NPCを作成しなかった至高の一人   作:主義

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転生

最近は忙しくて昔のようにユグドラシルにログインをする事が出来なくなってしまっていた。元々、ボクが所属しているギルドはリアル優先のギルドなのでこうなってしまう事も多々ある。ボクはまだ辞めてはいないがボク以外には辞めてしまった者も多い。それぞれがそれぞれの事情を抱えているのだから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

 

 

 

今では皆が集まってNPCを作った事なども懐かしい思い出だ。

引退していった人たちもリアルではたまに会ったりすることもあったりするが前のようにアバター同士ではなく面路向かって会うと何か違う感じを憶えてしまう。

 

 

今日はユグドラシルのサービス終了の日。正直な事を言えば仕事の忙しさもあったがそれ以上に後ろめたさがあってログインする事を躊躇っていた。ボクはギルド長であるモモンさんがずっとログインしている事を知っていた。ボクが仕事で忙しくなってからもログインして頑張っていた事を知っている。皆が帰る場所を前と変わらぬようにするために。モモンさんは優しいからボクたちに怒りの矛先を向けても口にする事はしない。それは彼とも長い付き合いになるのだから分かる。だから最後にお礼と謝罪をして全てを終わりにしようと考えていた。

 

 

 

だからサービス終了の日である今日はマネージャーさんに言って無理言って早く帰れるようにしてもらった。なのにいざログインする事が出来るようになると躊躇ってしまうのは何故なのだろう。

そして意を決してやっとボクはログインに踏み切る事が出来た。

 

 

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ボクが転移するとその場所にはヘロヘロさんとモモンさんの二人が座って話していた。まだ最盛期の頃のナザリック地下大墳墓は全ての席が埋まる席も少なくなかった。だけど今では多くある席の中で三席しか埋まっていない。なんか本当にここも終わるんだなと感じさせられる。

 

 

モモンさんはボクに気付いて挨拶をしてくれた。

 

 

 

「あ、フィストさん、お久し振りですね」

 

 

「はい、お久し振りです。モモンさん、ヘロヘロさん」

 

 

「お久し振りです。フィストさん」

 

 

 

ヘロヘロさんはブラック企業で仕事しているようで体はボロボロ。それが反映されているけではないのだろうが…反映されているんじゃないかと思ってしまったりする。

 

 

お互いに他愛もないような話をしたりしているとあっという間に十分以上の時間が流れていた。ヘロヘロさんとはほぼ二年半ぶりに会話を交わした。モモンさんとはリアルではたまに会っていたけどアバターを通して会うのはヘロヘロさんと同じで二年半ぶり。

やっぱり昔の仲間と言葉を交わすのは良いものですね。リアルで言葉を交わすのも良いですけどアバターのまんまで言葉を交わす方がやっぱりいいですね。

 

 

ボクは周りを見渡して気付きましたが…二年前と変わりが全くない。二年も経過したんだから何か変わっているのかもと思ったりもしたけど何も変わっていなかった。いくらモモンさんが保存してくれていたとはいえやっぱり少しは変わっているだろうと思っていたりしたけど。

 

 

「この場所に来るのも二年振りぐらいなのに前に来た時と何にも変わっていませんね」

 

 

「本当にそうですね、これもモモンさんがここを維持してくれたからですね」

 

 

「ここは皆で作り上げた場所ですから…」

 

モモンさんは少し歯切れが悪そうに返答した。

 

 

 

 

 

ヘロヘロさんは目をこすりながら言った。

 

「そろそろ、限界なので」

 

 

「あ、はい。来ていただきありがとうございました!!」

 

 

そしてヘロヘロさんが落ちていくのを見届けてボクとモモンさんの二人だけが残された。

 

 

 

「モモンさんはどうされるんですか?」

 

 

「私はサービス終了まで居ようと思っています。フィストさんは?」

 

 

「私も今日はサービス終了まで居ようと思っています。明日の仕事もそのために午後からにしてもらっていますから」

 

 

もうこの時間でログインして来ない感じなら他の人は来そうにないですね。茶釜さんは来てくれると思ったんですが。前に会った時も仕事が忙しいと言っていましたから仕方ないですね。

 

 

「あの、モモンさん」

 

 

「はい?」

 

 

「今まで本当にありがとうございました!!そして本当にスミマセンでした!!二年近く全くログイン出来なくて、ナザリックをモモンさんにずっとお任せしてしまいました」

 

 

 

 

僕は頭を下げてモモンさんに言った。こんな事でモモンさんは全てを許してくれるとは考えていません。それでも謝罪とお礼を言わない事には何も始まらない。

 

 

「え……頭を上げてくださいよ、フィストさん。ボクはギルド長として当然の事をしただけですから」

 

 

もっと責められてり、怒られたりするかと思ったらモモンさんはとても優しい声でボクに語り掛けるように言った。本当にモモンさんは優しすぎますね。ギルドの中でも一番ギルド想いでギルドを愛していたと言ってもいいモモンさんだからこそ、そんな事が言えるのでしょうね。普通の人だったら怒っていてもおかしくないのに…

 

 

 

その後もモモンさんと色々と話をした。久し振りの二人きりで話だったので自分の現状やギルドの事など色々と話した。

 

 

本当はもっとモモンさんとの会話を楽しみたかったのだが…ボクにはもう一つの目的があったのを思い出した。

 

 

 

「あの、モモンさん。少し第六階層に行ってきても良いですか?」

 

 

「第六階層ですか?」

 

 

