一般やられ役警官に転生した転生者の憂鬱   作:運輸省

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クリスマスイブにも関わらずハーメルンに居座っている読者諸氏に投稿者サンタからクリスマスプレゼントなので初投稿です(自爆技)

《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
水上風月

ありがとナス!


【朗報】海自の新鋭艦間近で見ようぜww【特等席】(10)

さて、時間を少し巻き戻そう。

 

 

大体、『なのはな』の応援要請で海沿いのドライブインに駆けつけた千葉県警が、『ながと』後部のCIWSにマニュアルモードでめった撃ちされている頃。

 

営倉を脱した警視庁SP&防衛大臣+天才ハッカー美少女AI組である。

 

 

「それで? 内側から無力化するって言ったって、どうするんだい。何か考えはあるんだろうね」

 

「まあ2、3考えてはいます。ですが、まずは身を守る武器を得ないとどうにもなりませんよ。私の鹵獲AKだけじゃ流石にアレですし」

 

「あー、それもそうか。できればプレキャリも回収したいね。大臣、武器庫の場所って把握してるかい?」

 

「確かバイタルパート(重要防衛区画)内だとは記憶してましたが、流石に詳しい場所までは……」

 

《ああ、それでしたらご案内できますよ》

 

 

アマテラスがそう言った。

 

 

「そうか。コイツこの艦のAIなのか。はっちゃけすぎてて分からなくなるね」

 

《失礼な。私は

海上自衛隊が誇る超天才清楚系病弱美少女ハッカーAIであり、眉目秀麗な乙女であり、そして横須賀に咲く一輪の高嶺の花である、護衛艦ながと戦術支援AI

ですよ⁉︎》

 

助けてくれ佐倉、私じゃコイツを御し切れない

 

私も無理です

 

「そっかぁ……」

 

 

諦めた顔の神郷警部を横目に、一行は艦内を進む。

 

 

「そういえばアマテラスさん、ひとつ気になったんですけど」

 

《なんでしょう、佐倉巡査部長》

 

「多分艦内、特にさっきいた営倉とか監視カメラありますよね。アレって大丈夫ですか?」

 

「……そういえばそうですね、すっかり失念してました」

 

「それマズくないかい?」

 

《ああ、大丈夫ですよ。モニターにはお二人が収監されてる映像をループで流していますし、監視カメラの映像も細工を施しています。暫くは脱走が判明することはないはずです》

 

「有能だぁ」

 

《ふふ、もっと褒めてくれても構わないんですよ。私は褒められれば褒められるほど成長するAIなので》

 

「実際AIって成長するのかい?」

 

「よく巷で言うところのディープラーニングとかそうなんじゃないですか? 知りませんけど」

 

《あ、次のタラップを降りてください。武器庫までもう少しですよ》

 

 

──────

───

 

 

ながとCIC

 

 

「現在速力20ノット」

 

「レーダー出力増大中、フル出力まで1分」

 

「さっきの当たり屋野郎はどこに行った? ついて来てんのか?」

 

「分かりません。ブリッジ(艦橋)は死者負傷者だらけで対応不能と」

 

「役立たず共が……手空きの奴をブリッジに回せ。見張りに立たせろ」

 

「イエッサー」

 

 

言葉遣いの荒い副長がテキパキと指示を出す中、艦長の楠木一佐は不気味なほど沈黙を保っていた。

 

 

「おい、おいキャプテン、寝てねえだろうな」

 

「寝るわけあるか。アマテラス、ハッキングの進捗状況知らせ」

 

《99.6%。20秒後には準備を完了する予定です》

 

「分かった。準備完了後はこちらの命あるまで待機」

 

《了解しました》

 

「……」

 

 

ふと、一佐が席を立ち、一つのコンソールの前に近づく。艦内を統括するコンソールだ。

モニターには、先ほど謎の当たり屋から攻撃を受けた右舷後部のSPY-1レーダーの部分に、損傷を知らせる赤が光っている。

だが、一佐が見ているのはそこではないようだ。

 

 

「おい、営倉の映像出せるか」

 

「ん? いいぜ。お嬢さんたちなら大人しくしてるはずだ」

 

 

乗員がコンソールを操作し、営倉の映像をモニターに出す。

営倉の中では、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……」

 

「なんだキャプテン、お嬢さん方がそんなに気になるのか。日本人の癖して意外と“好き”なんだなぁ、ええ?」

 

 

様子のおかしい一佐に副長が近づく。だが、副長が何か声をかける前に先に楠木一佐が口を開いた。

 

