魔法混沌アニマルむろく   作:逸環

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アベル視点からスタートです。


終わりと家族の形。

アジトに戻り、回復に使うポットにカインを放り込む。

あとはとりあえず、ドクターに報告だな。

 

今の時間なら、研究室にいるはずだ。

 

 

「む、アベルか」

 

「おう」

 

 

研究室に向かう途中の廊下で会った男。

その名は、『ゼスト・グランガイツ』。

 

 

「『親父』」

 

 

俺とカインの『父親』だ。

 

 

「カインはどうした?」

 

「左腕を持っていかれてな。今回復中だ」

 

「………そうか」

 

 

………この人の顔、父親の顔なんだよなあ。

身に覚えなんて一切ない子供なのに。

 

と、ん?

 

 

「アギトはどうしたんだ?」

 

「ああ、アギトなr「彼女なら今、ルーテシア嬢と一緒にお昼寝してるよ」………スカリエッティ」

 

 

おっと、これは研究室に行く手間が省けたな。

しかし、この二人本当に相性が悪いな。

親父がドクターを見る目が、クワットロがゴキブリを見るのと同じくらい冷めてたぞ。

 

 

「ドクター、ポットにカインをぶち込んどいた。左腕を持っていかれてるからよろしく。ちなみに『レリック』はない」

 

「カインの方はクワットロを向かわせているけど、君たち二人がいて『レリック』を奪えなかったのかい?それも、カインに重傷を負わされて」

 

 

まあ、そう思うわな。

 

 

「弟がいた」

 

「ほう、なるほど。納得だよ」

 

 

………俺たちが転生者だと知っているとはいえ、俺の弟だというだけで納得されるのも心外なんだが。

て、何時の間にか親父いなくなってるし。

どんだけドクターが嫌いなんだ。

 

 

「あ、そうだ」

 

「なにかな?」

 

 

前々から聞きたかったことを思い出した。

 

 

「どうやってお袋の卵子なんて手に入れたんだ?」

 

 

俺とカインは、『プレシア・テスタロッサ』と『ゼスト・グランガイツ』の受精卵で造られた試験管ベビーなんだが、親父はともかくとして、お袋は俺らが生まれるとっくの前に死んでたはずだが。

 

 

「ああ、そのことかい。彼女は強く、そして美しい魔導師だった。そんな彼女の遺伝子情報や卵細胞は、ありとあらゆる人間が欲しがった」

 

「まあ、写真で見たけどすげえ美人だったわな」

 

 

それは分かるっちゃあ分かる。

研究者的には、ぜひとも欲しい一品だったんだろう。

 

 

「そんな彼女が大病を患ってね、とある病院に検診に行った際に麻酔で眠らされている間に採取された卵細胞があったのだよ。それを『ナンバーズ』だけでは戦力に不安を感じた私が新たに強力な戦力を欲したため、スポンサー諸氏が入手、提供してくれたわけさ」

 

 

なるほどねえ。

疑問が解けてすっきりs『ガシャンッ!!』「キャアァッ!?」あぁん?

なんだ?

今の音は?

 

数十秒経って、音のしたほうから現れたのは、

 

 

「ちょっと!いい加減戻りなさい!」

 

「………もうす、こし…待って……くれ……………」

 

 

ポットの中にいるはずのカインとそれを看ていたはずのクアットロだった。

 

 

「…ドクター」

 

「なにかな?」

 

 

カインがドクターに話しかけ、

 

 

「『 I am the bone of my sword』」

 

 

投影した『それ』を差し出しながら言った。

それは、

 

 

「これを…私の左腕として………移植してくれ……………」

 

「………これは」

 

 

浅黒く、筋肉質の腕だった。

 

 

 

 

 

 

~Side主人公~

 

 

リニアレールでの戦いから一晩明けた翌日。

俺は六課の課長室に、はやてとリインの二人といた。

 

 

「そういえば、どうやって列車の屋根を壊したんや?」

 

「あー、あれ?分体を糸状にして天井内に網目状に通して、あとは分体を引っ込めればスカスカの天井が人の重みで落ちるってわけ」

 

「なるほどなあ。で」

 

「いったい何時になったら書き終わるんですか~?反省文と始末書と報告書は?」

 

「ついでに、それ書き終わったら、あの刺青の男との関係も喋ってもらうで」

 

 

無断で『非殺傷設定』を解除して人を傷つけたことの反省文(5枚)と、始末書と事件全体の報告書を書くために。

 

 

「………なあ、はやて」

 

「なんや?」

 

「他の奴らは、今日はオフになったんだよな」

 

「六禄君が悪いんやで」

 

 

………取り付く島もねえ。

 

でも、なんでだろうか。

こんなやり取りが、ひどく心地いいのは。

 

 

 

 

 

 

~Sideフェイト~

 

 

分からない。

分からない分からない。

分からない分からない分からない。

 

お母さんの子供は、私とアリシアだけじゃなかったの?

彼らはいったい、私の何なの?

 

弟?

家族?

