「ん?良い茶葉を使ってるな?」
「お、分かるんか?」
「いろんなタイプの女子と話を合わせるためには、色々知っておく必要があるんだよ」
六課の課長室。
試合の後医務室に四人を運び終えた俺は、そこで茶を啜っていた。
ちなみに、この茶を入れたのは妖精サイズで頑張ったリインだったりする。
「美味しかったですか~?」
「お~。美味かったぞ~」
「えへへ~」
そう言って、リインの頭をなでる。
意外と美味くてビックリした。
これはマジ。
「これがあの汚い勝ち方をした男と同一人物とは」
「………何が言いたい?」
「【………鬼も笑うんですね】」
まさかの伏兵。
「え?あれ?ジャンヌさん?」
「あっははっはっはっははっ!!!!!」
「笑い過ぎ!」
「【………でも、そんなマスターだからこそ、あの様なことを教えられるんですから】」
それはなんだ?
落として上げているのか?
「せやなあ。私ら上司が教えるのが一番ええんやけど、良くも悪くも正攻法しかしてこんかったからな」
「そうですね~。まあ、上層部が管理局のイメージのためにそのような手法を取ったためでもありますけど~」
まあ、こういう組織はクリーンなイメージでなけりゃあ、大衆に受け入れられないからな。
「ククッ。管理局は正義の味方の良い人たちの集まりですってか?」
「ま、そういうとこやな」
「【………個人的には、やはり組織とはかくあるべきかと】」
確かに、それが理想だがなぁ。
「組織なんてのは所詮人の集団。どう足掻いても膿は出る」
「六禄君みたいなな」
「俺の場合は膿じゃなくて服毒自殺だろうが」
自分から引き入れてんだから、な。
「あはは!そうやな」
「【………というか、ご自分が毒であるという自覚はあるのですね】」
まあ、それはな。
そんな感じで話していると、
コンコンッ
と、扉が叩かれた。
「失礼しm「ここはトイレじゃねえ。やり直せ」………何で貴方にそんなことを言われなきゃっ!」
「俺は高校入試のときに、それで前期の面接試験を落とされた」
「「「「「「………………………………」」」」」」
なんとも言えない空気になる室内。
そして扉が閉まり、
コンコンコンッ
「失礼します。『フォワード部隊』四名、医務室から復帰しました」
「はいな、了解」
「それで良いんだ」
入室した四人。
それをヘラヘラ笑いながら確認する。
明らかにオレンジツインテが睨んできているが、そんなことは、どうでもいい。
「さて、それじゃあ早速訊くけど、皆なんで負けたか、いや、その前にどうやって倒されたかが分かる人はいるか?」
「「「「………………………」」」」
悔しそうに、俯く四人。
まったく、たった一回の敗北でそれとは先が思いやられるな。
「じゃ、分からないみたいやし、六禄君とジャンヌちゃん解説頼むでー」
「手札を明かしたくはないんだが?」
「報酬倍プッシュ」
「お前ら掌見てみろ」
「【………………マスター】」
ジャンヌが呆れたような声を出す。
正直、少し心が痛い。
「………何もないですよ?」
「よく見ろ僕っ娘」
「私は違いますよ?!」
いや、なんか似合いそうなんだもん。
「あ!分かりました!昨日までなかった黒子があります!」
「キャロちゃん正解」
正解したキャロちゃんには、茶菓子で出ていたもなかをあげよう。
「あ、ありがとうございます」
うん。
ちゃんとお礼が言えて偉い偉い。
さて、説明に入ろうか。
「あれは『マーキング・バインド』っていうんだ」
「【………まず、その黒子は極限まで絞られたマスターの魔力で作られた『マーカー』です。私は機能的に、マスターの魔力から位置を特定し捕捉することに長けています】」
「………あ、あの握手の時」
ティアナが気付いたな。
「そうだ。あの時に仕込ませてもらった。事前にはやてからは試合をするって言われていたしな」
第一、俺は普段いちいち丁寧に握手なんてしないしねぇ。
「後はお前らがどう動こうと、お前ら自身にマーキングしてあるから捕まえるのは簡単だ」
