知らない世界に転生してしまった俺!?ヒーローアカデミアって何だよ!? 作:岬サナ
雄英の前に一人の少年が立っていた。だが、その雰囲気は合格した者の姿とは思えないくらいに沈んだ空気を出していた。
「あ~、マジで俺が合格してしまうとは……」
そう雄英の入試試験において首席合格を果たした椋鳥涼であった。
「……はぁ、今さら何を言っても仕方ないしな~」
合格したのならしょうがないと沈んだ空気を切り替えて教室へと向かう。
「まぁ、個性の関係上そういう扉になるよな」
涼の目の前にある扉は普通の人よりも大きな扉が存在した。この扉は変異系や異形系などの個性持ちに配慮してある結果だろうと理解していた。
ガララと扉を開けて教室の中へと入る。
(何だ?これ?)
中に入ると数名のクラスメイトと教卓近くで寝袋に入っている一人を目撃した俺は疑問の視線を寝袋に向けたが、すぐに自身の席へと進む。
席に座った涼は耳にイヤホンを付け音楽を聴きながら読書をし始めた。
約数分程経ってから、トントン。と肩を叩かれて顔を上げる。
「ん?」
イヤホンを外してそちらを見ると、何処かで見たことのある眼鏡をしているいわゆるガリ勉みたいな感じの奴がいた。
「君。先程、先生がグランドに集合しろとの事だ!」
周りを見ると何人かの生徒が外に出ている最中であった。
「ありがとう。助かった」
礼を言って席から立つ。
(あれ?入学式には行かないのか?)
そんな疑問を涼は感じたが、まぁいいかと支給されている体操服へと着替えてグランドに向かう。
グランドに着いたら、他の人の話を聞けば担任の相澤先生という人が待っていた。
「これから君達には個性把握テストをやってもらう」
『「「「「「個性把握テストォォ!!!???」」」」」』
「入学式は?ガイダンスは?」
「ヒーロー目指すならそんな悠長な行事に参加する余裕無いよ」
突然のテスト開始に涼以外のクラスメイトたちは驚愕し、真ん丸い顔の女子生徒が質問すると担任教師の相澤先生はだらけきった声で答える。
「雄英は『自由な校風』が売り文句。そしてそれは教師側もまた然り」
(そこら辺も自由なんだな)
涼や他のA組メンバー達は雄英の自由な校風を甘くみていたと実感させられた。
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?『個性』禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる、合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ」
そして、相澤先生は涼の方に視線を向けた。
「実技入試の首席は椋鳥だったな。中学でのソフトボール投げの記録は?」
「あ~……50mくらいだったかな?」
相澤先生は持っている測定機用のボールを涼へと投げ渡す。
「円から出なければどんな投げ方をしても構わん」
「へぇ~」
涼は投げ渡された測定機用のボールを握りしめて投げる体勢に入った。
(取り敢えずはシュウのSTRで)
ボオォォォン!!!!
