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さの1が戻ってくるまで、お茶会である。
七海、五条悟、すの1、なの1、なの2、並行世界の伊地知、灰原、あと気配を消して伊地知がお茶を飲んでいた。
なお、五条悟の手には伊地知手製の報告書がある。一ヶ月も封印されていたのだ。報告書は膨大だった。
「式神ってさ。作った奴に従うの?」
「まさか。衝撃を与えると土になる以外はその人そのものですよ」
その事は、伊地知は大いに主張した。五条さんを無理やりいう事聞かせてるという事になってしまえば大事である。ここは誤解のないようにしておきたかった。
「まあ、言っても信じてもらえないかもだけれどね。物理的な制限はなくても、やっぱり作られたモノだから、人間には従わないといけないのかなって引け目みたいなのはかなりあるし。反乱は起こせないわけじゃないけど、精神的にハードル高いよね」
「分かります」
「こう、従わなくてはいけないのではないか、という心理的圧迫はありますね」
「その割に、なの1さんもなの2さんも自由ですよね」
残業時間のことで物申されてる七海はため息をつく。気持ちはわかるけども。
「すの1、だっけ。番号で呼ばれてさ、伊地知なんかに使われて良いわけ? そんなにAFOが怖い?」
「んー。AFOに従うのは、もちろん思う所あるよ。悟はそんな気にしてないみたいだけど、私は正直、すごく気になるかな……。でも、AFOが上層部を乗っ取ったのって、私と悟の心配してくれたのが原因なんだよね。学生なのに働かされ過ぎなんじゃないかって」
「は? そんなんで上層部乗っ取ったの?」
「いや、直接的な原因は、私と悟が離反して、秘匿死刑の判決が降った時かな。もう、上層部、AFOとの約束破りまくりだったからさ。ここまでして、ここまで約束を破ったら、どうしても問題ないねって。確かに縛りではなかったけど、縛りを破ったのと同程度の代償は払わせるって言ってたし、実際払わせたかな」
あまりいい思い出ではないらしく、すの1は顔を顰めた。
「僕が離反もびっくりだけど、約束って? 過労死するほど働かせるなとか?」
「似たようなものかな。個性……AFOが貸与する力には人格が宿っていて、乗っ取られちゃう事もあるんだよ。伊地知が使ってる個性も、多重人格を誘発する、かなりデメリットの重い個性でね。それをちゃんと使える伊地知は、それなりに有能ってこと。で、個性のない世界でも離反起こしてた私はともかく、悟は完全に個性に乗っ取られちゃってたんだろうね。テープの個性は、独占欲や束縛したいって心が凄く強くなるんだ。とにかく、個性に乗っ取られないようにメンタルケアをする事と、個性の衝動に負けちゃった場合は犯罪じゃなく個性「事故」として処理する事、個性を譲渡している間は死なさないよう最大限の努力をする事、個性持ちの子供が生まれたらレンタルした個性か、子供の個性を返却する事、上層部、全部破っててね。でまあ、AFO全力の個性回収と蹂躙が行われたわけだ。私と悟は、上層部の約束の違反と創造主である事、オリジナルの秘匿死刑の危機ってことで逆らえなくてね。AFOと一緒にオリジナルと上層部打倒して、AFOが上層部の上について、今に至る、と」
「伊地知ができることが僕にはできなかったわけ?」
「そういう言い方は良くないよ、悟。まあ、そうなんだけど」
「すの1さん、言い方」
「悟に捕まった時、すごく怖かったんだよ。まさか個性に乗っ取られてるとは思わないからさ。悟が狂ったって。個性事故とはいえ、これぐらいは言わせて欲しいかな」
「甘く見てたら完全に侵食されてしまったパターンですね。私の個性の衝動は明確で返って律しやすいですし。個性を抑えるのは独特の感覚ですから、それが苦手でも恥じる必要はないですよ」
「無数の術式を持っていて、しかも与えたり奪ったりできるという事ですか?」
「そう。彼女が凄いのは認める。認めるよ。でも、彼女、一般出で非術師だからさ。どうしても、関係ないじゃないかって思ってしまうんだよね」
「はあ!?」
「AFOさんて、術者ではなく、超能力者なんですよ。彼女本人は自身の異能を個性と呼んでますが。そんなわけで、根強い反対派閥はいます。AFOに今抜けられるととても困るので目立った反発はないですが……」
「悟を後釜に据えようって動きもあったけど、悟、現状に満足しちゃってるしねー。見事にキバ抜かれちゃって。AFOも私達が大丈夫そうなら手を引くって言ってくれてるんだけど、AFOからしたら危なっかしすぎるらしくてね。呪術界。余計なお世話だけど」
「色々誰も幸せに慣れないフラストレーションが蓄積されてますよね。それでも前の状況よりはマシなんですが」
「そっちの僕、幸せそうね。個性のレンタル、僕もしてみたいかなー」
「平和そうなのは単純に羨ましいです」
五条と七海がいう。
「うーん。並行世界にくるの大変なので、個性の取り立てを考えると、諦めて欲しいですねー」
灰原は苦笑する。
「テープの個性貰って、問題起こしてんだよね? 今の個性何?」
「それが、それでもテープの個性が使いやすくて、メンタルケア受けつつ大体テープの個性使ってます」
「さの1さんがやたらと人にベタベタするのはその為ですか」
「そうです。あれは個性の副作用で五条さんの意思ではないので、スルーしてあげてください」
「僕のコピーも作ってよ。デメリットあるにしても便利そう。仕事が三分の一になるわけでしょ?」
この時、スルッと三分の一、という言葉が出てきたことで伊地知は安堵した。コピーに全て押し付けるわけではない。一方この世界の伊地知は胃を痛めている。人手不足を鑑みて反対は出来ない。でも苦労するのは間違いなく伊地知である。
「それぐらいは構いませんが、従ってくれるわけではないので、反乱に気をつけてくださいね。あと、人権には配慮してください。衝撃を受けると死ぬとはいえ、一個の人格ですから」
「OK」
さの1が帰ってきて、ごの1、ごの2が増えて。
伊地知と灰原は、帰還する事とした。
この世界の人々が心配ではあるが、最強を3倍にしたので世界は守られるだろう。
扉を開けると、五条悟と夏油傑がいた。オリジナル様である。
「伊地知ー! AFOが手伝う許可くれたから、俺も手伝う! さの1すの1は帰還して七海の手伝いね! AFOも顔出すってさ!」
「アフォのいない世界に興味があるね」
「傑! め! あ、伊地知。ついでに護衛もしてやんよ。お前が個性戻さないで死ぬと僕が強制労働5年になるし」
「だったら帰って個性返却させてもらうとか……!」
「アフォ忙しいんだよ」
「傑!」
「それは助かるよ! ようこそ、地獄へ♡」
七海と伊地知は、悟が増殖しまくったことに静かに胃を痛めていた。
活発化しかけていた呪詛師と呪霊は完全に沈黙した。