スウィンが放った電流は、樹形図のように枝分かれして周りに散乱していた。
その男のところ以外は。
「おかしいな。なんで当たらないんだ。思うことは色々あるだろう。だが、思うだけ無駄だと思うぞ」
スウィンを助けなければ。
俺の体は自然と男に標的を定めていた。
コンクリートがえぐれる程に力を込めて踏み出す。
「ところで」
男の一言で俺の足は止まった。
何かが違う。ハッキリとは分からないが、先程のやつとは明らかにオーラが違う。
「これ、なんだと思う」
男は右下に視線を向ける。
俺も促されて見ると、男の右手がポケットから出ていた。
その拳はいやに力が入っている。
何か、見えないゴムの壁にめり込ませているような。
「俺の能力に関係あるんだけど。答え合わせしようか」
その時、男から凄まじい殺気を感じた。
「スウィン! 後ろに飛べ!」
俺の掛け声とほぼ同時に、既に殺気を感じていたスウィンは、後方へと飛んでいた。
男の右手が振り切った瞬間。辺りに弾け飛ぶような破裂音が放たれた。
その音は鼓膜にダメージを与えずとも、身動きが取れなくなるには十分だった。
そして同時に、男を中心として見えない壁が円形に広がる。
「ぐうぁっ」
「くっ」
俺もスウィンもその正体不明の壁に襲われる。
肌で感じたそれは、衝撃波だった。
男の攻撃を避けても尚、襲いかかってきた風圧。
その正体が今ハッキリとした。
スウィンは後方に飛んだのが幸いし、重傷は免れたようだ。
それに対し俺は、全身の強度を上げたことにより、ほぼ無傷で立っていた。
一連を終えて男が口を開く。
「おかしいな。なんでお前はダメージがない。俺の能力を食らって、かすり傷1つ付かない奴は初めてだ」
俺をギロッと見つめる男は、先程の奴とは違い、目の前の動くものを停止させる。その意思が感じられた。
俺は自分を奮い立たせる意味も込めて返答する。
「さっきと打って変わって、随分とお喋りになったじゃねえか。この後予防注射でも控えてんのか? 時間稼ぎなら受けねえぜ」
「時間稼ぎしたいのはそっちの方だろ。それとも何か? それこそ、駄々こねた子供みてえに長生きしたいってか」
ったく、言い返されちまったらこっちの立つ瀬がねえぜ。
「仕事と殺しは別なんだよ。殺ると言ったら殺る。それが俺だ」
「それにしたら、今のところ殺すとは一言も言ってないけどな」
「そうだっけか。なら言ってやるよ。ころ」
突然左端から飛び出してきた、スウィンの右ストレートが男の顔面を砕く。
その拳は電気を帯びており、恐らくは脳にもダメージを与えているだろう。
男は吹っ飛び、スウィンも同時に倒れ込む。
「スウィン! 大丈夫か」
「ふっ。時間稼ぎうまいなチェス」
位置は下でも目線は上のスウィンな様だ。
「それより、男の息は」
スウィンが男の生死を確認する様に促す。
俺が男の方へ視線を向けると、既に立ち上がっていた。
「痛ってー。ってか、今の衝撃で思い出したけど。俺さっき、お前らのこと殺すって言ってたよな?」
そうだっけ? と、記憶を巡らせるのもいいが、今はそんな余裕はない。
俺はスウィンに視線を戻し、現状を伝える。
「スウィン、起きろ。あいつピンピンしてるぞ」
「マジかよ。完全に脳みそ溶かしたと思ってたんだがな」
スウィンが立ち上がるより先に、男は俺との距離を詰めていた。
物音1つせず、人はこんなにも近くに詰め寄る事が可能なのだろうか。
まずい。そう思った時には、既に遅かった。
