~Sideなのは~
許せなかった。
最初はただ、それだけだった。
訓練ではなく試合という、ルールの決められた状況で、あの子達の努力を嗤うかのように、握手という信頼や親愛を示す行為すら利用して、卑怯で汚い手を使ってあの子達をバカにするように勝ったあの人が許せなかった。
もちろん、そういう手段が必要なのはわかっている。
これでも『エースオブエース』として前線にいた人間だ。
けれど、感情はそうではない。
私だって人間なの。
………一部では『悪魔』とか呼ばれているらしいけど。
まあ、それはいいか。
とにかく、あの子達の頑張りを踏みにじった、彼が許せなかった。
なのに、今はそんな気持ちがない。
戦ってみれば分かった。
彼は普通に戦えた。
基本的な戦闘スタイルは、スバルと近いかな?
でも、スバルと違って才能のある戦い方じゃない。
才能はないが、幾たびの実戦の中で、ただひたすらに鍛えられた動きだった。
正邪全てをひっくるめて、勝つために、そして生きるために磨かれた戦い方。
資料では、彼は私たちと同じ『地球』の、それも日本の出身と仮定されている。
それなのに、なんでそんな戦い方ができるのかがわからない。
でも、これだけは分かった。
彼もまた、努力の人間なんだと。
だから、そんな彼が最高の一撃で勝負を決めると言った時は、嬉しかった。
彼の努力を、頑張りを見せてもらえるから。
間違いなく、『スターライトブレイカー』は私の持つ中で、一番の一撃の中に入る。
普通なら、『ディバインバスター』でも立っていられる人は少ない。
でも、彼なら。
そう思った瞬間、
ボフッ
「歯ぁ食いしばれぇっっ!!」
噴煙の中から、拳を振りかざして彼が現れた。
「【Protection(プロテクション)】
レイジングハートが、とっさに『プロテクション』をして防御してくれる。
でも、
「オラァッ!!」
「【………『ナックルブースト』】
バキャアッ!
彼のデバイスの補助により強化された拳には、急ごしらえの防御は通じなかった。
そして、そのまま拳が私の顔に吸い込まれ、
「………やっぱ、女は殴れねえ」
「え?」
なかった。
彼の拳は、私の顔のすぐ横で振りぬかれていた。
なにそれ?
私が女だから?
「バカにしないで!」
思わず、激昂してしまう。
私が女だからって、そんな理由で決着をつけないなんて、バカにするにも程があるの!
でも、彼はそんな私を見ても顔色一つ変えないどころか、むしろ誇らしげな顔で、
「バカになんざしてねえよ。ただな、男が女を殴ったら、そいつはもう男じゃあねえ。俺はな、男の看板を下ろせねえんだよ」
そう言った。
「………男の矜持ってやつなの?」
「ま、そうだな」
私にも、誇りやプライドはある。
だから、彼の言いたいことは分かる。
でも、
「じゃあ、どうやって決着をつけるの?」
私から一方的に始めたとはいえ、このままでは後味が悪い。
「ん?男と女の勝ち負けなんて、昔から決まってんだろうが」
彼は笑いながら、
「惚れたもんが負けだ。今日はお開き、どっちかが惚れるまでが勝負の期限だ」
そう言って、帰っていった。
「………そんなの、ズルイの」
たぶん、この勝負は私に凄く不利なの。
~Side主人公~
「さて、どうにかしてあのフェレットに惚れさせるか」
『誰に』惚れるかなんて、指定はしていない。
まあ、フェレットには恩を売れる、勝負には勝てる。
良いこと尽くめだ。
好いた惚れたは俺には重いんでね、俺は遠慮させてもらう。
自分が虚ろなのに、誰かを幸せにはできないからな。
遊びはいいけど、本気はいけない。
それが主人公の基本的な女性観。