チェスクリミナル   作:ハザマダアガサ

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能力者の証

 能力者は能力の種類を、5つの系統として分類している。

 発動系、自然系、オート系、フルオート系、代償系があり、その系統によって能力の特性が違い、それぞれ異なった性質がある。

 性質は単発と継続に分かれている。

 単発は、能力が一瞬から数秒発動する事を指し、継続は、能力が継続して発動する事を指す。

 発動系の性質は単発が主で、継続はほぼいない。瞬間移動などが例に挙げられる。

 自然系は条件が揃えば無条件で発動する。性質は単発、継続の両方がある。

 条件が揃うというのは、口を開けたら炎が出る。や、物体に触れたらそれが消滅する。など、様々。

 オート系の性質は継続が主で、単発は事例がない。発動してから解除するか、気を失うまでは半永久的に発動する。

 フルオート系は非常に珍しく、殆ど存在しない。産まれた時から死ぬまでに、常に発動している。不老不死はフルオート系の代表的な能力とされている。

 代償系は何かを代償として能力を発動する。代償が大きい程能力は強力になる。最近見つかった系統なので、事例は少ない。

 そして、能力者の全盛期、つまり1番能力が強力な時は35歳と考えられている。

 それ故に刑務所では、能力で罪を犯した者は、殆どの場合が35歳以上になってからではないと釈放されない。

 

「このことから、恐らく君はオート系だね」

 オート系。

 やはりそこまで珍しいわけではないな。

 フルオート系ってのが少し興味あるが、自分の系統を理解する方が先だな

「オート系ってのは、どういうスタンスで戦うんだ?」

「おいおい、いきなり争いの話かよ。別にいいけどよ? だが、特別枠でも実戦は最低でも半年はかかるぞ」

 半年。微妙だな。

 もう少し早くてもいい気がするが、文句を言っても仕方がないのだろうな。

「じゃあ質問を変える。オート系は戦いやすい部類なのか?」

「あんま変わってない気すっけど……。まあいいよ。話してやる」

「せんきゅ」

「……ぶっちゃけ、どの系統だとしても能力によって全然変わってくるから、知らん!」

「……ぶっちゃけたな」

 それでいいのか教師よ。

「ってのが普通の人の意見。しかし、俺は教師だ。わからないわけないだろ?」

「はいはい、そうですか」

 んだよ、疑ったじゃねえか。

「で、なんなの? 結局は」

「そんな急かすなって。いいか、よく聞けよ」

 ナインハーズは指を立てて言う。

「実は系統には、ジャンケンみたいな相性があってな。勿論能力にも左右されるが、大まかなパワーバランスがあるんだよ」

 相性。それは詳しく聞かないとな。

「まず、君のオート系だ。オート系は発動系に対して強い。ここでの強いってのは、能力の優先順位だ」

「優先順位……?」

「ああ。例えば、物質を増やす能力と物質を消す能力があるとする。物質を増やす能力はオート系、物質を消す能力は発動系だ。能力の区別の仕方は、後々説明するから気にしないでくれ。で。もし、この能力が同時に発動した場合、矛盾が発生してしまう。物質を増やすのに消してしまう。どういう事だ? となるだろ。しかし、実際はオート系である、物質を増やす能力の方が優先順位が高いため、物質は増えるだけで、消えはしない。まあ、あくまで同時に発動した時の話だがな」

 ということは、昔話の矛と盾も話が違ってくるのかもな。

 絶対に盾を貫く矛。絶対に防ぐ盾。

 どちらがどの系統かは知らないが、矛盾が発生しないようになってるんだな。

「なるほどな。となれば、相手の能力を見極めるのも大切な訳か」

 とすると、能力の区別の仕方を知っておきたいところだが、今ではなくてもいいか。

「ちなみにオート系は、フルオート系と相性が悪い。自然系はフルオート系に強く、発動系は代償系に強い。そして代償系は自然系に強い」

 オート系→発動系 自然系→フルオート系 発動系→代償系 代償系→自然系 フルオート系→オート系

             という訳だな。

 ってか、ナインハーズの能力はなんだろう。教師になるくらいだから相当強い能力なのか?

「そういえばお前の能力はなんだ?」

「ん? 俺か? 俺は無能力だけど?」

「え?」

「ん?」

 ……今、無能力って聞こえたが……、気のせいだよな?

 ……いや、無能力って言ってたな。

「お前、無能力者なのに教師やってんの?」

「おん。別に能力者、無能力者関係なしだからな」

「え、それで生徒は歯向かわないの?」

「なんで歯向かうんだ?」

 なんでって、無能力者って舐められねえか?

 ましてや教師だろ? もし、反抗でもされたら抑え切れるほどの能力持ってなくねえか?

