団子食えよ   作:一億年間ソロプレイ

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戦闘描写がァ!
苦手ェ!


妹と戦った件

 (たまき)が指定したのは島からそう遠く離れていない小島だった。

 彼が住居を構えた島には田やアイルーたちの小屋などがあるので戦闘する場所にはしたくない。

 そう思って、竹を使って周辺の海域を探索した際に発見した小島に移動してもらうことにした。小島とは言っても案外広かったが、土壌は痩せていた。生物が住んでいる気配もないので、好き勝手暴れるには適している場所だった。

 

 ヴェルザードは指定した小島へ喜んで飛んでいく。

 白い羽が動くのを見つめ、環も切り離された竹に乗って小島へ向かう。要領はほうきで空を飛ぶのと同じだ。

 

(嫌だなぁ……。戦いとか)

 

 突然紹介されたが、妹のヴェルザードはとても可愛い。

 ふわりとした白髪、深い青色の目。将来成長するならば美人になること間違いなしの容姿だ。

 

(可愛い妹と出会って即バトルとは? お兄ちゃんはバトルよりも妹とはキャッキャウフフってお団子を食べさせたいよ……)

 

 環は重たい溜息を吐いた。

 これまで弟や妹といった存在がいなかった。そんな折に出来た妹だ。

 例え美少女でなくとも可愛くない筈が無い。

 

 環が悶々と考えている内に小島に到着した。

 目の前にはヴェルザード、二人のいる開けた場所から少し離れたところではいつの間にか来ていたヴェルダナーヴァが観戦していた。

 「二人とも頑張れー」なんていう声援も聞こえてくる。暢気なものである。

 

「ではイナヴェルお兄さま! 私から行きますわね!」

 

 声色はとても楽しく弾んでいた。比例して環の溜息がどんどん重たくなっていく。

 環の心情を考えず、ヴェルザードは辺りを吹雪かせた。

 一面に霜が降りる。空気が零度以下に冷えている中、鋭い氷柱を形成し環に向けて射出された。

 環の持っているスキル『対寒耐性』によって寒さは中和され、そして一応竜種という枠組みにいる為か、環はその氷柱の軌道を追って避けることが出来た。

 

(怖すぎでしょ!?!?)

 

 氷柱が刺さった地面は一瞬で凍っていき、環の立っている場所やヴェルザードが降り立つ場所を含めて滑りやすくなっていた。環が動こうとしたらずるりと転びそうになったが、可愛い妹の手前なので意地でも体制を整えた。

 

(やっっっべ。めちゃくちゃ滑るわコレ。どどどどないしよ……?)

 

 肌で感じる寒さ以上に肝を冷やしたが、ヴェルザードの攻撃は止まない。

 氷柱を飛ばし、環はそれを避ける。しかし、目の前にはヴェルザードの巨体が迫っていた。

 一瞬スローになった景色の中、環は上げられた左腕を視認した。

 

「うっそ……って、避けれた……?」

 

 鋭い爪に引き裂かれるか、重量と勢いが合わさった力で潰されるか。

 咄嗟に環はヴェルザードの懐に潜り、その攻撃を避けた。背後から振り下ろされた衝撃によって発生した風圧を感じ、今度は胆ではなく玉が冷えた。

 

 何とは無しに見上げるとヴェルザードの顎が見えた。――これがVR型的なモン○ンであれば、容赦なく環は武器を振るっただろう。

 しかしこれは現実。当たればお互いに痛い、そして一応血縁(?)関係にある仲だ。環は戦えと言われても未だに力を振るう気にはならなかった。

 

 ヴェルザードは地面に張った氷に働きかけ、環のいる場所に氷筍を作り上げて串刺しにしようとする。

 しかし、地面からの魔素の動きを探知した環はそれを避け、ヴェルザードの追撃を避け――。

 

 ずっとその繰り返しだった。その様子をヴェルダナーヴァは観察していた。

 

「イナヴェルお兄さま。何故、私を攻撃しないのですかっ!」

 

 ヴェルザードは避ける環に対して苛立ちが募り始めていた。

 彼女は闘争を好んだ。生まれた時から備わっていた本能とも言うべきものだった。

 本能に従って戦い続け、彼女が生まれた極寒地帯でのヒエラルキーの頂点に立った。

 そんな折に、ヴェルダナーヴァ――自らが唯一負けた存在に出会った。

 その存在が兄だということに、ヴェルザードは歓喜した。

 

 偉大なる兄、ヴェルダナーヴァ。

 

 その弟とあれば自らを軽く倒せるほどの力量の持ち主かと思っていたのに。

 収められている魔力量はヴェルザード以下。佇まいには何ら威厳を感じず、平々凡々な人間の男といった空気。

 下等生物と共に農作業をして過ごしている?

