「しかし困ったな」
「【………困りましたね】」
距離が離れていたとはいえ、
「あんだけ驚いていた直後に飛ばれるとは」
「【………マスターは飛行魔法に適正がありませんしね】」
攻撃する方法がない。
いや、分体の中にも鳥とかいるから、それを使えばいいんだろうが、あまりどんな種類のやつがあるとか教えたくはないし、記録に残したくないし。
そして最大の問題が、
「魔法を使えるようになって、まだ二日という事実」
「【………根本的に、レパートリーがありませんからね】」
最初からジャンヌに搭載されていた補助魔法とバインド各種、それから『混濁の壁』くらいしかない。
………そう、攻撃魔法がないんだ。
はやてたちが、『使い魔もあるし、別にいいだろう』的な考えをしたのがよく分かる。
「しょうがない。ジャンヌ、アレを出してくれ」
「【………はい、どうぞ】」
ジャンヌの持つ保管機能でしまっていた物を出してもらう。
それは、
「鉄パイプで作った、お手製バズ~カ~(声:大山の○よ)」
「【………言ってはおきますが、『質量兵器』ですよ?それ】」
気にするな。
手が後ろに回っちゃうから。
「ッ!?またそんな『質量兵器』なんて卑怯な物を!」
なのはが何か言っているが、そんなことは、どうでもいい。
「あいにく、遠距離攻撃ができないんでねぇ!吹っ飛べや!」
導火線に火を着ける。
ドゴォンッ!!
という音と大量の煙とともに、適当にたくさん入れておいたパチンコ玉が発射される。
ちなみにだがこのお手製バズーカ、発射機構は昔の大砲の原理で、玉等に関しては火縄銃を意識して作っている。
ようするに、
「【………敵、一発も被弾していません。というか、途中で全て落ちています】」
「だろうね」
飛距離がなくて、命中精度も低い欠陥品ということだ。
命中精度を補うための散弾効果なのに、困ったもんだよ。
「………何それ?私のこともバカにしているの?」
「結果的にそうなったけど、そんな意図はない」
「そんなこと言っても、私はそう感じたの」
「そんなもん、俺の知ったこっちゃない」
未だ砲撃の煙の晴れないまま、淡々と行われる会話。
正直、傍から見たら怖いと思う。
まあ、兎にも角にもこのままじゃあ埒が明かないのもまた事実。
しょうがない。
「ジャンヌ。何体かの分体を解放するが、全部捕捉しきれるか?」
「【………任せてください。私はマスターが誰も殺めてしまわぬよう、作られたのですから】」
「ククッ!じゃあ、分体30解放」
声とともに、俺の全身から飛び立つ分体たち。
本当はもう少し出すつもりだったが、飛行できるものだけだとこの数になった。
「さあ、殺しあおう。『高町 なのは』」
「【………いや、殺したら問題ですから。それをしないための『非殺傷設定』ですから】」
分かってるよ。
気分だよ。
「こんな鳥の使い魔たちなんかっ!『アクセルシューター』!」
ガチャンッ!
という音ともに、薬莢と思わしきものが排出され多数の魔力弾が発射され、29の鳥たちに中る。
え?
30じゃねえのかって?
「コケ?」
一匹鶏だからスルーされてんだよ。
飛べよ。
飛びたてよ。
羽のない俺ですら、ビルの屋上から跳んだんだぞ。
何故全力を尽くさないんだ。
Why don't yo「【………残った弾がこちらに向かってきてます】」
「安心しろ。俺の分体たちは、まだ空(そこ)にいる」
分体と魔力弾の衝突後に巻き上がった噴煙に隠されて分かりづらいが、『十二の試練』により俺の分体たちにダメージはなく、撃墜を免れている。
あれらに突撃させれば、それでいい。
もちろん、
「コケ?」
最初から弾が中るどころか飛んですらいない鶏もだが。
てか、お前何もしないなら戻れ。
「『レイジングハート』の性能を舐めないで!まだ一体も墜ちてないなんて、分かってるから!」
ガシュンッガシュンッガシュンッガシュンッガシュン!!
と、今度は幾つかの薬莢「【………あれは『カートリッジシステム』ですね。前もって魔力を込めたカートリッジをロードし、使用者の魔力を一時的にブーストすることで、その魔導師が本来持つ力以上に魔法の効果を高めるシステムです。………使用魔法の威力の度合いに応じて、ブーストによるカートリッジの使用量が異なり、デバイスの変形にも用いられることもあります】」が排出された。
そして説明ありがとうジャンヌ。
ただ、さっきから俺の心が読まれているのは気のせいかな?
「【…………………………】」
よし!
戦闘中だから切り替えよう!!
「そんなゴチャゴチャと、随分と余裕なの。『ディバインバスター・エクステンション』!!!」
「いっ?!」
明らかに、先程の『ディバインバスター』とは威力が違うそれ。
辛うじて『十二の試練』の効果範囲内だろうが、あれで無傷なのは不味い。
しょうがない、ここは。
「『混濁の壁』ぇっ!」
ズドドドォォォオオオォォォォォォォオォォォッッッ!!!!
