一般やられ役警官に転生した転生者の憂鬱   作:運輸省

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コロナから復活したので初投稿です。
あけましておめでとうございます(20日遅れ)

《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
アールス、貧弱な自分、オーレリア軍、某氏 
ありがとナス!


【朗報】銀髪美人とお茶してきたわwww(3)

「お前に護衛をつけることになった」

 

「護衛ですか」

 

 

一課長の執務室に呼ばれためぐねえは、開口一番そんな事を言われた。

 

 

「ああ。佐倉よ、お前、例の組織がどれだけでかいか知ってるか?」

 

 

一課長がそう言って、机の上にマチェットをゴトリと置いた。めぐねえが前にノールック上段後ろ回し蹴りで弾いたアレである。

 

 

「詳しくはちょっと……組対の人が噂程度でしか知らなかったってのは前に三好警部補から聞きましたけど」

 

「だろうな。俺だって昨日初めて存在を知った」

 

「えぇ……(困惑)」

 

「だがな、公安の連中曰く『東京で起きてる大体の事件の裏にはこの組織がいると考えた方が早いぐらいデカい組織』なんだそうだ。その上尻尾を隠すのが上手いと来た」

 

「えっ、なんですかそのラスボスみたいな組織……というか、公安から情報提供ですか?」

 

「ああ。上層部も公安も、今回のお前の件を組織の一端を掴むチャンスと捉えてる。どうも本気みたいだぞ」

 

「私そんなとこから狙われてるんですかたまげたなぁ……」

 

「何たまげてんだ。まあ、護衛と言っても四六時中SPが張り付くわけではない。一応知らせとくってだけだ」

 

「……え、じゃあどんな人が……?」

 

「俺もわからん。そこは機密事項らしい」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

数日後 都内

 

 

 

 

先日、目標(めぐねえ)から反撃を受けて撤退せざるを得なかった殺し屋は、とある雑居ビルの空きオフィスにいた。

狙撃用の穴を空けた窓ガラスからは、東京の道路がよく見える。

 

 

「ヒャッハーーーーーー!!!!!!!」

 

「ああクソ! 誰かあの機関銃を黙らせろ!」

 

 

その道路では、武装集団と警視庁の間で激しい銃撃戦が勃発していた。

もちろん、これは殺し屋の意図した事である。あの武装集団は、殺し屋から金をもらって暴れているのだ。

 

目標が所属する捜査一課強行犯捜査四係が、警視庁においてドンパチの切り札になっている事は百も承知。それならば、呼び寄せた所を狙撃で叩けばいい。あの髪色はよく目立つ。

 

 

《警視庁より文京区坂富警察署管内で発生中の銃撃事件に対応中の各PC。大江戸線春日駅方面から応援が急行中。現着は2分後。現場指揮官は佐倉巡査部長と共同して対処されたし。以上警視庁》

 

 

傍受していた警察無線から目標の来訪が知らされる。

バイポッドを開いた状態で静置していたSAKO TRG-42の薬室に.338 ラプア・マグナム弾を装填する。

この弾であれば、警視庁が採用しているどんな防弾盾やボディーアーマーだろうと貫ける。

……流石に歩兵戦闘車に出てこられると無理だが、貫けばいいのは目標だけだ。大きな問題ではない。

 

 

一つ息をつき、スコープを覗く。

視界の奥、都道301号線を北上───つまりはこの現場に向かう白黒パトカーの車列を発見した。アレの内のどれかに目標がいる。

 

────────────────────────

 

『失礼ですが、何かお探しですか?』

 

────────────────────────

 

「───ッ」

 

 

あの、初遭遇した日の彼女の顔が脳裏に浮かぶ。あの、全てに対して何か別の視点を持っているような、どこか達観した表情。彼女ならば、あるいは───

 

 

 

いや、ダメだ。

 

 

 

希望を持ってしまいそうになるのを、頭を振って抑える。

 

今更この血濡れた手で希望を持ってなんになる。私にそんな資格はないだろう。今はただ、引き金を引く事を考えろ。

 