「はい、最後にあの子たちに会っておきたいと思いまして。他のNPCたちにも一言ぐらいは言ってあげたいんですがあの子たちには一番言いたいんです」

 

 

一番思入れ深いあの子たちに何も言わずにここを去るのは……嫌ですから。

 

 

 

「ああ、確かフィストさんと茶釜さんはかなり仲が良かったですもんね。フィストさんにはNPCの作成やナザリックの運営で色々と私達も手伝ってもらっていましたしね。本当にあの時は助かりましたね」

 

 

「ボクはほんの少しだけ皆さんのお手伝いをしただけで大したことはしていませんよ。後、茶釜さんとは仲が良いと言っていいのか分かりませんが今でも交流は続いていますね」

 

元々ボクは唯一ギルドの中でボクだけが自分だけのNPCを作っていない。それには色々と理由はありますが一番は作る暇がなかったからかな。頭の中ではこんなNPCを作りたいなとかはあったけど何かとボクは相談されることが多かったですよね。正直、ナザリックのほとんどのNPCの作成に携わったんじゃないかと思ってしまうほどなんだよね。そんな事を言ったら他の人に怒られてしまうかもしれませんけどね。

 

 

他のNPCの作成も手伝ったりしたが一番手伝ったのはあの双子の作成。本当に茶釜さんには色々とこきを使われた思い出しかないですね。

 

 

 

「行ってあげてください。私は玉座の間に居ますので」

 

 

 

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第六階層

 

 

第六階層のモチーフはジャングル。地下だと思えないほどに美しいジャングル。作っている時は必至になっていて分からなかった事も今になってみれば気付きますね。そして闘技場の中央に金髪の双子のエルフが佇んでいた。僕は近くに行き、久し振りに彼と彼女の顔をじっくりと見た。

 

 

とても顔立ちは整っていて可愛い。一つオカシイ事があるとすれば服装が真逆というだけかな。ボクは普通の服装にすれば良いと思ったがどうやら茶釜さんにはこだわりがあるらしく変わらなかっただよね。作成をするのにはかなりの時間を有したがそれ以上に双子が誕生した時の喜びは勝るものだったと今でも記憶している。

 

 

 

「今までよくここを守ってくれたね。本当にありがとう!君たちを作った茶釜さんも君たちの事をとても愛している。ボクも勿論君たちを愛している。だから本当にありがとう」

 

 

目の前の金髪の双子は絶対に返事する事はないがそれでも言わずにいられない。ボクも茶釜さんも二年という長い期間、この子たちに会いに来ることをしてこなかった。それは本当に悪いと思っている。決して忘れていたわけではないが…仕事の忙しさもあって会いに行くことをしてこなかった。会いに来なかったのだから何であっても同じことかな。

 

「もっと会いにくれば良かったな……」

 

そんな事を考えながら双子を見つめていると…サービス終了まで一分に迫っていた。

 

 

 

 

「モモンさん、どうやらそちらには行けなそうです」

 

 

本当は双子に別れを言って玉座の間に戻る予定だったけど…こんな時間になってしまったのでここで最後を見届ける事にしよう。

 

 

 

本当は他のNPCにも作成に携わった一人として謝罪を言いたかった。もうこの世界に二度と来ることはないのだから。今までモモンさん以外の人はあんまりここに来ることは無かった。それぞれがリアルで忙しいため。だがNPCの創作に携わった一人として責任を感じている。NPCに感情はないだろうし、ボイスがあるわけでもない。だとしても最後に言っておきたかった。

 

 

 

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ついに最後だ。自分の瞼を閉じて最後の時を待った。

 

 

 

 

 

 

「現実に帰されない」

 

そしてそれから数分が経っても現実に戻されることはなかった。運営の方が何だかのトラブルに巻き込まれたしてもそれなら連絡が来てもおかしくないはずだ。それにログアウトすら出来ないとなるとさすがにオカシくないかな。

一番の驚きは目の前にいる金髪の双子がボクの方を心配そうな顔を浮かべながらこちらを向いていて言葉を普通に発しているということなんだよね。

 

 

 

「どうされたのですか!??」

 

 

「ど、どう…されたんですか…?」

 

 

「いや、何でもないよ。心配を掛けて悪かったね。アウラ、マーレ」

 

 

 

ボクは二人の頭を優しく撫でながら答えた。するとアウラとマーレは少し顔を赤らめながら笑みを浮かべていた。

NPCがここまで感情豊かで声を発するなんてことは今まで一度たりともなかった。それにそんな設定はなかったと思うんだけどな。

 

今、こんな事を考える時ではないのは分かっているけど…この普通に話しているアウラとマーレを見たら茶釜さんは嬉しさのあまり発狂してしまうかもしれませんね。

 

 

 

まずは自分の状況を理解するためにもモモンさんと会うのが先決ですね。メッセージでやり取りをする事も可能だがこれほどの事態だ。面と向かって話し合った方が良いと思うしね。

ボクが第六階層の出口に向かうと何故か後ろから二人分の足音が聞こえてくる。後ろを振り返るとそこには…アウラとマーレが付いて来ていた。

 

 

「どうしたんだい?」

 

 

「あの……言いにくいのですが…」

 

 

「何かな?」

 

 

「付いて行っても宜しいですか!????」

 

 

「つ、ついていきたいです。ご迷惑でなければ…ですが」

 

 

 

二人がほぼ同時に同じことを口にした。まさかNPCが自らの意志を口にするとは……本当に一体どうなっているんですかね。頭を抱えてしまう…本当に。

 

 

 

「良いよ。それじゃ一緒に行こうか」

 

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