そういうわけなので予想を裏切ってしまって、本当に申し訳ない(メタルマン)
《お知らせ》
本話において温泉内の描写があるのですが、投稿者は本格的♂な温泉旅館というものに行ったことがないため造りがさっぱり分かりません。精々が近所の銭湯です。一応ネットで調べたりもしましたが、温泉旅行に行ったことのある兄貴姉貴からしたら謎の描写になっているかもしれません。その時は温かい目で見守って下さい。温泉だけに。(エや下)
11/23 誤字修正しました。太陽のガリ茶兄貴、でぃせんと兄貴ご報告ありがとナス!
11/24 誤字修正しました。phodra兄貴ご報告ありがとナス!
ガラガラと音を立てる戸をくぐれば、そこはこれぞ古民家と言わんばかりの内装。木の温かみを感じる(語彙力)
三好警部補が「戻りましたー」と奥の方に声をかけると、そちらの方からパタパタと着物姿の女性が駆けて来た。
橙色を基調とした着物に、なんだろう、朱色っぽい羽織を着た若い女性。黒の長い髪を一つにまとめて前の方に垂らしている。
:あれじゃん、アニメとかでタヒぬ母親の髪型じゃん
:草
───なんてこと言うんですか⁉︎
「ありがとうございます三好さん、無理を聞いていただいて」
「いいんですよ、最近、身体も鈍ってたところなので」
「そうでしたか、ありがとうございます。えーと、こちらの方は?」
「あ、予約してた佐倉でs」
「佐倉さん!」(食い気味)
私の名前を聞いた瞬間、女性の顔がぱあっと明るくなった。ただの予約客にする反応としては少し様子がおかしいように思える。
「え、えと?」
「‥‥あっ、も、申し訳ありません。お部屋にご案内致しますね。お荷物お持ちします。こちらへどうぞ」
「里見さん、食材はどこに置けばいいです?」
「あ、そこに置いておいて頂ければ私が後で持っていきます」
この人里見って言うんだぁと思いながら着いていく。
階段を上がり2階へ。案内されたのは『稲荷の間』。
近くに稲荷神社でもあるのだろうか。
中は、まあ至って普通。でけえテーブルに座椅子、テレビ、小ちゃい冷蔵庫、電気ポット、生八ツ橋が入ったかご、旅館とかによくある窓際の謎スペース。
だが景色がいい。紅葉には少し遅いかなと思っていたが、山中ということもありまだ十分に色づいた山々を楽しめる。時間が遅いせいかちょっと暗いが、まあ許容範囲だ。
:うわあすっごい綺麗‥‥
:やべえ、前世思い出して泣けてきた
:思えば遠くへ来たものだ‥
:無性に旅館行きたくなってきた。せや作ったろ!!!(ファンタジー世界並感)
:いいぞもっとやれ
「こちらがお部屋になります。部屋の内鍵は、このねじ込み鍵をお使い下さい。貴重品をお持ちでしたら、戸棚の中の金庫をご利用下さい」
「あ、分かりました」
「脱衣所は1階で、温泉はその奥にございます。どうぞごゆるりと」
里見さんはそう伝えると、戸を閉めて去っていった。
───さて、荷物整理は今からするとして、それから何をしましょう
:決めてなかったんか
:えぇ‥?(困惑)
:なんか旅行日程に殆ど触れねえなと思ってたらそういうことかよ
:行き当たりばったり旅か、ええやん!(肯定)
:周りになんかあったら行き当たりばったりでも良かったけどなぁ
:周りになんかあるんかここ
:来た道の周りには何もありませんでしたね‥‥
スレ民に聞かれて、スマホのマップを開く。
───えーーーーーーーーー‥‥‥周囲15km圏内は名前付きのスポットないですね
:草
:草
:草
:ていうか今何時?