 

 挙句の果てには、戦いの場に引きずり出しても避けるだけでこちらに攻撃をしない。

 

 

 

 ――ふざけるな、そのような存在がヴェルダナーヴァの弟であって良い筈が無い。

 

 

 

 ヴェルザードは憤怒した。このような腑抜けを兄とも呼びたくはない。

 

 彼女の怒りを反映するように、彼女の口に大量の魔素は集まり始めた。

 エネルギーの移動と共にヴェルザード周辺に風が強く吹き荒れる。

 

(……おいおい、アレってさぁ。ビームの構え? ビームぶっ放される? 此処(・・)で?)

 

 不幸な事に環の背後にはアイルーたちの住んでいる本島があった。

 あの魔力量でのビームなんて、普通に本島の方にまで影響が及ぶだろう。

 

(妨害……、いや風が強くて動けない!)

 

 この場合、同じ魔素量のビームを放って相殺? その場合、周辺地帯への影響はどうなる。いやそれよりも、環に対抗できるだけの魔素量をすぐに集める方法があるか?

 ヴェルザードの魔素量は環より上。ヴェルザード以下環以上という式が成り立っていることは本人も理解している。

 

 魔素が集まる程、ヴェルザードの周囲が薄っすらと凍っていく。氷片も混ざった暴風は環の肌を容易く切り裂いた。斬りつけられた箇所から瞬時に岩のように血液が凝固し、瞬時に消えていった。

 

(まずい、そろそろ射出される)

 

 ゆっくりとヴェルザードが標準を定めていく。

 もう攻撃しないという手は、逃亡するという一手は取れなくなった。

 避ければ本島へ被害がいく。自らが作って耕してきた田や畑、アイルー、メラルー、翔蟲たちの住処は破壊される。

 

「……分かった。嫌でも妹を攻撃しなきゃいけないってことが」

 

 環は逃げたくなる自分を叩き伏せた。環は地面に手を付けた。自然と現れた尻尾は地面へと刺した。

 『栽培者(ソダテルモノ)』のスキルを使い、土の中に筍を発生させて急速的に成長させる。ヴェルザードの前には何重にも重なった竹垣が出来上がる。

 

(たったその程度で止められるとでも思っているのですか。……つくづく侮られたものね!)

 

 ぶわっ、と集まった魔素が解放される。

 

 ――そして白い極光が現れて環に向かっていく。

 

 環に当たる前に竹垣が受け止める。

 それもすぐ壊れる、そうヴェルザードは思っていた。

 

(なっ……!?)

 

 竹垣はヴェルザードのビームを受け止めていた。

 バキバキと壊れている音がしているのにも関わらず、環にまで当たっていない。

 

(アレはただの竹の筈。私の技で簡単に壊れているのに――――まさか!)

 

 環は特に竹の強度を固くして竹垣を作っている訳ではなかった。

 いつも通り、手癖で生やせる竹が幾重にも連なっているだけ。

 ただ、環はビームによって壊れた端から『栽培者(ソダテルモノ)』で直しているだけのことだった。

 

(まずい、このままでは集めた魔素量をただ尽きさせるだけ……。物理的に叩きのめさなければ)

 

 ヴェルザードが魔素の放出を取りやめた瞬間、彼女の体が浮いた。

 

「なっ……なんで、すか、これ…………」

「とても簡単なことだよヴェルザードちゃん。君を拘束させてもらった」

 

 ヴェルザードの体中に、本来なら凍っていた筈の草木が巻き付き、それぞれの方向へ引っ張ろうとしていた。

 彼女の周囲に生えている草木は『忍耐之王(ガブリエル)』の余波によって運動エネルギーが停止させられていた。

 環は手で竹垣に働きかけを、尻尾によって草木の運動エネルギーの停止状態を解除させた。更には引き千切られないように繊維の強度を向上させ、環の持つ『防寒耐性』まで付与して彼女を拘束した。

 解除不可能な拘束による棄権――、環はそれを狙った。

 

「これで勝負ありってことにはならない?」

 