男は俺に向かって、思い切り右フックを繰り出す。
咄嗟にガードをするため、クロスさせた腕にかかる負荷。
それと同時に襲いかかる衝撃波。
俺は新幹線並みの速さでビルへと激突する。
「くがぁっ」
生まれて初めての激痛が、胸部へと走る。
どうやら肋骨と左肩をやられた様だ。
「あーあ。これはかわいそうだな。それじゃ死ぬにも死にきれないだろ」
「へっ、だな。俺は老衰する予定だからな」
「口の減らねえ餓鬼だな。まっ、殺し甲斐があるって話かな」
男の足元には、未だ起き上がれずにいるスウィンの姿がある。
このままだと、俺より先にスウィンがくたばってしまう。
「ところで」
俺は男の集中を向ける為に、敢えて能力を発動しながら立ち上がる。
「俺の能力はこんな風に物質の形状を変えるんだが、お前はどんなのだ」
俺はビルの破片を1つ手に取り、簡単な長い棒を作る。
もちろんアンサーなんて求めてはいない。
能力が知れたらそれこそいいのだが、今はスウィンの体力回復を待つことしか出来ない。
「ふっ、やっぱ餓鬼だな。馬鹿で世間知らずで計画性もなくて目の前のことに夢中で、そして、底が知れねえ。お前、その歳でハッタリかます気か。やめとけ。嘘が見抜かれた時ほど、真実なことはねえ」
「……なんで、ハッタリって思うんだよ」
こいつといいチープといい、一部の能力者ってのは、他の能力者の能力が分かんのかよ。
「その答えは要らないだろ。俺も知ってて、お前も知ってる。それで十分だ。そして、お前が死ねば全て良しだ」
どうやら俺が生存するルートは確保されていないらしい。
もう少し生きたかったんだけどな。
ったく、こんなところに入れやがって、ナインハーズ。
ピンチの時くらい助けにきてくれよ。
「……開き直ったか。そういうのは嫌いじゃない。じゃあ、楽に逝け」
再び男が一瞬で距離を詰め、顔面目掛けて拳を打ち放つ。
もしこの男が、俺が本当に諦めたと思ってるなら。
男の拳と俺の顔の距離、およそコンマ数ミリ。
俺の勝ちだ。
「お前がな」
俺は能力を解除する。
すると、コンクリートで作った棒が、瞬時に元の破片と戻る。
当然、今まで伸びていた部分は縮み、それを掴んでいた俺も縮む勢いに釣られ、一瞬で屈む様な体勢になる。
拳の軌道からはずれ、すぐさま右足を前に出し、次の攻撃の姿勢へと移る。
男は思い切りの攻撃で大振りとなり、体勢が崩れている。
狙うは腹。
「さっきのお礼はまだだったな!」
俺は腰を捻り、男の腹に思い切り左ストレートを打ち込む。
そして、能力で男を脆くすることにより、ダメージをより深刻なものとさせる。
「ぎぐぅあ」
男の腹はえぐれ、内臓が飛び出す。
はずだった。
「……痛っっったー。警戒はしてたけど、これ程とは思わなかった。正直効いたぜ」
この男、マジかよ。
男の腹はえぐれるどころか、少し皮膚がひび割れた程度で済んでいる。
いくら肩がやられていたとは言え、能力を駆使して全力で打ってもこのダメージ。
格が違う。修羅場を潜ってきた数が違う。圧倒的に次元が違う。
「で? これで終わりなわけ?」
男は俺の拳を自分の腹に押し付ける。
引こうにも引けず、押そうにも押せず。完全に拳を捕らえられてしまった。
ぐぐぐと、男の力が強くなる。
「ゔっ」
その度に俺の拳は腹へと押し込まれ、男の鍛え抜かれた腹筋に押し潰されそうになる。
すると、男の後ろから1つの影が出飛び出す。
「俺のこと忘れんな」
スウィンだ!
恐らく男が俺に集中し、油断している隙を狙った奇襲!