 

視界では、パトカーから降車した応援の警官が道路に展開している。その中に───

 

 

「(いた)」

 

 

桜色の髪を後ろでまとめた女性刑事。間違いない。目標だ。パトカーで遮蔽をとり、イギリス製のアサルトライフルを発砲している。

 

 

「(目標が今の弾倉を撃ち終えて、装填して、顔を出したらその時が───)」

 

 

 

ふと、嫌な予感がした。

 

 

 

何か間違った方向に突き進んでいるような、気持ち悪い感じ。果たして自分のやっている事は合っているのか。

目標を狙うのをやめ、改めて周囲を偵察する。

 

 

武装集団。

TOY○TAのピックアップトラックに据えられたソ連製の重機関銃、AK47にRPGと、どうやらアラブ戦士の格好で固めてきているようだ。未だ士気は高いが、いずれ打ち破られるだろう。せいぜい暴れてくれ。

 

 

警官隊。

目標が到着した事で一段と動きが良くなったように見える。相変わらず刑事連中は弾薬の相互利用もへったくれもない銃のラインナップだ。銃撃戦を押収品の在庫処分か何かと勘違いしてないか。いや押収品の在庫処分ってなんだ?

 

 

ある程度偵察し終えたが嫌な予感が拭えない。もっと他のところに原因が?

 

 

「(……まあ、さっさと済ませて撤退すればいいか)」

 

 

そう思い直して目標に狙いを定める。

目標は───武装集団に銃剣突撃をしていた。

 

 

 

 

 

 

なんで?

 

 

 

 

 

 

「っ、クソ」

 

 

しかも武装集団側にも腕に覚えのあるバカがいたらしい。銃剣突撃に呼応するように出てきたターバンの男は、シャムシールを抜いて目標と斬り合いを始めたではないか。

双方誤射を恐れたのか、銃声の一切合切が鳴り止んだ。

何やってんだアイツら……?

 

いや、それより、動きが激しすぎて狙えない。

 

 

「(ふぅ…………ここ)」

 

 

それでも、一瞬の隙を突いて引き金を引いた。

炸薬に弾き出された.338 ラプア・マグナム弾は、12月の冷気を切り裂き───

 

 

「ガッ」

 

「ぐぅっ⁉︎」

 

 

やはり男に命中した。

いや、目標も一応倒れたが……

 

 

「(当たってたとしても、一回ターバン野郎に当たったせいで弾の勢いが殺されてるか)」

 

 

実際、道路上でうめいている目標はボディーアーマーを着けている。ターバン男を貫いた弾はそのまま目標のバイタルパートを守るセラミックプレートに命中したのだろう。なんとも運のいい事だ。

 

 

「(次で仕留める)」

 

 

ボルトハンドルを引き、次弾装填。

再び狙いを定め───

 

 

「(……なんで親指を掲げてるんだろ)」

 

 

目標が仰向けになりながら、左腕を空に向け、親指だけを立てるいわゆるサムズアップをしていた。いや、アレは……

 

 

「こっちに向けてる……?」

 

 

いやいやまさか、現場からこのビルまでは数百m離れているのだ。肉眼で見えるわけがない。

気にせず次弾を撃てばそれで済む話。

 

 

 

 

 

ゲホ、よく、撃ってくれました、殺し屋さん》

 

 

 

 

 

側においていた警察無線から、聞き覚えのある声がした。

 

 

「───ッ!!!」

 

 

本能が叫んだ。

ここから逃げろと。

 

ライフルを捨て、横に転がる。

 

 

 

次の瞬間、先ほどまでトリガーを握っていたフィンランド製狙撃銃が突然後ろに弾き飛ばされた。壁に当たって床に落ちるそれは、見るも無惨な姿。

導き出される答えは一つ。

 

 

「(カウンタースナイプ……!)」

 

 

───

──────

 

現場から数百m南 高層ビル屋上 SAT狙撃班

 

「……犯人には命中せず。ライフルは潰した」

 

