翌日、『機動六課』に出勤すると、
「貴方が『水無月 六禄』さんですね?私は貴方が昨日戦った四人の教導をしている、『高町 なのは』です」
原作の主人公にエンカウントしてしまった。
なぜか嫌な予感しかしないんだが。
「さあ!いくよ!」
「三日連続で試合って、どんなハードスケジュール?」
なんか、俺の意思決定のないまま訓練場に連れてこられて、俺の自由意志のないまま試合になってしまった。
しかも『非殺傷設定』のせいで半ば殺し合いだよ?
どんだけハードだよ。
「【………前回はほぼ何もせず倒してますよね?一歩も動いてませんでしたよね?】」
「昨日は酒が美味かったよね!」
「【………ハードにしているのは、自分じゃないですか】」
昨日、八神家の面々がしてくれた祝いの席で酒を飲みすぎた。
完全な二日酔いだよ。
はやてがうまいこと薦めてくるし、ヴィータは延々と俺に酒を注(つ)いできたし、酔ったシグナムはイッキを強要してくるし、シャマルなんか愚痴ってきたし。
彼氏できないとか、彼氏できないとか、彼氏できないとか。
それに付き合って俺も飲み続けてたら朝だったよ。
おかしくね?
ザフィーラなんて、開始二時間で酔いつぶれてとっくに寝てたよ?
「なにをゴチャゴチャ言ってるのかな?あの子達を倒したように、私と戦って!」
「なんで?」
そもそもそこが分からない。
「あんな卑怯なやり方で皆の努力をバカにした、皆が勝てなかった貴方を倒して、皆の正しさを、私たちの正しさを証明するために!」
「ああ、なるほど」
愛弟子たちが、自分の理想の集大成が、実にあっけなく、実に容易く、実に情けなく、実に惨めに、実に虚しく負けたからか。
………後、バカにした記憶はないんだが、そういう風に見えてしまったか?
なるほどなるほど。
「いいねぇ。そういうのは、嫌いじゃあない」
「私は貴方が嫌いなの」
「ククッ。つれないねぇ」
理想やら信条がどうとか、そんなことは、どうでもいい。
大概の奴はあれだけやられるのを見て、俺とヤル気すら失うからなぁ。
「ま、そもそも女の頼みは聞いてやるのが、男ってもんだしな」
「【………それでは、寝言で二股がバレた時の言い訳をするのは止めてください】」
………いや、寝言の話をされても。
「それじゃあ、カウントスリー」
「あれ?!勝手にカウント始まってる?!」
人のことを卑怯とか言った割りに、貴方も大概ですよなのはさん?!
「ツー、ワン、ゼロ!『ディバインバスター』!!」」
「砲撃速度速くねっ?!」
「【………まあ、彼女は『エース・オブ・エース』、『管理局の白い悪魔』と呼ばれるほどの実力者ですし】」
「冷静だな!?おい!?」
開始早々にぶちかまされた、明らかに対人に使ってはいけないレベルの砲撃。
桜色が綺麗だが、これはトラウマになるぞ。
桜クラ病になるぞ。
一生花見ができないって、どんな拷問だよ。
「【………余裕ですね?】」
「いやあさぁ。ほら、アレ(・・)があるから」
「【………まだ構想段階ですよ?】」
迫り来る砲撃。
もう、避けることができない距離まで近づいていた。
「いいから、やるぞ」
「【………了解しました。マスター】」
が、
「『混濁の壁』」
それは俺の足元から顕れた、黒い壁により阻まれ、
「ふむ。上出来上出来」
「【………無事に成功しましたね。マスターがご無事で何よりです】」
しばらくの間拮抗していたが、じきにそれも収まり残ったのは壁だけだった。
「な、何それ?!なんで私の『ディバインバスター』を防げたの?!」
「名前は『混濁の壁』。なんで防げたのか等詳細は教えられないが、ジャンヌのサポートなしでは使えない欠陥品さ」
俺の分体の内、400の結束を持って作る壁だ。
今回の砲撃みたいに、俺の体格や体重では物理的に吹き飛ばされてしまうような時のために考えていたんだが、まさかぶっつけ本番になるとはな。
『原初の土』の例があるから、できるだろうとは思っていたが。
まあ、ジャンヌのサポートがなければ、壁の形を維持するのはまだ難しいか。
『混濁の壁』に使った分体を体内に戻して、と。
さて、
「今度はこっちの番だぜ?『エース・オブ・エース』さんよぉ」
どう攻撃したもんやら。
なのはが残念な子になっているように見えますが、人間、立場や理屈ではどうにも制御しきれない感情というものがあるんです。
実際、この時点で彼女は19歳。
まだまだ人生経験の足りない子供ですから。