流石はスウィンだ。死角でない俺ですら気が付かなかった。
「……忘れるほど、お前は弱くはないだろ」
しかしその奇襲は、男にとって造作もないことだった。
男は素早く俺の手を離し、振り向く。
後ろ姿なので分からないが、恐らくスウィンと眼があったのだろう。
それも凄い殺意を込めたやつを。
全て、スウィンの顔が物語っている。
「そういえば、お前ら俺の能力知りたがってたな。俺の能力は……これだよ」
そういうと、男の周りから再び衝撃波が発生する。
俺たちは対角に吹き飛ばされた。
ほぼゼロ距離での能力発動。突然迫り来る見えない壁。
ここで俺とスウィンの考えていることが一致したのを感じた。
「「こいつの能力は、衝撃波だ」」
発動時間などを考えて、恐らくは発動系だろうと結論付くには、さして時間が掛からなかった。
しかし、相手の能力が分かったからと言って、別に俺らが強くなるわけでもない。
弱いなりに対策を打つしかない訳だ。
だが、こちらにはとっておきの秘策がある。
だろ? スウィン。
『さっきから独り言が激しいなお前は。楽しみすぎだ。少しは相手を殺ろうとする意思を見せろ』
すまんすまん。初めてだから少しね。
『まあ、それはいいが。あの男。……呼びずらいから、次からポケットマンにするか』
え……お、おう。スウィン薄々思ってたけど、ネーミングセンス無いな。
『あ? 俺はネーミングセンスとか戦闘センスとか戦略センスとかの塊だろ。お前の感性がおかしいからって、いちいちイチャモンつけんな』
はいはい。すいませんね。で、そのポケマンがどうしたって。
『ああ。ポケットマンの能力は恐らく衝撃波。これは異論ないな』
だな。それ以外は考えられないって位、今までが一致してる。
『それでだ。ポケットマンはゼロ距離でも衝撃波を放つことができ、尚且つ遠距離攻撃も出来る』
勝ち目がねえって話だ。
『いいや、そうとも限らねえ』
何か対策が思い付いたのか?
『ああ。あいつの能力が衝撃波なら、地中には影響が弱いはずだ。もしお前が、地中に電線の代わりになるものを張り巡らせれるなら、あいつに直に電流を打ち込むことが出来る』
電線の代わりって、金属ならなんでもいいのか?
『出来れば銀とか銅があればいいんだがな。生憎ここには鋼と鉄くらいしかねえ。十分とは言えないが、致命傷くらいならいける』
俺は地中に電線を張り巡らせた事はないから、大雑把になると思うけど、それも視野に入れてるのか?
『ある程度雑でもこっちでカバー出来る。2メートルくらいの幅なら余裕だ』
分かった。だが、これは作戦というより対策だ。時間稼ぎはスウィン1人でやるつもりか。
『そういう事になるな。持って1分だ。その間になんとかしてくれ』
……危険と思ったら作戦変更だぞ。
『あいよ』
スウィンの言葉を最後に、俺たちはポケマンいう者に視線を戻す。
俺たちが話している時間は、そこまで長くなかったと言えるだろう。
それこそ、睡眠など以ての外だ。
なのに何故、このポケマンとやらは寝ているんだ。
なあ、スウィン。
『ああ、寝てるな。完全に』
どうやらポケマンは、馬鹿なのか考えていることが分からないのか、目の前に敵がいるというのにぐっすりと眠っている。
チャンスか?
『どう見ても罠だろ』
だけど今なら
『駄目だ。今地中に電線なんて張り巡らせたら、一瞬でバレる。何故か分からんが、今のポケットマンには蟻1匹の足音さえ、欠伸をした後のホラガイ並みに聞こえるんじゃないかって思う。そんなオーラが今のポケットマンにはある』
どんな状況だよ。ってか、なんでそんな事分かるんだよ。
『勘だ。だがハッキリとしたやつだ』
勘って。それでチャンスを無駄にするのは勿体無いと思うけどな。
『いいや、考えようによったら好都合だ』
そりゃ寝てれば攻撃し放題だからな。
『そういう事じゃない。俺たちの目的は待機だ。このまま寝てれば直に10分が経つ。そうすれば増援がきて、キューズもこのポケットマンも下手に動けなくなる』
なるほど。そういう考えもあるのか。
『ああ。だから今は何もしない。それが得策だ』
腑に落ちないが、スウィンの言う事も一理あるだろう。
今まで奇襲や騙し討ちをした結果、成功した覚えがないからな。
それに、言われてみれば隙がない気もしない。
……だが、だからといって何もしないのはつまらない。
俺はスウィンには内緒で少しだけ地面を脆くし、人差し指を差し込む。
そこから爪を伸ばし、ポケマンに向かわせる。
今のところは気付かれている様子はない。
やはりスウィンの勘違いでは?
