団子食えよ   作:一億年間ソロプレイ

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明けましておめでとうございます!(2月)
独自設定モリモリ回です!


■■■■がやってきた件

 

 ――それは蟲。ある竜の力を受けて輝く蟲。

 ――それは泡。ある竜から分泌して浮かぶ泡。

 

 毛を青白く光らせた竜が滑らかに動き回る竜に飛び掛かる。凄まじい咬合力で体が持ち上げられるが、自前の粘性を持って抜け出し、逆にその竜へ体全身を使って締め上げる。

 締め上げられた竜――ジンオウガは激しく身を振るって巻き付いた竜――タマミツネを地面へ叩きつけた。

 

『プロトタイプの不満を検知し、プロトタイプに起きた出来事と脳内を逐一サルベージし、プロトタイプの要望通りの環境を設定。作品名【モンスターハンター】において登場する生物類などを自然発生させるように設定を施しました』

『自己評価においてこれは完璧で十全なサポートです。プロトタイプの反応を――』

 

「はぁぁぁぁぁぁ?」

 

 俺はこれまでの人生で一番大きな叫びを出した。

 

 

 

 

 なんだかヴェルザードちゃんがすっかり大人しくなった。軽ーく棘を差してくることもあるけど、本当に軽い。

 お、もしかして俺の兄力が向上したか? と思った矢先、ヴェルダがやってきてヴェルザードちゃんは彼奴と故郷に帰ってしまった。ファッキュー!

 

 ヴェルザードちゃんが去ってからはタイミング良く春がやってきた。別の小屋で育てておいた苗の様子や天気を見て田植えの時期を決めて、苗を植える。何度目かの稲作にもなると手際も良くなってきた。

 えんやっさー、ほいやっさーとか、声を出しながら植えてるとアイルーたちもそれに倣って声を出してくるのがなんだか面白い。でも翔蟲くん、田植えの最中に背中には乗らんといて……。

 それと並行して、水田近くにある野菜畑は拡張されていった。もう農園レベルじゃない? って感じに畑が広がってる。

 田んぼも畑も良好。病気になることもなく、虫に食い荒らされることもなく順調に思えた。

 

 田んぼとは別に、ヴェルザードちゃんの面倒を見ていた女の子アイルーのロゼちゃんが花を育てたいと言っていたので森から取ってきた比較的初心者向けの花の種をあげた。そうして花壇が急遽作られた訳だが、どうやらそっちの方は元気がないらしい。

 簡単に原因は分かった。単なる根腐れだ。

 

「どうでしょうか、治りますか……?」

 

 ロゼちゃんの耳はしょげている。かわええ。

 

「水やりのし過ぎて根腐れしちゃってるね。でも治るよ」

「本当ですか! 良かったぁ……」

 

 ロゼちゃんはどっちかって言うと、農業関係よりも家事関係の方にいるので疎くても仕方ない。『栽培者(ソダテルモノ)』で一気に復活させることも考えたけれど、今回は本人の手によって復活させる。

 

「俺のスキルを使えば簡単に治るけど……。せっかくだから今回はロゼちゃんの手で復活させてみよっか」

「わ、わたしでも出来るんですか?」

「出来る出来る」

 

 ちょっと手間はかかるけど、自分で対処できるのが一番だ。勿論、それで駄目な時は俺を頼ってくれてもいいんだけどね~。

 

《図に乗ることなか――……》

 

ブツン

 

 ……あれ、なんか言おうとしてた琵琶法師の声が途切れた?

 

「南の山の頂へ」

 

 ロゼちゃんがふらふらとしながら俺の服の裾を掴む。え、なんで急に南の山に行けって言うん?

 

「南の山の山頂へ」

「南の山の頂へ」

「南の山のてっぺんに」

 

 あちこちで作業していたアイルーたちに加えて、翔蟲くんまでやってきた。心なしか目が赤っぽくなって……。

 って、それ操られてるキャラのテンプレでは……?

