やったぜ。
誰に言うでもなく、俺はガッツポーズをした。
なんだか一度気絶してから調子がいい。良すぎてなんか色々と道具を作れたぜ。
唐箕だけじゃなくて石の挽き臼、中断していたふるい、鍋、土器、果てには家に厨房を作るまでに至った。
やべぇな。俺天才すぎて誰かに命とか狙われそうだな!
ルンルン気分で俺は早速稲架掛けの終わった稲を千歯こきmark.2(改良した)で籾を分離させていった。
なんか稲の数に反して滅茶苦茶穂が多いけど、……これって『
なんだ、結構効果あるじゃん! これからもドシドシ使っていくぞぉ!
籾の抜けた藁には使い道があるので残しておこう。
次は頑張って作った(超重要)唐箕で藁と種籾と、籾の中でも中身のない籾との分別だ。
地面に散らばる籾を集めて上の投入口に入れる。そして唐箕の横に付けたハンドルを回すだけで……。
フォォ~ン……。
籾と藁、そして良い籾と悪い籾が選別出来るって訳よ! でもめちゃうるさい。だがしかし、ちゃんと動いているのでヨシ!
もうやばい、作った唐箕が動いてるだけで泣いちゃう……。
俺優秀過ぎるでしょ……。
選別された種籾の中でも次の田に備える物と、折角収穫したから白米食べたいよねということで食用目的用の種籾とで別々に保存容器に入れた。唐箕で分けられた籾も適当に入れてある。藁もまとめてある。
これで脱穀作業は終了だ。次は籾摺り。俺が目指すのはつやつやの白米だ。
食用目的の籾たちを持ってマイハウスに入った。
へへへ……。俺の手製挽き臼でグオングオン回してやればなぁ!
出来ました! 玄米!
ここから更に精米! 精米! 精米ィ!
そうして出来上がった白いつやを持つ白米に――俺は感動した。
これを一粒残らずかき集め、器に入れた。
今回はお試しということもあって、畑の半分だけを使って稲を育てた。器に入っているのは――文字通り、俺とスタンドじいちゃんの知識によって作られた努力の結晶だ。
先日までの俺なら、これを白米として速攻で洗って作った釜で蒸してとやっていただろう。
しかし今朝、俺のスキルとやらに『
このスキル、『
多分、団子とつくからには団子に関係したスキルだと思われるが……。
――今なら団子、作れるんじゃね?
そんな悪魔の囁きに……、この天才の俺が負ける訳……! 白米への誘惑が負ける訳が……!
あるんですよね。フッツーに気になってるから今から団子に加工してやるぜ(豹変)
玄米を挽いた後の糠を取り除いてこれも保存。捨てる所が無いとは正にこのことだよな!
さてさて、この臼の中に折角水洗いして乾かした白米を入れて挽いちゃいます。おらおら、もっと臼に潰される気分はどうだよ、おらぁ。この時、水を使って挽くと白玉になる。でも今は普通の団子こと上新粉が欲しいので水は使わない方法で挽いている。
――なんで俺がそんな知識知ってんだよ!?
あれか、『
俺まっっっったく団子とか餅の違いを知らなかったのに、今じゃ詳しく言える……。やっぱスキルのせいだな!
この竜のスタミナパワーがあればどうということはなく、挽き終わった。
さっそくこの粉たちにぬるま湯を浴びせてこねくり回す拷問をしていくぞい。
ほれほれ、どうした、ビビってんのか? もっと密にならなきゃダメじゃないか!
おら、早くまとまるんだよ。そうしたら少しずつお前たちを千切って茹でてやるからな!
ということで出来上がった団子。だが何だか物足りない。
そこにお気付きの貴方。
これから毎日団子を焼こうぜ。
俺は優秀だかんな、藁葺の家と言ったら囲炉裏やろと作っておいた。
そして炭も作った。これは科学の知識を総動員させて無理矢理な方法で作った代物だ。
木や竹を燃やさず炭化させるには酸素が入らない事が重要な訳だ。そんな密閉空間を簡単に作れるのはアルミニウムくんくらいしか思いつかない。
しかしここはどこだ。未開拓D○SH村だ。
アルミを製造してる会社なんて無いんだよな!(絶望)
だからな? 俺は炭にする木や竹を燃やした後、土で被せた。
その後、無事に炭が出来たんだよな! その炭を囲炉裏にセットして寒い夜を凌いだりしてる。
まぁ、なんだか色々と不便さを体験して無理矢理作ってんだ。
そしてそんな囲炉裏で焼く、色んな手間の籠った団子。
いかん、涎が出てきた。美味いかも分からんのに、いや絶対美味いな。
俺がこんだけ手間暇掛けて作ったんだから美味いに違いない。
じっくりと焼き色が付いていくのが見えた。おぉ、おおぉ……。
火にあたっている団子をくるりと回して片方も焼いていく。
俺が作ったのは三つの団子を串に刺したものをニ十個。……もう十個は白米に回すべきだったな!