「マジで? 絶対当たったと思ったんだが」

 

「こっちが発砲した瞬間に横っ飛びで躱してた」

 

「ウッソだろお前www」

 

 

───

──────

 

 

「(全部仕組まれてた……?)」

 

 

窓から身を出さないように、静かに急いで空きオフィスから撤退する。この状況が仕組まれていたと仮定すれば、この空きオフィスに警察が来る可能性もあるということ。

 

 

「(ホントに……恐ろしい)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数週間後 年末 都内 警視庁女性職員寮

 

 

 

先日、日本警察からの思わぬ反撃を受けて撤退せざるを得なかった殺し屋は、黒一色のボディースーツと装備に身を包み、警視庁女性職員寮の屋上にいた。

 

 

「(前回はSATの狙撃手を見つけられなかったのが敗因。無意識に警戒の緩むこの年末年始のタイミングで、暗闇に紛れれば)」

 

 

ある筋の情報*1では同じ所属の警部補と部屋を同じにしているそうだが、所詮インファイトに慣れていない女刑事1人。障害にすらならない。不意を打てれば一瞬だ。

 

屋上にあった給水塔の基礎にロープを固定し、ラペリングで壁を降下していく。目標の部屋は3階。

他の部屋はちらほらと明かりが見えるが、お目当ての部屋は真っ暗のようだ。しかし中にいるのは確認済みである。

 

ベランダに音もなく降り立ち、素早くロープを外す。

窓の鍵は───かかっていない。トラップもなし。

いくらなんでも不用心では? 女殺し屋は警戒レベルを2つ上げた。彼女は知り合いの某紫色の女怪盗と違って賢いのである。

 

カラカラと音を立てて開く窓。

カーテンを手で退けて部屋に侵入する。事前に偵察した限りでは、2人ともこの部屋に布団を敷いて寝ており、定位置は目標が窓側である。サッと行ってサッと喉を切り裂いて───

 

 

「…………!」

 

 

この年の12月31日、低気圧の類は一切なく、年末の夜空には月がデカデカと昇って、打ち上がる花火と一緒にあけましてハッピーニューイヤーと騒ぐ人間達を優しく照らしていた。

 

 

何も、照らされたのが人間だけというわけではない。

 

 

月光と花火の光に照らされたそのあまり大きくない部屋の中央には、『巫女』が佇んでいた。

 

書き間違いではない。

 

『巫女』である。

 

『巫女』の姿をした三好警部補が、抜き身の日本刀を握って佇んでいたのだ。

 

 

 

 

「ッ」

 

 

いや、いることは分かっていた。分かっていたのだ。

だが、殺気というものを一切感じなかった。

この、“まるで情報とは様子が違う”女刑事、あんな殺意丸出しな刀を準備しておきながら殺意の一片たりとも悟らせなかったのだ。

 

女殺し屋は警戒レベルを最大まで引き上げ、サイレンサー付きの自動拳銃とカランビットをCQCスタイルで構えた。

 

 

『───ひれ伏せ

 

 

男と女とも、それ以外のナニかとも取れる声色で発言した三好警部補が、ゆらりと日本刀を上段に構えた。

 

 

 

 

隅田川で打ち上がった花火の光が、日本刀の刃紋の上で揺らめいていた。

 

 

 

 

───

──────

 

 

 

 

534:名無しの転生者

…………

 

535:名無しの転生者

Oh……

 

536:名無しの転生者

おう、誰かなんか言ってくれよ

 

537:名無しの転生者

いや、これは……

 

538:名無しの転生者

何この……何?

 

539:外なる神

何、とな。見ての通り神力を授けた三好じゃが?

 

540:名無しの転生者

見ての通りじゃねえんだわ邪神野郎! 見ろ!

 

541:一般通過現人神

力が溢れる……!

 

542:外なる神

うむ、わらわの目は確かじゃったな!

 

543:名無しの転生者

やかましいわ!

