この世界に飛ばされて数日が経過したが未だにボクたちはこの訳の分からない世界にいる。今の段階で濃厚なのはナザリック地下大墳墓がどこかに転移してしまったという可能性。ナザリックの周りは今、草原らしいのでナザリックごと転移してしまった可能性は確かに高いんだよね。
あ、あと一つ発見した事があったんでした。どうやらボクたちは人間をコロスという行為に対しての抵抗感が極めて少なくなっているようだ。ボクはカルマ値が善なので抵抗感がない訳ではないがモモンさんの方はかなりマズイかな。カルネ村という村がスレイン法国の騎士たちに襲われているのを見ている時もモモンさんは助けようとはすぐには思わなかったらしい。ボクはその現場に居なかったので詳しい事はあんまり分からないけど本人から聞く限りはそんな感じだったらしいだよね。
まあ、どんな形であれカルネ村という村は全滅を免れたのだから良かったと思うべきかもしれませんね。人が悲しむのを見るのは良い気はしませんからね。
そしてボクは今初めてカルネ村に訪問しているのであった。ナザリックの中でずっと居るのにもさすがに飽きてしまっていたので外に出ようと思ってここにいる。最初は一人で訪問したかったんですけど…NPCたちがそれを許してくれる感じではなかった。特にアウラやマーレがお供にして欲しいとボクに積極的に進言していたんですよね。あの子たちってあんなに積極的なキャラクターに設定したかなと考え込んでしまった。そして最終的にはプレアデスのシズを選ぶことにした。
ボクの三歩以上後ろを静かに歩いているシズに声を掛けた。
「シズ。付き合わせてしまってごめんね」
「…嬉しい…です。」
「それなら良かった。迷惑になっていないのであれば」
正直なところアウラやマーレの勢いは凄かったけど…彼らには守護者という役職がある。今は未知の地という事もあるので守護者たちをいたずらに外に出すのは今の状況では最善とは言えませんからね。そうなると守護者以外でとなる…普通のメイドに付いて来てもらおうと歩いていると目の前からプレアデスのシズが歩いて来たので誘ってしまった。そして今の状況になっている。
シズには悪い事をしてしまったかな。シズは「嬉しい」と言ってくれては居ますがどうやらボクたちからのお願いは全て命令として受け取ってしまうようで断る事を絶対にしないんだよね。だから今回も命令だと思って嫌々付いてきているのかもしれないよね。
「それにしても酷い惨状だね…家らしきものは半壊、そして辺りに血がまだ散乱していますね。まあ襲われてからまだ時間が経っていないから仕方ない。それに大事な人を失った悲しみは簡単に忘れられるようなものではないだろうしね」
村を見渡していると…そんなボクを不審に思ったのか村の代表者らしき人がこちらに歩みを進めてきた。言い忘れていましたが、ボクもナザリックに所属しているだけあって異形種。体は犬のように毛で覆われていて全身を包帯で巻かれている。尻尾や耳も存在する。顔も包帯で巻かれている。そんな姿でカルネ村に行ったら恐れられるのは目に見ている。だからボクは全身を人間に似せることにした。顔はリアルの時の自分の顔をモチーフにして作った。
「この村に何か用ですか?」
「いや、アインズ・ウール・ゴウンさんの友人でアインズ様ならこの村のことを聞き見に来たんですよ。色々とあって大変でしょうから手伝えることがありましたら手伝いましょうか?」
元々はこの村の状況を見るために来ましたが…ここまで酷い惨状なのであれば手伝う事もやぶさかではない。NPCは人間に対して良いイメージを持っていない感じなのでシズは手伝うのには否定系かもと思って見てみるとシズは無表情でこちらを見ていた。
これは一体どっちなんだろうか…
「…いえいえ、ゴーン様のご友人に手伝わせるわけには「そんな事は気にしなくても大丈夫ですよ。これはボクが手伝いと思ったから手伝わせてくださいと言っているだけですから」」
「そうですか……それならお言葉に甘えてお手伝いをお願いできますでしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ、シズはここで待っていて大丈夫だよ」
「いえ、そういうわけにはいきません」
「だけど服が汚れてしまうかもしれないよ。それにこれはボクが個人的に手伝うだけでシズまで手伝う必要はないんだよ」
「フィスト様がやるというのなら私はやる」
「そうかい?それならこの事を秘密にしておいてね。ボクとシズだけの秘密にね」
ボクは自分の口元に人差し指を当てながら言った。自分で判断してやったがやっぱり恥ずかしいですね。現実でやるより緊張するね。現実では仕事柄色々な事をやったけど……そのどれよりも恥ずかしい。
人間の村の片付けを手伝ったことが他のNPCに漏れたりすると色々と面倒な事になりそうだね。シズはNPCの中でも人間に対する憎悪のようなものを持っていないようだから大丈夫だと思うしね。
そしてボクは視線をシズから目の前にいる村人の人に視線を移した。
普段は無表情を付き通している自動人形の顔が赤く染まっていることに気付いている者は誰もいなかった。