 

「「「南の山の頂へ来い」」」

「ひぃん! 分かりましたぁ!」

 

 皆総じて言うから怯えながら言われた通り、南の山に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その道中でさえ、植物も、いつの間にか生息してた野生動物でさえもそう言ってきた。ある種のホラー現象でほんともう、怖い。

 それに、こういう時に限って脳内で琵琶法師の声も聞こえない。気を紛らわすことさえしてくれないとか酷くないか。本当になんなんだあのスキル。

 

 このまま、のこのこと言われるがまま行ってもいいんだろうか。

 もし事を起こしているヤツがそこにいるのなら、カールくんたちに起きた現象を直してくれるのか?

 そもそも狙いは何だ?

 

 ガクブルしながら登った先には信じられない人物が立っていた。

 

 

 

 ――――前世の俺。

 

 

 

 凡庸な顔にこれといって特徴のない男子高校生。見慣れた学生服を身に纏って、その場に立っていた。

 思わず、息が止まる。

 

『転生システム第一人者、プロトタイプ。個体名【四方山環】の存在を確認』

「はい……?」

『プロトタイプの脳内から適する単語群を構成――――――お久しぶりです、といえば理解されるでしょうか』

「……???」

 

 いや、誰だよ……。自分の顔や声で喋らないで欲しいけど、なんだか聞き覚えのあるイントネーション……。

 

 はっ、まさか?

 

「俺が死んだ時に聞こえた声……?」

『正解。転生システムの第一適用者たる個体名【四方山環】以下プロトタイプに今システムのサポート能力向上、選択肢の拡張等を求めるため、プロトタイプに対面での経過報告を求めます』

「いや、あの……どういうこと」

 

 転生システム? サポート能力向上? 対面での経過報告?

 

『解説を求めている、ということでしょうか』

「うん。出来るなら、最初から……? 俺がその、転生システムの第一適用者っていうとこも初めて知ったから、色々と???」

『では、転生システムについて説明いたします。――その前に、長時間の対談となることを考えこの場に適した場をセッティングします』

 

 体は前世の俺、中身はあの死んだ時の女神さん(?)が指を鳴らすと、長方形状に切り取られた形の畳の上に敷かれた座布団の上にいつのまにか座っていた。前にはテーブル、その上には茶請けと緑茶の入った湯飲み。いずれにしろ、俺の分だけ出されている。

 

『転生システムとは、世界の創造主――現個体名【ヴェルダナーヴァ】が無意識に作り上げた魂運用概念。個体名【ヴェルダナーヴァ】は基軸世界――その上位に位置する世界を観測し、自我を得ました。この上位世界を【異星世界】と呼称し、ヴェルダナーヴァは観測を続け、天と大地を創りました。自らの死と引き換えに』

「待って? ど、どいうこと? ヴェルダナーヴァが死と引き換えに創ったって? あ、いやええと、その世界を創る前のヴェルダナーヴァってどんな状態だったの?」

 

 まったく分からない単語が並んでいるけど、確か質問するにしても明確な箇所を答えなければ女神さん(?)は答えてくれなかったよな……。

 だから、出来るだけ的確と思われる言葉を頑張って捻りだした。この時点で頭がパンクしそう。

 

『死、というのはプロトタイプの考えにおいて一番近いものを選択しました。世界を創る前の個体名【ヴェルダナーヴァ】は個体名を持たず、また現在の様に白き竜の姿を持たない概念的存在でした。個体名【ヴェルダナーヴァ】は【異星世界】を観測し、自我を得ました。【異星世界】にて生息する生物たちを観察し、自らもあのようになりたいと思考し、【異星世界】において自らに合う存在の姿を探し――転生する際に現在の竜の姿となりました』

「へ……? ヴェルダナーヴァが転生って?」

『個体名【ヴェルダナーヴァ】は自らを構成する力を死亡と同時に散布させました。その死亡時にこの基軸世界と基軸世界を基とする次元と多くの世界を創り、霊子と情報子からなる特殊物質――固有名称【魔素】を世界中に充満させました。竜種たる姿をした個体名【ヴェルダナーヴァ】は転生した後の姿です』

 

 え、一度死んでるのヴェルダ……?

