《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
でぃせんと、水上 風月、
六四(京都編5話)
ありがとナス!
《ひとつ確認したい事があるのですが》
乗組員(?)を撃退して現場から離れためぐねえに、変わらず警察無線を占有しているアマテラスが話しかけてきた。
「なんですか? さっきも言った通り私はちゃんと警察官ですけど」
《あ、いえ、それについてはもういいんですが、あなたの所属についてお聞きしたいんです。警護課所属ではありませんよね。警視庁のデータベースにアクセスしましたが、“
「サラッとすごい事言いますね。さっきも言ってましたけど、その
《自衛艦隊司令部のデータベース上では、今日の防衛大臣の警護官は警護課課長の神郷警部と鞍佐巡査部長となっているのですが、違うのですか?》
「今は助っ人で警護課に来てますけど、普段は捜査一課所属ですよ。佐倉恵巡査部長といいます」
《……誤ったデータが入力されている? 一体何が……》
「それより、アマテラスさんからの“依頼”というのは?」
《あ、そうですね。まだお伝えしてませんでした。詳細は私も把握できていないのですが、本艦艦長、楠木肇一等海佐を止めて頂きたいのです》
「艦長を止める……って随分曖昧な言い方ですね」
《艦長の行動の理由は分かりません。ですが、私はネット上のあらゆる情報を観測できる天才美少女ハッカーAI、東京湾のすぐ近くで全武器使用可能な状態でいる今の状態が異常事態である事は分かります》
「うーん*1……その前にやらなきゃいけないことがあるのでそちらを優先してもいいですか? あまり時間はかけないので」
《それは勿論構いませんが、ちなみに何を?》
「いえ、SPとしての職責を果たしに行くだけですよ」
千葉県富津市湊 沖合
護衛艦ながと
《艦橋よりCIC、9時方向に船団。コーストガード*2が2隻、消防船が1隻、あと……空母か? ケツに空母がくっついて来てるぞ。なんだアレ》
「ありゃぁ……アメリカのタイコンデロガ級か? いつの船だよ、オンボロもオンボロじゃねえか」
モニターを見ていた白人の副長が感嘆の声を上げた。
「警視庁のクソッタレが戦力化した空母だろう、放っておけ。アマテラス、各サーバーへのハッキングとレーダー欺瞞の首尾はどうだ」
《レーダー欺瞞の稼働率は90%を維持。各省庁のメインサーバーへのハッキング進捗率は75%。予想終了時間は5分後です》
めぐねえの方ではやたらはっちゃけているアマテラスだが、実際優秀であった。付近のレーダー施設、船舶へハッキングを行い、レーダー表示まで偽装するという離れ業をやってのけているのだから。
これで
夜の海というのは恐ろしい。本当に何も見えなくなるのだから。
《船団に変な動き無し。そのまま南方向に突っ走ってる》
「よしよし、作戦通り、さっき燃やした日本の
「なんだ」
「さっき駆逐艦を撃った時だ。1発目はモロに命中させたが、2発目はメインマスト、3、4発目は煙突だ。この目標選定に何か意味はあるのか?」
「……何が言いたい?」
「いや、俺もアンタの事情は知らないし知ったこっちゃないが、アンタが今やってるのは自衛隊に思い切り噛み付く行為だ。だとしたら何かしら恨みがあるんだろうとは思うが、それにしては目標選定が甘っちょろい……というか、“人”を避けてるように見えてな。俺だったらメインマスト、艦橋、ヘリ格納庫を撃ってから船体を滅多撃ちにして確実に沈める」
「───副長、ひとつ勘違いを正しておこう」
「俺は確かに“自衛隊”に恨みはあるが───“人”に、恨みがある訳じゃない」
「へぇ……───破綻してるぜ、その考え」
「言うな、自分でも分かってる」
──────
───
同時刻
千葉県富津市湊 沖合
千葉県警水上警察隊
特大型警備艇『なのはな』