 

 

「………教えてよぅ」

 

 

………………お母さん。

 

 

 

 

 

 

~Sideエリオ~

 

 

昨日出撃から戻ってから、フェイトさんが部屋から出てこない。

なのはさんが言うには、ベッドに潜り込んで水も飲まずにいるらしい。

 

フェイトさんは僕を引き取ってくれた、お母さんにも等しい人だ。

 

………僕は、あの人に何をしてあげられるんだろうか。

 

そんなことを考えていると、

 

 

「エリオ」

 

 

後ろから、誰かに声をかけられた。

 

 

 

 

 

 

~Sideキャロ~

 

 

フェイトさんが部屋から出てこない。

昨日の出撃から帰ってきて、ずっと。

 

なのはさんから原因を聞いたら、詳しいことは教えてくれなかったけれども、刺青の人に何か言われたらしい。

 

フェイトさんは、部族から追放された私を引き取ってくれた、大切な『家族』。

いったい、どうすれば元気になってもらえるんだろう。

 

そんなことを考えていると、

 

 

「キャロ」

 

 

後ろから、誰かに声をかけられた。

 

 

 

 

 

~Sideアベル~

 

 

「無事に終わったようだな」

 

「ああ、ドクターは腕がいい。色で接いだ部分は分かるが、接ぎ目が見当たらない」

 

 

無事に腕の移植を終えたカインの病床に座り、話をする。

移植されたその腕には、カインの『投影』によって作られた、赤い『聖骸布』が巻かれている。

 

しかし、

 

 

「何故そこまでした?別段、かの英雄の腕でなくともドクターが普通の腕を用意しただろうに」

 

 

今こいつの左腕になっているものは、『錬鉄の英雄』のもの。

投影した本人曰く、『物語の中で移植されたそれを『剣』として投影することで、本来はできないであろう投影を可能にした』らしいが。

 

 

「それではダメだ。この腕にすれば、『投影』の効率や精度が格段に上がる。元々、『無限の剣製』は彼固有のもので、私とは親和性が低い。それを補うには、どうしても必要だ」

 

「その腕を使用するたびに、理性が削られ、その身を激痛とともに剣に変えるとしてもか」

 

「ああ」

 

 

俺をしっかりと見つめ返すその眼は、確固たる意思を持っていた。

 

 

「なんで、そこまでできるんだ?」

 

 

多大なリスクを払うに価するほどの理由はあるのか?

 

 

「決まっている」

 

 

目を瞑り、そして開けて言う。

 

 

「報復をするためだ」

 

 

その眼には、どす黒い焔がともっていた。

 

 

「………親父も、ルーテシアも、アギトも、ドクターも、菫ちゃんも、『ナンバーズ』も、それに俺も頼れ」

 

 

でなければ、お前はいつか壊れてしまう。

そんな姿を、俺たちに見せないでくれ。

 

俺たちは、『家族』なんだ。

 

 

 

 

 

 

~Sideなのは~

 

 

エリオとキャロに声をかけて、フェイトちゃんと一緒に暮らしている部屋へと向かう。

私がかけるべき言葉はもう、全部かけた。

 

あとは、この子たちだ。

そう。

 

フェイトちゃんの『家族』である、この子たちの。

 

二人を部屋に招きいれ、寝室に向かわせる。

私はここまで。

扉の前で、待つしかない。

 

しばらくすると、フェイトちゃんの怒鳴る声が聞こえ、パシンッと、誰かの頬が叩かれる音が中からする。

そして、フェイトちゃんのすすり泣く声と、子供たちの泣き声が聞こえてきた。

フェイトちゃんはしきりに、「ごめんね。ごめんね」と言い、子供たちはそれを聞いて更に泣く。

 

ああ、どうやらちゃんと、解決できたみたいなの。

やっぱり、『家族』、か。

 

 

 

 

 

 

~Sideはやて~

 

 

「終わったあぁぁぁ」

 

「ご苦労様」

 

 

課長室に、六禄君が疲労からダレる声がする。

どうやら、なれない書類作業でお疲れのようやな。

それに、事件の中で出会った金髪に刺青の人は、実のお兄さんやったらしいし精神的にキテるものがあったんだろう。

 

机に突っ伏して、ピクリとも動かなくなっとる。

 

しょうがない。

私が書類を取ってあげよう。

 

六禄君の座っていたソファーに近寄り、書類を手に取る。

うん。

ちゃんと書け取るな。

 

 

「よし。じゃあ、これで完了や」

 

 

そう言っても、ピクリともしない。

 

 

「………どうしたんや?」

 

「………zzzZZZZZ」

 

 

寝とる。

いっそ清々しいまでに寝とる。

 

まったく。

 

 

「リイーン。毛布持ってきたって」

 

「はいです!」

 

 

この部屋には私が仮眠をとることもあるから毛布が常備してある。

それをリインに取って来てもらい、六禄君にかけてあげる。

 

さて、私も仕事に戻ろう。

 

そう思って移動しようとすると、

 

 

グイッ

 

 

と、何かに袖を引っ張られた。

何やろうか?

 

 

「zzzzz」

 

 

六禄君が、寝ながら私の袖を掴んでいた。

まるで、離れないで欲しいとでも言うかのように。

 

………それもそうやな。

二度と会えないと思っていた人たちとの邂逅。

それが六禄君にどれだけの精神的ショックを与えたのだろう。

この人は、それを隠していつものように笑っていた。

 

………いや、実際のところ、六禄君も気付いていなかったのやろうな。

じゃなかったら、ああやって笑えない。

 

 

「………しょうがないなぁ。リイン、悪いんやけど、私の書類をこっちのテーブルに持ってきてくれる?」

 

「はいです!」

 

 

このままだと寝ずらいだろう。

ソファーに座り、六禄君の身体の位置を直す。

 

 

「特別やで?」

 

 

そう、膝枕の形に。

 

………あかん。

今絶対に顔紅い。

 

まあ、ええわ。

今はしっかり眠って、心を休めてや。

 

貴方はもう居候やない。

私の大切な、『家族』なんやから。

 

 

 

 

 

 




報復に滾る、家族の身を案ずる人たち。
血の繋がりはなくとも、確かに家族の人たち。
気がつけば、いつの間にか家族になっていた人たち。

家族の形はそれぞれです。
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