A.まだです。このままじゃタイトル詐欺になっちゃう……(恐怖)
農具せびったら製鉄技術についてみっちり仕込まれた。ありがたいが、やっぱり鍛え方が苦しいので辛い。
ヴェルダは家付近の山が鉱山であり、そこから鉄や様々な鉱石があると言っていた。
でもさぁ……、ヴェルダがくれた金づちとか農具とかに使った鉄って……手のひらから生み出してませんでした?
そう? 違う? あ、やっぱそうなの……。
色々と突っ込みたいことはあったが、ヴェルダは早々に天使族を引き連れて帰っていった。
それから数か月は経っている気がする。ちょくちょく天使族のディーノさんやらガラシャさん、ピコさんがやってきてヴェルダの現状を知らせてくれる。
なんか
こりゃ誰かが俺みたいに転生してきて日本食開発も間近やな!
そう思っている俺がやっていることと言えば、稲作である。やはり俺の方が米にありつく可能性が高かった、か……(絶望)
なら仕方ねぇ。俺が日本食の伝道師になったらぁ!
今や冬過ぎて春。水張った田に種籾から育てた苗を植え付ける作業だ。いわゆる田植えの時期。
この日に向けてチェックした場所の稲を刈り取って、種籾を取り、それを苗に育てておいた。その際に作業用の小屋も建ててみた。ここ最近天使族メールしか送ってこないヴェルダが来たらきっと俺の天才具合に驚くことだろう。いや、そんなことも……ないか!
加えて、森で実っている作物を取ってきて種を取って時期の物は畑に植えたり、釣竿作って魚釣ってみたり、気配と魔素を極限にまで抑えて動物の生態観察とか、山の方で鉄鉱石取ってきたりとかもした。おかげで暇にはならならず、充実した時間を送れた。
と、同時にもう俺がこの世界に転生してからそんなに時間が経ったのだ。そこまで過ごすとまぁ、魔素とかスキルとか異世界にも馴染みが出てきた。動物にもスキルらしい物を使われて攻撃されたし、ただの木かと思ったら急に手足を拘束してきたとかもあった。あれ、本当にびっくりしたわ……。
感想はおいといて、さーて育てた苗を手製の畑で植えるドッキドキのお時間だ。収穫した時、美味しい米になって欲しいので植えると同時に『
きっとこうやって念じて稲の世話をしていれば美味しくなる筈だ。目指せコ○ヒカリ。
○
この島の気候は大方日本と同じだった。春夏秋冬があって、春は桜の木っぽいやつが花を咲かせて、夏には葉っぱになる。秋は木々が紅葉して、冬には雪が降りやすい。
田植えから稲の面倒を見ていると日が早く過ぎたように感じる。もう秋になっていた。
「おぉ……」
奇跡的に病気にもならなかった。その場合の対策……、薬とかどうしようと思っていたから幸運だった。
家を出るとカラッとした日が差す。この日の為に田から水を抜く落水を行った。とうとう収穫の時期という訳だ。
あー、でもこの目に広がる光景を写真に残したい。
じいちゃん俺、やりましたよ。ホントじいちゃんペディア大活躍。ありがとう意地でも稲作のことを教えてくれて。
じーんと感傷に浸るのもそこまでにして、さっさと稲を刈ることにした。
この日の為に作った草刈鎌。丹念に研いでおいたのだ……。ふっ、ヴェルダから培った製鉄技術が早速役に立ったぜ。
え? 手動なのかって? 俺にはコンバインを作る技術は無いから当然だな。
しっかり稲株を持ってさっくりと。唸れ! 俺のじいちゃんから仕込まれた稲刈り術!
ふっふっふっ、小学校の頃は稲刈りの鋭さから「稲のカマキリ」って言われてたんだぜ。家族の中でだけど。
でもカマキリだとしっかり稲株持てないからダメだな。ちゃんと一本ずつ持って切り取ってやんないと。
《魔法でやればァ~ 一気に刈り取れるゥ~》
ふっ、馬鹿だな琵琶法師……。お前、そんな態度だとじいちゃんにしこたま叱られるかんな!?
