団子食えよ   作:一億年間ソロプレイ

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ヴェルザード(幼体)なので色々と捏造してます
え? 今更だって? そうだよ(肯定)


妹と共同生活している件

 

 妹ことヴェルザードちゃんとの戦闘後、彼女はツンツンしながらも暫くはこの島に滞在することになった。

 諸々の原因となったヴェルダはさっさと行ってしまった。お前、ヴェルザードちゃんに引き留められてるの覚えたからな。これからお前にやる団子は少なくする(断定)

 

 さてさて、念願の妹との生活――かと思いきや、彼女とキャッキャウフフな兄妹間になるのは前途多難っぽい。

 

 まず、この前の戦いで搦め手による決着を着けたことが不服らしい。

 なんというか、成長したら女騎士にでもなるのかって感じに高潔な思考かと思いきや、

 

「勝負というのは、圧倒的な力によって叩きのめされて負けたと思えるのです! 決して、決ぇーしてっ! イナヴェル兄さまとの勝負は“負けた”とは感じていませんからね!」

 

 ということらしい。初めて出来た妹は可愛いなぁ(白目)

 

 いやいや、細身で儚さを持つ美少女がまさかゴリラ系パワーキャラみたいなこと言い出したことに驚いてなんかいないぜ。そうだよパワーキャラみてぇなこと言ってる筈ない……。これは全部琵琶法師の見せる幻覚と幻聴だ……。

 

現実(まこと)をォ~ 見よォ~~~~!》

 

 うるさいやい!

 大体お前戦闘中の時なにずっと黙ってやがんだよ。こういうのってアレだろ、共同で作業するとか、相手の弱点見つけるとかそういうサポートキャラ的立場にいる筈だろお前!?

 

《ハァ~~~~~~~~~~?(クソデカ溜息)》

 

 女神さん! この琵琶法師返却して! サポート系AI的なスキルと交換してください!

 

《無理ィ 無理ィ~!》

 

 脳の血管ブチギレそう……!

 

 はっ、ここはクールになれ四方山環。ここで暴れ出せば、俺は何も無い場所で暴れるキチガイ……!

 イエスクール。ノットホット。

 クールの三段活用を思い出すんだ……!

 

 というか今はヴェルザードちゃんのことに集中しよう。

 ヴェルダが去り際にウィンクしてきたのは仲を深めろっていうことっぽいし。俺もヴェルザードちゃんと仲良くなりたい。

 あー、それで彼女が俺の何が気に入らないかを上げていたんだ。

 

 まずこの前の勝負の決着、それから……うーん態度や生活スタイル?

 彼女からすれば竜種っていうのはとんでもなく崇高な種で? アイルーたちなどの魔族は下等生物の枠に入るらしく、そんな生物たちと共同して生活をしている俺が信じられない、ホントにあのヴェルダナーヴァの弟? っていう所がポイントなのかな。

 

 いやいや、いやいやいやいや。これはちょっと妹と仲良くなれるか不安に思っちゃうわ。

 俺にとってアイルーたちって下等生物じゃなくて友達だし。

 まぁ、人? 竜? にも考えの違いがあるということが分かっただけでも良しとしている。

 

 今の所、彼女が理不尽にアイルーたちに危害を加えたとかの報告も無い。そこはまぁ、俺との間で決めた『島で過ごす約束事』を守ってくれているらしい。

 内容は無暗に力を使ったり凍らせたりしないこと、それからアイルーたちに危害は加えないことの二つのみ。

 だからか、ヴェルザードちゃんは人型形態になっててちてち森を歩いていたり、俺やアイルーの作業を眺めているなどして過ごしている。

 

 ちなみに、アイルーたちはヴェルザードちゃんのいる生活に冷や冷やしてるらしい。

 俺としても自然な態度で接して欲しいとはお願いしてあるが、効果はいまいち。

 でもまぁ、メラルー族のロゼが積極的に話しかけたり、ヴェルザードの散策に付き合ったりしてくれてはいる。彼女自身も疎ましく思うよりは好ましく思っているとは感じるので、相互理解は不可能では無い筈だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー、来る日も来る日も雪だなぁ。流石にカールくんたちも寒いでしょ」

「確かにそうですが、動けないほどでもありませんニャ」

 

 そう言いながらもカールくんはへぷし、と小さくくしゃみした。

 ちなみに、彼は俺と出会った初めてのアイルーである。

 一面の銀世界の中で素っ裸というのは見ているこっちが寒くなる。

 どうしよう、裁縫も頑張ってみるか……?