いかに天才と言えども凡ミスはするものだからな、仕方ない仕方ない(擁護)
早速焼き上がったのが一本!
あつづづづ。
リトライ!
うっま。
語彙力喪失マジパネ美味さだこれ。砂糖使ってないのに甘い。甘いぞこれ。
「分かったぞ。『
《然様ォ~ そこに気付くとはあっぱれぇ~》
……。
!?
琵 琶 法 師 が 俺 を 褒 め た !?
《愚か 愚か 愚かなりぃ~》
えっなんでだよ。
「どうだい。似ていたかな」
……。
ヴェルダの声真似かよぉ!
「一瞬誤認するくらいに似てたわ。あーもーびっくりした……」
だよな。琵琶法師が俺を褒めることなんて一度も無かったからな。
うん、だよな……。ショック……。
「いつ来てた?」
「ついさっき」
団子をちらちらと見つつ、ヴェルダに声を掛けたらそう返ってきた。気配感じないってこえーわ。凄腕の暗殺者だったら俺とっくに殺されてるじゃん……。
木製の皿(メイドイン俺)に焼けた団子を乗っけていると、ヴェルダが興味深い目をして団子を見つめていた。
「それは?」
「団子。折角来たならヴェルダも食ってって。あ、焼きたてだから熱いぜ」
そんな忠告を構い無しに団子を食いやがった。オメェ熱さ感じない性質かよぉ!
「ふむ……これは……」
「どやどや? 美味いやろ?」
「うん、美味しいね」
イヤッホォォォォォ!!!!
星王竜お墨付きだぜいえぇぇい!!
「もう一つ食べていいかな」
「どーぞどーぞ」
次々にヴェルダが団子を食っていく。なんだかその姿がいつものヴェルダより子供っぽく見えて微笑ましかった。
ふっ……、ヴェルダも俺の団子の前には勝てないということか……。俺の天才ぶりが嫌になるぜ……。
《調子にィ~ 乗ることなかれェ~》
うううう、うっさいわい!
というかさ、なんかアイツの食った団子の数多くない?
ニ十個焼いてたんだから、二等分するなら十個だろ? なんか十六個は食われてんだけど。
俺、団子三つしか食えてなくない? ねぇなくない?
確かに食べて良いよとは言ったけど限度っちゅうもんがあるんやないか?
でもそんなこと言えんわ。なんだかんだ夢中になって食ってくれるの嬉しいし。
「そういやヴェルダ、人間を見守ってるって言ってたけど、それは良いの?」
「別に肉眼で見なくても分かるからこっちに来たよ」
「えぇ……」
チートや! チーターやろ! と言いたくなるが、まぁヴェルダだからで済ませられるようになってきてんな。
もう一年だもんな。
「……団子はもう無いのかい?」
「無いよ。その一つで最後」
「そっか。また次の機会を楽しみにしておこう」
お前次も食うんか。まぁいいけど。
俺も団子食おっと。
団子食ったらお茶が欲しくなる。当たり前やん……。
でも茶葉見つけてないんだよな。今度森に行ったら茶を見つけよう。緑茶、緑茶でオナシャス!
「さて、本題に入りたいんだ」
「本題?」
「君の顔を見に来たのも間違いではないが、もう一つ目的があるんだ」
俺色々動いたから眠いんだけど。団子食って美味かったし、はよ寝たいわ。
「君に色んな種族を紹介したいから一緒に来ないかい」
「えぇーやだ……」
なんでヴェルダ固まってんの? ウケるわ。
「いや、申し出はありがたいんだけど、今はまだもうちょっと稲作について理解を深めたいというか。やっと色んな改善点が見えてきたから反映させたいし。というか俺、多分ヴェルダの作った大地とかに行けないと思うんだけど」
「一応聞くけど、それは何故」
「だって翼ないじゃん」
イナガミボデーに翼はありません! なんたってモーションやら姿やらがキリンまんまだからな!
荒業的に翼を出して高地から低地へ滑空っていうことは出来るかもしれないけど、リオレウスとかの有翼種とは違って柔軟性も筋肉も無いしな。
「――――はぁ。分かった、今回はそれで納得しておくよ」
「ごめんなー」
《愚か……》
軽く手を合わせておく。いやー、めんごめんご。
「でも一つ聞きたいんだけど」
「何?」
「君って、竹の一部を切り離して動かすことが出来るよね」
「まぁ出来る……よ…………?」
その時、ピンと頭に浮かんだ。
竹の一部、切り離して、動かせる。
俺が稲作の暇つぶしにイナガミの攻撃モーションを再現してた時、ヴェルダも見てたな。
その時、再現した竹飛ばしって――空に浮かんでなかったか?
「……もしかして、翼無くても……動ける?」
ヴェルダはゆっくりと頷いた。
――――ふっ、天才は時に凡ミスをするものさ。
だから顔が赤いのは……、気のせいだ。
▽『
→団子についての知識を獲得し、団子制作時に滅茶苦茶団子が美味しくなる