 

「……副長、ちょっとこっち来い」

 

「ん? ああ」

 

 

一佐が副長を連れてコンソールから離れる。

 

 

「なんだよ」

 

「何人か連れて営倉の様子を見てこい。連絡に無線は使うな」

 

「はあ? なんだってそんな事を?」

 

「さっきの映像、数分前に見たものと全く動きが一緒だ。おそらく同じ映像がループ再生されてる」

 

「……ンな馬鹿な」

 

「早く行け。いたならいたでそれで構わん。もう1人のSPを拘束しに行ったメンバーからの連絡が無いのも気になる。もし営倉が空だったら、そのまま艦内捜索の指揮を執れ。できれば生捕りが望ましいが…最悪、殺害しても構わん」

 

「OK、無線は使わないほうがいいんだよな、なんでだ?」

 

「基本、コンソールの情報はアマテラスが統括している。それが間違っていたとしたら……」

 

「……AIがこっちに間違った情報を流していると?」

 

「ああ。本当にそうなのか、本当だとしたら何が理由なのか、そこまでは分からんが、念の為だ」

 

「了解、おい、(ワン)、アンヘル、ロベルト、俺と来い」

 

 

副長と3人の乗員がCICから出ていく。

 

 

「最終地点までの所要時間は?」

 

「ちょいとお待ちを〜……このまま増速してけばあと1、2時間ってとこだ。日付が変わる頃には着く感じだな」

 

「分かった。『()()()()』の準備もさせておけ」

 

「アイサー」

 

 

──────

───

 

 

ところ変わって警視庁。

 

時刻が22時を少し過ぎたころ、千葉県警からこんな要請が入った。

 

 

富津市沿岸部にて、警備艇なのはなが巨大な不審船から銃撃を受け、応援に急行した警官隊も12.7㎜以上の大口径弾で攻撃を受けた。不審船はなのはなを引きずりながら東京湾内に未だいると見られる。応援を要請する

 

 

警備艇なのはな……といえば、先の『組織』絡みで押収されたイギリス製の年代物のコルベットだ。

それを引きずりながら……? ど、どういう状況?

 

いまいちわからない部分もあったが、とりあえず湾内にそういう不審船がいるらしいというのは分かった。

 

海保、あと万が一があったら危ないから湾口方向で現在も護衛艦むらさめの消火、救助作業にあたっている他機関にも情報提供しておくか、という気持ちで情報提供を行……う直前で立ち止まった。

 

 

「……もしかしてですけど、その『なのはな』を引きずってる不審船って、『ながと』なのでは?」

 

「……いや、まさか。もしそれが真実だとしたらとんでもないことにならないか? 海自最新鋭の大型護衛艦が、実弾満載で、目と鼻の先に、いる事になる……ぞ」

 

「……総監、言いながら顔が青くなってってます」

 

「……出せる水上艦艇は全て出港だ!関係各機関にも呼びかけろ!すぐに出せる航空機はどこだ!?

 

「おそらく立川のゆりかもめ(A-10C)が一番早いです。最近押収されたジェット戦闘機はまだ運用開始の目処が立ってませんし、もし本当に反乱の可能性がある護衛艦がいるとしたら、こちらで保有するヘリや固定翼機、あと首都高交通警察隊のAC-130や立川のB-52Hも力不足です」

 

「そうか……イージス艦に攻撃機を差し向けるのもおかしい気がするが、とにかく確かな情報を得ない事には始まらん。……『むらさめ』の件といい『ながと』の件といい、もしかしてどこも正しい情報は得ていないんじゃないか」

 

「防衛省ですらですか?」

 

「ああ。こちらでむらさめの件を把握したのだって、防衛省からの情報共有じゃなくて横須賀署と連絡をとった捜査一課長の報告でじゃないか。まずいぞ……水上艦艇は何が出せる?」

 

「ジェット機と同じです、最近押収されたものは間に合いません。整備が終わっているものは幾つかありますが、乗員調達の目処が立ってない物ばかりです」

 

「……待て、そもそもこれ警察の仕事じゃないんじゃないか」*1

 

「今更ですね。あと今から海保とか防衛省の動きを待ってたら遅過ぎますよ多分」

 

「そんな事は分かっとるんだバカ。あ〜胃が痛い」

 

 

警視総監の胃痛は続く。

 

 

──────

───

 

 

護衛艦ながと艦内

武器庫付近

 

 