「【………まあ、そのための捕捉とかは、私がしなくてはいけないのですが】」
しかも、マーキングをするためには1.5秒以上肉体的接触をしなくちゃいけないし。
それを考えると、握手って超便利。
ま、これは言わなくてもいいことだな。
「これが『マーキング・バインド』の全容だ」
「でも!そんな試合の前に何かをするなんて卑怯な手段なんかっ!」
ティアナが激昂する。
確かに卑怯だ。
それは自分でも認めよう。
卑怯汚いは敗者の戯言とは言うが、どうせ今のこいつに言っても聞かんだろう。
だが、卑怯な手の何が悪い。
「その卑怯な手段に負けたのは、お前たちだぞ」
「ッ!」
お、怯んだ怯んだ。
「俺はお前たちに勝つために、策を使っただけだ」
「だからって!」
「じゃあ訊くが、四対一は卑怯じゃないのか?」
「そ、それは!」
「俺は不利な状況の中でも勝つために策を練り、それを使った。お前たち、いや、お前は数の差に、俺がデバイスを初めて使うという事実に、フェイトと戦った時は鉄パイプだったということ。そして初対面から俺が見せ続けていた表情や仕草、重心や隙その他諸々から、
「………はい……………」
「わ、悪いのはティアだけじゃっ!」
スバルがティアナをかばう。
でもなぁ、
「はやてから聞いたが、そいつは司令塔なんだろう?」
「え?そ、そうですけど」
「司令塔ってのはな、勝つために策を練る義務がある。チームを勝たせる義務がある。そいつの指示を守れないで負けたらお前たちが悪いが、今回は違う。今回のはそいつが悪い」
「……………………」
………黙ったか。
さて、止めを刺すか。
「お前たちは、負けたんだ」
「………ッ!!」
ダッ!
「あ!?ティア?!し、失礼しました!」
「ま、待ってくださいよ!ティアナさん!」
「私も行きます!」
ティアナが部屋から飛び出て、その後を三人が追う。
部屋から出る間際に見えたティアナの頬には、確かに涙が伝っていた。
「………はぁ」
全員の足音が聞こえなくなると、思わずため息が出た。
「【………お疲れ様でした。マスター】」
「ごめんな、六禄君。嫌われ役を引き受けてもらって」
「本当だよ。報酬倍プッシュじゃ足らんくらいだ」
「はは。そうやな」
まったく、女子に泣かれるってのは、どうにも堪えるな。
これだからベッドの上以外で女を泣かせたくはないんだよ。
「でも、よくあそこまで言ってくれたなあ」
「必要なことだったんだろ?だから俺に、フェイトとあんな戦い方をした俺に新人たちを戦わせた。それを考えれば、な」
そうでなければ、俺と新人たちに試合をさせようなんてのは、思わないはずだ。
「………あの子達は、これから実戦に投入されて戦うことになるんや。そこでの戦い方や心構えなんて、訓練校や私たちは教えられないからな」
「まあ、
管理局が軍隊一色ならまだしも、警察機構を備えていることの弊害、か。
軍人ならともかく、警察はできるだけクリーンでなければいけないからなぁ。
「ま、とりあえず金をくれ。今からちょっと町に行ってみたいんだ」
「あ、そなら今日はもう仕事ないし、私が案内してあげるわ」
お、それはありがたいね。
「じゃ、頼む」
「任しときー」
ソファから立ち上がり、部屋を出る。
隊舎を出たら、はやてが腕を絡めて、
「デートっぽいなぁ」
とか言ってきて少しビックリした。
まあ、こいつだしなぁ。
「ところで、女の子を追い詰めるのが、やけに堂に入ってたん見えたんやけど?あれ、なんでなん?」
車に乗り込む直前、はやてがそんなことを訊いてきた。
ふむ。
そんなのは決まっているだろう。
「俺はどっちかというと、攻めだからな」
「ああ、なるほど」
納得しちゃったよ。
ま、そんなことは、どうでもいいか。
さてさて、『ミッドチルダ』の首都、『クラナガン』にはどんなもんがあるのか楽しみだ。
女の子の泣き顔は、ベッドの中だけ。
それが主人公の矜持。