 

「それに、イナヴェル様の庇護下に入ったことでなんだか寒さに一層強くなった気がするのですニャ」

「庇護下に入って寒さに強くなる……? ちょっと分からんな……。あ、カールくん雪落とすから避けて~」

「了解ですニャ~」

 

 それはそうと、俺は家の屋根に積もった雪落としの最中だ。は? 魔法使え? もうヴェルザードちゃんに言われたけど。

 やれるっちゃやれるけど、やっぱ体動かした方がなんか行動起こしてるって感じがするんだよな。

 

「あらイナヴェルお兄さま、本日も無駄に動いて雪かきなどしてらっしゃるのね」

「おはようヴェルザードちゃん、動くと眠気が覚めるからオススメだよ」

「……………………おはようございます」

 

 精一杯嫌味を言おうとしてるけど、後から挨拶を返してくれる辺り丁寧だよね。

 ツーンって髪を弄ったまま視線が合わないけど根気強くいくぞぅ。

 

「今日のご飯、食べてく?」

「……食べますわ」

 

 一応胃袋は掴んでおいたので、いずれは仲良くなれる筈だ。

 

 

 

 

 ヴェルダナーヴァから「イナヴェルと共に過ごすように」と言われたヴェルザードは不服であった。

 今まで見てきた生物の中で一番軟弱だと思えた。

 眷属と思われるのは猫と虫。どれもヴェルザードにとって軽く吹き飛ばせる命に他ならない。

 そんな生物を態々眷属にし、庇護下に入れている環のことが分からない。

 

 態々面倒な礼儀作法や常識のことなどを一々教えてくるが、どれもヴェルザードにとっては価値も覚える必要も無い。

 何故あいつ等より上位の存在である竜種がそんなことをしなければならない。

 そんな気持ちの方が強かった。

 

 ――そんな共同生活から六日目。ヴェルザードは行動することにした

 

「ねぇ、ロゼ。イナヴェルお兄さまがどこに行ったか知らない?」

「イナヴェル様でしたら、今は森の方で散歩をしていると思われます」

「そう。ありがとう。私もイナヴェルお兄さまの所に行ってくるわね。ついて来なくていいわ」

「承知しました」

 

 怯えるアイルーたちが多い中、赤毛のロゼという者だけは物怖じせずヴェルザードと接してきた。

 そのことから環からもヴェルザードの目付け役を任されており、彼女自身もここで生活する際にはロゼを頼って溶け込もうとしてきた。

 

 だがそれも限界だ。

 ヴェルザードは今まで野生の掟の中で生きてきた。

 ――弱肉強食、弱者は強者に食われ、繁栄の礎となるべきなのだ。

 前回、戦いを挑んだ時には負けた。しかし、そこで失われる筈の命はまだここにある。

 つまり、再挑戦が可能だ。

 

 環との決め事には、環自身に攻撃を加えてはいけないという項目は無かったのだから。

 

 今いる家から西に歩いた場所に環がいる森はあった。

 畑に植えられた作物も、環が力を込めて育てている稲もここからやってきた。

 魔素の気配を探り、一目散にヴェルザードは目指した。

 周囲の木々をなぎ倒しながら行く様はさながらミサイルの如く。実際、倒れた木々の惨状を見れば、当たればただではすまないことは瞭然だった。

 

 ヴェルザードの視界に黄土色の髪を持つ人物の姿が入る。

 

 このまま突進――という所でヴェルザードは「きゃぁ!」と悲鳴を上げることになった。

 

「なっ、なんですの!」

「えっヴェルザードちゃん? なんでそんなことになってるの??」

「イナヴェルお兄さまがやってるんじゃないんですか!!」

「俺やってない!」

 

 振り向いた環が見たのは木の枝が複雑に絡んでいる妹の姿だった。

 環の頭に疑問符が散る。ヴェルザードの気配が近付いてはいるとは思ったが、受け止めるのもまた兄力(あにぢから)を示すチャンスかと内心わくわくしていたが、現実は違っていた。