 環は横目でヴェルダナーヴァを見た。

 静かに戦いを見つめていた目が閉じられ、ふっと口元を緩ませた。

 

「良いだろう。この勝負はイナヴェルの勝ちだ」

「そんな……!」

「ではヴェルザード、その拘束から抜け出せられるかな?」

「で、出来ますわっ……!」

「おーっとあんまり抵抗しない方が良い! 暴れれば暴れる程棘が生える様にしておいたから!」

 

 身を何とか捩り、拘束から逃れようとしているヴェルザードの身にズキズキと痛みが走る。

 竜種の鱗すらを貫通させる植物の棘。環の言う通り、抵抗する程に棘が成長してヴェルザードの身を傷付けていく。ぽとぽとと赤い血が滴り落ちる。

 ここまで来れば気持ちはどうであれ、本能的にこの拘束の突破は無理であると悟った。

 

 

 

「………………負けました」

 

 

 

 その声には深い屈辱が込められていた。

 

 ヴェルダナーヴァに出会ってすぐにヴェルザードは戦いを挑んで、そして圧倒的な力によって叩き伏せられた。

 だがこの戦いは自分よりも下の存在に搦手を使われて敗北した。不完全燃焼な心地が消えなかった。

 勝敗が確定した所で環はヴェルザードの拘束を解いたが、彼女は項垂れたままだ。

 

(流石に大人げなかったか? いやでも、あのままじゃ俺が拠点にしてる島の方へ余波が出るのは確実だったし……。ぐぬぬ、難しいな……。とりあえず回復薬を……、あれどこに入れたっけ)

 

 一応勝者となった環もあまり良い顔色ではなかった。がさごそと着物の裾に入れてある回復薬(薬草とアオキノコとの調合)を探していると、ヴェルダナーヴァは項垂れる白い竜へと近付いていた。

 半ば泣いているように見える彼女の頭部をそっと撫でた。

 

「ヴェルザード、君は育った環境のせいでもあるが、賢しい敵との戦いについて経験が少ない。今までの敵ならば魔力量に任せた一撃でねじ伏せてこれたが、そうもいかない時があるというのはさっきので良く分かったね?」

「……はい」

「これからは戦略と、それから魔力量が少なくとも上位の存在に勝つ者がいることを知りなさい。なに、君はまだ生まれてから数年の若い竜だ。これからも成長できる余地はある」

「は、い゛」

 

 ヴェルザードは生まれて初めて、負けたことによる屈辱を味わった。

 ヴェルダナーヴァの時は違った。負けたのは当然のことだと納得させられる程、遥かな高みの上にいる強者への尊敬があった。

 今回は、自分よりも弱いと判断した者に負けた。……それは自分が未熟だったから。

 

 ――悔しいですわ。

 

 嗚咽を堪えて泣く彼女はこの日のことを忘れはしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、あの、ちょっ、ごめん。そんなに痛かった……? いや痛いだろうけれども……?」

「加減というのを知らない弟を持つと苦労するなぁ」

「はー!? ヴェルダに言われたくないんですけど! っとと、ヴェルザードちゃん、良かったらこれ飲んで」

 

 環は緑色の液体が詰められた小瓶――回復薬を差し出した。

 アイルーたちを伴っての森探索の日、「あれ、これって回復薬作れんじゃね? 調合できちゃうんじゃね?」という行動によって作られた試作回復薬。効果はある程度の傷が瞬時に治るという、ゲームまんまの性能だった。

 

「これ飲むと大体の切り傷が治るからねー。口開けてー」

 

 むっと思ったヴェルザードだが、それはそれとして回復薬とやらが気になったので言われるがまま口を開けた。

 とろりと粘りがある液体はそのまま口の中に入り、

 

「苦いですわっ!」

 

 ヴェルザードはまた違う意味で涙を流した。

 しかし効果はすぐに表れており、白い体にあった傷が瞬時に癒えた。

 

「あ、やっぱ苦い? 今度からはハチミツ入れとくよ」

「うう……、もう飲みませんわそのような物!」

 

 からからと騒ぐ二匹の竜を、ヴェルダナーヴァは穏やかな目で見ていた。

 




▽ユニークスキル『調合者(チョウゴウショ・デラックス)
→どんな材料でもイメージした通りの物を調合できる。
 しかし使用者はモンハンに出てくる薬やらの再現にしか使わない。
 宝の持ち腐れである。
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