だがそうだとしても、寝る理由が見当たらない。
俺は爪を伸ばし続け、恐らくポケマンの真下あたりで止めた。
今ならいける。
そう思い、一気に爪を上に方向転換させる。
爪は見事にポケマンの太ももを貫通し、奇襲は成功した。
……不思議なことに、爪が太ももに貫通したというのに、ポケマンは何もアクションを起こさない。
本当に寝てるのか?
俺は好奇心から、爪を心臓の方へと向け進める。
おかしいと気がついたのは、爪がポケマンの胸部辺りの皮膚に触れた時だった。
鼓動がない。
爪から伝わってくる振動には、ポケマンの心臓の鼓動らしきものは存在しなかった。
寝ているんじゃなくて、死んでいるのか?
だとしたら誰が。この数秒でこれほどの手練を始末できるというのか。
俺の憶測が儘ならないまま、その悩みは終わりを迎える事となった。
「惜しかったね」
恐らくは死んでいるはずのポケマンが口を開いたのだ。
完全に心臓が止まっていたはずなのに、平然としている。
再び爪からの振動を確認すると、ポケマンの鼓動は元に戻っていた。
「お前があともう少し決断力のある者だったら、もう1人がもう少し柔軟だったら。俺を殺すことが出来たかもしれないのにな」
罠か!
俺は胸部に触れていた爪を、思いっきり突き刺そうとした。
しかしポケマンの言う通り、俺の決断は遅かった。
この時初めて、俺に対しスウィンが『逃げろ』と信号を送っていることに気が付いた。
そして、ポケマンの殺気にも。
いきなりの出来事に、逃げると言うよりは防御の態勢を取るしか無かった。
というよりは、本能的な行動に近かったのかもしれない。
「サーグル」
ポケマンの声の後、今度は心臓部辺りからハッキリと白い壁が円形に広がる。
まるでソニックブームかのような、爆音とともに発生したその衝撃波は、今までの比でないことは明らかだった。
既に防御していた俺は、その場を動けるはずもなくそれを諸に食らうこととなってしまった。
衝撃波が毛1本程に触れた時、俺は死を感じた。
全身を打撃されながら、後方へと押し飛ばされる。
俺は受け身も取れない儘、路上へ叩きつけられた。
ビルは崩れ、コンクリートは凹み、無事なガラスなど存在しなかった。
不思議なことに、この騒がしい出来事の後に訪れたのは、沈黙だった。
俺らもポケマンも例外ではなく、崩れ落ちる瓦礫さえ気を遣っているように感じた。
「ぅゔ」
沈黙を裂いたのは、俺の吐息ともいえる呻き声だった。
どうやら、首の皮一枚で生き残れたようだ。
しかし、この大災害の後を連想させるような荒れ果て様。これが人1人の成したこととは信じ難いものがあった。
能力者という者は、ここまで化けるものなのか。
俺の心からは好奇心は消え失せ、今は生き残ることだけを考えていた。
「やっぱりさ」
誰に話しかけるでもなく、ポケマンが口を開く。
「瞬殺って詰まらないな。2対1で途中、お前らがある程度強いって気付いた時に、少し期待したんだけどな。やっぱりとしか言いようがない。所詮は餓鬼だな」
こいつ、今まで手加減してたって言うのかよ。なのに俺らは傷1つもつけられなかったって……。
再び俺は自分の未熟さを痛感した。
それより、今の衝撃でスウィンが無事なのかが心配だ。
俺は少しではあるが、こいつの能力に対しての耐性があったから、かろうじて生きてるが、ほぼ生身のスウィンは死んでいてもおかしくはない。