(そんなじいちゃんでも年が経つにつれてコンバイン使ってたけど)
《理解不能ォ~》
まぁ琵琶法師はスルーして。サクサク刈っていく。稲の場所が近いなら二つ一気に握って刈り取っちまうぜ!
ここにはコンバイン(以下略)。ということなので、じいちゃんペディアから稲架掛けという稲の水分を天日干し乾燥させてから脱穀・籾摺り・精米作業に行くぞ。なお機械は無いので手動(or出来るだけ手動の仕組みを持った農具を自作する)である。
悲しいかな……。
一応、千歯こきっぽい物と、それで取り出した籾を入れたり藁を選別する箕という容器は作った。ふるいは必要になると思って作りたかったけど、意外と難しくて制作難航中。針金作り難しすぎんよ~……。
むーん。ヴェルタペディアやじいちゃんペディアから得た知識で聞いた仕組みを再現する、これが中々難しくって考え込んでるとつい寝てしまう。元々そんな深く考えられる方じゃないんだ。
稲架掛け用の干竿は出来た。でもその後だ。千歯こきした後、更に籾やゴミ、更には殻を選別することが出来る、ふるいの代わりともなる唐箕。ハンドルを動かして内部に設置した四枚の羽の板で起こす風の力でそれらを分別する……とは聞いた物の、再現するのがホンット難しい。
悩ましい。実に悩ましい……。
ここに来てから俺は工作に掛けて天才的な技術力を発揮している筈なんだが……。
これはヴェルダサポート案件? でもアイツ最近本当に来ないんだよなぁ……。この前ガラシャさんが持ってきてくれた伝言だと「人間が可愛いから暫く見守ってるね」とか抜かしてたしよぉ!
はー、やだやだ。こう、俺が困ってる時に来てもいいんじゃね…………。
――はっ。これは“甘え”か……?
確かに、今までヴェルえもんは困って泣きついたら呆れたような面白そうな顔で教えてくれたが。
……もしや愛想が尽きた……とかか?
いやいやいやいや……。やけに弟なんて気にかける位だからそんな筈は……。
え、ちょっと。ヴェルダに愛想尽かされたらこの世で生きていける気がしない。
相手はあれだぞ。世界とか種族とかひょいひょい作る輩だぞ……。今更だけど、俺、不躾な態度しかしてなくない? でも敬語で話そうとすると不愉快とか言われたよな(絶望)
もっとちゃんと敬語学んでゴマすっとけば良かったぁ~~~!!!
そうすりゃ可愛い弟として愛想をまだ尽かされなかったかもしんぬぇ!
でもそれはそれとして弟扱いは癪だしな(豹変)
というか全知全能的生物に擦れるゴマってあるか? にっこにこしとけばいいのか?
だったらいつもやってるな! はい! 問題迷宮入り!
もうやめよ。悩むのやめよ!
今は唐箕が作れるか否かが問題だ。
いんや、作れるか否かじゃない。俺が! 今ここで! 天才的頭脳と力量を発揮して作らなければならんのだ!
そしてゆくゆくはコンバインを制作する! 決めた!
