ある女秘書のお話です。
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『逆だ、お前が俺を助けるんだ』
『絶対死なせねえからな!生きて罪を償えやクソ強ライフル女がよ!!!』
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「───ッ!」
南長野医療センター 篠ノ井総合病院
「あ゛っ、うぬぉぉ……」
飛び起きた女は、次の瞬間に全身の痛みでベッドに戻った。その痛みによって思考が冴えてくるのが分かる。
女は、『組織』と呼ばれる国際犯罪組織の日本支部で、日本支部リーダーの秘書を務めていた。少なくとも、他の誰よりも『組織』に尽くしてきた自信はある。
だが、見捨てられた。
撃たれた右脚を見やる。包帯やらギプスやらでぐるぐる巻きになっているが、一応感覚はある。どうやら神経は生きているらしい。
「目が覚めましたか」
病室の入り口に目を向けると、そこには制服警官を複数人引き連れたスーツの男が1人。
「あなたは?」
「公安調査庁の千代田と申します。あなたの聴取を行う者です」
「……尋問か拷問の間違いじゃなく?」
「驚かれるかもしれませんが、実は日本って法治国家なんですよ」
犯罪者にも人権って適用されるんですよね、と言いながら、千代田と名乗った優男はベッドの脇にあった丸椅子に腰掛けた。護衛と思しき制服警官は部屋の外で待機するらしい。
「まあ、どちらかというと『情報の精査の為』と言った方が適切かもしれませんね」
「?」
「ほら、あなた方を裏切った殺し屋。あの人からボロボロと情報が出てきましてね。
「……ああ、ユリアさんですか」
「やはりご存じで?」
「親しかった訳ではありませんよ。あくまで仕事の付き合いですから」
そう、仕事の付き合いである。
あくまで、決して仲を深めてはならない、仕事上の。
「……一つ、いいでしょうか」
「はい?」
「私の上司、日本支部のリーダーはどうなりましたか?」
「警視庁によって逮捕されました。同じく事情聴取の真っ最中だと思いますよ。まあ、聞いた話だと「弁護士を呼べ」だとか「アレは全部秘書がやった事だ」とか抜かしてるみたいですが。三流悪役みたいで面白いですよね、はは」
「えぇ……?」
一瞬でも元上司を心配したのがバカらしくなってきた。
「ま、アレだけの事をやったんですから、重罰は免れないでしょう。本題に入っても良いですか?」
「ええ。もうなんでも聞いてください。全部答えます」
「え、あ、はい。いや、こちらとしてはそれで助かるんですけど……どうされたんです? 急にイキイキとして」
後に『ユリア文書』と呼ばれる、国際犯罪組織『
その情報の精査に参加したのは、『組織』で馬車馬のごとく働き、色々状況の違いはあれど、あの強制捜査の際に捨て駒にされた幹部クラスの逮捕者達だった。情報提供者達の気持ちはただ一つ。
『今まで身を粉にして尽くしてきたのに!あんなにあっさりと見捨てられて!忠誠心なぞ残るわけがないだろいい加減にしろ!退職金寄越せ!!!』
日本支部リーダーの秘書、コードネーム『ハドソン』もその1人である。
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情報提供者達のその後の道は、大きく2つに別れた。
一つ。情報提供の見返りとして減刑を勝ち取る。
殆どの提供者はこちらを選んだ。まあ、いくら情報提供をしたとはいえ大なり小なり犯罪者であるが故、これは致し方ない。……と、いうよりは、下記の後者を選びたくなかった、というのが本音らしい。
一つ。警察への再就職。
大事な事なのでもう一度。
警察への再就職。
なぜか警視庁がこれを推しに押した。それのせいでドン引きした情報提供者達は殆どが前者の方を選んだのだが、ごく少数の者たちはこちらを選んだ。
例えば、「殺さないにしても、今度こそターミネーターに一手を」とか言って警視庁捜査一課に参加した、雪白ユリア。
そして、
長野県長野市
県警察本部機動隊庁舎
「本日より、長野県警察本部機動隊第一中隊に配属になりました、川野・ハドソン・結衣巡査です。ご指導ご鞭撻の程、どうかよろしくお願いします」
「あーっ⁉︎」
並んでいた機動隊員の内の1人が叫んだ。
「て、てめえ⁉︎あの時のクソ強ライフル女⁉︎」
「ふふ、言われた通り、『罪を償い』に来ました。……あの時、飛び出してきてくれて、ありがとうございました。おかげで私は、生きています」
「お、おう……なんでそうなったのかは知らねえが……ま、まあ? 配属になったってんなら容赦はしねえぞ。お前がどれだけ強いかってのは俺らが一番身を持って知ってるからな、マジで」
あの時トンネルでハドソンと相対した機動隊員達がうんうんと頷く。
「あ、ちなみに
「ぎゃああああああああ!!!???」*1
長野県警察本部機動隊。
長野県の治安を守る最後の砦。
そこに入隊した曰く付きの女は、いつしかこう呼ばれるようになったという。
『長野県機の女』と。
名も無き勇気溢れる機動隊員とハドソンさんのラブロマンスは読者兄貴姉貴達が頑張ってください(他力本願)
気が向いたらハドソンさん再登場ルートもあるかも?