───時間ですか?もうだいぶ暗いんで‥‥ああやっぱり、16時過ぎですね。
:山ン中だから暗くなるのも早えか
:これアネゴが来なかったら割と大変な事になっていたのでは?
:お気づきになりましたか。
:めぐねえは先に風呂派?飯派?
───いやまあ風呂派ですけど、こういう旅館って普通先に風呂じゃないです?個人的な偏見ですけど。
:そうかな?そうかも?
:‥‥‥つまり?
:めぐねえのサービスシーンですか?
:▂▅▇█▓▒(’ω’)▒▓█▇▅▂
:(☝ ՞ਊ ՞)☝キィェァァァァァァァァァァwww
:(^ω^ ≡ ^ω^)おっおっおっ
───感覚共有モードは基本一人称視点ですね?
:え?
:‥‥‥
:‥‥‥
:‥‥‥あっ
:い、いや、めぐねえが見る方向を変えてくれさえすれば‥‥
───いつから私が不特定多数に裸を見られる事を許すと思っていた?
:なん‥‥‥だと‥‥‥?
───じゃあな!飯になったら帰ってきてやるよ!!!
:あああああああああああ!!!!!!!!!
:お前!お前お前お前!!!
:鬼!悪魔!めぐねえ!
:どう゛じでぞん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!!!!
阿鼻叫喚のスレから一時抜け、着替えと浴衣を持って脱衣所へと向かう。
今気づいたが、今世に生まれてから初めての本格的な温泉だ。正直すっげえ楽しみなの。Foo↑
足取り軽く脱衣所の暖簾をくぐれば、服を入れる籠とかが入った年季の入った棚。型は古いがよく清掃された洗面台。一目でだいぶ前の型式だと分かる自動販売機。
なんかありとあらゆるものが古いのは気になるが、不思議と居心地はいい。強いて言うなら祖父母とか親戚の家にいる気分。
不思議な気分に至りながら服を脱ぎ、タオルを持ってガラリとガラス戸を開ければ、石と木を基調としたよくある感じの露天風呂だった。
「ん?」
その露天風呂に先客がいた。
湯に浸かり、だらりと手と足を投げ出している。
その傍らには、なぜか湯に浮かぶお盆とその上の徳利とお猪口。
誰だ、誰もが一度はしてみたいけど絶対迷惑になるからやろうとしない事を堂々としてるのは。*1
「ん〜?ああ、やっと来たかオフィサー。どうだい、一緒に一杯」
アンタかい!!!
───
──────
グビッ
「「あ゛ぁ゛^〜‥‥」」
フワッと広がる米の旨味と甘味があぁ^〜たまらねえぜ!!!普段は缶ビールか酎ハイしか飲まないが、日本酒も案外悪くない。帰りに一升瓶何本か買って帰ろうかな‥‥*2
「そういえば警部補、腕の具合はどうなんですか?」
「ん?ああ、ここに来てからすっかり良くなったよ。ほら」
警部補が左腕を挙げる。
そこには、警視庁大規模襲撃事件*3で被弾した痕がくっきり残っていた。
「ここに来てから、ですか?」
「そうそう。病院に行っててもなかなか治りが遅くてさ、困ったなぁって思ってたところにここのチラシが届いたのさ。ここの湯と女将さんのマッサージでだいぶ良くなった」
「へえ、温泉はなんとなく分かりますけど、マッサージですか」
「そうそう。いっつも寝落ちしちゃうからどんなマッサージなのか見れてないんだけどさ、もう効果覿面。多分数日中には警視庁に戻れるよ、ほら、こんなもんだ」
警部補はそう言うと湯から上がり、うつ伏せの体勢になってからバッと床を蹴り、左腕だけで逆立ちを始めた。
ポカンとしていると、それを見た逆さの警部補がニヤリと笑い、今度はパッと跳ねると親指だけで立ち始めた。
!!!???(混乱)
「よっと。いやあ、こんな感じに身体が軽くてさ」
「身体が軽いとかそんなレベルじゃないでしょう⁉︎どこの中国雑技団ですか⁉︎」
「へへへ」
「照れるな!」
警部補が嬉しそうに顔を赤らめ───いや、湯に入ってたし酒も飲んでるから赤いのそれのせいか。
危ない危ない、先輩に惚れる所だっt─────────
「‥‥‥‥」
「‥‥オフィサー?どうした、空なんて見つめて」
───はーい集合
:くそうくそう‥‥
:でも感じちゃうビクンビクン
:⁉︎
:⁉︎
:戻ってきよった
:あってめえ!!!