「バッカヤロー!!!なんで気づかなかったァ⁉︎」
「すいませんすいません!!!」
遠く湾岸地帯からの光しか届かない暗闇の中を、一隻の“コルベット”が全速で航行していた。
今『なのはな』に何が起こっているかの説明は後にして、まずはこの艇について説明しなければならない。
フラワー級コルベット。
1940年ごろからイギリスにおいて建造が開始されたコルベットだ。
全長は62mとちょっと。主機は当時主流だったギヤード・タービンやディーゼルエンジンですらなく、民間船舶で採用されていたレシプロ蒸気機関。これには戦時中の調達性とか色々理由があるのだが、とりあえずそれは置いておいて。
先の『組織』壊滅後のオペレーション・ケイオス時に押収されたフラワー級コルベットのうち、1隻が千葉県警水上警察隊に譲渡された。
そして、千葉県の県花、『なのはな』の名が与えられ、このフラワー級コルベット第三の人生が始まった───という訳である。
余談だが、元々武装として搭載されていたBL 4インチ砲Mk.ⅠⅩ 、ヴィッカースQF 2ポンド『ポンポン砲』は、弾薬の調達が困難という理由から、4インチ砲がJM-61M*3、ポンポン砲が中距離多目的誘導弾に置き換えられている。
護衛艦むらさめ大破炎上という情報を受け、海上保安庁は各種機関へ応援を要請した。その要請された機関の内の一つ、千葉県警は、大型警備艇『ぼうそう』と特大型警備艇『なのはな』の派遣を決定した。
が、ここでひとつ予想できたトラブルが。
『ぼうそう』はちゃんとした警備艇であるため、速力は36ノットを発揮可能。しかし、『なのはな』は御歳80歳近くの超老齢艦。非力な蒸気レシプロ機関で発揮可能なのは16ノット。まさかの『ぼうそう』の半分以下であったのだ。
「派遣を決定した手前、やっぱやめたとも言いづらいな……よっしゃ!とりあえず行ってこい!」
と、いうわけで『ぼうそう』のみが全速で現場へと急行し、『なのはな』は夜空に黒煙を吐き出しながらトコトコと向かう事になったのである。
───で、ここで2つめのトラブル。
緊急出港してから数分後のことだった。
「おい、灯火点け忘れてるぞ。早く点けろ」
「いや、あの、それが、点かなくってェ……」
「は?」
海上における船舶の衝突を予防し、船舶交通の安全を図ることを目的とした法律、『海上衝突予防法』において、船舶は『周りの船から見えるように遠くからでも見えるライトを備え付けないといけないぜ!』(超意訳)と定められている。
当然それは『なのはな』にも適用され、何個かのライト*5が備え付けられている───筈だったのだが。
オンボロのせいか、整備不足のせいかは知らないが、全ての灯火がスイッチをいくら押してもうんともすんとも言わず。
ここで、先ほどのセリフに戻るという訳だ。
「あークソ、しょうがない。とりあえずサーチライトを点灯しろ。何も点けないよりはマシだ」
艇長の指示により、昔ながらのサーチライトが点灯される。初期位置は艦首方向、つまり、今まさに『なのはな』が進んでいる方向な訳だが。
照らされた方向には、『壁』があった。
「て、艇長ッー!!!前方30mに船舶!!!」
「後進一杯!!取り舵一杯ーッ!!警笛鳴らせーッ!!」
操舵員が舵輪を左にぶん回し、艦橋からの指令を受け取った機関室が機関を後進に入れ、警笛が短音で3回*6鳴らされる。
しかし、これは物理法則が適用される全てに言えることだが───動いているものは、急には止まれない。
故に、千葉県警水上警察隊特大型警備艇『なのはな』は、護衛艦『むらさめ』を攻撃した後、レーダー欺瞞によって暗闇に身を潜めていた護衛艦『ながと』の土手っ腹に思い切りぶち当たったのである。
Tips:投稿者は悪役がやる事がうまく行ってるのを見るのが大嫌いなので本作品では基本的に悪役はみんな不憫な目に遭うぞ!かわいいね!