『武器庫』『火気厳禁』とプレートの掛かった厳重な扉の前で、めぐねえを襲ったのと同じ、海自作業服を着てカラシニコフを携えた外国人男性が2名警備に立っている。

 

そこから少し離れた通路の陰から様子を窺っていた神郷警部が顔を引っ込めた。

 

 

「カラシニコフを持った奴が2人。どうする?」

 

「ここから撃っちゃってもいいですけど、あんまり物音は立てたくないですね。増援を呼ばれるとマズいですから」

 

《発砲はお勧めしません。武器庫内にも何名か武装した乗員がいます》

 

「……中と外、どちらにもいるとしたら戦闘は避けられないのでは?」

 

 

間防衛大臣がそう言った。

 

 

「面倒だね、アマテラス、あんたの権限で奴らの艦内通信を無力化できないのかい?」

 

《技術的な話をするなら可能です。ですが、いくら隙ひとつない完璧な美少女AIである私だとしても、あまり大々的に動くとメインサーバーを物理的にシャットダウンされかねません》

 

「……アマテラスさんの本体って艦内にあるんですか? 陸上でなく?」

 

《一応正式名称は『多用途情報支援システム』なのですが、まだ試験運用中なのでメインサーバーはCICの隣の区画に入っています。本運用が始まれば防衛省内部に移されるんですがね。あとバックアップサーバーは一応防衛装備庁内にあるんですが、そちらはまだ起動されていないのです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

自分の存在に関わる事をさも当たり前のようにアマテラスは語る。

 

 

「えぇ……?」

 

《まあ私のことは良いのです。どうしますか? あとお伝えしておきますが、一部乗員の動きが怪しいです。今までのように艦内通信を使わず口頭での指令で動いています。どうやら営倉に向かっているようなのでそうしないうちに脱走バレますよ》

 

「それこそヤバいじゃないか!?」

 

「ああもう、しょうがないですね。時間がないので私が指揮を執ります。警部、ベレッタ使えます?」

 

「あ、ああ、大丈夫さ。扱える……随分カスタムされてるな。で? 作戦は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾が装填されたAKを携えて警戒にあたる乗員2名。

 

 

彼らの人生は唐突に終わりを迎えた。

 

 

1人は側頭部から飛び込んだ7.62×39㎜弾、突然横にいた奴が撃たれた事に驚いて振り返ったもう1人は、首と眉間に着弾した9×19㎜パラベラム弾で命を刈り取られたのだ。

 

 

乗員2名が倒れた事を確認した神郷警部とめぐねえは通路の角から飛び出した。

 

 

「この後は!?」

 

「サッと武器庫の中に飛び込んで素早く制圧します!」

 

《武器庫の中には7名ぐらいいますけど大丈夫ですか?》

 

「……“なるべく”早く制圧します!」

 

「ちょっと!? ちゃんと作戦考えられてるんだろうね!?」

 

「ちゃんと考えてありますよ!『後は野となれ山となれ』作戦です!」

 

それ考えてないだろ!? アマテラスも情報は正確に!」

 

《申し訳ありません。あと佐倉巡査部長、ちい○わの『なんとかなれーッ!』でもいいのでは?》

 

それだ!

 

「『それだ!』じゃないんだよこのバカ共!」

 

 

ぎゃーぎゃーと騒ぎながら、2人で武器庫の扉の両隣に付く。

 

 

「アマテラスさん、中の乗員の様子は?」

 

《銃口が7つ扉に向かってますね》

 

「開けた瞬間蜂の巣じゃないかい。フラッシュバンは?」

 

「あります。まさか本当に使う機会があるとは思ってませんでしたけど」

 

「私もだよ。3カウントだ、1、2、3!」

 

 

神郷警部が防爆扉のハンドルを回し、脇に戻ってから渾身の力を込めて足で防爆扉を開く。

すぐに、大小様々な弾幕が防爆扉、そして通路の反対側の壁を叩いた。

めぐねえが全く臆さず、中にフラッシュバンを投げ込む。

数秒後、180デシベルの爆発音と100万カンデラの閃光が武器庫内を包んだ。

 

弾幕が止む。

 

 

「GOGOGO!!!」

 

 

2人が飛び込む。

再び銃声が止むまで、数秒も掛からなかった。

 

 

「クリア」

 

「クリア、ルームクリア。ね、なんとかなるでしょ?」

 

「なったけどさぁ、一課はいつもこうなのかい? こんなんじゃいくつ命があっても足りゃしないよ」

 

「いっつもこうですね。さあ家探しと行きましょう」

 

 