:よくもノコノコと帰ってきやがったなぁ!!!飯はなんだコラ!!!見せろ!!!
───これで許せ*4
:?
:なんだこの湯気
:‥‥‥誰かいるぞ、これは‥‥アネゴか⁉︎
:(Ⅰ)<素晴らしい‥‥素晴らしい‥‥
:へぇ⁉︎お、温泉ですかぁ⁉︎
:エッッッッッッッッッッッッッッッ
:ああ畜生湯気がいい仕事しやがるッッッ!!!だがこれでいいッ!!!
───これが主題じゃ無いんですよ。アレですよアレ。アレなーんだ
:アレ?
:空を見上げて‥‥‥なんかいるな
:‥‥‥音も聞こえるな
:音と聞いて(シュタッ
:エンジン音ソムリエ⁉︎
:人選が的確すぎて草
:むむむ‥‥これモーター音やろ。重なって聞こえるから4つぐらいモーターが回ってるな。あと空気を切り裂く音も聞こえる。プロペラも4つだな
:モーターとプロペラが4つ、来るぞ遊馬!!!
:プロペラが4つ‥‥ドローンか⁉︎
:ドローン‥‥女湯の直上‥‥あっ(察し)
:許 せ ん
:なんて羨まゲフンゲフンけしからん!
:叩き落とせ!!!!!!そしてデータを回収するんだ!!!
:俺らのめぐねえとアネゴの裸を盗撮しやがってんなぁ⁉︎
───おまいらのじゃ無いんだよなあ
「おーい、オフィサー?おーい?」
「警部補って直上円盤投げできますか?」
「あ、戻ってきた。‥‥円盤投げ?直上?」
「ほらアレ」
「‥‥‥ハハッ、そういう事か、OK、見ときな」
「はいお盆」
警部補はまるで獲物を狙う獣のような笑顔を浮かべると、渡したお盆を受け取り、ぐっと構え───腕を鞭のようにしならせて投げた。
射出(直喩)された木製漆塗りのお盆はシンカーの軌道を描き、
<バキッ
「よしっ」
「ヒューッ!」
やはり警部補が人間を辞め始めている気がするがきっと気のせいだろう。
───
──────
同時刻 近くの山中
温泉からは陰になって見えない岩の陰。
そこに、何やら白を基調とした変わった形の服を着た男が2人座り込んでいた。
彼らの視線の先には、《Not Connect》と表示されたモニターと操作盤。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥たかだか数百円のお盆にウチの教団技術部が誇るドローンが撃ち落とされるとかこれマジ?」
「やべえよやべえよ‥‥データ回収してねえじゃん」
「‥‥どう報告する?」
「ホルス様に嘘が通じるわけないんだよなぁ」
「正直に言うしかないかぁ‥‥」
「また飯減らされるだろうなぁ」
「いやだなぁ」
「ああ、いやだいやだ」
2人の男は、いやだいやだ、と呟きながらモニターと操作盤を持ち上げ、闇の中へと消えていった。
1㍑兄貴から素敵なファンアートを頂きました!嬉しすぎて2、3分ぐらい口元緩んでニヤニヤしてました(実話)
【挿絵表示】
1㍑兄貴、感想欄で挿絵の投稿の仕方を教えてくれた兄貴姉貴達、大変ありがとうございました!