 

544:名無しの転生者

>>541

アネゴ悪堕ちみたいな事言ってて草

 

545:名無しの転生者

当たり前のように至近距離からの拳銃弾斬らんでもろて

 

546:名無しの転生者

殺し屋もようやるでホンマ

 

547:名無しの転生者

つーか、これやっぱアレだよな。前にめぐねえ襲ったっていう銀髪美人

 

548:名無しの転生者

マ?

 

549:名無しの転生者

ああ、確かにこれ銀髪だ

 

550:サラシソムリエ

うーん、これはDカップwww

 

551:名無しの転生者

こいつwww

 

552:名無しの転生者

黒のぴっちりスーツって良いよね……

 

553:名無しの転生者

いい……

 

554:名無しの転生者

誰かアネゴの無双にも触れて差し上げろ?

 

 

 

 

 

───

──────

 

 

 

 

「ぐぅ……ッ!」

 

 

殺し屋はもはや何度目かも分からないまま、膝をついた。

特殊仕様のボディースーツは既にボロボロ。所々に青あざができ、血が滲んでいる。拳銃は既に破壊され、手元に残るのは刃こぼれしたカランビットのみ。

 

そう、この(三好)、真剣を使っておきながら峰打ちしかして来ないのだ。まあ、峰打ちとは言うがそもそも日本刀は鋼鉄の塊。普通にダメージは通る。

 

しかし問題はそこではない。

 

 

 

いつでも殺せるのにそれをして来ない。

 

 

 

その事実が、殺し屋のプライドを傷つけていた。

 

 

立て

 

 

まただ。

 

 

まだ戦えるだろう?

 

 

膝をつく度に、この女は無防備に近づいてきて立てという。

 

 

立て

 

 

ふつふつと。

普段殺している感情が、激情が湧き立ってくる。なんだこのアマ、何様のつもりだ。

 

 

「クソがぁ!!!」

 

 

全神経を正面のクソアマに集中し、痛む体に鞭を打って跳ねるように飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

:アネゴ、もしかしてめぐねえ襲われたの結構気にしてた?

 

 

───いや? そんな事はないよ?

 

 

気絶した殺し屋を見下ろす三好。その姿からは、先ほどの重々しい雰囲気は失われていた。

むしろ、ボロボロになった部屋と家具を見てため息すらついている。

 

 

:ダウト!

:嘘つけ絶対キレてたゾ

 

 

───ホントホント。私嘘つかない

 

 

:ほんとぉ?

:じゃあなんで執拗に日本刀で殺し屋の事ぶん殴ってたんですか?

:ラストアタックなんて脳天振り下ろしだからな

:もはや死んでるのでは?

:生きてるんだなこれが

:かみの ちからって すげー!

 

 

───……とりあえずオフィサーはいるかな?

 

 

:逃げたな(確信)

:いますよー。終わった感じですね?

 

 

───うん。だからSATの人らを連れてきてくれると助かるかな。とにかく連行しよう。

 

 

:了解です。結局これ残業コースですね、はーつっかえ!

:これでひとまずはひと段落かね?

:流石に殺し屋1人捕まえただけじゃ終わらんやろ

 

 

───それでも十分な進歩さ。今までは尻尾すら掴めなかったんだから

 

 

転がるカランビットを蹴飛ばし、近くにあった結束バンドで殺し屋の両手を後ろ手に縛る。

 

 

───そうだ、言い忘れてたよ。

 

 

:なんや?

 

 

───あけましておめでとうございます

 

 

 

 

 

一年が終わり、一年が始まる。

今年もまた、良い年でありますように。

 

 

 

 

*1
某紫「え? 何アンタ淫乱ピンク狙ってんの? ……アンタのとこも大変ねぇ、転職するなら手を貸すわよ?」




めぐねえ
近所の神社で年末警戒中だった

三好
日本刀は近所の古物商で買った

女殺し屋
ばたんきゅー

某紫
最近、下北沢に新しくセーフハウスを作った。散策中にピンク色の髪のJKと遭遇。べ、別に髪色がアイツのと似てるからってビビったわけじゃないし!
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