車を適当な駐車場に止め、『クラナガン』の雑踏をはやてと一緒に歩く。
「いい街だな」
「せやろ」
誇らしげなはやて。
まあ、この町を守っているのは、こいつらだしなあ。
「人に活気があって、金の循環もいい」
「結局お金かい!」
当たり前だろう。
社会という共同体の中で、金は重大なファクターだぞ。
「と、ん?」
あの看板は………。
「どうしたんや?」
「いや、楽器屋を見つけてな」
「楽器弾けるん?」
「弦楽器管楽器打楽器、何でもござれだ」
「それも?」
「女と話を合わせるため」
楽器、というか音楽は話のきっかけにしやすいんだよね。
しかも、音楽の趣味は人それぞれだから、それこそ深窓の令嬢系やギャル系、高飛車お嬢様系や堅物姫様系まで万能に話せるし。
「ま、一番得意なのはギターだな」
「予想通りやな」
どういう意味だ、こら。
「行ってみる?」
「いいのか?」
「今日は六禄君が行きたいとこに行くんや。私はその案内」
「それはありがたい」
二人で楽器店に入り、店内を物色する。
とりあえずギターのコーナーに行ってみるが、やはりと言うか何と言うか。
「地球のヤツよか、性能がいいのが多いな」
「まあ、技術力が抜きん出とるからなあ」
どれもこれも、地球で値の張るやつよりも音が良い。
と、これは。
「お、それが気に入ったんか?」
「まあな」
見てくれは『レスポール』みたいなんだが、音はそれよりも良さそうだ。
「すいませーん。これ弾いてみていいですか?」
「大丈夫ですよ」
適当に弦を調整し、店員からピックを借りる。
「なんて曲を弾くん?」
「………『ロックンロール』?」
「【………何で疑問系なんですか?】」
いや、だってなあ。
「音楽関係、特にロックは死んだ俺の爺さんに習ったんだが、その爺さんがよく言ってたんだがな」
「うん」
「『男がロックをしたけりゃあ、黙ってテメーの反骨精神(ロックンロール)を掻き鳴らせ』ってなあ!!」
瞬間、アンプを使っていないのに轟く爆音。
その音に陶酔し、思うが侭に弦にピックを叩きつける。
やっぱり良いね、この感覚は。
大体五分程度か。
ある程度満足するまで弾き、はやてに向く。
「どうよ?」
「すっごいやん!!なに今の!曲のテンポとか音程とかめちゃくちゃなのに、妙な安定感や一体感があって!んあぁぁっ!」
両手を包むように強く握り、顔を思いっきり近づけるはやて。
………なんか、凄く興奮しているな、こいつ。
「まあ、好評な様で良かった」
「ロックって、こういうことやったんやね!」
「『ロックンロール』の意味するところは、反骨精神だからな。下手糞でも、めちゃくちゃでも、思いの丈を叩きつけたらそれが『ロック』だ」
あれだよね。
人間死んでもロックな心を失っちゃいかんよ。
俺にロックを教えた爺さんは、婆ちゃんに死ぬまで頭が上がらなかったけど。
「で、店員さんこれ幾ら?」
「あ、買うんやね」
そりゃあね。
「12万円になります」
おぉっとぉ。
「俺、手持ち四万なんすけど」
買えねーよ。
「それなら六課の経費で立替たるわ。今日のやつも、またちゃんと増額したかったし」
「お、じゃあそんな感じで」
よかったよかった。
こいつを買えないってのは、結構惜しかったからな。
「カードでお願いします。あ、領収書は『管理局機動六課』で」
「分かりました」
サービスで変えの弦とケースをつけてもらい、店の外に出る。
店の中だと気付かなかったが、外はもう真っ暗だった。
「じゃ、帰ろっか」
「そうだな」
来た道を戻り、駐車場へと向かう。
「帰ったら、六禄君とジャンヌちゃんがうちに来たお祝いやな」
「お、そいつはいいね」
「【………ありがとうございます】」
はやての作る飯は美味いからな。
楽しみだ。
「そや。帰ったら、皆にも六禄君のギター聞かせたってえな」
「べつにいいぞ」
「やった!」
本当に嬉しそうに、左手でガッツポーズをするはやて。
さてさて、なにを弾いたものやら。
期待には応えないといけないな。
二人で並ぶ帰り道。
はやての右手と、俺の左手は繋がっていた。
女が絡めば、大体のことはできるようになる主人公。
というわけで、今回は甘い話を目指してみました。
………どういうわけだ?