一般やられ役警官に転生した転生者の憂鬱   作:運輸省

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現在仙台市内のホテルからお送りしているので初投稿です。
喜久屋書店たのしかった!(IQ3)


【朗報】海自の新鋭艦間近で見ようぜww【特等席】(9)

千葉県警視点である。

 

 

 

 

『ワレ ジュウゲキヲ ウケツツアリ オウエンモトム フッツ ミナト オキアイ』

 

 

 

 

『なのはな』に搭載された英国製モールス電信機から発信された応援要請を最初に受信したのは、攻撃地点から南東に直線距離で2kmほど離れた、千葉県警察富津警察署だった。

富津警察署は、これはただ事じゃないぞと千葉県警察本部へ情報を上げた。

 

文中に船名こそ出なかったものの、千葉でこんなオンボロ無線機を使っているのはウチ(千葉県警)の『なのはな』ぐらいである。という考えのもと、銃撃戦対応装備の警官隊を現場近くの、海沿いのドライブインへ派遣。

 

 

そして、こんな報告が入った。

 

 

 

 

《至急至急!富津12から本部!》

 

《富津12どうぞ》

 

《先の銃撃の件にあっては陸上から海上を捜索したところ発砲炎を視認!サーチライトにて発砲炎付近を照らしたところ激しい銃撃を受けた!恐らく12㎜口径以上の大口径弾!113型装甲警備車*1じゃ歯が立たない!今すぐ応援をよこしてくれ!》

 

 

 

 

まずいぞ、俺らの仲間が謎の巨大船に襲われている。今すぐとっちめなければ。

 

千葉県警はそう思い立った。迅速な判断と行動こそ美徳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで一つ、千葉県警の不幸を挙げるとするなら、

 

現在行方不明の護衛艦ながと

警備艇なのはなを襲っている謎の巨大船

 

が結びつかなかった事だろう。

 

 

 

ここで少し千葉県警視点での時系列を整理する。

 

 

 

数時間前に横浜海上保安部から受けた情報共有の第一報は、

 

『三宅島北東沖で炎上中の船舶有り。船舶についての詳細が不明の為、大事をとって各所へ応援を願いたい』

 

というもの。

 

 

で、これの少し後に『炎上中の船舶は海上自衛隊の護衛艦むらさめである可能性が高い』という続報が入った為、急遽水上警察隊の『ぼうそう』と『なのはな』を増派したのである。であるが───

 

 

 

察しのいい万和日本国民はもうお分かりであろう。

 

 

・『ながと』乗員320名がTSした状態で発見される

・『ながと』現在位置、現在誰が運航しているのかは不明

・『ながと』に乗艦していたはずの防衛大臣、その護衛の警視庁SP2名は行方不明

・『ながと』僚艦は、現在、三宅島北東沖で大破炎上中の護衛艦『むらさめ』

 

 

『謎の巨大船』と『護衛艦ながと』を結びつけるための情報が、神奈川県警と海上自衛隊の間で止まっており、他の機関に悉く共有されていなかったのだ。

弁護をするのであれば、この時点での自衛艦隊司令部はかなりの混乱に陥っていた。

護衛艦が1隻大破炎上し、その片割れの最新鋭護衛艦が1隻大臣を乗せたまま行方不明になり、その乗員の海上自衛官が陸上で見つかって全員女の子になっている。

 

これで混乱するな、という方が無理な話だ。

 

 

 

 

 

と、いうわけで。

 

 

 

 

 

後世において『護衛艦ながと強奪反乱事件』と呼ばれるこの一連の大事件の熱戦は、海上自衛隊横浜海上保安部警視庁神奈川県警千葉県警東京消防庁千葉市消防局、これら事件の収束に立ち向かった7つの公的機関、その全てが持つ情報・目標が食い違ったまま開幕してしまったのである。

 

 

 

 

──────

───

 

 

 

さて、もう少し千葉県警視点で話を進めよう。

 

 

『なのはな』に続いて警官隊からも応援要請を受けた千葉県警察本部は、編成されたばかりの()()()の派遣を決定した。

 

特車隊とは、先日発生した『組織』による最後っ屁、オペレーション・ケイオスを阻止した際に大量に押収された装甲車両で構成された部隊の事だ。

その編成内容は各都道府県警でかなりの違いがあるのだが、この千葉県警察本部特車隊は3輌のT-84 BM オプロート*2で編成されている。

え? ガッツリ主力戦車(MBT)じゃないかって? 違うよ、これは特車だよ。

 

