一般やられ役警官に転生した転生者の憂鬱   作:運輸省

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誤字修正(敬称略)
六四、綾坂 螢人、水上 風月、No.va、りゅうだろう、貧弱な自分、初崎 楪

ありがとナス!

ようやく一区切りつきそうなので初投稿です。


【朗報】銀髪美人とお茶してきたわwww(11)

「ぬわぁ⁉︎」

 

「おい弾抜けてねえかこれ⁉︎」

 

「腐っても防弾盾だぞ⁉︎そう簡単に抜かれてたまるか!!!」

 

 

秘密トンネル内にて組織幹部及びその秘書、合わせて2名と遭遇した長野県警機動隊の1個分隊は苦戦を余儀なくされていた。

 

その大きな要因の一つが、秘書が今まさに発砲しているブルパップ式のアサルトライフル。

ロシアで開発されたそれ───ShAK-12は、使用弾薬12.7×55mm。200mで16mmの鋼板を貫通し、100m以内ではボディーアーマーすら貫通する化け物。

 

対して、長野県機が今回の事案に合わせて各所から必死こいてかき集めたこの防弾盾。

防弾能力をランク付けするNIJ規格で言うところのレベルⅢ。7.62mmフルメタルジャケット弾までなら抗堪可能という物。

……少々物足りないのである。

 

 

「どうしますか」

 

「このまま押せ。この分ならそのうち崩れる」

 

「分かりました」

 

 

ぎゃあぎゃあと喚く長野県機とは対照的に、組織幹部と秘書の2人はただ淡々と、まるで作業でもこなしているかのようにしていた。

 

 

 

 

 

しかし、長野県警機動隊も負けてはいない。

 

 

1972年2月。

あの極寒の軽井沢で、長野県警は、鉄球と放水と催涙ガスと共に山荘を包囲する警視庁機動隊を見ていた。

突入した決死隊には長野県警の機動隊員も含まれていたが、全体的に見ればほんの一部に過ぎない。

言葉は悪いが、長野県警は自らの不備や縄張り意識によって、自らの手で事件を解決する機会を逃したのである。

 

 

もう2度と負けてなるものか。

 

 

あの日から数十年、県警内で言われ続けた言葉である。

 

 

 

 

 

 

「先輩!遊撃車両班が配置についたと報告が!」

 

「やっとか、待ちくたびれたぞ!よし、カウント3でスモーク投擲。スモークが十分に張ったら全力で後ろに向かって走る」

 

「はい、質問いいスか」

 

「言ってみろ」

 

「スモーク関係なく犯人が撃ってきたら?」

 

祈れ

 

「そんなご無体な!」

 

「ガタガタ言ってる暇があったら行くぞ。いいな? 行くぞ? 1、2、3!!!」

 

 

合図とともに機動隊員達がスモークを投擲。転がった幾つかのM18 発煙手榴弾が、濃密な緑色の煙幕を展開する。体に悪そう。

 

Q.どうして緑色なんですか?

A.在庫が払底しててこの色しか無かったからです。

 

 

 

 

───

──────

 

 

 

「……何か来ます」

 

「ほう?」

 

 

緑色のスモークを前にして、それがただの煙なのかそれとも催涙ガスの一種なのか判断がつかず立ち往生していた組織幹部と秘書の2人だが、リロードを終えた秘書が煙の先を見据えながらそんな事を言い出した。

 

 

「警察の奴ら、尻尾巻いて逃げ出しただけだと思っていたが……何が来る? 銃対(銃器対策部隊)か? それとも警視庁のSATか?」

 

「いえ、これは…………ッ!伏せ───」

 

 

秘書の言葉は続かなかった。

その瞬間、トンネル内に響く砲声と共に目の前の秘書の体が吹き飛んだからである。

 

 

「なっ……⁉︎」

 

 

いや、よく見たら吹っ飛んだ秘書は5mほど後方で倒れ込んでいる。体が木っ端微塵になったりはしていないようだ。

 

その代わりに、周囲にはShAK-12だったであろう破片がいくつも散らばっている。

 

何事かと再び正面を見据えたその時、ソレは現れた。

 

全高全幅共に2mほどしかない小柄な車体。

少し左にオフセットされた砲塔から伸びる砲身。

そして、青と白に塗装されたリベット打ちの車体。

 

 

長野県警が保有する数少ない機甲戦力筆頭、第二次世界大戦中にイタリアで運用された軽戦車、L6/40である。

 

 

またか!!!日本の警察って奴は本当によォ!」

 

 

組織幹部が後退しながら拳銃を乱射するが、軽戦車とはいえ腐っても『戦車』。下手な個人用火器で装甲を抜かれてしまっては存在意義が無くなってしまうのだ。

 

主砲のブレダM35 20mm機関砲から放たれた20×138mmB弾がトンネル内壁を削る。

ちなみに上記の弾、長野県警特製ゴム弾仕様になっている為対人用途で使用しても安心な代物───らしい。長野県警曰く。

その割にはShAK-12越しに直撃を受けた秘書は血反吐を吐いて呻いているが。

 

 

「た、たすけ」

 

「逆だ、お前が俺を助けるんだ」

 

 

手を伸ばした秘書に構うことなく、組織幹部は一切の躊躇を見せずに持っていた拳銃で秘書の脚を撃ち抜いた。

 

 

「あっ⁉︎ アァ゛ぁああああ!!!」

 

「精々時間を稼げよ。今まで組織に尽くした事は忘れない」

 

 

全くそう思ってなさそうな声色でそう言い切った組織幹部は、苦しみのたうち回る秘書と、防弾盾を前に出して慌てて秘書を回収しようとする長野県警に威嚇射撃を加えながらその場を後にした。

