~! 俺頭脳派じゃないんで、パス! 誰かにパース!

 

「まぁ、追って君のスキルについては調べていくことにしよう」

「ホント? その口ぶりだとまた来てくれる感じだな。ヴェルダが来てくれると色々と助かるんだよなぁ~」

 

 煽りしかしない琵琶法師と脳内会話も辛いからな!

 ヴェルダが来てくれると孤独に打ち震えていた身が癒される……。この言い方はねーわ!

 多分老人ホームの爺ちゃん婆ちゃんたちが話し相手を求めるのと同じ心境。誰かと気軽に話せると結構ストレス解消になんだよね。話が通じる場合に限る。

 

「なんだかよく分からんけど、これからもよろしく願いたいぜ」

「見捨てはしないよ。折角出来た弟だからね」

 

 話してる間に優秀な俺の体は疲労が回復したのか、立ち上がることが出来た。

 ヴェルダナーヴァに向かって手を出した。握手の構え!

 ヴェルダは暫くぽかんとした後、手を握り返した。え……、まさか握手を知らない系……? いやそもそもドラゴンだから、握手なんて文化を知らない可能性があるのに何故ヴェルダが知っている……?

 

 ま、全知全能的なヴェルダだから知ってるんでしょ(投げやり)

 なんとか握手が出来たので良し。家も出来たので良し……。あ、一番大事なこと言ってないわ。

 

「ヴェルダ、色々とありがとな」

「ボクは君に材料と知識を教えただけだよ」

「それだけでも、だ。知識も、材料も無かったら家は作れんし」

 

 ほら、これからもよろしくでっせ。

 主に俺のDAS○村生活で壁にぶち当たった時の相談役としてな……。

 

 


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