暗殺者の──   作:ひゃん吉

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プロローグ

 

 

 

人体実験とは恐ろしいものである

 

2人の青年が居たのだ

 

姿形や声、マナでさえもほぼ同質

 

位階変異術といった物があるのだが、そこで疑問が浮かんだのである

 

上位の位階を模倣する位階を作れないのだろうかと

 

何人もの犠牲の後に1人の青年に手が掛かった

 

実験の結果は失敗とも成功とも言えない

 

位階は変わらずマナの実用性が広がったのを見ると成功と言えるのかもしれないが

 

 

 


 

 

 

アンジェル家にラ・モール家そしてシクザール家

 

この3つの家は3大騎士公爵家である

 

上位の位階を宿しているのが通常の状態だった

 

アンジェル家は聖騎士(パラディン)の位階を誇っている

 

だが、本家の娘にはマナと呼ばれる身体に様々な恩恵をもたらす物を持っていないのだ

 

理由の1つとして考えられるのは娘の母親

不倫をして産まれた子供ならば聖騎士の位階どころかマナが無いのも納得できるというのだ

 

もし、そのような出来事で産まれた娘ならば始末しなければならない

 

クーファ=ヴァンピール

 

彼はその内容を伝えられている

 

だが、もう1人

 

彼の半身とも言える双子の兄弟である青年は違った

 

もし、本家の娘がマナを覚醒させ位階が聖騎士ではなかった場合

 

貴族界に混乱をもたらす分家の娘の殺害

 

スート=ヴァンピールはそのように伝えられている

 

列車の中で対面に座りながらも何も話さず、クーファは窓の外を

 

スートはずっと手に取ってある本を読み続けていた

 

列車が止まり、目的地に着くとスートとクーファは街の匂いを嗅ぐように胸を膨らませた

 

「「「頭の良さそうな匂いがする」」」

 

3人で声を揃えてそう言った

 

スートとクーファ、そしてもう1人の女性

 

薄い赤髪の女性で見目は麗しい方ではあろう

 

キラキラとした雰囲気でそう言った女性はこちらを見てはにかんで笑う

 

「えへへ、ハモッちゃった」

 

「みたいだな」

「そうですね」

 

ここでスートとクーファの言葉は同時に発せられた

 

クーファが仮面を徹底していないのでその事に対してスートは軽く肘でクーファを突く

 

「ご旅行ですか?」

 

一瞬で作られた微笑でスートが女性にそう問う

 

「それともお仕事で?」

 

クーファはそれに続くかのように女性に問いかけた

 

「そっ、そうなの仕事なの!そういうアナタ達も・・・」

 

女性は2人の笑顔に見惚れていた

 

一瞬、弾かれたように反応したと思うと2人の服を見て学生ではなさそうだと思ったようである

 

「見ての通り学生ではないですよ」

 

クーファがそう答えた

 

「お手をどうぞ、レディ」

 

スートはそう言うと未だに列車の乗り口で固まって動かない女性に手を差し伸べた

 

「あ、ありがとう」

 

差し伸べられた手を遠慮がちに取り、エスコートを受け入れた女性

 

荷物を取りに後方へと3人で向かう

 

「ええと・・・番号札あった!」

 

そう言って女性が出した番号札を横から取るクーファ

 

女性はそのクーファに固まってしまう

 

クーファはそれを気にすることなく列車の中に入って女性の荷物を取り出し

 

「お待たせしました、レディ」

 

そう言って受け渡した

 

何かに感動したような表情になった女性

 

「紳士達だ!」

 

そう言ったのだった

 

多少の雑談をしつつ駅から出るとすぐに女性は身を翻した

 

「実は私、1人で不安でしょうがなかったの。だけど、この街に来て早々、親切な人達に会えて良かった!これから色んなことが上手くいきそう!」

 

屈託のない笑顔でそう言った女性

女性は両の手をスートとクーファに差し出し握手

 

「それはなによりです。それではまたいずれどこかで」

 

「うん、またね!絶対ぜったいまたあってね!」

 

そう言って女性が手を振りながら階段を降りていく

 

見えなくなるまでそれを見送ると2人はすぐに表情を戻した

 

「猫っかぶり・・・上手くなったんだな」

 

「・・・兄さんこそ」

 

会話が長続きはしないけれどそこには冷たいが兄弟の絆、らしきものはかろうじてあった

 

2人はお互いの間に確かな境界線を設けている

 

どこまで近寄れるのか

一体、何を話せば良いのだろうかと全てを模索していた

 

この任務が終わる頃には後、素面でもう1言くらいは話したいと2人は思っているのは余談だが

 

今回の仕事場となる屋敷に辿り着く少し手前

 

メイドの服を着た10代後半くらいの女性が数人、門の前で待っていた

 

「クーファ=ヴァンピールさんとスート=ヴァンピールさんですね」

 

「はじめまして、弟共々これからよろしくお願いします」

 

クーファはすぐに仮面を貼り付けてそう言った

それを見てスートも頭は下げはするがそれ以上は何も言わない

 

その後の雑談の中

 

鬼畜と2人は言われ続けたがそれを華麗にスルーしつつ雑談を交えながら門の中

 

件の少女の1人であるメリダ=アンジェルの元へと向かう

 

だが、途中で気づく

 

窓の外にある手摺りの上に立った少女がいる事にだ

 

髪の色というよりも髪自体が輝いて見える金色の髪

 

隣でクーファの息を呑むような音が微かに聞こえたスート

 

それを聞いたスートは苦々しげに一瞬、表情を歪ませすぐに無表情へと戻す

 

少女は風によって着ていたスカートが捲れていた

 

その事にスートとクーファは気づくと2人、一緒の場所を向くように視線を逸らす

 

「お嬢様ー!男の人が見えています!」

 

3人のメイドが慌てて声をかけた

 

スートはこの家の植物を見物に向かい、クーファは上から落ちて来た少女を横抱きにした瞬間を遠くから見ていた

 

何を言っているのかわからないがスートは2人を見て深い溜息を吐く

 

「笑えない冗談・・・なんて物じゃない。兄さん、それはあんまりにも残酷だよ」


 

 

 

メリダ=アンジェルとの接触は済んだ

 

後はエリーゼ=アンジェルのみだと考える

 

2人の共同の家庭教師

 

日によってはエリーゼを指導兼護衛をする日があり、それはメリダにも勿論ある

 

今日、学校にクーファとスートが同行すると言う話をした時

スートがエリーゼの家庭教師兼護衛をすると言った時に表情が陰った

 

『エリーゼ=アンジェルと一緒にいる事で自分と比べて気が気じゃないんだろうな』

 

家庭教師として来た人間が2人を比べないとも限らない

 

そこを危惧したのだろう

 

『学校への同行に対する表情の陰は恐らく─────』

 

そんな風に考えを巡らせながら本に文字を書く

 

今、書いている本はメリダ=アンジェルの物

 

基本的にスートは人間を観察し全てを本に記録している

 

この本に今日1日メリダ=アンジェルの取った全ての行動を記録されるのだ

 

 

 

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