《前回の誤字報告者兄貴姉貴》(敬称略)
でぃせんと、水上 風月
ありがとナス!
12/26 ナンバーつけ忘れた奴がいるってマジ? あと東京マーチスも観音崎じゃなくて横浜市中区の三管本部に入ってるらしい。うぉおん(当該文を削除・修正)
めぐねえ一行が武器庫を制圧し、警視庁が千葉県警からの応援要請でてんやわんやし、警備艇なのはなが大人しく曳航されている頃。
神奈川県横浜市中区 三管本部
東京湾海上交通センター、通称『東京マーチス』。
浦賀水道航路、中ノ瀬航路を中心に、東京湾の海上交通の管制を行う、海上保安庁が運営する施設である。
その施設では現在、ある船舶に意識が向けられていた。
十数分前に、浦賀水道航路に途中進入した小さな船舶である。
現状の速力は28ノット、浦賀水道航路の速力制限である対水速力12ノットを大幅に超える速力だ。
AIS、船舶自動識別装置によれば、その船舶は……千葉県警水上警察隊特大型警備艇『なのはな』。
少し前に犯罪組織から押収されたのを戦力化した、80年前のコルベットだ。
そんなオンボロコルベットが、浦賀水道を制限速力16ノットオーバーで北に突っ走っているのである。
「なのはな、なのはな、こちら東京マーチス、東京マーチス、感度いかがでしょうか」
先ほどから職員がずっと国際VHFで呼びかけているが、警備艇なのはなからの返答はない。
「監視カメラの映像出ました」
別の職員が声を上げた。無線で呼びかけ続けている職員以外が、映像が映し出されたモニターの前に集まる。夜間でも問題なく見えるように暗視機能がついた高性能監視カメラは、浦賀水道を白波を上げながら走る『なのはな』を捉えた。
「…なんで灯火を全部消してるんだ? てか、初めて見たけどだいぶ古めかしいな」
「人はいますね、ここと、あと
「あの、今wikiで調べたんですけど、なのはな…フラワー級コルベットって16ノットしか出ないらしいっス」
若い職員が自身のスマホの画面を周囲に見せながら言った。確かにそこには『16ノット』の文字が。
「16ノット……今出してる速力と12ノットも違うじゃないか。どんな魔改造したんだ」
「……ちょっと失礼」
ある職員がPCのマウスを取り、監視カメラの映像をズームアウトしていく。
なぜそんな行動に出たのかは、すぐに分かった。
「なんだこりゃ、『なのはな』のすぐ前に船がいるじゃないか」
「ズームインし過ぎてて見えなかったんスね多分」
「にしても近過ぎだろ、移乗検挙でもしてるのかよ」
映像はどんどんズームアウトされていき、『なのはな』の前を走る船の全貌が見えてくる。
毎日、500隻以上の船舶の出入りを司る東京マーチスの面々である。その船…いや、艦が何かはすぐに分かった。
護衛艦ながとだ。
つい数時間前、随伴艦を引き連れて浦賀水道を南下した海上自衛隊の最新鋭大型護衛艦が、今度は千葉県警のオンボロ警備艇を引き連れての北上である。一体何がしたいのか。
「……あの、これって」
「ああ、うん、言いたい事は分かるぞ。俺も分かった」
「一体全体どうして『ながと』がこんなとこにいるんだ? むらさめが見つかったのは三宅島沖だろ」
「しかも無灯火、トモに千葉県警の警備艇を引き連れてのオーバースピードっスよ。なんか曳航してるっぽく見えますけど」
「『ながと』が『なのはな』を? 余計訳わかんねえよ」
「……待て、レーダーに『ながと』の光点って映ってたか?」
「映ってないです!『なのはな』の物しか!」
「もっと訳わかんなくなったぞオイ。マジで何がどうなってんだ」
状況はさっぱり理解できないが、神奈川県警と横浜海上保安部と海自が合同で『ながと』を捜索している、という情報は東京マーチスにも入ってきていた為、責任者は横浜海上保安部へと通報を行った。
『浦賀水道北部にて護衛艦ながとを発見。後方に千葉県警察所属の警備艇なのはなを曳航しながら北上中。22時20分ごろ第二海堡を通過。中ノ瀬西側から東京湾奥部へ向かうと見られる』
神奈川県横須賀市
自衛艦隊司令部
海上自衛隊・神奈川県警察・横浜海上保安部 合同捜査本部
本来であれば、自衛隊と警察の合同捜査というのは余程の重大事件でなければ組まれない。海保も加わるとなれば尚更だ。しかし、今回みたいな事案こそまさに『重大事件』だろう。