「あー、成る程ね。無能力者だと、生徒の反抗に対応できないって考えてるだろ」

「ああ。実際そうじゃねえか? 能力者に対して無能力ってのは無防備じゃないか?」

「それは安心しな。進化してきたのは能力者だけじゃないって訳だ」

「??」

「まあ、今話すようなことじゃなし。順序よく覚えていかないとこんがらがるからな」

「……ああ、分かったよ」

 少し気になるが、ナインハーズに言う気がないのなら仕方ないな。

「それでだ。何故、君が能力者だと分かったか気になるだろ?」

 そういえば、それが気になっていたんだった。

「どうやったんだ? それも誰かの能力か?」

「まあ、そんな感じの能力もあった気がするが、そうじゃない。ヒントは身体的特徴だ」

 身体的特徴? アザとか傷とかか? 

 しかし、そんなことは聞いたことないしな。

 ……特に思いつかないな。

「結局なんなんだ? その身体的特徴ってのは」

「ヒントはここ」

 ナインハーズは自分の目を指さす。

「目?」

「そう。目だ。しかし、ただの目ではない。ある条件下で能力者の目は変化する」

 変化? 二重になるとか? ……自分で言ってて馬鹿馬鹿しい。

 まともに思考ができていないようだ。

「で、その目がどうなんだよ」

「君もついさっきなってたぞ? 今は波が来てないだけで去ったわけではないだろうし」

「波? 何言ってん」

 ピキンッ

 頭が割れるような激痛に襲われる。忘れていた感覚が再び思い出される。ここに来る前の痛みだ。

 俺はその場で跪く。

「あ、噂をすればだね。大丈夫か? 結構痛いだろ? それ」

 ナインハーズの声が入ってこないほど痛みが強く、どうにか和らげられないかと頭を必死に手で押さえる。

 「落ち着け落ち着け。とりあえずこれ食べろ」

 ナインハーズは何か白い物体を手渡してくる。

 普通疑うところだが、今はそんな余裕がなく、その白い物体を口に放り込む。

「しょっぱ!」

 俺はすぐにその白い物体を吐き出す。

 口に放り込んでから、その物体が塩であると理解するのに然程時間はかからなかった。

「どうだ。しょっぱいだろ」

 ナインハーズはニコニコ俺の顔を覗いてくる。

「いきなりなに食わせんだよ!」

 俺はナインハーズの胸ぐらを掴もうとして、あることに気づく。

 先程の激痛が引いているのだ。

「あれ?」

 俺は頭を触り、確かめる。

「痛くなくなったろ。これが能力者特有の特性だ」

「特性?」

「ああ。塩分不足になると、目が血走り、耐え難い激痛が頭に走る」

「……なるほど。その時の目の血走った姿が、能力者の判断材料になるのか」

 知ってたんなら早く言えよ。クソ痛かったじゃねえか。

 色々思うところはあるが、実際に体験したお陰で痛いほどわかった。

「そういうこと。よく言うだろ? 幽霊には盛り塩が効くって。能力者はいわば自分の魂を削りながら闘っている。そこで能力を使うたび死に近づく。そうすることによって生命の源である塩分が足りなくなり、さっきのようになる。だからいま吐き出したやつは食っといた方がいいぞ。一個しか持ってないからな」

「待て待て待て、今なんて言った? 魂を削りながら闘ってる? そんなの初耳だぞ」

 それに塩分が生命の源? 同じく聞いたことがない。

 あと吐き出した物を食う習慣は俺にはない。

「知らなかったのか? 君、能力を使った後に脱力感とかない? あれは命を消費してるからだよ」

 さぞ当たり前のことを言うように、ナインハーズは発言する。

 いやいや、普通に生活してたら気づかないだろそんなこと。

「……知らなかった。出来るだけ能力を使うのは避けるか」

「そんな事しなくていいぞ? さっきも言った通り、塩分を取ればいい話だ。すぐ回復。一瞬よ一瞬」

 なんだそれ。よくわからないが、とりあえず死ぬ可能性はあまり無いのか。

 俺は一安心してため息をつく。

 落ち着いたところで話題を変えることにした。

「……そうだ、気になってたんだが、俺の入学とかっていつなんだ?」

「ん? ああ入学とかはないよ。犯罪犯した奴らが常にいる社会で、収容ばっかしてるから、その度『入学しましたー』なんてしてたら埒が明かないだろ?」

 確かにそうだな。という事は俺はもう入学したも同然ってことか?

 ってか次の日にいきなりクラスメイトが増えてるとかあるのか?

 だとしたらとんでも学園だぞ。ここが学園かは知らないけど。

 俺の顔を見て察したのか、ナインハーズが口を開く。

「ふふふ、その通り。君はもう入学したも同然さ。だからさっきからタメ口なのも直してもらうよ」

「んな、ナチュラルにタメ口でいけてたのに。バレてたか」

 ってかこの人結構受け入れてなかった?

「バレてるに決まってるだろ? ちゃんと敬語に直せよー。もし次会った時にタメ口だったらちゃんと指導してやるよ」

 その時のナインハーズは、やはり教師なんだなと思わせる笑顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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