チェスクリミナル   作:柏木太陽

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キリング

 サイコス・ノリング町某所。

 時刻は22時、大雨。

 厳重に警備されたはずのあるビルが、ある1人の男によってその役割を果たせなくなっていた。

 最上階に位置する部屋で2人の男だけが存在しており、1人は壁にもたれかかって座り、1人はその男に銃を向けている。

 警備員、ボディーガードは全て倒れ、全員が脳天を撃ち抜かれていた。

「こんな事をしても、お前には逃げる場所などないぞ」

「ジャスターズの事なら見当違いだ。奴等に俺は殺せない」

「なぜ言い切れる」

「貴様には関係ない」

 響き渡る銃声。

 その時既に男の姿はなく、鋭い銃声は雨音と一緒に夜の町にこだましていた。

 速やかに仕事を終えた男は、1人暗い夜道を歩いていた。

 傘もささず、レインコートも着ていない。

 彼の名はキリング・ストリート。ジースクエアのメンバーであり、国際指名手配犯である。

 彼の向かう所全てが血の海と化し、殺して来た人数は数知れず。

 ターゲットはスリを働く様な小悪党から、麻薬を売買する大手の会社までと様々で、全てに共通するのは全員が何か罪を犯しているという事。

 彼を非難する者もいれば、救世主と崇める者もいる。

 しかしジースクエアのメンバーであるからには、存在は不安定なものでは務まらない。

 キリングは能力者殺しで有名であった。

「すいません、少し止まって頂けますか」

 キリングの目の前には、真っ赤な傘をさした顔の隠れた男が立っていた。

 背丈約176センチメートル。182のキリングからすれば、少し見下ろす程度の男。

 しかしその五体から滲み出る殺気に、キリングが気付かない筈も無かった。

「いつからだ」

「と言いますと?」

「いつからつけていた」

「ビルから出て来た辺りからです」

「そうか、なかなか殺気を消すのが上手い様だな。名前は」

「ランボード——」

 不意に放たれる弾丸。

 傘で隠れているとは言え、今まで何千人を殺して来たキリングからしてみれば、目を瞑ってても当てられる的であった。

 傘は放たれどこかへ飛んで行き、もう見つける事は叶わないであろう。

 当然脳天を撃ち抜かれた男は倒れる筈であったが、不思議な事にいつまで経っても倒れる気配がない。

 男の足元を見ると、先程の弾丸が潰れて転がっていた。

「この形状は何か硬いものに当たって、耐え切れなかった時になるものだ。大方硬化と言った所か」

「流石です。コイン様の言った通りの観察力と洞察力。まさかたった1回で見抜かれるとは思いませんでしたよ」

 いくら熟練された能力者でも不意打ちには弱い。

 しかしこの男は、予想していたのか能力の発動が恐ろしく早いのか、いとも簡単にキリングの弾丸を弾き返した。

「……ゲームをしよう」

「突然どうしました」

「今から俺は貴様を本気で撃つ。それに耐えられたら貴様の勝ち。もし耐えられなかったら俺の勝ちだ」

「私が勝ったらどうします?」

「俺の死をプレゼントしよう」

「もし負けたら」

「貴様が死ぬだけだ」

「気に入りました。受けましょう、そのゲームを」

 雨は先程よりも強くなり、遠くでは落雷の音が聞こえる。

 その中で2人は向かい合い、キリングは右手にリボルバーを生み出した。

「間近で見るのは初めてです。本当に何も無い所から生み出すんですね」

「発言には気を付けろ。どれが最後の言葉になるか分からない」

「ですね」

 リボルバーを男に向け、男は眉間に全能力を集中させる。

 あと数秒でどちらかの命が消える。そんな時、口を開いたのは硬化の男だった。

「もし私が勝ったら、貴方をペットにしても?」

「構わない」

 リボルバーから放たれた弾丸は、男の後頭部を突き破り、眉間を貫通してキリングの目の前へと飛んでくる。

 それを片手で掴んだキリングは毎回の様に、既に物と化した肉人形にこう言う。

「このリボルバーから撃つとは誰も言ってはいない。そこが俺と貴様の差だ」

 男は名前も知られずまま、その命を散らせた。

「俺は群れない」

 キリング・ストリート

 能力 銃

 半径7メートル以内に拳銃、小銃、散弾銃、狙撃銃、機関銃、騎兵銃、擲弾銃を出すことが出来る。ジースクエアのメンバーであり、国際指名手配犯。

 オート系


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