涼が投げた瞬間に周りに勢いよく風が吹き、A組の面々達にも伝わった。
pipipi
「…っ!?」
相澤先生が持っている測定機の数値を確認し、それに眼を見開きながらA組の皆にそれを見せる。
「まず自分の
『測定不能』
『「「「「「測定不能ォォォォ!?」」」」」』
測定不能という結果にA組の全員が驚きの声を上げる。涼の叩き出した結果はそれだけの驚愕を皆に与えた。
「………どうやら大気圏を超えて燃え尽きたな。……記録は∞だな」
「∞とか有りなの!?」
「ありえなくない!?」
「ヤベー!スゲー!」
「個性を使っての記録とか最高だな!」
「めっちゃ面白そう!」
そんな声が聞こえた相澤先生の眉がピクリと動いた。その事に気付いたのは涼だけであった。
「面白そう、か……」
(あ、何かヤバそう)
涼は直感でそう思った。そして、それが正しかったと知る。
「ヒーローになるための三年間、君らはそんな腹積もりで過ごすつもりでいるのか。ならこのテストで最下位だった生徒は除籍する」
『「「「「「ええええええっっっ!!?」」」」」』
(やっぱりか)
「改めて言おう、ようこそ雄英へ。此処はヒーローを目指す最高峰、並大抵の覚悟や才覚では淘汰される世界へと」
相澤先生から告げられた除籍にA組の面々(涼以外)は驚愕と理不尽に反論を上げる。
「いやいや!初日除籍とか理不尽じゃね!?」
「初日でなくても理不尽だよ!?」
「なら、君たちは襲ってきたヴィランや災害にも同じことを言うのか?言っておくがこの程度の理不尽なんてヒーローになれば何度でも遭遇するぞ」
「ウェイ!?」
(除籍だろうと別にいいけど、わざと負けるのもなんか嫌だし。程ほどに頑張るかな)
「生徒の如何は
涼は周りとは別にそんなことを考えながらも、そこからA組総勢21名による最初の試練である最下位除籍の個性把握テストが開始された。
【50メートル走】
(迅羽で一気にいくか)
「アイツ、格好が変わったぞ!?」
「何の個性なんだろ?」
「あの爪みたいなのヤベーな!」
「ボクの煌めきには劣るけどね☆」
涼が迅羽の
PiPi
『0,001秒』
『「「「「「ハアァァァァァ!?」」」」」』
その記録にまたも絶叫が出た。だが──
「距離が短いとこんなもんかな?」
そんな記録を出した涼本人は満足のいく結果ではないという風な呟きを溢していた。
「負けてしまった!」
眼鏡をかけている真面目そうな雰囲気のクラスメイトが膝を付いて落ち込んでいるのは気付いていない。
【握力】
(シュウだと本気以前に壊れかねないな。なら……)
「ふん!」
バキッ!?
そんな気遣いもSTRが高い存在にしていれば関係なく壊してしまうことに涼は無意識にも気付かなかった。
「先生、壊れました」
「………『測定不能』にしておく」
増強個性持ちでも破壊は中々難しい代物なのに簡単に壊した涼に相澤先生はため息は吐いて記録用紙に『測定不能』と記載する。
「マジかよ!」
「………チッ!」
「才能マンかよ!!」
他にも万力や複数の腕で高記録が出るも、涼の測定不能を越える記録は出なかった。
【立ち幅跳び】
バサバサ!バサッ!
『「「「「「何か分かんない生き物いるぅぅぅぅ!?」」」」」』
次に涼がしたのは改造モンスターによる永続的に空中にいることだった。
「………はぁ…∞だな」
「あれって有りなんですか!?」
「有りだ」
(あ。これ有りなんだ)
相澤先生は疲れたのか重いため息をまたしても吐き出した。自分では跳んでないけどそれらの応用力も含めて有りのようだった。
「また∞出したぞ!?」
「マジでスゲー!」
「っていうか、何で白衣着てんだろう?」
「今までのテストで単純な増強系だと思われるけどそれだと入学試験の時に僕の骨折を治したりあそこにいる生き物の説明がつかないあれだけ色々な事が出来るなら他に出来ることが分からないとどんな個性なのかの絞り込みも難しい…ブツブツブツブツ」
涼を見ながら緑色のモジャモジャとした髪の少年がブツブツと何かを言っているが、普通に涼は引いた。
ハッキリ言うなら下手なホラーよりも恐いと感じる。
【反復横跳び】
(迅羽でもいいけど、次はフィガロでやるか)
「また格好が変わったぞ!」
「本当にどんな個性だよ!?」