 環は本当に『栽培者(ソダテルモノ)』を使っていない。それなのに、ヴェルザードの周囲には木が無理矢理密集させられたかのように集まり、バリケードを作っていた。ヴェルザードは環が調整していない木程度に傷を付けられてはいなかったが、絡まった態勢はかなり恥ずかしかった。

 

「酷いですイナヴェルお兄さま」「だからやってないって」

 

 そんな応酬を繰り返して環はヴェルザードを木の枝から救い、地面に下ろした。

 出鼻をくじかれ、彼女は戦おうという意志が半減してしまった。

 戦おうにもあんなはしたない姿を見せた後では決まりが悪い。何より竜種らしくない。

 

「で、ヴェルザードちゃんは俺に何か用があったのかな?」

「ありましたけど……馬鹿らしくなりましたわ」

「えぇ……」

 

 それからヴェルザードは口を閉ざした。話しかける気配がないと知り、環はさっきまで行っていた作業の続きに取り掛かる。

 川辺に生えている稲をひたすらに触っているだけだが、本人としては真剣にやっていた。

 これはうるち米の稲か、もち米の稲か―――――。その判断を行っているが、傍から見れば奇行にしか見えない。

 

 ヴェルザードも冷たい視線で見つめ続けていたが、ふと、聞きたくなった。

 

「イナヴェルお兄さまは、何故戦うことを嫌うのです」

 

 ぴくり、と稲を触る指が止まり、うーんと唸る声が聞こえてきた。

 

「……戦うのが嫌い、じゃ駄目?」

「納得いきませんわ」

「戦うよりも……、そうだな。誰かと言い合ったり喧嘩したりするの、あまり好きじゃないんだ」

「好きでは、ない?」

 

 稲を触る為しゃがんでいた環は立ち上がり、ヴェルザードの青い瞳と目を合わせた。

 

「そう、好きじゃない。軽口を言い合ったりするのはいいんだけど、誰かを殴ったりとかはあまりしたくない」

「……甘いですわ。イナヴェルお兄さまは、私の故郷では絶対生きてはいけませんね」

「うん、自分でもハードな環境は無理だなって思ってるよ。だから目覚めてすぐにヴェルダと会えたのは幸運だったよ」

 

 もしあのままヴェルダが来なかったら、どうなっていたのだろう。環はそんなことを考えるも、あまり想像は付かなかった。

 

「でもね、結局好きじゃないだけだから必要があればするんだと思うよ」

「必要があれば、ですか?」

「そう。例えばアイルーたちが危機に晒されたりとか、……無いとは思うんだけど、ヴェルダとかヴェルザードちゃんが死んでしまいそうな時とか」

 

 あまりに滑稽な物言いにヴェルザードはぽかんとした。

 

「イナヴェルお兄さま、アイルーたちはともかく、私たち竜種は死んでも生き返りますのよ?」

「知ってるよ。でも記憶の一部とかは無くして、性格は変わって帰ってくる。それでも俺はあまり死んで欲しくはないよ」

「……やっぱり、イナヴェルお兄さまは竜種じゃないわ。そんな軟弱な考え方、まるで人間みたい」

「そっかなー」

 

 死んでも生き返る。それは喜ばしいことの筈だ。

 竜種以外の生命体は死ねばそれまで。蘇生魔法とやらを使えば話は別だが、死んで生き返るという行為の難易度は遥かに高い。

 竜種はそれが簡単にできる、生物の頂点に立つにふさわしい最強の種族。

 

 それなのに何故、環が寂しく笑うのかがヴェルザードには分からなかった。

 存在自体気に入らないけれど、その表情や言葉が妙に引っ掛かった。

 

「さ、もう夜も遅いから寝よう」

 

 そう諭す声に、渋々ヴェルザードは環と共に家へと帰った。

 昼間はアイルーたちの鳴き声で騒がしかったけれど、今は寝息の音しか聞こえない。

 団子状態になって寝ているアイルーたちの中に、ヴェルザードはロゼの姿を見つけた。

 

 ロゼは死んだら生き返らない。そこにいるアイルーたちは死んでも生き返る事は出来ない。

 そのまま、何も言わない亡骸になるだけ。毎朝挨拶をする声も、一緒に食事をしようと誘う声も聞こえなくなる。

 そう思うと、ヴェルザードの胸がきゅと締まった感覚がした。

 何故そんな事が起きたのかも分からないまま、ヴェルザードは布団にもぐって寝た。

 

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