 

『この個体名【ヴェルダナーヴァ】死亡時に転生システムは無意識によって創られました。転生システムの目的は個体名【ヴェルダナーヴァ】が創りあげた世界において生まれた生物の魂の運用、魂の強度に応じてスキルの付与などが当たります。――しかし、個体名【ヴェルダナーヴァ】においても転生システムが創られた目的は知りえません』

「……その、ヴェルダも知らない理由は?」

 

『――【異星世界】における魂の誘致。個体名【四方山環】、貴方は【異星世界】の住人にして、この転生システムの目的を果たす為に重要な個体です』

 

「――――は?」

 

『個体名【ヴェルダナーヴァ】は求めました。観測し、自らに自我形成のきっかけを与えた【異星世界】の生物――特に人間種との交流を』

 

『個体名【ヴェルダナーヴァ】は求めました。【異星世界】の人間種たる魂が来る際に完璧なるサポートを施すことを』

 

『転生システムはプロトタイプに感想を求めます』

 

『現在のプロトタイプは幸せですか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 答えられなかった俺に転生システムはまた指を鳴らした。

 川の流れる渓流を見ろという。そこにはジンオウガとタマミツネがいて縄張り争いを繰り広げていた。

 

 望み通りの環境を用意したから、幸せかと聞く。

 思わず「はぁぁ?」と言ってしまったが、これって――。

 

 

「聞きたいんだけど。なんで俺だった?」

『【異星世界】観測時において最も誘致出来る魂が貴方でした』

「言い方を変えると、タイミング良く死んでいたから都合が良かった?」

『そうとも言います』

「そっか」

 

 柄じゃないんだけど……。

 俺が第一人者ということは、結構重要なポジションにいるのでは?

 これからもえーっと……、異星世界……というか、俺が生まれた場所から魂攫ってくるって言ってるんだろ?

 

 

 

 ――――――俺、どう答えればいいの?

 

 

 

『回答を、プロトタイプ』

「……あのさ、システム? さん。一つ、相談があるんだけど」

『何でしょうか』

「【保留】って回答は駄目?」

『…………』

 

 あ、どうしよう黙っちゃった。

 急に「転生したから幸せですか?」って言われて「はい幸せです」って言える?

 俺は言えない。しかも、()()の転生者っていうことなら尚更。

 

『――幸せではない?』

「どうだろう。それがよく分からない、分からないのなら報告のしようもない。システムさんは完璧なサポートを望んでいる。対象者が()()じゃあ、完璧なサポートなのか判断できない。違う?」

 

 自分でも引き攣ってるのが分かるけど、笑って相手を見る。

 相手と言っても、俺の体なんだけどね……。

 

『――プロトタイプからの要請を受理します』

「良かったぁ……」

『では、また日を改めて経過報告を求めます』

 

 よっこらせと立ち上がろうとした背に待ったをかける。

 

「あの、アイルーくんたちに「南の山に来い」って言わせたのはシステムさん?」

『【システムさん】とは誰の個体名称ですか?』

「君のだけど……。他に名前あるの?」

『システムに個としての名はありません』

「じゃあシステムさんでいいじゃん。個体名が無かったら、どうやって君を呼んだらいいのか分からないよ」

『…………』

 

 あ、すごい不可解そうな目で見てくる。自分ってあんな顔出来るんだ……。初めて知ったわ。

 

『臨時個体名として【システムさん】を登録』

「色々と言いたいけど……、アイルーくんたちの状態は元に戻せる?」

『主導権は返しました。では』

 

 それだけ言って俺の体をしたままシステムさんは消えた。瞬間移動ってヤツだろうか。

 

「……いやー、ううん……。もう何も突っ込まないぞ……」

 

 しれっと言われたけど、ヴェルダナーヴァが一回死んでたとか、そこら辺のこと。

 温いお茶を飲み干した。

 

 崖の下ではまだジンオウガとタマミツネが縄張り争いをしていた……。

 

 

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