俺は決意を新たに、刈り取った稲を竿に干した。この稲架掛けの期間が終わる前に唐箕を作ることだ。
そうして俺は、稲の様子は見つつ、作業小屋に籠ることにしたのであった。
○
――戦いは熾烈を極めた。
木はすぐ生やせる。そして斧で刈り取って木材に加工することが出来る。
だが問題はそこからだ。今まではヴェルダサポートもあって簡単に作って来れた農具。しかしそれは単純な仕組みだ。何かを切る、耕すなど、複雑なことを目的にして作った農具は、無い。
しかし、今の俺は複雑(当社比)な仕組みを持つ農具に一人で挑戦しようとしている。
小学校の工作の評価は底辺から一つ上。これでレベルはお分かりになるだろうか。
だが、転生してからは異様に良かったのだ。このままだったら工作の評価は最高値を取れるだろうと思えるほどに。
だからこそ、調子に乗っていたからこそ――辛かった。
《物作り 不得手な竜が 喚き出すゥ~》
「うぉおおおお…………」
俺は地面に転がった。木くずが服や髪に付くのも構わず崩れ落ちた。
――俺は唐箕モドキを作った。しかし、多大なる頭痛と熱を引き起こすことを代償に。
――世の中は厳しい。俺にコンバイン召喚という魔法を与えなかった、それ故に起きた悲劇。
「い、今琵琶やめろ。ガチでやめろ……ぐぉおおぉうぉぉおおおん……………」
ハンドル自体、作るの難しかったな……。ささくれ、めっちゃ指に刺さったな……。何度も作り直したな……。
ハンドルの動きで内部の羽を動かすことを連動させるの、難しかったな……。最初から四枚にしとけば良かったのに、全部作り終えてやすりがけも終わった後で「これ、風力が強すぎるんじゃ」って……。数が多い方がいいだろと思って六枚羽を作らなきゃよかったな……。
遠目になりながら俺は今までのことを思い出す。おぉ……、今なら工作の評価標準値取れるんじゃね……。
「ディーノから報告があったから来てみたら……何やってるの?」
「……へっ。何故かヴェルダの声が聞こえる気がするが俺には聞こえねーな……」
「それ聞こえてるよね? 新手の排斥方法かな?」
「排斥出来んのは……藁と籾殻だぜ……」
「いや何言ってんの……」
すげぇ。ヴェルダのガチ困惑声聞こえてるわ。これは夢だな。
疲労の後で見た夢か。へへっ、これにはさしものヴェルダも驚いて俺を褒め称え……ないな!
単純に褒めたら偽物のヴェルダに違いねぇ! アイツは褒めたと思えば次に課題を持ってくるようなヤツだ!
「へぇ。この仕組みの機械、君が作ったの?」
「……れだけじゃ、ねーわ。俺……けじゃ……これ、は……作れ……ね…………」
「おーい。おーいってば」
頬がベチベチ痛い。でも辛いから寝る。気合入り過ぎて徹夜して作ったんだ。眠くて仕方ない。
ははは、徹夜とか乙。じいちゃんから叱責もんじゃん。なんでそんなに熱くなってんだか。
「畑作業するヤツはしっかり寝てしっかり食わんと体がもたん」って、よくじいちゃん言ってたな。
それ聞いて父ちゃんが、「じゃあ父さんには関係ないな」っつって、「うるさいわい」ってじいちゃんが言って、母さんが笑って、姉ちゃんも笑って……。
あぁやだな。なんでそんな夢、見てんだろ……。
ふむ、とヴェルダナーヴァは寝落ちた兄弟を見た。工具を持ったまま大の字で寝ている姿からは竜種としての威厳はまったく感じない。
それでも、木くずを巻き込んで頬に伝う涙は印象的だった。
「帰りたい、ね」
小声で聞こえた言葉を反芻した。
空に大地と、天星宮から降り立って作った世界。早速作り立ての世界を吟味していると、突然自分と同じ気配を感じた。
そこには自分とは違って翼は無いが、限りなく自分と同じ種が立っていた。
「彼は一体どこからやってきたんだろう」
言葉にしてみたが、その時点である程度の予測は付いた。
けれどそれを口にするよりも、彼の竜が口にした言葉から感じ取れた感情の方が難解で、ヴェルダナーヴァの興味をよく惹いた。
寂しさを含んで、何かを希う。
そんな気持ちを表す言葉を、ヴェルダナーヴァは知らない。
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