「もう少し考えるべきだったか……」
護衛を受ける1日目にして、もうすでに私は後悔していた。
「あの人、婚約者ってほんと?」
「違うし」
「でもキスされたから結婚するって」
「キスしたの?」
「しました」
「僕はせんりの物だからとも言ってたけど」
「まーそういう見方もある」
「援交?」
「ちゃうねん」
「何が違うの?」
「前、お坊ちゃんを悪い人から助けたら、それが原因で悪い人に目をつけられそうでさ。守ってあげるよって。それで護衛」
「大丈夫なの? それ」
「警察行ったら?」
「その時にロマンスしたんだ?」
「あの人も育ち良くない?」
「どさくさに紛れてつまみ食いはした。育ちはいい」
「「キャーっ」」
「うーん。想像以上に面倒臭いな……」
しかし、メロンパン対策にはこうするしか……通信制の高校に転校って出来るかな?
先生に相談してみよう。ついでに、個性を売って資金を得られないだろうか。
早速先生に相談し、お昼に早退し、通信教育のパンフレットをもらって先生と合流する。
「五条さん。流石に5ヶ月これはあれですし申し訳ないので、対策を考えます」
「そうだね。僕もいくつか考えたよー。ミスター五条って言わないの?」
「今はヒーローモードじゃないので。まず」
黒塗りの車が私の目の前に止まる。
「悟坊っちゃま! 何を考えておられるのですか! 五条 悟が高校の外でずっと立たされていると連絡が……!」
「……お家の人に話しました?」
「さぁー? 僕、携帯持ってないし」
「そりゃそうですね。私が用意します。違うんです、五条さんのおうちの方。オリジナルに話を聞いていただければと」
ということで、呪専に五条さんが3人並ぶ事になった。
五条さんが3人並んだ時点でお家の方は倒れられてしまった。
「やー。問題になるの早かったね」
「当たり前です。……一旦戻さないのですか?」
「一度作り出した物をこちらの都合で殴る蹴る折るして消すのはヒーローとしてはちょっと……。まあ、案外ちょっと大きな衝撃を与えただけで消えるかもしれませんが。その辺の加減は誰にもわからないんです。病弱な一個人として人権認めてあげてください」
「コピーにもダメージ許容量はわからないと?」
「コピーだよって言ってあげなきゃコピーであることすらわからないんですよ?」
七海さんは頭を痛そうに抑える。
「それ、オリジナルにも言ってやって。人権のところ、特に」
「あっはっは。ウケる」
「あまりコピーいじめると刺されますよ、まじで」
「久慈君には命令権はないのですか?」
「ないです。彼らは何者にも縛られません。ただ少し弱くてちょっとの刺激で土塊に戻ってしまうだけです」
「厄介な……」
「それより選里、一日落ち着いて考えたんだけど、呪術師を認めてはくれるんだよね? せめて協力体制を結べないかな。それで、徐々に知ってくれればいいよ。真希だって見えないけど呪術師は出来てるんだし、君の意思一つだよ」
「それなんですけど、コピー2の五条さんを養うのと会社を作るので、ひとまず資金調達の為に個性のレンタルをしようかなと思って。口利きをお願いしてもいいですか?」
「今、五条さんを養うというパワーワードが聞こえましたが……」
「僕、婚約者と子供ぐらい養えるよ?」
「婚約者……?」
「もう2人も僕のコピー作ったし、僕もAFOの因子を受け入れたし、僕と同棲も決まってるし、キスもしたし! 婚約も同然でしょ。むしろ子供いるから結婚してるでしょ。責任とってよ」
私は助けを求めるように五条家の人を見た。
「ささささささ、悟様にそのようなことを!?」
「いや、漫画じゃあるまいし、キスしたら結婚って……」
五条家の人の視線が突き刺さる。ギギギ、と首を動かす。
「……まじで?」
「まさか悟様に手を出して責任を取らないと?」
「あっ こわい」
「「ママー♪」」
「はわわわわわわわ」
「嫌なの?」
「いや。名家は普通に尻込みしますが。あったばかりですし」
「じゃあ、これから知り合っていけばいいよ。堅苦しい事については全然心配しなくていいからさ。何より、その……君に手を差し伸べられて、思ったんだ。君の子が欲しいって。僕の遺伝子が、君を求めてる」
「あー。それはなんとなくわかります。でも私、非術師ですよ」
「だいじょーぶ。君との子は、絶対呪力持ちだよ♪」
うーん。無個性との結婚するしかないなら、むしろ呪術師と結婚するのは、あり、かな……。
「五条家途絶えたら責任取れないんで、他に女作って貰えるなら……あと、ヒーロー活動を許してもらえるなら。それと、呪力なし個性持ちの子は私に任せて下さるなら。あ、個性は私の個々の異能の呼び名です」
「呪力なし個性なしの子はどうするの?」
「私にそれ言います? 個性はなかったら与えるからそれはあり得ませんよ。超再生でも予知能力でも」
「奥様っ!! 結婚式はいつ頃にしましょうか!!!」
五条家の人変わり身はやっ
「じゃあ、気が変わらないうちに婚姻届だそっか♡」
「すぐに式のご用意を致します」
「あーでも、個性のレンタル? あれってキスするんでしょ? 生徒に個性はあげたいけど、浮気は嫌だなぁ」
「すみませんほんの出来心で必要ないのに唇奪いました」
その言葉に、五条さんはキョトンとして、それからニヤニヤした。
「僕にはいつしてもいいけど、僕以外にはダメだよ?」
「はい……」
「じゃあ、市役所行こうか。その前に君の両親にご挨拶しなきゃね」
「あ、そうだ。結局君、個性? いくつあるの? 知りたい!」
「切り札を簡単に教えるわけには……ああ、じゃあこうしましょう。寝物語に一晩一つ教えます」
「えっ そんなあるの?」
「類似ありなら、夫婦円満でもネタ切れがないくらいには」
「呪専近くに奥様とのお住まいを用意させて戴きます。今日中! 今日中に!!」
「結婚しよ。すぐしよ。早くしよ」
私はその日の内に人生の墓場に入った。
両親説得されるの早すぎぃ!
お庭で、オムツをした凶暴な顔の女の子と悟さんが対峙している。
「ブッ殺す!!」
「ふふん、やってみなよ、華火」
「大・爆・殺!!」
そして大爆発。修理するの私なんだけどなぁ。
うーん。躾ってどうしたらいいんだろう。
悟さんは穏やかに受け入れるタイプだし、私がしっかりしなくては。
「華火。あんまりオイタすると個性剥奪するわよ!」
「ピッ」
「選里。こんな小さい子を怖がらせるのは良くないよ」
「解せぬ」
悟さんに隠れて、ベーッとする華火。あんた達殺し合いしてたんじゃないです?
「いや、素晴らしいね。素晴らしい可能性だ」
「メロンパンは帰って?」
おかしいな。お茶を出した覚えもないのに、お茶を飲んでくつろいでいる。
「つれないなぁ。私だって君の事が大好きなのに。子供作ろう?」
「ふざけんなメロンパン!」
悟さんとメロンパンの戦いが始まり、子供達は物おじせずに応援する。
なんだかんだで、ヒーローにはなれなかったけど。
こんな生活も、嫌いじゃない。