➀護衛艦ながと乗員への傷害
➁護衛艦ながとの強奪
➂随伴していた護衛艦むらさめを攻撃
➃防衛大臣とSP2名の行方不明
もうこの時点で戦後日本の犯罪史にも残る大事件だ。なんだかんだ治安最悪の万和日本だが、流石に護衛艦が強奪されるなんて事案はそうそう起きない。今回起きてしまったわけだが。
そういうわけで、海上自衛隊と神奈川県警、そして横浜海上保安部の三者が組んで対応を開始した。
ながと乗員(真)の検査・治療、むらさめの消火に乗員の救助、ながとの捜索等々。
むらさめの救難とながとの捜索に於いて、海保と神奈川県警はよく働いた。動かせる艦艇(『組織』事案で押収されたもの含む)と航空機を全て投入したのである。
だが。
肝心の海上自衛隊からは航空機こそ投入されたものの、横須賀所属の第6護衛隊───DDG-174 きりしま、DD-110 たかなみ、DD-111 おおなみ、DD-116 てるづき───を含めた水上艦艇が投入される事はついぞなかった。
これに関して海上自衛隊は、事件後『緊急出港が間に合わなかった』と釈明しているものの、関係者からのリークでは、再度の護衛艦強奪を恐れた防衛省上層部からの命令で、水上艦艇乗員の個人確認を徹底的に行っていたから間に合わなかった、という情報もある。
まあ、この件については事件後も海上自衛隊や防衛省が公式に口をつぐんだままなので事実が明かされる事はしばらくないだろう。
閑話休題。
海空で全力を注いだ神奈川県警と海上保安庁、空では空自と連携したりして割と頑張った自衛隊だが、ついぞながとを捕捉する事は叶わなかった。
なぜなら、すべての航空機や艦艇が、三宅島北東沖で発見された護衛艦むらさめの周辺、および同艦から南方向を捜索していたからである。
そう、誰も、ながとがむらさめを攻撃したのちすぐに北上し、レーダー欺瞞を行って千葉県富津市沿岸部に潜んでいた、だなんて予想できなかったのだ。
事情が変わったのは、22時も半分に迫ったあたり。
突然、警視庁から捜査本部に応援に来ていた警視庁捜査一課の刑事*5から、合同捜査本部のメンバーにこんな情報が告げられた。
「えーと、警視庁捜査一課四係の三好です。ついさっき本庁から入った情報なんですが、22時ごろ、むらさめ救援の為千葉県沿岸部を航行していた千葉県警の警備艇『なのはな』が、すべての灯火を消して闇に潜んでいた大型の不審船と衝突、その後激しい銃撃を受けたそうです。現場の機転で、なのはなは不審船の死角に隠れて追尾中。現在位置は不明です。……で、もう察した方も一部いらっしゃるようですが、警視庁ではこの大型の不審船が『ながと』ではないかと考えています。現在、『ながと』に移乗検挙を試みる為戦力を動員中です」
三好がカンペを見ながらそう言い切った瞬間である。捜査本部として使っている講堂の扉が開け放たれ、海保の制服を着た職員が駆け込んできた。
その職員は、他の海保職員が集まっていたエリアに駆け込み、何か話し込んでいる。
1分ほどすると、そのエリアの方から別の海上保安官───確か割と偉い人だったはず───が難しい顔で壇上に上がってきた。
三好がとりあえずマイクを渡す。
「海保の尾鷲です。先ほど東京マーチスの方から通報がありまして、護衛艦ながとが千葉県警の警備艇、さきほど話にあがりました『なのはな』を曳航しながら浦賀水道航路を北上、22時20分ごろ第二海堡を通過して、中ノ瀬西側に向かっていると見られます。これから海保でも対応を協議しますので、関係各機関でも対応のほどよろしくお願いします」
捜査本部は混乱の極致に陥った。
──────
───
:あれやな、シンゴジラ生で見てる気分や
:酒持ってこよ
:ビールはまだあったかな〜
───君たちさぁ……
応援として横須賀まで来たはいいものの、やる事が警視庁との連絡役ぐらいしか無くて割と暇を持て余している三好、そして公僕たちの喧騒を冷めた目で見ているユリアの2人組である。
「
「むしろこの状態が正常なんじゃないかな、最近の警視庁がおかしいだけで。まあ犯罪者はこっちの都合なんて聞いてくれないからね」
:それはそう
:でも人口密集地でA-10の
:A-10が出た後の現場にやってきた国交省とか都の人の顔凄いもんな
:万和日本は土建屋の仕事が尽きないな!!!