 

 

「おい!あいつ逃げちまうぞ!撃てよ遊撃班!」

 

「目の前に重傷者がいる状態で20mmが撃てるかバカ!警視庁じゃねえんだぞ⁉︎

 

「同軸の重機関銃は⁉︎」

 

「70か80年前のイタリアの機関銃の弾*1なんてあるわけねえだろ!!!」

 

 

車長はそう毒づきながらM360J SAKURAを発砲している。

 

 

「ああクソ!おい!誰か手ぇ貸せ!こいつ血が止まらねえぞ!」

 

「こんな事もあろうかとコイツ(L6/40)には止血帯含めた応急手当セットを常備してある!後部の雑用箱だ!」

 

「でかした!」

 

「あ、ッガ、だ、誰か、たすけて」

 

「ああ分かってる!絶対死なせねえからな!生きて罪を償えやクソ強ライフル女がよ!!!」

 

 

 

───

──────

 

 

 

「はァ……はァ……」

 

 

トンネルを逆戻りする組織幹部は、ある程度の場所まで来て立ち止まり、一息ついた。

周囲を見渡せば、今通ってきたトンネルの他に2本のトンネル。

 

一本は先ほど通ってきた、アジトへと繋がるトンネル。

もう一本は別の場所へと伸びるトンネルである。当然ながら既に放棄が決定しているアジトへ戻るわけにはいかないため、必然的に足は別のトンネルへと向かう事になる。

こちらに警察が配置されていないという保証は一切ないが、選択肢はこれしかない為致し方無し。

 

P7のチャンバーチェックを行い、いざ行こうと足を踏み出したその時である。

 

 

「You have the right to remain silent.」

(あなたには黙秘権がある)

 

 

後方、アジトに繋がるトンネルから声が聞こえた。振り返り発砲。

しかし人体に着弾する音は聞こえず、代わりに聞こえたのは金属が金属を弾く甲高い音。

 

 

Anything you say can and will be used against you in a court of law.

(あなたの供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる場合がある。)

 

 

声は続く。

 

 

You have the right to have an attorney present during questioning.

(あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。)

 

 

チカチカと点滅するトンネルの電灯に照らされたのは、出動服と防護装備に身を包んだ───機動隊員?

『?』が付いたのは、その機動隊員(?)が構えていたのが、ライオットシールドでも警棒でもなく、抜身の刀だった為である。

電灯の光量が足りないのか、顔の部分が影になって見えなくなっている。

 

 

If you cannot afford an attorney, one will be provided for you.

(もし自分で弁護士に依頼する経済力がなければ、質問に先立って公選弁護人を付けてもらう権利がある。)

 

 

ここで、組織幹部は先ほどのある報告を思い出した。

正面入口防衛部隊の責任者が無線で放った一言。

 

『なんで刀が銃に勝てるんだよ』

 

まさか───

 

 

そのまさかである。

再び放った銃弾は、振るわれた刀に弾かれた。

 

 

「はは、あんな報告がマジなんて分かるわけねえだろうが」

 

「ダメだよ? 部下の報告はちゃんと聞かなきゃぁ」

 

 

自嘲気味に呟いた独り言に、機動隊員(?)が反応した。

その声に驚く、女だ。

 

 

「ようお巡り。今言ってたのはミランダ警告*2か?」

 

「そうだよ。犯罪者の癖によく知ってるね」

 

「ああ、知ってるとも。尤も、この場で言っても無駄だろうがな」

 

「……なんでか聞いても?」

 

「ハッ、お前はここで死ぬからだよ!」

 

 

発砲。

変わらず刀に弾かれるが、そんな事は分かりきっている。次弾の目標は、機動隊員(?)の足元に伸びる配管。

9mm弾に抉られた配管が内圧に耐えきれず、中の蒸気が噴き出す。

 

 

「きゃっ⁉︎」

 

 

随分女性らしい声を上げた機動隊員(?)が転げた。

 

シメた!!

 

懐からナイフを取り出して、機動隊員(?)に直接切り掛かる。狙うは防護装備の隙間、喉元。

 

 

 

 

甘えよ

 

 

 

ここにきて第三者の声。

声の主を確認しようとした瞬間、眼前に現れたのは、白い足袋が映える足の甲。

 

顔面に強い衝撃、骨が砕ける音。

 

 

「ガッ……⁉︎」

 

 

思わず後ずさる。

ボタボタと砕けた鼻から血が滴り落ちるのが分かる。

視線を向けると、機動隊員(?)を助け起こす、和服姿の女。……女? いや待て、なんか狐みたいな耳が生えてないか? あと尻尾も生えてるように見える。

 

 

「全く、三好よ。詰めが甘ぇな」

 

「いやぁ、面目ない。ちょっとびっくりしちゃった」

 

 

三好。

 

三好。

 

三好。

 

 

その人外らしい存在を、組織幹部は公安警察内のスパイからの報告で知っていた。

 

 

「てンめェ……警視庁のバケモンか」

 

「あれ、名前言ってなかった? じゃあ、改めて」

 

 

埃を払い、女刑事が立ち上がった。

 

 

「警視庁刑事部捜査第一課強行犯捜査四係、三好絵里。貴様は完全に包囲されている。私に3()()殴られてから神妙にお縄につけ、クソ野郎が」

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
8×59mm RB ブレダ弾

*2
アメリカ合衆国憲法修正第5条の自己負罪拒否特権に基づいて米国連邦最高裁が確立した刑事司法手続の一つ




ちなみに令和日本においてミランダ警告に該当する制度や判例は存在しないんですが、万和日本では存在するという事にしておいてください。だってかっこいいんだもん。みつを

次は(何も問題なければ)エピローグです。
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