 

というわけで、千葉県警察本部を発進した3輌のウクライナ製MBTは、夜の館山自動車道を突っ走って富津へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

そして同時刻、九割の偶然と一割のヒューマンエラーで『ながと』に肉薄してしまった警備艇『なのはな』では、ようやく反撃が始まろうとしていた。

 

『なのはな』を銃撃してきている火点は見る限り3箇所。暗闇のためこれがよく目立つ。

 

 

「当たらなくても構わん!撃て撃て撃て!」

 

 

船橋や構造物に遮蔽を取った『なのはな』乗員が、89式小銃や64式小銃、MP5、果てはニューナンブ M60などなどそれぞれの小火器で全くの暗闇の中反撃に出た。

無論、反撃の銃火にも敵からの銃撃が飛んでくる。『なのはな』乗員は思わず身を引っ込めた。

 

しかし、これでいい。小火器による銃撃はあくまで囮だ。

 

 

本命は、船橋前方に配置されたアレ。

 

 

「一番てっぺんのあの火点のあたりに満遍なくばら撒け!」

 

「なんでですかぁ⁉︎」

 

「『ながと』ならあのあたりにレーダーがある筈だ!アレを潰さない限り航空隊が近づけん!」

 

「ひぃい!!!」

 

 

副艇長の命令に合わせて、乗員が引き金を引く。

 

元々搭載されていたBL 4インチ砲Mk.ⅠXを降ろし、代わりに搭載した海保のお下がりのJM-61M 多銃身20㎜機関砲。

仰角一杯。

普段は密輸船や違法操業漁船など小型船を相手するガトリング砲が、巨人(ながと)に向かって火を吹いた。

 

 

 

 

 

 

現代の軍艦にとっては、『装甲』という物理的鎧が遠い存在になって久しい。

『装甲』を積む事によって発生するコストと、現代の軍艦における主要な矛である対艦ミサイルを喰らった場合の被害のバランスが取れないからだ。

 

そもそも、現代の軍艦はその殆どが駆逐艦かフリゲート。

昔から装甲をあまり積んでこなかった艦種である。

 

そして、それは巡洋艦並みのサイズがある『ながと』においても変わらない。

特にイージスシステムの中心となる艦橋上部のフェーズド・アレイ・レーダーは、その性能を損なわない為弾片防御程度の薄さの装甲しか施されていなかったのである。

 

 

その程度の装甲で、分間450発のペースで放たれる20×102㎜徹甲榴弾(APHE)を受け止められる筈もない。

 

 

 

 

護衛艦『ながと』CIC

 

 

「右舷SPY-1レーダーブラックアウト!」

 

「はぁ⁉︎何があった⁉︎」

 

《ブリッジ艦橋からCIC!さっきの当たり屋野郎だ!ミニガンかバルカンか知らねえが馬鹿みてえに撃ってきてやがる!艦橋周りはもう穴空きチーズだ!4人やられた!何モンだアイツ⁉︎》

 

「早いとこ何とかしろ!当たり屋なんぞに無力化されたらワケねえぞ!」

 

 

CICで副長が吠える。

暗闇の富津沖での戦いは意外にも『なのはな』優勢で事が進んでいた。

 

 

「副長、変われ」

 

「あぁ? ああ、ホラよ」

 

 

やり取りを黙って聞いていた楠木一佐が腰を上げた。

 

 

「CICより機関室、急ぎ主機始動。当たり屋を引き剥がして“最終地点”へ向かう」

 

《あいヨォ!》

 

 

川崎重工業製のガスタービンエンジンが、幾らかの休憩から目を覚ました。

 

『なのはな』からしてみれば、甲高い音が響いたかと思ったら急に巨大船が動いたのである。ガスタービンと蒸気レシプロの能力の差は歴然で、ガリガリと船体同士が擦れ合う音がする。

 

 

「艇長!この音はガスタービンです!やっぱりコイツは『ながと』だったんだ!」

 

 

JM-61Mの陰でニューナンブに弾を込めていた副艇長がちょっと嬉しそうに大声を上げた。

それを聞いた艇長がすっかり穴だらけになった船橋から叫ぶ。

 