『1783回』
「くっそぉぉぉぉぉ!?」
「……流石にあれには勝てなかったな」
涼の凄まじい高記録を叩き出したが、別の葡萄頭の生徒は個性によって圧倒的な記録を出して、勝ったと思ったら涼の圧倒的な記録を前に1位を逃した。だが僅差ではあった。
因みに気になったとある生徒が件の葡萄頭の生徒に後に涼には負けたが、ここまで凄い記録を出せたのかを聞くと、「イケメンに眼にもの見せたかったんだよぉぉ!!」と魂の籠った荒ぶった顔で言われたらしい。
【ボール投げ】
『「「「「「また∞出たぁぁぁぁ!?」」」」」』
「へぇ~」
涼以外にも∞の記録を出したまん丸少女が皆から注目された。涼も気になって少女を無意識に鑑定して個性を調べた。
(
先ほど投げたので涼は今回は休憩ということで投げずに座って他の皆のボール投げを見ながら待っていた。
(それにしても視線がウザイな)
ここまで殆んどがトップ記録しか出してない涼にクラスメイト達は色々な視線を涼に向けていた。
特に、紅白髪で火傷痕のある氷個性の奴と爆破個性の奴の2人からの敵意の視線は他の者達の視線より強く涼へと向けられていた。
(自分の実力の無さを俺にぶつけてくるなよ)
思わずため息を吐きたくなる涼であった。
「スゲーなお前!今までのテストで殆んどトップなんてよ!」
「…………誰?」
「あ、ワリィな!俺は切島鋭児郎だ!よろしくな」
(熱血系だな)
涼は少しだけしか話していないが切島の分類を熱血系だと、簡単に言えばめっちゃ暑苦しいタイプだということを認識した。
「私もいいかしら?」
次はカエルっぽい娘がこちらに混じってきた。
「誰?」
「蛙吹梅雨よ。よろしく、ケロ」
「おぅ、よろしくな!」
切島が蛙吹に今日が初対面とは思えない程に仲良しな空気を出しながら言った。熱血系なのにコミ力高いのかと涼は切島を見て、意外と失礼なことを考えていた。
「それで切島と蛙吹は何でこっちに?」
「ん?いや、今さっきまでスゲー記録を出してからよ。スゲーな!って思って話しかけた」
「ケロケロ。私も気になったから話しかけにきたようなものね」
「何が気になったんだよ」
こう涼は聞いたが大体の予想は付いていた。もし、外れていてもそこまで外れることもないと思っていた。
「貴方の個性って大分姿が変わるけどどういった個性なのか気になったのよケロ」
「あ~それは俺も思った!色々とド派手だったからな!」
涼の予想通り個性に関してのことだった。だが、それは当たり前のことなのだろう。あれだけ色々と着てる格好が代わり、更にはモンスターと言える生物まで出せる個性など一貫性がないように見えるのだろう。
(さて、どうするかな)
涼個人としては個性については別にバレても問題はないと思っている。だが、転生特典を個性としてだろうと個性としてでなかろうと教えるのは嫌だと思っていた。
ドオオオォォォォォンンン!?
涼がどうしようかと悩んでいると凄まじい風圧と音が伝わってきた。
「何だ?」
「増強系の奴か?」
「単純な増強なら、何でさっきまで使わなかったのかしら?」
「指が完全に折れてるな」
だが奇しくもこれのおかげでクラスメイトからの涼の個性の疑問が一時的に逸れたのは涼にとって僥倖であった。
「ぐっ!?……先、生……まだ、動けます!!」
それを成したのは緑髪でモジャモジャの涼の個性の推察をブツブツとホラーのように喋っていた少年であった。
『705,3m』
指を1本代償にした記録は他のヒーロー科の面々に危機感を持たせるのには十分な記録だった。
「反動がデカ過ぎて終盤まで温存してたって事か?」
「おそらくはそうね。彼の指が折れてるからデメリットが大きいわね」
切島と蛙吹がそう言っているのを涼は殆んど聞き流していた。
(本来なら身体と個性の規格が違うとかはないんだが、あいつの場合は全く身体と個性の規格が合ってないな)
「お前はどう思う?」
「1回で壊れる程なら使い処は考えないと意味がないからな」
だが、これで涼としては得をした気分であった。この騒ぎにより自分の個性についての疑問が一時的にも頭から離れたのだから。
「残りは上体起こし、長座体前屈、持久走の3つか」
涼は残った体力測定から誰を使うかを考えていた。