「ってことで、自分の子供や。華火言うんや」
「爆殺しゅゆ!」
舐められてはいけない。手の中の小石を次はお前だとばかりに爆発もさせた。
目の前には、双子の女の子が肩を寄せ合って震えていた。
華火、初めてのか弱い人間との邂逅である。
「……」
「もうらいじょーぶ! わちゃしがきた!」
華火は小さな胸を叩いた。
たとえ、異世界にあったのは祖母の代でも、脈々とヒーローの血は久慈家に受け継がれているのである。
強きは爆殺。弱きを助く。それは、華火の魂なのだ。
「何が大丈夫なんだよ」
「無辜の民の敵は爆殺しゅゆ!」
「誰が民だ」
「じゃあ、ヒーロー?」
「……そうだな。ヒーローか。私は妹のヒーローでありたいとは思ってるが」
「お姉ちゃん」
それは、華火にはストンと落ちる言葉だった。
その意思はとても尊い物である。ヒーローとなるのなら、自分も協力は惜しまない。
ヒーローであるならば、自分はたとえ無個性だろうと差別しない。ともに切磋琢磨しよう。
それを華火風に言うとこうなる。
「爆殺しゅゆ!」
「なんでだよ」
悲しいかな。弟よりもガッツリ言葉の遅い華火の頭には、爆殺とヒーローのことしか詰まってなかった。
華火は初日から「灯」の訓練に参加していた。
華火は不満であった。灯はいわば二軍である。禪院家が悪いのではない。弱き自分が悪いのだ。
「爆殺しゅゆ!」
「呪力もろくに練れんのが何言うてるんや。立ち会いやなく訓練からや」
「基礎は大事」
「せやな。わかっとるやん」
夕方まで訓練をして、ご飯を食べて。おねむの時間である。
ご飯は不味かったが、粗食が軍を強くする、という母の薫陶を聞いていた為、華火が文句を言うことはなかった。華火は正座して、携帯を出した。
「華火、電話するの?」
「ママに電話しゅゆ。お話の時間」
「そっか。そりゃそうだな」
「私も聞いていいかしら」
「いい」
『皆、初日はどうだった? 貴方達なら乗り越えられたと信じているわ。だって貴方達は、おばあちゃんの孫だもの』
「華火、妹分ができた」
「私らの方が年上なんだけど」
「華火、姉貴分ができた」
『友達ができたよ』
『巣を作りました』
『そう、皆頑張ったわね。お母さんはとっても誇らしいわ。じゃあ、今日のお話しよ。今日のお話は、大爆殺神ダイナマイトについてよ』
「爆殺しゅゆ! しゅゆ!」
『そう、華火の大好きなヒーローの名前ね』
「ヒーロー!?」
「物騒な名前ね。アニメか何か?」
『大爆殺神ダイナマイトは、その学生時代、強い力と心を持っていたから、ヴィランに狙われて攫われたの。その時、ヴィランは愚かにもこう思っていたわ。ダイナマイトは、ヴィランに寝返ると』
「爆殺しゅゆ!!」
『華火と同じ個性でしょ? 従うわけがないじゃん。死んだって折れない』
『絶対ありえません』
『そう、そうよ。大爆殺神ダイナマイトは確かに乱暴だったけれど、その胸に燃える正義の炎は、決して誰にもかき消すことはできないの。何故なら、大爆殺神ダイナマイトはヒーローだから。でも、大爆殺神ダイナマイトにも落ち度はあるわ。それは、一度とはいえヴィランに敗れたと言うこと。ヒーローは決して破れてはならないの。もちろん、ヒーローだって、人間よ。ヒーローにも心の弱さはあり、純粋に能力の弱さがあって、限界がある。それでも、ヒーローは決して負けてはならないの。そこで、今日の問題を出すわ。強大なヴィランが襲ってきた時、貴方達ならどうするか。しっかり考えてちょうだい』
『そう、力を振るっていいのは呪霊とヴィラン、それに志を同じくするヒーローに対してだけよ。それでは最後にプラスウルトラ!』
「プラスウルトラ!」
『『プラスウルトラ!』』
ヒーローの授業である。真希と真依は一体どんな教育をしているのかと宇宙を背負ったが、この授業で華火のことはわかった気がした。なんだかすごくズレた教育ではあるが、情操教育もしていると言うのなら不満はない。
「お前、ヒーローなら真依の事爆殺すんなよな。真依はヒーローでもヴィランでもねーぞ」
「わかった」
その日から、なんとなく真依と真希もお話を一緒に聞くようになったのだった。
一方、宇宙は途方に暮れていた。
「4級術師に1級呪霊をぶつける鬼畜がいるらしい。やはり私は命を狙われているのか……」
「全然余裕じゃん。今までが等級違いだっつの」
「そうでもないですよ。あくまでも呪力は四級くらいしかないから、ブラックホールに呪霊溜めすぎると何が起こるかわからないし。一度掃除したい……」
「ブラックホールの中身あるのかい?」
「一応吸う時に分解するのだけど、さっき言ったように呪力はないから殺せないのよ。中身はホワイトホールで出せるし、一度綺麗にしちゃいたいよね。なんか影響あっても嫌だし」
「私、手伝おうか? 掃除。呪霊を集めて来てくれるなら助かる」
「仕方ねーな。俺も手伝ってやるよ」
そういうわけで私は馬車馬のごとく働かされはじめていた。
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