「……それで、メグミとは連絡取れたの?」
「いや全く。警察無線もスマホもPフォンもダメ。湾内にいるなら繋がると踏んでたんだけど」
「そっちじゃなくて、ミヨシとメグミしか使えないやつ」
「……そっちもダメだねぇ」
:にしても殺し屋ネキ掲示板の存在に気づくの早かったなぁ
:どっちかって言うとアネゴ&めぐねえしか使えない謎の通信手段って感じの解釈してそうだけどな、見た感じ
スレ民が言う通り、ユリアは割と早期に掲示板の存在を察したようだった。
まあ警視庁襲撃の時から薄々勘づいてそうな感じはしていたので、三好はもう隠し通すのを諦めている。存在バレしようが実際に掲示板を観測できる訳もない、という判断もあっての開き直りだ。
:めぐねえー。おーい。生きてたら返事しろー。
:スレ主の表示はどうなってる?
:まだめぐねえのまんまだから、どういう状態にせよ生きてるのは確かやな。
:ちょっと前に別のスレの転生者が『死んでる方がマシな状態』になってた事があってな…
:やめろや縁起でもない
転生者掲示板のスレッドを起こした者、いわゆる『スレ主』とか『イッチ』とか呼ばれる転生者が、原因はなんにせよその生命を再び失った場合、スレ主はnull状態、要は存在しない状態となるらしい。
ただし、そのスレ主の世界に転生者が複数名存在する場合、スレ主はその転生者に切り替わる……と、少し前に『転生者掲示板管理者』なる存在が夢に出てきてレクチャーしてくれた。
ちなみにその時、魂の同居人である京都の邪神がめっちゃビビってた。『格が違いすぎる』とかなんとか言っていたが、神の世界にも上下関係的なアレがあるのだろうか。
「でも、行かないんだね」
ユリアがそんな事を口走った。
「何が?」
「メグミを助けに、だよ。普段だったら目の色変えて助けに行くのに」
「……私普段そんな風に見えてるの?」
「割と」
:まあ感覚共有してる時は割とそんなだよな
:《ラドンもそうだそうだと言っています》
:『組織』の一件の時は凄かったよな。事件終わるまで目にハイライト入ってなかったもん
:恋愛感情というよりは単純に友好の感情? みたいな?
スレ民もそうだそうだと言っている。
「そう、かぁ……自分じゃ意識してなかったな」
「それで、行かないの?」
「そりゃあ、行きたいけど。一応警視庁との連絡役としてここにいる訳だし、海の上にいるんじゃ手出しのしようがないし」
「行かないんだ」
「……何ユリア、その顔は」
「私は行くよ」
ユリアは立ち上がりながらそう言い切った。
:ん?
:流れ変わったな
:(流れ始めるUC)
「は、え?」
「メグミを殺すのは私だから、私が殺す前に私以外のやつに殺されると私がとても困る。あなたは…メグミの直属の上司であるミヨシは、メグミに命を救われたミヨシは、ここで自分の肩書きに掴まれたまま悶々としてるといい」
:煽る煽る
:いいぞもっとやれ
:殺し屋ネキ言うねぇ!
:いい“目”をしている……“覚悟”の目だ。
あの時の、女子寮でカランビット片手に立ち向かって来た『目』をした銀髪の元暗殺者は、そう言って講堂を出て行った。
「……」
:……ほんで、アネゴは?
:まさか、あそこまで煽られて行かないなんて事ないよなぁ?
「……わた、しは……」
:……なあアネゴ、いや、三好警部補。これは、数多の戦友の屍を踏み越えて来た者としてのアドバイスだがね
落ち着いた男性の声。EDF兄貴だ。
:迷った時はとりあえず前に進めよ。立ち止まるも後ろに下がるも自由だし、進んだ先が正しい答えとも限らん。だが、立ち止まったり後ろに下がったそこには、必ず後悔がつきまとうぜ。
:(I)<ミヨシ…
「……〜〜ッ、やってやろうじゃねえかこの野郎!!!!!!」
:草
:よう言うた!それでこそ漢や!
:女の子やぞ
:(I)<ミヨシ、貴女がこの先に進むことこそ、私の新たな憧れです。どうか、どうか貴女の旅路に、溢れんばかりの、祝福を。
突然警視庁との連絡役の刑事が大声をあげて立ち上がった事に唖然としている神奈川県警、海保、海自の面々の困惑の視線を背に、三好は講堂の扉を蹴破った。
本来なら今回のながと編では三好ネキは出番薄味の筈だったんですが気づいたら講堂から飛び出してました。な、何をする気だ!?(困惑する投稿者)