武器庫というだけあって、中は小火器や弾薬、装備類で満載だ。通路の方で待機していた間防衛大臣もやって来たようで、その辺のガンラックを眺めている。ちなみにそのガンラックに積まれているのは89式小銃だ。

 

 

「なんというか、パッと見しまわれてるのは日本製の武器ばっかですね。お、18式(18式防弾ベスト)

 

「それ私にもくれ、あとそっちの89式も。そうだね、てっきりカラシニコフとかその辺を大量に持ち込んでると思ってたが。大臣もこれ着たほうがいいよ」

 

「ありがとうございます。そうですね……よいしょ、なぜ彼らが『ながと』を乗っ取ったのか、その目的が分かりません。アマテラスさん、今『ながと』はどの辺を航行しているのでしょうか。私達が拘束されたのが18:00前。その時点ではまだ三宅島沖を南下中だった筈ですから、本土からはそれほど離れていない筈ですが」

 

 

18式防弾ベストを着ながら、間防衛大臣はそう疑問を口にした。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()2()0()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

3人の時間が一瞬固まった。

 

 

 

 

「浦賀水道航路、って言うと……」

 

「……貨物船とかフェリーが東京湾に入る際に通過する航路、です、よね?」

 

「え、ええ……確かそうだったと記憶してます。アマテラスさん、横須賀は、横須賀港はもう通過してるんですか?」

 

《そうですね。予想進路にはなりますが、このまま行くと中ノ瀬西側海域を北上する事になるかと》

 

「つまり、その、どの港に行くでもなく、東京湾の奥へ奥へと行っていると」

 

《端的に言えばそうなりますね》

 

「……いよいよ訳がわからない。日本から離れるんじゃなく逆戻り? その楠木って奴は何考えてるのさ。なんで自分から逃げ場のない場所へ突っ込む? 自殺志願者か何かかい」

 

「逆じゃないでしょうか。湾の奥まで行ってしまえば、東京、横浜、川崎、千葉、横須賀、木更津などの重要港湾、霞ヶ関の官庁街、市ヶ谷の本省、それに、10万人以上の人々が湾岸地帯で暮らしています。楠木一佐の狙いがどうであれ、これら全てに刃を突きつけるも同然ですよ……!?」

 

「そうか……それ人質に何か交渉でもする気かね、政府と」

 

「昔なんだったかの映画で見たような展開ですねこれ……………………」

 

 

そこまで言っためぐねえが何かを考え始めた。

 

 

「佐倉? とりあえず今はここから出ないとマズイんじゃないかい。……佐倉? 佐倉? おーい?」

 

「あらあら」

 

《乗員が接近中です。接敵まであと2分》

 

「ヤバッ。行くよ佐倉!」

 

 

88式鉄帽2型を被った神郷警部が、めぐねえを無理やり引っ張って通路に出る。同じく88式鉄帽2型と18式防弾ベストを着用した間防衛大臣も後ろに続く。

 

 

「佐倉さん、どうされたんです? 顔色が悪いようですが」

 

 

そう心配するような間の声に、神郷警部もめぐねえの方を見る。

先ほどまでの顔色が嘘のように、口元に手を当てたまま青い顔をしていた。

 

それは、まるで、何か『最悪の可能性』に思い至ったような───

 

 

「あ、アマテラスさん。アマテラスさんって、艦内の事全て把握できてるんですよね」

 

《何を当たり前な事を。私はあらゆる情報を観測できる───》

 

「ふざけてる場合じゃないんですよ」

 

《アッハイ、申し訳ありません。さ、佐倉巡査部長、どうされたんですか?》

 

 

めぐねえは、ひとつずつ言葉を選ぶように、口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦内に、ながとには"()()()()()()()()()()“武装、装備、物資がありませんか? 何かこう、“()()()()()”といった感じの、マズそうな奴が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう少し、もう少しなんだ。邪魔をしてくれるなよ、ポリ公が……」

 

 

CICで、楠木一佐がギリ、と拳を握りしめた。

*1
名推理




佐倉恵
前世でそういう感じの映画を見た

神郷警部
『通常に非ず』?

間 由里
『通常に、非ず』……えっ、まさか……

警視庁
持てる戦力を総動員中。人手が欲しい。

警備艇なのはな
暗闇の中を引きずられながら、そういえば県警本部に『ながと』の名前出してねえなとようやく気づいた。ところでここどこ?

千葉県警
警視庁に不審船絡みの応援要請をしたらなんか不審船が護衛艦『ながと』かもしれないという情報が返って来た。えっ!!!???(驚愕)
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