 

「……ちょっと待て!確か『ながと』って30ノットは出るよなァ!」

 

「あー、公式発表じゃ約30ノットって言ってました!」

 

「バカ!コイツ(なのはな)じゃぁどう頑張ったって16ノットだぞ!引き剥がされる!機関室!前進いっぱい!操舵手!面舵一杯!なんとか喰らいつけ!ガトリングは撃ち方やめぇ!そいつの反動すら惜しい!」

 

「撃ち方やめ撃ち方やめ!艇長!なんとかこっちでやってみます!」

 

「今度は何をだァ⁉︎」

 

 

副艇長がそう言って手に取ったのは、普段停泊用で使っている、45㎜径のクロスロープである。

 

 

「ちょ、副長? 何する気ですか?」

 

「いいからここにいてよ、俺が合図したらどうにかロープをボラード*3におらえてくれ*4

 

「えっ」

 

 

先ほどまでJM-61Mをぶっ放していた射手にロープの一端を渡し、副艇長自身はもう片方──ロープ自体が─輪っかに編まれている方を持った。

 

そして、最初の衝突によって若干形の歪んだ船首に立つ。1mもない距離で、『なのはな』と『ながと』の外板がギャリギャリと火花を上げながら擦れ合っている。

 

 

「さぁて、何年かぶりの“カウボーイ”だ。上手くいきゃあいいが」

 

 

船舶、特に中型の内航貨物船や漁船などの小型船では、船同士で接舷する場合に、ロープを投げる事によってボラードやビットにロープをかける、という事がある。

これを一部の会社では“カウボーイ”と呼んでいるのだが、この『なのはな』副艇長、千葉県警に入る前はその内航貨物船の船員だった。

狙うは、『ながと』最後方のボラード。

 

 

「そーらよ…っと!!!」

 

 

まるで投網を投げるようなフォームの下手投げで投げ出された8本撚りのクロスロープが、暗闇を舞う。

 

 

 

ばさり。

 

 

 

 

 

 

びィん。

 

 

 

 

 

「よぉっしゃぁかかったァ!」

 

「うわわ、マジでやったよあの人」

 

 

射手が慌ててロープを『なのはな』のボラードにおらえる。

 

固定されたロープが一気に張り、船体やらロープやらが軋む音が聞こえるが、それも次第に小さくなっていった。

 

 

「艇長ー!なんとかロープを掛けました!」

 

「おう、分かった!とりあえず電信室に行って県警本部に今の状況を打電しろ!」

 

「はっ!」

 

 

副艇長が電信室へと走っていくのを見届けた艇長は、電信室につながる伝声管に手をかけた。

 

『なのはな』を引き剥がしたと勘違いしたのか、『ながと』からの小火器による銃撃は止んでいる。

いつバレるかは分からないが、ひとまずは一息つけそうだ。

 

 

「ブリッジより電信室、今そっちに副長が向かってる。アイツが着いたら県警本部に今の状況を打電しろ」

 

『了解です』

 

 

伝声管の蓋を閉じた艇長は、ゆっくりと羅針盤に背を預けて座り込んだ。

 

 

「さぁて、こっからどうするかね」

 

 

 

 

現在時刻21:56、天気は曇り、月明かり無し。

 

 

まだまだ夜は始まったばかりである。

*1
M113 装甲兵員輸送車。押収品

*2
ウクライナ製MBT

*3
ロープを結びつけるためのでっかい突起物。ここでは2本一組のもの

*4
『ボラードにロープを結んでくれ』の意




ロープの話については、専門的な話をすると引っ張り強度がどうとか相互に動いてる目標にカウボーイなんてできるかよとかいうツッコミが生まれてきますが万和日本ではできるんです(強気の投稿者)
できるという事にしておいてください(へっぴり腰)

次は『ながと』艦内中心の話になりそう。つまりはめぐねえ大暴れです。


千葉県警
せっかく富津に特車隊送ったのになんか東京湾中心部の方に行っちゃったらしい。ところで『なのはな』を襲ってるあの船はなんなの?

護衛艦ながと
なんなのこのちっこいの!!?? 離れなさいコラ!

警備艇なのはな
離 す か ぁ ! ! !

県警本部に『ながと』という名前を出すのを忘れている。
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