現に今、俺の足には感覚がない。他にも左右の腕、右目、鼓膜や内臓の損傷。内部外部合わせて数え切れない程の出血。
既に蟻1匹にすら苦戦する程になっていた。
俺は目を凝らしてスウィンの方を見る。
ぼやけてハッキリとは見えないが、俺と同じく地面に突っ伏している。と思われる。
生死の真偽はおろかそれが瓦礫なのかスウィンなのか、俺が判断するには材料が少なすぎた。
何かが俺に近づいてくる様に足音がする。
そちらに視線を移すと、そこにはポケマンが立っていた。
「お前はいつになったら死ぬんだ。ここまで来ると感心するぞ」
ポケマンは呆れた様に見下してくる。
俺は最後の力を振り絞り、反抗しようとする。
しかしそれは叶わず、俺の口から出たのはただの空気だった。
「悪態をつこうにも、その傷じゃ声も出せないか。ぷっ。その方がいいんじゃないか? お前よく見れば顔は悪くないしな。黙ってればモテるぞ」
ポケマンは笑いながら、俺の頭を踏みつける。
それに抗うことも出来ず、俺は黙って踏まれていた。
すっ。と、突然ポケマンの目から光が消えた。
それと共に笑顔も俺を踏みつけていた足も退け、迷いもなく入り口方向へと視線を向ける。
俺は首を動かす体力もなく、音を聞くのが精一杯だった。
コツ、コツと、まるでビジネスシューズを履いた様な足音が、こちらへと近づいてくる。
こちらと言うよりは、ポケマンに向かって歩いている様だった。
ポケマンの表情はなんというか、完全に殺意とか敵意とかを抜いてある、驚きの一点だった。
「お前、生徒じゃないな」
生徒じゃない。ポケマンのこの言葉が、俺の絶望を希望へと変えた。
もしかして、ナインハーズが助けに来てくれたのか。
助かる。スウィンも俺も、いやスウィンは分からないが。
とりあえず、心の中の不安や恐怖心が消え去ったのは事実だった。
ポケマンはすぐに殺意をその人物に向け、俺のことをすっかりと忘れた様に、前方以外は隙だらけだった。
足音はペースを変えずに近づいてくる。
そいつが、ポケマンのおよそ1メートルくらいの場所で止まったのを、足音が止まったことで理解した。
「お前、生徒じゃないな」
ポケマンは先程より殺意を持って詰問する。
しかし、答えはない。
俺の目にはポケマンしか映っておらず、ポケマンが見ているのがどんな容姿をしているのだとか、身長だとかは分からない。
突然、ポケマンが拳を繰り出した。
がしかし、その拳はいとも簡単に止められ、ポケマンの顔に右手が添えられる。
その瞬間、ポケマンの顔が弾け飛ぶ。
突然のことに俺は全身の痛みを忘れ、呆然としていた。
「大丈夫か」
聞いたこともない声が俺の耳に入り込む。
恐らく両手であろう物が俺の背中に触れる。
俺も殺される? 一瞬そう思ったが、どうやらそうではないらしい。
その両手から何かが流れてくるのを感じる。
途端、全身に力が漲るのを感じた。今までの激痛が嘘の様に収まり、足の感覚も戻ってきた。
助かった。今の状況を一言で表すならそれしか無かった。
ありがとうございますと、立ち上がりその人物の方へ向く。
「誰?」
そこには全く知らない男がにっこりと笑って立っていた。
「自己紹介まだだったね。私の名前はロール・マナカス。ここで教員をしている者だ」
ロール・マナカスと名乗る者は、俺に握手を求めてきた。
いやマジ誰?