『混濁の壁』と『ディバインバスター・エクステンション』が激突し合い、壁が軋む。
この隙にこの場を離れ、無傷の理由を作る。
必要な分を離れるか離れないかの所で、吹き飛ぶような感じで壁を解除する。
そして、
ドオオオオオオォォォォォォォオオオオオォォォォオオオォォォォッッッッ……………………!!!
ザックリ言うならば、クレーターができた。
て、ちょっと待てや。
あれを人間に向けてぶちかましたのかあいつは。
そりゃあ、『管理局の白い悪魔』なんて呼ばれるよ。
『あかいあくま』なんて、めじゃねぇよ。
まあ、これでうまいこと『十二の試練』の攻撃耐性を誤魔化せたな。
て、ん?
「コケ?」
………なんか、爆心地で鶏がケロッとしてた。
あれ?
せっかく誤魔化せたと思ったのに、何してくれてんのあの鶏。
というか、『獣王の巣』の分体は、使い魔であり俺でもあるんじゃなかったの?
なんであそこでキョトンとしてんの?
見て。
なのはもキョトンとしてるから。
あ、パンツ見え………スパッツか。
いや、スパッツも下着といえば下着。
しかし、あれは中の本命パンツが見えないようにするために穿く物だ。
………つまり見せパンか。
て、ん?
待てよ?
………今攻撃すれば、勝てるよな?
「ククッ」
頭を振り、湧いた考えを消す。
ああ、そうだ。
「このまま搦め手しかできない、それでしか勝てないって思われるのも癪(しゃく)だよなあ」
「【………いいのですか?勝率は一気に下がりますよ?】」
何を言ってんだ。
「いいんだよ。女相手に正面斬っての斬った張ったができないってんじゃあ、男に生まれた意味がねえだろうが」
それにな、
「最初っから、俺の勝率は十割確定だ」
「【………でしたら、私に異論はありません。マスターのお気持ちのままに】」
「ククッ!お前は良い
鳥の分体たちをこっちに戻し、それぞれを空中で停滞させ足場を作る。
これで俺にも擬似的だが空中戦ができる。
「さぁて、いくかぁっ!」
鳥たちを踏み、跳び、掴み、身体を引き上げて接敵する。
それに対しなのはが飛び回りつつ、迎撃のために魔力弾をぶちまける。
さっきから何発も被弾するが、鶏のせいで攻撃耐性が知られた今、特にそれを気にする必要はない。
「クッ!さっきから何発も中ってるのに!」
「【It is not defended in particular(特に防御をされているのではない様です)】」
「何らかのレアスキルの可能性は?」
「【Even if I have the possibilities, I cannot conclude it to be it now.(その可能性はあるでしょうが、今は断定できません)You should confront him by "all energy fully opening" than it as always here(それよりも、ここはいつものように『全力全開』で彼に立ち向かうべきです)】」
「………それもそうだね」
吸血鬼の聴力で、奴らのやり取りが聞こえて来る。
『全力全開』、ねえ。
ふむ。
「おい、高町!このままじゃあ、お互いにジリ貧だろう!だから俺はこれから、今できる最高の一撃をぶちかます!だからお前も、最高の一撃で応戦しろ!それで決着だ!」
『高町 なのは』の最高の一撃。
うっすらしか覚えてないけど、確か『
「………………面白いの」
「【………Master(マスター)?】」
「その勝負!受けてたつの!」
相手の最高と自分の最高がぶつかり合って、それで勝者と敗者を決める。
いいねえ、これぞまさに男のロマンって感じで。
相手女だけど。
「【………それにしても、何故ここで最後の一撃に?】」
「なに、あのままだと魔力が尽きて、一方的な制圧砲撃をされそうだったからな。それに」
「【………それに?】」
「そういうのが、結構好きなんだよ」
俺も、『男の子』なんだよ。
そもそも、最近だと女性の細胞から精子を作るって技術ができて、女オンリーで子供だって産めるってんだから、生物学的にはもう男はいらないってんだから。
「戦うことを止めたら、逃げたら、男に生まれた意味がねえ!かかって来い!『高町 阿頼耶』ぁっ!!」
「誰それ?!違うよ!?私はなのはだよ?!」
あ、『
「すまん、間違えた」
「もう」
じゃ、仕切りなおして、
「かかって来い!『高町 なのは』ぁっ!」
「はい!」
「【………色々となかったことにしましたね】」
気にするな。
そんなことは、どうでもいいから。
「受けてみて!これが私の全力全開!」
「【『Starlight Breaker(スターライトブレイカー)』】」
「ジャンヌ。手の届くところまで近寄るから、どんなエゲツない砲撃の中でも吹き飛ばないようにしてくれ」
「【………『魔力ブースト』】」
鳥の群れをなのはまで伸ばし、一気に駆ける。
魔力で強化されたその速さは、結構なもの。
そして、
「『スターライトブレイカー』ッッッ!!!」
桜色の砲撃が、俺を飲み込んだ。
なんだかんだで男の子な主人公でした。